株主の責任は、その有する株式の引受価額を限度とする。
1株主は、その有する株式につき次に掲げる権利その他この法律の規定により認められた権利を有する。
一 剰余金の配当を受ける権利
二 残余財産の分配を受ける権利
三 株主総会における議決権
2株主に前項第一号及び第二号に掲げる権利の全部を与えない旨の定款の定めは、その効力を有しない。
株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。
1株式会社は、その発行する全部の株式の内容として次に掲げる事項を定めることができる。
一 譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。
二 当該株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること。
三 当該株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること。
2株式会社は、全部の株式の内容として次の各号に掲げる事項を定めるときは、当該各号に定める事項を定款で定めなければならない。
一 譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要すること 次に掲げる事項
イ 当該株式を譲渡により取得することについて当該株式会社の承認を要する旨
ロ 一定の場合においては株式会社が第百三十六条又は第百三十七条第一項の承認をしたものとみなすときは、その旨及び当該一定の場合
二 当該株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること 次に掲げる事項
イ 株主が当該株式会社に対して当該株主の有する株式を取得することを請求することができる旨
ロ イの株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)を交付するときは、当該社債の種類(第六百八十一条第一号に規定する種類をいう。以下この編において同じ。)及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
ハ イの株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)を交付するときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法
ニ イの株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の新株予約権付社債を交付するときは、当該新株予約権付社債についてのロに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのハに規定する事項
ホ イの株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の株式等(株式、社債及び新株予約権をいう。以下同じ。)以外の財産を交付するときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法
ヘ 株主が当該株式会社に対して当該株式を取得することを請求することができる期間
三 当該株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること 次に掲げる事項
イ 一定の事由が生じた日に当該株式会社がその株式を取得する旨及びその事由
ロ 当該株式会社が別に定める日が到来することをもってイの事由とするときは、その旨
ハ イの事由が生じた日にイの株式の一部を取得することとするときは、その旨及び取得する株式の一部の決定の方法
ニ イの株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)を交付するときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
ホ イの株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)を交付するときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法
ヘ イの株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の新株予約権付社債を交付するときは、当該新株予約権付社債についてのニに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのホに規定する事項
ト イの株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の株式等以外の財産を交付するときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法
1株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる。ただし、指名委員会等設置会社及び公開会社は、第九号に掲げる事項についての定めがある種類の株式を発行することができない。
一 剰余金の配当
二 残余財産の分配
三 株主総会において議決権を行使することができる事項
四 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。
五 当該種類の株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること。
六 当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること。
七 当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること。
八 株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社(第四百七十八条第八項に規定する清算人会設置会社をいう。以下この条において同じ。)にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの
九 当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。次項第九号及び第百十二条第一項において同じ。)又は監査役を選任すること。
2株式会社は、次の各号に掲げる事項について内容の異なる二以上の種類の株式を発行する場合には、当該各号に定める事項及び発行可能種類株式総数を定款で定めなければならない。
一 剰余金の配当 当該種類の株主に交付する配当財産の価額の決定の方法、剰余金の配当をする条件その他剰余金の配当に関する取扱いの内容
二 残余財産の分配 当該種類の株主に交付する残余財産の価額の決定の方法、当該残余財産の種類その他残余財産の分配に関する取扱いの内容
三 株主総会において議決権を行使することができる事項 次に掲げる事項
イ 株主総会において議決権を行使することができる事項
ロ 当該種類の株式につき議決権の行使の条件を定めるときは、その条件
四 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること 当該種類の株式についての前条第二項第一号に定める事項
五 当該種類の株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること 次に掲げる事項
イ 当該種類の株式についての前条第二項第二号に定める事項
