1株式会社の成立の時における現物出資財産等の価額が当該現物出資財産等について定款に記載され、又は記録された価額(定款の変更があった場合にあっては、変更後の価額)に著しく不足するときは、発起人及び設立時取締役は、当該株式会社に対し、連帯して、当該不足額を支払う義務を負う。
2前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、発起人(第二十八条第一号の財産を給付した者又は同条第二号の財産の譲渡人を除く。第二号において同じ。)及び設立時取締役は、現物出資財産等について同項の義務を負わない。
一 第二十八条第一号又は第二号に掲げる事項について第三十三条第二項の検査役の調査を経た場合
二 当該発起人又は設立時取締役がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合
3第一項に規定する場合には、第三十三条第十項第三号に規定する証明をした者(以下この項において「証明者」という。)は、第一項の義務を負う者と連帯して、同項の不足額を支払う義務を負う。ただし、当該証明者が当該証明をするについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。
この条文の過去問 1肢
結論:この肢は「正しい」。
根拠は商法18条の2第1項(詐害営業譲渡に係る譲受人に対する債務の履行の請求)です。同項は「譲渡人が譲受人に承継されない債務の債権者(残存債権者)を害することを知って営業を譲渡した場合には、残存債権者は、その譲受人に対して、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる。ただし、その譲受人が営業の譲渡の効力が生じた時において残存債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない」と定めています。
本肢を要件にあてはめます。丙は「乙に承継されない債務の債権者」=残存債権者にあたります。譲渡人である甲は丙を害することを知って営業を譲渡しています。そして譲受人である乙も害することを知っていたのですから、ただし書の善意の譲受人にはあたりません。効果も「甲から承継した財産の価額を限度として」履行請求できるという条文どおりの表現です。したがって本肢は条文に完全に合致しており、正しい記述です。
趣旨は、営業譲渡の形式をとって優良資産だけを譲受人に移し、負債を譲渡人に残して債権者を害する「濫用的営業譲渡」への対処です。従来は民法の詐害行為取消権(民法424条)や法人格否認の法理で処理するほかありませんでしたが、平成26年改正で商法18条の2(会社の事業譲渡につき会社法22条の2)が新設され、債権者が譲受人に直接履行請求できる簡明なルートが用意されました。
ひっかけポイントを三つ挙げます。第一に、条文は譲渡が「無償」であることを要件としていません。本肢の「無償で」は詐害性を基礎づける事情にすぎず、有償の営業譲渡でも詐害性が認められれば同項は適用されます。「無償の場合に限る」と書かれていたら誤りです。第二に、責任の限度は「承継した財産の価額」であり、債務全額ではありません。第三に期間制限で、18条の2第2項は、譲渡人が残存債権者を害することを知って営業を譲渡したことを残存債権者が知った時から2年以内に請求または請求の予告をしないとその期間経過時に責任が消滅し、営業譲渡の効力発生日から10年を経過したときも同様と定めます。さらに3項により、譲渡人について破産手続開始決定または再生手続開始決定があったときは、残存債権者はこの請求権を行使できません(否認権による集団的処理に委ねる趣旨)。