この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
この条文の過去問 1肢
結論:この肢は「誤り」。
株主総会における議決権の行使に、6か月の継続保有要件は課されていません。会社法308条1項は、株主は株主総会において、その有する株式1株につき1個の議決権を有すると定めるだけで、保有期間による制限を置いていないからです。議決権は株式に当然に付着する共益権の中核であり、株式を取得した瞬間から行使できるのが原則です。
株主総会で誰が議決権を行使できるかを画するのは、保有期間ではなく基準日の制度です。会社法124条1項は、会社が一定の日(基準日)を定めて、その日に株主名簿に記載・記録されている株主を権利行使できる者と定めることができるとし、同条2項は基準日から権利行使日までを3か月以内としなければならないと定めます。上場会社が3月期決算で6月に定時株主総会を開く場合、3月31日を基準日とするのはこの規定によるものです。したがって、基準日の直前に株式を取得した株主であっても、基準日時点で株主名簿上の株主であれば議決権を行使できます。6か月間持っていなければならないという要件はどこにもありません。
理由づけとしては、議決権が株主の最も基本的な権利であることが挙げられます。6か月の継続保有要件は、権利行使のためだけに株式を取得して会社を攪乱する濫用的な行為を防ぐために、一部の監督是正権について例外的に課されるものです。議決権のような基本的な自益権・共益権にまでこれを及ぼせば、株式の自由譲渡性(127条)を実質的に損なうことになります。
ひっかけポイントは、基準日の「3か月以内」と継続保有要件の「6か月」を混同させる点です。数字が近いだけに、どの制度の何の期間なのかを正確に区別してください。なお、単元株制度を採用している会社では単元未満株式に議決権がありませんが(189条1項)、これは保有期間ではなく保有株式数による制限です。本問の正解は、株主代表訴訟(責任追及等の訴え)を挙げる肢5です。
附則第二条から第八条まで及び前条に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)は、政令で定める。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「誤り」。
会計帳簿の閲覧謄写請求権に、6か月の継続保有要件はありません。会社法433条1項は、総株主の議決権の100分の3以上の議決権を有する株主、または発行済株式(自己株式を除く)の100分の3以上の数の株式を有する株主は、会社の営業時間内はいつでも、会計帳簿またはこれに関する資料の閲覧または謄写の請求をすることができると定めています。定款でこの割合を引き下げることは可能ですが、条文が課しているのは持株要件(3%以上)だけであり、保有期間の要件は規定されていません。
この請求をするときは、請求の理由を明らかにしてしなければならず(433条1項後段)、会社は同条2項各号に該当する事由があるときは拒絶できます。拒絶事由には、請求者が権利の確保・行使に関する調査以外の目的で請求したとき(1号)、会社の業務を妨げ株主共同の利益を害する目的で請求したとき(2号)、請求者が会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営みまたはこれに従事するものであるとき(3号)などがあります。3号については、主観的な加害意図や競業に利用する目的がなくても拒絶事由に当たるとするのが判例です(最決平成21年1月15日)。濫用的な請求は、保有期間ではなくこの拒絶事由によってコントロールされている、という構造を理解しておいてください。
ひっかけポイントは、同じ3%要件の他の少数株主権との対比です。たとえば株主総会の招集請求権について、会社法297条1項は、総株主の議決権の100分の3以上の議決権を有する株主に請求を認めたうえで、公開会社ではその議決権を6か月前から引き続き有することを要求しています(公開会社でない株式会社では、同条2項によりこの期間要件は課されません)。これに対し、会計帳簿閲覧請求権(433条)や、業務財産状況調査のための検査役選任の申立て(358条1項)には、3%の持株要件はあっても保有期間の要件はありません。同じ3%の少数株主権でも期間要件の有無が分かれる、この振り分けが問われるのです。
さらに、株主総会招集請求権(297条)、株主提案権(303条2項・305条1項)、取締役の違法行為差止請求権(360条)、役員解任の訴え(854条)などには公開会社について6か月の継続保有要件がある一方、会計帳簿閲覧請求権、定款・株主名簿・議事録の閲覧請求権、各種の会社の組織に関する訴えの提起には期間要件がありません。この振り分けを一覧で整理しておくと、本問のような出題に強くなれます。
結論:この肢は「誤り」。
新株発行無効の訴え(会社法828条1項2号にいう「株式会社の成立後における株式の発行の無効の訴え」)の提訴権者に、6か月の継続保有要件はありません。会社法828条2項2号は、この訴えを提起できる者を、当該株式会社の株主等(株主、取締役または清算人。監査役設置会社では監査役、指名委員会等設置会社では執行役を含む。828条2項1号かっこ書参照)と定めるのみで、株式の保有期間による制限を置いていないからです。新株発行後に株主となった者でも提訴できます。
むしろこの訴えで重要なのは提訴期間の制限です。会社法828条1項2号は、株式の発行の効力が生じた日から6か月以内(公開会社でない株式会社にあっては1年以内)に訴えを提起しなければならないと定めています。ここに「6か月」という数字が登場するため、本問のような出題では継続保有要件と取り違えやすいのですが、これは権利行使者の資格要件ではなく、法律関係の早期安定のための出訴期間です。
新株発行無効の訴えの関連知識も押さえておきましょう。無効判決には対世効があり(838条)、遡及効はありません(839条)。すなわち将来に向かってのみ無効となり、会社は払込みを受けた金額を株主に返還します(840条1項)。無効原因は狭く解されており、判例は、公開会社において取締役会決議を欠く新株発行や、代表取締役が権限なく行った新株発行も原則として無効原因とならないとしつつ(最判昭和36年3月31日など)、株主への通知・公告を欠いたために差止めの機会が奪われた場合には無効原因になるとしています(最判平成9年1月28日)。また、新株発行の差止請求(210条)は単独株主権であり、これにも保有期間要件はありません。
ひっかけポイントは、繰り返しになりますが「6か月」という数字の使われ方です。828条の6か月は出訴期間、847条の6か月は継続保有期間です。数字だけを手掛かりに選ばず、条文がその期間を何のために設けているのかまで意識して覚えてください。本問の正解は肢5です。