ロ 当該種類の株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の他の株式を交付するときは、当該他の株式の種類及び種類ごとの数又はその算定方法
六 当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること 次に掲げる事項
イ 当該種類の株式についての前条第二項第三号に定める事項
ロ 当該種類の株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の他の株式を交付するときは、当該他の株式の種類及び種類ごとの数又はその算定方法
七 当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること 次に掲げる事項
イ 第百七十一条第一項第一号に規定する取得対価の価額の決定の方法
ロ 当該株主総会の決議をすることができるか否かについての条件を定めるときは、その条件
八 株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの 次に掲げる事項
イ 当該種類株主総会の決議があることを必要とする事項
ロ 当該種類株主総会の決議を必要とする条件を定めるときは、その条件
九 当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること 次に掲げる事項
イ 当該種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること及び選任する取締役又は監査役の数
ロ イの定めにより選任することができる取締役又は監査役の全部又は一部を他の種類株主と共同して選任することとするときは、当該他の種類株主の有する株式の種類及び共同して選任する取締役又は監査役の数
ハ イ又はロに掲げる事項を変更する条件があるときは、その条件及びその条件が成就した場合における変更後のイ又はロに掲げる事項
ニ イからハまでに掲げるもののほか、法務省令で定める事項
3前項の規定にかかわらず、同項各号に定める事項(剰余金の配当について内容の異なる種類の種類株主が配当を受けることができる額その他法務省令で定める事項に限る。)の全部又は一部については、当該種類の株式を初めて発行する時までに、株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社にあっては株主総会又は清算人会)の決議によって定める旨を定款で定めることができる。この場合においては、その内容の要綱を定款で定めなければならない。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「誤り」。正しいものを選ぶ本問の正解肢ではありません。
会社法331条2項は、株式会社は、取締役が株主でなければならない旨を定款で定めることができないと規定し、ただし書で、公開会社でない株式会社においてはこの限りでないとしています。つまり、株主資格を取締役の要件とする定款規定を置けるのは非公開会社に限られ、公開会社では置くことができません。「すべての株式会社は」と述べる本肢は誤りです。
理由づけとして、株式会社では所有と経営の分離が原則とされ、取締役は株主の内外を問わず広く適任者から選任されるべきものと考えられています。とりわけ公開会社では株式が転々流通し、誰が株主であるかが常に変動しますから、株主資格を要求すると経営者の地位が株式の移動によって左右され、適任者の確保も困難になります。これに対し非公開会社は、株主と経営者が実質的に一致している閉鎖的な会社が多く、外部者が経営に関与することを排除したいという需要が強いため、例外が認められました。
ひっかけポイントは「すべての株式会社は」という全称表現です。会社法では、公開会社か否か、取締役会設置会社か否かによって規律が分かれる場面が非常に多く、全称表現が出てきたら例外の有無を必ず疑ってください。
関連知識として、331条1項は取締役の欠格事由を定めています。法人は取締役となることができず(1号)、会社法や金融商品取引法・倒産法制上の一定の罪を犯して刑に処せられ、その執行を終わりまたは執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者(3号)、それ以外の罪により拘禁刑以上の刑に処せられその執行を終わるまでの者等(4号)も同様です。ここは現行法の状況に注意が必要で、まず、かつて欠格事由とされていた成年被後見人・被保佐人は令和元年改正会社法(2021年3月1日施行)により欠格事由から削除され、代わりに331条の2が新設されて、成年後見人が本人の同意を得て就任の承諾をするなどの手続が定められました。また2022年成立の刑法改正により懲役・禁錮が拘禁刑に一本化され(2025年6月1日施行)、会社法331条1項4号の文言も「拘禁刑」に改められています。2009年の出題当時とは条文の姿がかなり変わっている部分ですから、現行条文で覚え直しておきましょう。
結論:この肢は「正しい」。正しいものを選ぶ本問の正解肢です。
会社法346条1項は、役員が欠けた場合またはこの法律もしくは定款で定めた役員の員数が欠けた場合には、任期の満了または辞任により退任した役員は、新たに選任された役員(同条2項の一時役員の職務を行うべき者を含む)が就任するまで、なお役員としての権利義務を有すると規定しています。いわゆる権利義務役員(権利義務取締役)です。本肢は、辞任によって員数が欠けた場面を述べており、条文の要件をそのまま満たしますから正しい記述です。
理由づけとして、取締役が法定または定款所定の員数を下回った状態を放置すると、取締役会の決議ができない、代表取締役が不在になるといった事態が生じ、会社の業務執行や意思決定が停止してしまいます。そこで会社法は、後任者が就任するまでの暫定措置として、退任した者になお役員としての権利義務を負わせ、業務の空白を防いでいるのです。ここでいう権利義務は、報酬請求権のような個人的な権利ではなく、取締役として職務を行う権限と善管注意義務等の職務上の義務を指します。
ひっかけポイントは「員数が欠けた場合」という要件です。法定の員数(取締役会設置会社では3人以上、331条5項)を下回った場合だけでなく、定款で「取締役は3名以上とする」と定めているのに2名になった場合も含まれます。逆に、定款所定の員数を満たしたまま辞任した取締役は、この規定の適用を受けず直ちに地位を失います。また、条文が対象とするのは「任期の満了又は辞任により退任した役員」であり、解任された役員や欠格事由に該当して退任した役員は含まれません。
関連知識として、権利義務取締役の状態が続く場合、裁判所は必要があると認めるときは利害関係人の申立てにより一時役員の職務を行うべき者(仮取締役)を選任することができ(346条2項)、その者に会社が支払う報酬額を定めることもできます(同条3項)。また判例は、権利義務取締役に対しては会社法854条の役員解任の訴えを提起することはできないとしています(最判平成20年2月26日)。権利義務取締役の地位を失わせるには、後任者を選任するか一時役員の選任を申し立てるのが筋道だ、という理解です。登記実務上も、退任登記は後任者の就任登記とあわせてされることになります。
1株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない。
2前項の規定にかかわらず、公開会社でない株式会社は、第百五条第一項各号に掲げる権利に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができる。
