1設立時取締役(設立しようとする株式会社が監査役設置会社である場合にあっては、設立時取締役及び設立時監査役。以下この条において同じ。)は、その選任後遅滞なく、次に掲げる事項を調査しなければならない。
一 第三十三条第十項第一号又は第二号に掲げる場合における現物出資財産等(同号に掲げる場合にあっては、同号の有価証券に限る。)について定款に記載され、又は記録された価額が相当であること。
二 第三十三条第十項第三号に規定する証明が相当であること。
三 発起人による出資の履行及び第六十三条第一項の規定による払込みが完了していること。
四 前三号に掲げる事項のほか、株式会社の設立の手続が法令又は定款に違反していないこと。
2設立時取締役は、前項の規定による調査の結果を創立総会に報告しなければならない。
3設立時取締役は、創立総会において、設立時株主から第一項の規定による調査に関する事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならない。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「正しい」。誤っているものを選ぶ本問では、正解肢になりません。
根拠条文は会社法369条2項です。同項は「前項の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない」と定めており、この肢はその文言どおりです。同条1項は、取締役会の決議が「議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う」と定めていますので、特別利害関係取締役は定足数の計算からも除外されることになります。この点は重要で、除外した結果として残りの取締役だけで定足数・議決要件を満たせばよいことになります。
理由づけとして、なぜ株主総会と扱いが異なるのかを押さえましょう。株主は自己の利益のために議決権を行使することが原則として許されており、特別利害関係を有する株主も議決権を行使できます(その結果著しく不当な決議がされた場合に決議取消事由となるにとどまります。会社法831条1項3号)。これに対し取締役は会社に対して善管注意義務・忠実義務を負い、会社の利益のためにのみ職務を行うべき立場にあるため、自己の利益と会社の利益が衝突する事項については、はじめから議決から排除するのが適切なのです。
ひっかけポイントは、どのような場合が「特別の利害関係」に当たるかです。判例は、代表取締役の解職決議において解職の対象となる当該代表取締役は特別の利害関係を有する取締役に当たるとしています(最判昭和44年3月28日)。会社支配の争いの場面で問われやすい重要判例です。他方、代表取締役の選定決議において候補者となる取締役は、特別利害関係人には当たらないと解されています。また、競業取引・利益相反取引の承認決議における当該取引の当事者である取締役、譲渡制限株式の譲渡承認決議における譲渡当事者である取締役なども特別利害関係人に当たります。
関連知識として、特別利害関係取締役が議決に加わった場合の効果も確認しましょう。その決議は原則として無効となりますが、当該取締役を除外しても決議の結果に影響がないと認められる特段の事情があるときは、決議は有効と解する余地があるとされています。また、取締役会の決議に瑕疵がある場合、株主総会決議のような取消しの訴えの制度はなく、一般原則により誰でもいつでも決議の無効を主張できる点も、株主総会との重要な相違点です。さらに、取締役会の決議に参加した取締役であって議事録に異議をとどめないものは決議に賛成したものと推定される(会社法369条5項)ため、反対する取締役は議事録に異議を明記しておくことが実務上不可欠です。
結論:この肢は「誤り」。本問は誤っているものを選ぶ問題ですから、この肢が正解肢です。
根拠条文は会社法369条5項です。同項は「取締役会の決議に参加した取締役であって第三項の議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する」と定めています。条文が定めているのは「推定する」であって「みなす」ではありません。この肢は法的効果を推定からみなしに置き換えている点で誤りです。
理由づけとして、推定とみなしの違いを正確に押さえましょう。「推定する」とは、反対の事実を主張立証すれば効果を覆すことができる暫定的な扱いです。これに対し「みなす」とは、反証を許さず法律上その効果を確定させるものです。取締役会決議に賛成した取締役は、その決議に基づく行為によって会社に損害が生じた場合に任務懈怠責任を追及されうる立場に立ちますから(会社法423条1項。なお利益相反取引については同条3項3号が承認決議に賛成した取締役の任務懈怠を推定します)、賛否は責任の有無に直結します。もし反証の余地なく賛成とみなされてしまうと、実際には反対したのに議事録の記載漏れだけで責任を負わされるという不当な結果になりかねません。そこで会社法は、議事録という書証の外形を尊重しつつ、他の証拠によって反対の事実を証明する余地を残したのです。
ひっかけポイントは、まさにこの「推定」と「みなす」の入替えです。会社法の条文には両方の表現が混在しており、たとえば会社法423条2項・3項は「推定する」、会社法103条4項の擬似発起人は「発起人とみなして」、会社法370条の書面決議は「取締役会の決議があったものとみなす」と規定しています。条文を読む際には語尾まで意識する習慣をつけてください。
もう一つの注意点は、推定が及ぶのは「決議に参加した取締役」に限られることです。取締役会を欠席した取締役には、この推定は及びません。したがって、欠席取締役に責任を問うには、監視義務違反など別の構成が必要になります。また、議事録には出席した取締役および監査役が署名または記名押印しなければならず(会社法369条3項)、電磁的記録で作成された場合は電子署名によります(同条4項)。議事録は本店に10年間備え置かれ(会社法371条1項)、株主は権利行使のため必要があるときは、原則として裁判所の許可を得て閲覧謄写を請求できます(同条2項・3項。監査役設置会社等の場合)。
関連知識として、会社法370条の決議の省略(書面決議)も押さえましょう。取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき議決に加わることができる取締役の全員が書面または電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監査役設置会社では監査役が異議を述べたときを除く)は、定款に定めがあることを条件として、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなされます。こちらは「みなす」であり、本肢との対比が有効です。