3前項の規定による定款の定めがある場合には、同項の株主が有する株式を同項の権利に関する事項について内容の異なる種類の株式とみなして、この編及び第五編の規定を適用する。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「誤り」。正しいものを選ぶ本問の正解肢ではありません。
会社法346条1項が権利義務役員としての地位を認めているのは、「任期の満了又は辞任により退任した役員」に限られます。解任によって退任した役員はこの文言に含まれません。したがって、解任に正当な事由があったか否かにかかわらず、解任された取締役は解任決議の効力が生じた時点で取締役の地位を失い、その後の権利義務を有することはありません。
理由づけとして、権利義務役員の制度は業務の空白を避けるための暫定措置ですが、株主総会が信任を撤回して解任した者に、なお取締役としての職務を行わせることは制度の趣旨に反します。株主総会がその人物に会社の経営を委ねないという判断を示した以上、その判断を尊重すべきだからです。解任によって員数が欠けた場合は、後任者を選任するか、裁判所に一時役員の職務を行うべき者の選任を申し立てて対処することになります(346条2項)。
ひっかけポイントは「正当な事由」という言葉の位置づけです。会社法339条1項は、役員および会計監査人はいつでも株主総会の決議によって解任することができると定めます(原則として普通決議。ただし累積投票により選任された取締役、監査等委員である取締役、監査役の解任は特別決議によります。309条2項7号)。そして同条2項は、解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し解任によって生じた損害の賠償を請求することができるとしています。すなわち正当事由の有無は、あくまで損害賠償(典型的には残任期分の報酬相当額)の可否を分ける要素であって、解任の効力そのものや取締役の地位の存否を左右するものではありません。本肢は、この損害賠償の場面の要件を地位の存続の問題に接ぎ木したもので、典型的な引っかけです。
関連知識として、解任の効力は決議によって直ちに生じ、正当事由を欠く解任であっても解任自体は有効です。株主総会が解任議案を否決した場合に、少数株主が裁判所に解任を求める役員解任の訴え(854条)と混同しないよう、339条(総会による解任)と854条(訴えによる解任)の役割分担も整理しておきましょう。
結論:この肢は「誤り」。正しいものを選ぶ本問の正解肢ではありません。
会社法346条2項は、役員が欠けた場合等において、裁判所は必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより一時役員の職務を行うべき者(一時取締役、仮取締役)を選任することができると定めます。もっとも、その権限を制限する規定は置かれておらず、一時取締役は通常の取締役と同一の権限を有します。常務に属しない行為について裁判所の許可を要するという制限は存在しません。
本肢が述べている規律は、別の制度である職務代行者のものです。会社法352条1項は、民事保全法56条に規定する仮処分命令により選任された取締役または代表取締役の職務を代行する者は、仮処分命令に別段の定めがある場合を除き、株式会社の常務に属しない行為をするには裁判所の許可を得なければならないと定めています。本肢は、一時取締役と職務代行者という2つの制度を取り違えたものです。
理由づけは両者の役割の違いにあります。一時取締役は、役員が欠けて会社運営が滞る状態を解消するために選任される正規の穴埋めであり、会社の業務を継続的・全面的に担わせる必要がありますから、権限を制限する理由がありません。これに対し職務代行者は、取締役の地位や選任決議の効力をめぐる争いが係属している間に、暫定的に職務を行う者です。本案訴訟の結論が出る前に、募集株式の発行、株主総会の招集、重要な財産の処分といった会社の基礎に影響する行為をされてしまうと、後から回復が困難になります。そこで常務外の行為には裁判所の許可を要求して歯止めをかけているのです。
関連知識として、352条2項は、許可を得ずにした職務代行者の行為は無効としつつ、会社はこれをもって善意の第三者に対抗することができないとしています。取引の安全との調整規定です。また、一時取締役については、裁判所が会社の支払う報酬の額を定めることができます(346条3項)。一時取締役が選任されると、権利義務取締役はその地位を失います(346条1項の括弧書きが一時役員の職務を行うべき者を「新たに選任された役員」に含めています)。
ひっかけポイントは「常務に属しない行為」というキーワードです。この文言を見たら民事保全法上の職務代行者(352条)を想起し、346条2項の一時役員と区別してください。
定款を変更してその発行する全部の株式の内容として第百七条第一項第三号に掲げる事項についての定款の定めを設け、又は当該事項についての定款の変更(当該事項についての定款の定めを廃止するものを除く。)をしようとする場合(株式会社が種類株式発行会社である場合を除く。)には、株主全員の同意を得なければならない。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「誤り」。
取締役会議事録の閲覧・謄写請求について定めているのは会社法371条です。同条2項は、株主は「その権利を行使するため必要があるとき」は、株式会社の営業時間内は、いつでも、取締役会議事録の閲覧または謄写を請求することができると定めています。ところが同条3項は、監査役設置会社、監査等委員会設置会社または指名委員会等設置会社にあっては、株主が2項の請求をするには裁判所の許可を得なければならない、としています。本肢は「監査役または監査委員が設置されている株式会社」を前提としていますから、まさに371条3項が適用される場面であり、株主が議事録を見るには裁判所の許可が必要です。「営業時間内であれば、いつでも」請求できるわけではないので、本肢は誤りです。
理由づけとしては、機関設計と監督権限の配分を押さえると理解しやすくなります。監査役や監査委員(現在は監査等委員・指名委員会等設置会社の監査委員)が置かれている会社では、取締役の職務執行の監査は第一次的にこれらの機関が担います。株主の監督是正権は、いわばその補充として位置づけられるため、経営上の機密(新規事業の検討状況、M&Aの交渉経過、人事案など)が生々しく記録されている取締役会議事録については、裁判所の許可という一段のフィルターがかけられているのです。裁判所は、閲覧により会社に著しい損害を及ぼすおそれがあると認めるときは許可をすることができません(371条6項)。逆に、監査役等が置かれていない会社では株主自身が監督の担い手となるほかないため、許可なしで請求できる(371条2項)という対比になります。
ひっかけポイントは、「営業時間内であればいつでも」というフレーズです。このフレーズは、株主名簿(125条2項)、計算書類等(442条3項)、定款(31条2項)、株主総会議事録(318条4項)などの閲覧請求権で使われる典型表現であり、これらには裁判所の許可は不要です。取締役会議事録だけが例外的に扱われている、と整理してください。なお、会社債権者が役員の責任追及のため議事録を閲覧する場合や、親会社社員が権利行使のため閲覧する場合は、機関設計にかかわらず常に裁判所の許可が必要です(371条4項・5項)。また、2010年の出題当時は「委員会設置会社の監査委員」という枠組みでしたが、平成26年改正により監査等委員会設置会社が新設され、現行法では監査役設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社の三類型が371条3項の対象となっています。
結論:この肢は「誤り」。正しいものを選ぶ本問の正解肢ではありません。
会社法854条1項は、役員の職務の執行に関し不正の行為または法令もしくは定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず、当該役員を解任する旨の議案が株主総会において否決されたとき、または当該役員を解任する旨の株主総会の決議が323条の規定によりその効力を生じないときは、一定の要件を満たす株主は、当該株主総会の日から30日以内に、訴えをもって当該役員の解任を請求することができると定めています。
つまり、役員解任の訴えは、まず株主総会に解任議案を提出して否決されることが前提となります。株主総会という会社の自治的な解決手続を経てもなお不正な役員を排除できない場合に、裁判所の関与によって是正する制度だからです。「直ちに」訴えを提起することはできませんから、本肢は誤りです。加えて、提訴期間が株主総会の日から30日以内に限られる点、原告適格として総株主の議決権の100分の3以上または発行済株式の100分の3以上を6か月前から引き続き有する株主であることが必要な点(854条1項1号・2号。公開会社でない株式会社では6か月の保有期間要件は不要です。同条2項)も、あわせて押さえてください。
実質的な誤りはもう一点あります。本肢が挙げる「著しい損害が生じるおそれ」という要件は、解任の訴えの要件ではなく、株主による取締役の行為の差止請求(360条)の要件です。360条1項は、6か月前から引き続き株式を有する株主は、取締役が会社の目的の範囲外の行為その他法令もしくは定款に違反する行為をし、またはこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、その行為をやめることを請求できると定めています(公開会社でない会社では保有期間要件は不要。同条2項)。さらに監査役設置会社、監査等委員会設置会社または指名委員会等設置会社では、要件が「回復することができない損害が生ずるおそれ」に加重されます(同条3項)。
ひっかけポイントは、まさにこの要件の接ぎ木です。「著しい損害のおそれ」は差止請求(360条)、「職務執行に関する不正の行為または法令定款違反の重大な事実+総会での否決」は解任の訴え(854条)と、要件と制度をセットで記憶しておけば即座に切れます。株主代表訴訟(847条)における60日の待機期間などとあわせ、株主の監督是正権の全体像を整理しておきましょう。
1種類株式発行会社がある種類の株式の発行後に定款を変更して当該種類の株式の内容として第百八条第一項第六号に掲げる事項についての定款の定めを設け、又は当該事項についての定款の変更(当該事項についての定款の定めを廃止するものを除く。)をしようとするときは、当該種類の株式を有する株主全員の同意を得なければならない。
2種類株式発行会社がある種類の株式の内容として第百八条第一項第四号又は第七号に掲げる事項についての定款の定めを設ける場合には、当該定款の変更は、次に掲げる種類株主を構成員とする種類株主総会(当該種類株主に係る株式の種類が二以上ある場合にあっては、当該二以上の株式の種類別に区分された種類株主を構成員とする各種類株主総会。以下この条において同じ。)の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。
一 当該種類の株式の種類株主
二 第百八条第二項第五号ロの他の株式を当該種類の株式とする定めがある取得請求権付株式の種類株主
三 第百八条第二項第六号ロの他の株式を当該種類の株式とする定めがある取得条項付株式の種類株主
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「誤り」。
業務・財産状況調査のための検査役選任請求は、会社法358条1項が定めています。すなわち、株式会社の業務の執行に関し、不正の行為または法令もしくは定款に違反する重大な事実があることを疑うに足りる事由があるときは、総株主の議決権の100分の3以上の議決権を有する株主、または発行済株式の100分の3以上の数の株式を有する株主は、当該株式会社の業務および財産の状況を調査させるため、「裁判所」に対し、検査役の選任の申立てをすることができます。本肢は請求先を「監査役または監査委員」としている点で明白に誤りです。
理由づけは、検査役という制度の性質から説明できます。検査役は、会社の内部機関ではなく、裁判所が選任し裁判所に対して調査結果を報告する第三者機関です(358条5項)。会社経営陣から独立した立場で会社の帳簿・資料を調べ、必要があれば裁判所が株主総会の招集や調査結果の株主への通知を命じる(359条1項)というところまで用意されており、株主の監督是正権のなかでも強力な部類に属します。仮に会社の機関である監査役に選任を請求するのだとすれば、それは検査役ではなく監査役自身の調査権限(381条2項・3項)の発動を求めるにすぎず、独立性という制度趣旨が失われてしまいます。
ひっかけポイントは二つあります。第一に、「裁判所に申し立てるもの」と「会社に請求するもの」の区別です。裁判所に対して行うのは、検査役選任の申立て(358条1項、および募集株式の現物出資の価額調査のための33条・207条、株主総会招集手続等の調査のための306条)、少数株主による総会招集許可(297条4項)、取締役会議事録閲覧の許可(371条3項)などです。第二に、持株要件です。358条1項は、総株主の議決権の100分の3以上の議決権、または発行済株式(自己株式を除く)の100分の3以上の数の株式(いずれも定款で引下げ可)と定めています。他方で、6か月の保有期間要件は課されていません。少数株主による総会招集請求(297条1項)や役員解任の訴え(854条1項)が公開会社では6か月の継続保有を要求するのと異なる点であり、数字と要件をセットで覚えてください。なお、平成26年改正で監査等委員会設置会社が加わりましたが、検査役選任申立ての相手方が裁判所であることは機関設計にかかわらず変わりません。
結論:この肢は「正しい」。
株主による取締役の行為の差止請求は、会社法360条が定めています。同条1項は、6か月前から引き続き株式を有する株主は、取締役が株式会社の目的の範囲外の行為その他法令もしくは定款に違反する行為をし、またはこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該株式会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができる、と規定します。そして同条3項は、監査役設置会社、監査等委員会設置会社または指名委員会等設置会社においては、1項の「著しい損害」を「回復することができない損害」と読み替える、としています。本肢は監査役も監査委員も置かれていない会社を前提としていますから、3項の加重は働かず、「著しい損害が生ずるおそれ」で差止請求ができます。したがって本肢は正しい記述です。
理由づけは、肢1と同じ発想です。監査役等が置かれている会社では、違法行為の差止めは第一次的に監査役・監査委員の職務(385条1項、399条の6第1項、407条1項。これらは「著しい損害」で発動できます)とされ、株主の差止権はその後ろに控える最終手段となるため、発動要件が「回復することができない損害」に絞り込まれています。逆に、監査役等がいない会社では株主が唯一の監督者ですから、要件は緩和されたままです。「監督機関が手厚いほど株主の要件は厳しい、監督機関が薄いほど株主の要件は緩い」というシーソーの関係で理解すると、条文を暗記せずに答えを出せます。
ひっかけポイントは三つあります。第一に、株式保有数の要件はなく、単独株主権であることです(本肢が「一定の数の株式を保有する株主」と限定していないのは正しい書きぶりです)。第二に、6か月の保有期間要件は公開会社の場合のみで、公開会社でない株式会社では期間要件が課されません(360条2項)。第三に、請求の相手方は「会社」ではなく「取締役」個人である点です。新株予約権発行の差止め(247条)や募集株式発行の差止め(210条)は会社を相手方とするので、混同しないよう注意しましょう。実務上は、差止めを本案とする仮処分(民事保全法23条2項)の形で争われるのが通常です。
1第百八条第二項第九号に掲げる事項(取締役に関するものに限る。)についての定款の定めは、この法律又は定款で定めた取締役の員数を欠いた場合において、そのために当該員数に足りる数の取締役を選任することができないときは、廃止されたものとみなす。
2前項の規定は、第百八条第二項第九号に掲げる事項(監査役に関するものに限る。)についての定款の定めについて準用する。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「誤り」。
株主による責任追及等の訴え(いわゆる株主代表訴訟)は、会社法847条が定めています。同条1項により、6か月前から引き続き株式を有する株主は、まず「株式会社に対し」、書面その他の方法により、取締役等の責任を追及する訴えの提起を請求しなければなりません(提訴請求)。そのうえで、会社がこの請求の日から60日以内に責任追及等の訴えを提起しないときに、初めて株主自身が会社のために責任追及等の訴えを提起することができます(847条3項)。本肢は、この提訴請求と60日の待機期間をとばして「直ちに」訴えを提起できるとしている点で誤りです。
例外がないわけではありません。847条5項は、60日の期間の経過により会社に回復することができない損害が生ずるおそれがある場合には、株主は直ちに責任追及等の訴えを提起できるとしています。しかし本肢は「法令に違反する重大な事実があるとき」とするだけで、回復不能の損害のおそれには触れていません。したがって、原則どおり直ちには提起できず、やはり誤りです。
さらに、「当該会社を代表して」という表現も正確ではありません。株主代表訴訟において株主は、自ら原告となって会社のために訴訟を追行します。その法的性質は、他人(会社)の権利について自己の名で訴訟を追行する法定訴訟担当と解されており、株主が会社の代表機関になるわけではありません。判決の効力は会社に及び(民事訴訟法115条1項2号)、勝訴して得られた金銭は会社に帰属します。株主が受け取れるのは、勝訴した場合の弁護士報酬等の相当額の支払請求(会社法852条1項)にとどまります。
ひっかけポイントとして、提訴請求の相手方が機関設計により異なることも押さえておきましょう。監査役設置会社では監査役、監査等委員会設置会社では監査等委員、指名委員会等設置会社では監査委員が会社を代表して請求を受けます(386条2項1号、399条の7第5項1号、408条5項1号)。監査役等が置かれていない取締役会設置会社では、株主総会が定める者、または代表取締役等が受領者となります(353条、364条参照)。また、単独株主権であること、公開会社でない会社では6か月要件が課されないこと(847条2項)、株式交換・株式移転や吸収合併により株主でなくなった者でも、その効力発生時までに原因となった事実が生じた責任等については提訴請求できるとする旧株主の特則(847条の2)などもあわせて確認しておくと得点力が上がります。
結論:この肢は「誤り」。
役員の解任の訴えは、会社法854条1項が定めています。要件は次のとおりです。第一に、役員の職務の執行に関し不正の行為または法令もしくは定款に違反する重大な事実があったこと。第二に、当該役員を解任する旨の議案が株主総会において否決されたこと(または解任決議が種類株主総会の決議が必要とされる場合にその決議が得られなかったこと)。第三に、株主総会の日から30日以内に訴えを提起すること。本肢は、株主総会に解任議案を諮ってそれが否決されたという第二の要件をまったく無視し、「直ちに」解任の訴えを提起できるとしている点で誤りです。
理由づけは、会社の自治との関係にあります。役員を選任・解任する権限は、本来株主総会にあります(329条1項、339条1項。解任は原則として普通決議で足り、正当な理由なく解任された役員は会社に損害賠償を請求できます。339条2項)。したがって、まずは株主総会という会社内部の意思決定に委ねるのが筋であり、そこで多数派が不正な役員をかばって解任議案を否決したときに初めて、裁判所の力を借りて少数株主が是正できる、という段階構造になっているのです。この訴えは形成の訴えであり、判決の確定によって解任の効力が生じます。被告は会社および当該役員の双方であり、両者を共同被告としなければなりません(855条)。
ひっかけポイントを整理します。第一に、持株要件は総株主の議決権の100分の3以上、または発行済株式の100分の3以上(自己株式を除く)で、公開会社では6か月の保有期間が必要です(854条1項・2項)。本肢が「一定の数の株式を保有する株主」としている点自体は正しく、誤りは「直ちに」の部分だけである、という見抜き方が重要です。第二に、「不正の行為または法令・定款に違反する重大な事実」は過去に「あった」ことで足り、継続している必要はありません。第三に、解任の訴えは監査役等の設置の有無で要件が変わらない点も、差止請求(360条)や代表訴訟の提訴請求先との違いとして押さえておきましょう。なお、平成26年改正により監査等委員である取締役の解任は株主総会の特別決議によるとされました(309条2項7号、344条の2第3項)が、854条の解任の訴えの枠組み自体は変わっていません。
1株式会社は、定款を変更して発行可能株式総数についての定めを廃止することができない。
2定款を変更して発行可能株式総数を減少するときは、変更後の発行可能株式総数は、当該定款の変更が効力を生じた時における発行済株式の総数を下ることができない。
3次に掲げる場合には、当該定款の変更後の発行可能株式総数は、当該定款の変更が効力を生じた時における発行済株式の総数の四倍を超えることができない。
一 公開会社が定款を変更して発行可能株式総数を増加する場合
二 公開会社でない株式会社が定款を変更して公開会社となる場合
4新株予約権(第二百三十六条第一項第四号の期間の初日が到来していないものを除く。)の新株予約権者が第二百八十二条第一項の規定により取得することとなる株式の数は、発行可能株式総数から発行済株式(自己株式(株式会社が有する自己の株式をいう。以下同じ。)を除く。)の総数を控除して得た数を超えてはならない。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「正しい」。
募集株式の発行等における募集事項(募集株式の数、払込金額またはその算定方法、金銭以外の財産を出資の目的とするときはその旨・内容・価額、払込期日または払込期間、増加する資本金および資本準備金に関する事項)の決定は、原則として株主総会の特別決議によります(会社法199条2項、309条2項5号)。しかし、公開会社については201条1項が特則を置き、募集株式の払込金額が引受人に「特に有利な金額」である場合を除いて、募集事項の決定は取締役会の決議によるとしています。本肢は「時価発行」ですから有利発行には当たらず、取締役会の決議で足ります。したがって正しい記述です。
理由づけは、公開会社における資金調達の機動性の要請です。公開会社では株式が自由に譲渡でき、株主の関心は主として投下資本の経済的価値にあります。時価で発行される限り、既存株主の持株比率は薄まっても一株当たりの経済的価値は原則として害されません。そこで、機動的な資金調達を可能にするため、募集事項の決定権限を取締役会に授権する(授権資本制度。発行可能株式総数は発行済株式総数の4倍を超えられません。113条3項)一方、既存株主の保護は、募集事項の払込期日の2週間前までの通知・公告(201条3項・4項)と、それを前提とする発行差止請求(210条)によって図られています。
ひっかけポイントとして、「特定の第三者に対して」という文言に引っかからないことが大切です。第三者割当てだから株主総会が必要だ、と早合点しがちですが、公開会社で問題になるのは割当先ではなく「払込金額が特に有利かどうか」です。有利発行の場合は取締役が株主総会でその金額で募集することを必要とする理由を説明したうえで、特別決議を得なければなりません(199条3項、201条1項括弧書き)。有利発行かどうかの判断基準について、判例は上場株式につき原則として公正な発行価額は時価を基準とすべきものとしつつ、資金調達の目的や株価の異常な高騰などの事情を考慮する余地を認めています(最判昭和50年4月8日)。なお、現行法では平成26年改正により、公開会社において募集株式の引受人が総株主の議決権の過半数を有することとなる場合(支配株主の異動を伴う場合)には、株主への通知・公告が必要とされ、議決権の10分の1以上を有する株主が反対を通知したときは、原則として株主総会の普通決議による承認が必要とされています(206条の2)。2010年の出題時にはなかった規律ですので、現在の学習では併せて押さえてください。
結論:この肢は「誤り」。
剰余金の額を減少して資本金の額を増加すること(剰余金の資本組入れ)については、会社法450条が定めています。同条1項は、株式会社は剰余金の額を減少して資本金の額を増加することができるとし、同条2項は、この場合には株主総会の決議によって、減少する剰余金の額と資本金の額の増加の効力発生日を定めなければならない、としています。つまり必要なのは株主総会の決議であって、取締役会の決議では足りません。したがって本肢は誤りであり、本問の正解肢となります。
理由づけは、資本金という数字が持つ意味にあります。資本金の額は、会社が維持すべき財産の額の基準となり、剰余金の分配可能額の算定に直結します(461条2項)。剰余金を資本金に振り替えれば、その分だけ将来の株主への分配可能額が減少します。これは株主の利益に直接影響する事項ですから、業務執行機関である取締役会限りで決めることは許されず、株主総会の判断に委ねられているのです。なお、この株主総会決議は普通決議で足ります(309条2項の列挙事項に含まれていないため)。似た制度である準備金の資本組入れも同様に株主総会の決議が必要です(448条1項)。
ひっかけポイントは、方向の違いによる決議要件の差です。逆方向、すなわち資本金の額を減少する場合には、原則として株主総会の特別決議が必要であり(447条1項、309条2項9号)、さらに債権者異議手続を経なければなりません(449条)。他方、剰余金の配当(454条)や損失の処理・任意積立金の積立てなど剰余金の処分(452条)も原則として株主総会の決議事項です。ただし、会計監査人設置会社であって取締役の任期が1年以内であるなど一定の要件を満たす会社では、定款の定めにより剰余金の配当等を取締役会が決定できるとする特則があります(459条1項)。もっとも、この特則の対象は同項各号に限定列挙された事項であり、450条の剰余金の資本組入れは含まれていません(一方、準備金の額の減少や剰余金の処分は459条1項2号・3号で対象となり得ます)。「資本金を増やす方向の組入れは、あくまで株主総会」と覚えておくとよいでしょう。
1定款を変更してある種類の株式の発行可能種類株式総数を減少するときは、変更後の当該種類の株式の発行可能種類株式総数は、当該定款の変更が効力を生じた時における当該種類の発行済株式の総数を下ることができない。
2ある種類の株式についての次に掲げる数の合計数は、当該種類の株式の発行可能種類株式総数から当該種類の発行済株式(自己株式を除く。)の総数を控除して得た数を超えてはならない。
一 取得請求権付株式(第百七条第二項第二号ヘの期間の初日が到来していないものを除く。)の株主(当該株式会社を除く。)が第百六十七条第二項の規定により取得することとなる同項第四号に規定する他の株式の数
二 取得条項付株式の株主(当該株式会社を除く。)が第百七十条第二項の規定により取得することとなる同項第四号に規定する他の株式の数
三 新株予約権(第二百三十六条第一項第四号の期間の初日が到来していないものを除く。)の新株予約権者が第二百八十二条第一項の規定により取得することとなる株式の数
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「正しい」。
会社が取締役の住宅ローンについて保証人となる行為は、会社法356条1項3号にいう「株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき」、すなわち利益相反取引のうちの間接取引に当たります。取締役会設置会社では、356条1項の承認は株主総会ではなく取締役会の決議によることとされていますから(365条1項)、本肢のとおり取締役会の決定を要します。したがって正しい記述です。
理由づけは、取締役と会社の利害対立の防止にあります。会社が取締役の個人的な借入れの保証人になると、取締役本人は信用の供与という利益を受ける一方、会社は求償が回収できないリスクを負担します。取締役が自らの地位を利用して会社財産を犠牲にするおそれがあるため、事前に取締役会という合議体のチェックを受けさせ、事後にも取引後遅滞なく重要な事実を取締役会に報告させる(365条2項)という二段構えの規制が置かれているのです。承認を得ずにされた間接取引は、会社と第三者との間では原則として有効ですが、会社は第三者が承認のないことを知っていたこと(悪意)を主張立証すれば無効を対抗できると解されています(間接取引について相対的無効説を採った最大判昭和43年12月25日。なお、会社が取締役宛てに約束手形を振り出した事案につき同様の判断枠組みを示したものとして最大判昭和46年10月13日)。
ひっかけポイントを挙げます。第一に、承認の決議において当該取締役は特別の利害関係を有する取締役に当たるため、議決に加わることができません(369条2項)。定足数の算定からも除外されます。第二に、利益相反取引によって会社に損害が生じた場合、取引をした取締役、取引を決定した取締役、承認決議に賛成した取締役は任務を怠ったものと推定され(423条3項)、さらに自己のためにした直接取引の場合には無過失責任となり一部免除も認められません(428条)。本肢のように会社が取締役の債務を保証する場合は間接取引ですから、428条の加重は及びません。第三に、方向を逆にした「取締役が会社の債務を保証する」場合は、会社に利益しか生じないため承認は不要です。どちらが誰のために保証するのかを必ず確認してください。
結論:この肢は「正しい」。
会社法362条4項は、取締役会は「重要な業務執行の決定」を取締役に委任することができないとし、その例示として各号を掲げています。同項2号が「多額の借財」です。銀行から事業拡大のために多額の融資を受けることはまさに多額の借財に当たりますから、取締役会の決議を要します。したがって正しい記述です。
理由づけは、業務執行の決定権限の配分にあります。取締役会は業務執行の決定と取締役の職務執行の監督、代表取締役の選定・解職を職務とし(362条2項)、日常的な業務執行の決定は代表取締役等に委ねられます。しかし、会社の財産状態を大きく左右する事項まで一人の代表取締役の判断に委ねると、暴走を止められません。そこで「重要な業務執行」については必ず合議体である取締役会の決議を要求し、委任を禁じているのです。「多額」に当たるかどうかは、当該借財の額、会社の総資産および経常利益等に占める割合、借財の目的および会社における従来の取扱い等の事情を総合的に考慮して判断されるとするのが裁判例の考え方です(東京地判平成9年3月17日)。金額の絶対値だけで機械的に決まるものではない点に注意してください。
ひっかけポイントとして、362条4項各号は必ず一通り言えるようにしておきましょう。1号「重要な財産の処分及び譲受け」、2号「多額の借財」、3号「支配人その他の重要な使用人の選任及び解任」、4号「支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止」、5号「社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項」、6号「内部統制システムの整備」、7号「役員等の責任の一部免除」です。「借財」には金銭消費貸借だけでなく、他人の債務の保証や債務引受けなど、会社が債務を負担する行為が広く含まれると解されています。また、大会社である取締役会設置会社(指名委員会等設置会社を除く)では、6号の内部統制システムの整備の決定が義務づけられている点(362条5項)も頻出です。なお、362条4項の事項であっても、指名委員会等設置会社では執行役に、監査等委員会設置会社では一定の要件のもとで取締役に、それぞれ広く委任できる特則があります(416条4項、399条の13第5項・6項)。
種類株式発行会社が公開会社である場合において、株主総会において議決権を行使することができる事項について制限のある種類の株式(以下この条において「議決権制限株式」という。)の数が発行済株式の総数の二分の一を超えるに至ったときは、株式会社は、直ちに、議決権制限株式の数を発行済株式の総数の二分の一以下にするための必要な措置をとらなければならない。
この条文の過去問 1肢
結論:この肢は「正しい」。
会社法362条4項4号は、「支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止」を、取締役に委任することができない重要な業務執行として明示しています。支店の統廃合は、支店の廃止および組織の変更にほかなりませんから、取締役会の決議を要します。したがって正しい記述です。
理由づけは、支店が単なる営業所ではなく、会社の組織上の重要な単位として法律上の効果を伴う点にあります。支店には支配人を置くことができ、支配人は会社に代わってその事業に関する一切の裁判上・裁判外の行為をする包括的な代理権を有します(会社法11条1項)。支配人の代理権に加えた制限は善意の第三者に対抗できません(11条3項)。また支店の設置・移転・廃止は登記事項であり(911条3項3号等)、対外的な信用にも関わります。こうした重い効果を伴う組織の設置・変更・廃止を代表取締役の一存に委ねるのは相当でないため、取締役会の決議事項とされているのです。
ひっかけポイントは、「重要な」という限定の掛かり方です。4号は「支店その他の重要な組織」と規定していますので、支店については重要性の判断を要せず当然に取締役会決議が必要であるのに対し、支店に至らない出張所や営業所については、それが「重要な組織」に当たるかどうかを個別に判断することになります。似た規定として3号「支配人その他の重要な使用人の選任及び解任」があり、支配人については当然に取締役会決議が必要である一方、部長・課長級の人事は重要性次第です。
関連知識として、事業の「重要な一部の譲渡」は取締役会ではなく株主総会の特別決議を要する点(467条1項2号、309条2項11号)と混同しないことが大切です。支店の統廃合それ自体は組織の廃止にとどまりますが、支店の事業を営業用財産ごと他社に譲り渡し、これが会社の事業の重要な一部の譲渡に当たるときは、取締役会決議に加えて株主総会の特別決議が必要になります。判例は「事業の譲渡」を、一定の事業目的のため組織化された有機的一体としての機能的財産の移転であって、譲渡会社が競業避止義務を負う結果を伴うものと解しています(最大判昭和40年9月22日)。
1次の各号に掲げる場合には、反対株主は、株式会社に対し、自己の有する当該各号に定める株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。
一 その発行する全部の株式の内容として第百七条第一項第一号に掲げる事項についての定めを設ける定款の変更をする場合 全部の株式
二 ある種類の株式の内容として第百八条第一項第四号又は第七号に掲げる事項についての定めを設ける定款の変更をする場合 第百十一条第二項各号に規定する株式
三 次に掲げる行為をする場合において、ある種類の株式(第三百二十二条第二項の規定による定款の定めがあるものに限る。)を有する種類株主に損害を及ぼすおそれがあるとき 当該種類の株式
イ 株式の併合又は株式の分割
ロ 第百八十五条に規定する株式無償割当て
ハ 単元株式数についての定款の変更
ニ 当該株式会社の株式を引き受ける者の募集(第二百二条第一項各号に掲げる事項を定めるものに限る。)
ホ 当該株式会社の新株予約権を引き受ける者の募集(第二百四十一条第一項各号に掲げる事項を定めるものに限る。)
ヘ 第二百七十七条に規定する新株予約権無償割当て
2前項に規定する「反対株主」とは、次の各号に掲げる場合における当該各号に定める株主をいう。
一 前項各号の行為をするために株主総会(種類株主総会を含む。)の決議を要する場合 次に掲げる株主
イ 当該株主総会に先立って当該行為に反対する旨を当該株式会社に対し通知し、かつ、当該株主総会において当該行為に反対した株主(当該株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)
ロ 当該株主総会において議決権を行使することができない株主
二 前号に規定する場合以外の場合 すべての株主
3第一項各号の行為をしようとする株式会社は、当該行為が効力を生ずる日(以下この条及び次条において「効力発生日」という。)の二十日前までに、同項各号に定める株式の株主に対し、当該行為をする旨を通知しなければならない。
4前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。
5第一項の規定による請求(以下この節において「株式買取請求」という。)は、効力発生日の二十日前の日から効力発生日の前日までの間に、その株式買取請求に係る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない。
6株券が発行されている株式について株式買取請求をしようとするときは、当該株式の株主は、株式会社に対し、当該株式に係る株券を提出しなければならない。ただし、当該株券について第二百二十三条の規定による請求をした者については、この限りでない。
7株式買取請求をした株主は、株式会社の承諾を得た場合に限り、その株式買取請求を撤回することができる。
8株式会社が第一項各号の行為を中止したときは、株式買取請求は、その効力を失う。
9第百三十三条の規定は、株式買取請求に係る株式については、適用しない。
1株式買取請求があった場合において、株式の価格の決定について、株主と株式会社との間に協議が調ったときは、株式会社は、効力発生日から六十日以内にその支払をしなければならない。
2株式の価格の決定について、効力発生日から三十日以内に協議が調わないときは、株主又は株式会社は、その期間の満了の日後三十日以内に、裁判所に対し、価格の決定の申立てをすることができる。
3前条第七項の規定にかかわらず、前項に規定する場合において、効力発生日から六十日以内に同項の申立てがないときは、その期間の満了後は、株主は、いつでも、株式買取請求を撤回することができる。
4株式会社は、裁判所の決定した価格に対する第一項の期間の満了の日後の法定利率による利息をも支払わなければならない。
5株式会社は、株式の価格の決定があるまでは、株主に対し、当該株式会社が公正な価格と認める額を支払うことができる。
6株式買取請求に係る株式の買取りは、効力発生日に、その効力を生ずる。
7株券発行会社(その株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨の定款の定めがある株式会社をいう。以下同じ。)は、株券が発行されている株式について株式買取請求があったときは、株券と引換えに、その株式買取請求に係る株式の代金を支払わなければならない。
1次の各号に掲げる定款の変更をする場合には、当該各号に定める新株予約権の新株予約権者は、株式会社に対し、自己の有する新株予約権を公正な価格で買い取ることを請求することができる。
一 その発行する全部の株式の内容として第百七条第一項第一号に掲げる事項についての定めを設ける定款の変更 全部の新株予約権
二 ある種類の株式の内容として第百八条第一項第四号又は第七号に掲げる事項についての定款の定めを設ける定款の変更 当該種類の株式を目的とする新株予約権
2新株予約権付社債に付された新株予約権の新株予約権者は、前項の規定による請求(以下この節において「新株予約権買取請求」という。)をするときは、併せて、新株予約権付社債についての社債を買い取ることを請求しなければならない。ただし、当該新株予約権付社債に付された新株予約権について別段の定めがある場合は、この限りでない。
3第一項各号に掲げる定款の変更をしようとする株式会社は、当該定款の変更が効力を生ずる日(以下この条及び次条において「定款変更日」という。)の二十日前までに、同項各号に定める新株予約権の新株予約権者に対し、当該定款の変更を行う旨を通知しなければならない。
4前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。
5新株予約権買取請求は、定款変更日の二十日前の日から定款変更日の前日までの間に、その新株予約権買取請求に係る新株予約権の内容及び数を明らかにしてしなければならない。
6新株予約権証券が発行されている新株予約権について新株予約権買取請求をしようとするときは、当該新株予約権の新株予約権者は、株式会社に対し、その新株予約権証券を提出しなければならない。ただし、当該新株予約権証券について非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)第百十四条に規定する公示催告の申立てをした者については、この限りでない。
7新株予約権付社債券(第二百四十九条第二号に規定する新株予約権付社債券をいう。以下この項及び次条第八項において同じ。)が発行されている新株予約権付社債に付された新株予約権について新株予約権買取請求をしようとするときは、当該新株予約権の新株予約権者は、株式会社に対し、その新株予約権付社債券を提出しなければならない。ただし、当該新株予約権付社債券について非訟事件手続法第百十四条に規定する公示催告の申立てをした者については、この限りでない。
8新株予約権買取請求をした新株予約権者は、株式会社の承諾を得た場合に限り、その新株予約権買取請求を撤回することができる。
9株式会社が第一項各号に掲げる定款の変更を中止したときは、新株予約権買取請求は、その効力を失う。
10第二百六十条の規定は、新株予約権買取請求に係る新株予約権については、適用しない。
1新株予約権買取請求があった場合において、新株予約権(当該新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合において、当該新株予約権付社債についての社債の買取りの請求があったときは、当該社債を含む。以下この条において同じ。)の価格の決定について、新株予約権者と株式会社との間に協議が調ったときは、株式会社は、定款変更日から六十日以内にその支払をしなければならない。
2新株予約権の価格の決定について、定款変更日から三十日以内に協議が調わないときは、新株予約権者又は株式会社は、その期間の満了の日後三十日以内に、裁判所に対し、価格の決定の申立てをすることができる。
3前条第八項の規定にかかわらず、前項に規定する場合において、定款変更日から六十日以内に同項の申立てがないときは、その期間の満了後は、新株予約権者は、いつでも、新株予約権買取請求を撤回することができる。
4株式会社は、裁判所の決定した価格に対する第一項の期間の満了の日後の法定利率による利息をも支払わなければならない。
5株式会社は、新株予約権の価格の決定があるまでは、新株予約権者に対し、当該株式会社が公正な価格と認める額を支払うことができる。
6新株予約権買取請求に係る新株予約権の買取りは、定款変更日に、その効力を生ずる。
7株式会社は、新株予約権証券が発行されている新株予約権について新株予約権買取請求があったときは、新株予約権証券と引換えに、その新株予約権買取請求に係る新株予約権の代金を支払わなければならない。
8株式会社は、新株予約権付社債券が発行されている新株予約権付社債に付された新株予約権について新株予約権買取請求があったときは、その新株予約権付社債券と引換えに、その新株予約権買取請求に係る新株予約権の代金を支払わなければならない。
1株式会社は、何人に対しても、株主の権利、当該株式会社に係る適格旧株主(第八百四十七条の二第九項に規定する適格旧株主をいう。)の権利又は当該株式会社の最終完全親会社等(第八百四十七条の三第一項に規定する最終完全親会社等をいう。)の株主の権利の行使に関し、財産上の利益の供与(当該株式会社又はその子会社の計算においてするものに限る。以下この条において同じ。)をしてはならない。
2株式会社が特定の株主に対して無償で財産上の利益の供与をしたときは、当該株式会社は、株主の権利の行使に関し、財産上の利益の供与をしたものと推定する。株式会社が特定の株主に対して有償で財産上の利益の供与をした場合において、当該株式会社又はその子会社の受けた利益が当該財産上の利益に比して著しく少ないときも、同様とする。
3株式会社が第一項の規定に違反して財産上の利益の供与をしたときは、当該利益の供与を受けた者は、これを当該株式会社又はその子会社に返還しなければならない。この場合において、当該利益の供与を受けた者は、当該株式会社又はその子会社に対して当該利益と引換えに給付をしたものがあるときは、その返還を受けることができる。
4株式会社が第一項の規定に違反して財産上の利益の供与をしたときは、当該利益の供与をすることに関与した取締役(指名委員会等設置会社にあっては、執行役を含む。以下この項において同じ。)として法務省令で定める者は、当該株式会社に対して、連帯して、供与した利益の価額に相当する額を支払う義務を負う。ただし、その者(当該利益の供与をした取締役を除く。)がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。
5前項の義務は、総株主の同意がなければ、免除することができない。