この法律は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
この法律による改正後の会社法(以下「新会社法」という。)の規定(罰則を除く。)は、この附則に特別の定めがある場合を除き、この法律の施行の日(以下「施行日」という。)前に生じた事項にも適用する。ただし、この法律による改正前の会社法(以下「旧会社法」という。)の規定によって生じた効力を妨げない。
1この法律の施行の際現に委員会設置会社(旧会社法第二条第十二号に規定する委員会設置会社をいう。次項において同じ。)である株式会社又は施行日前に旧会社法第三十条第一項の規定による定款(同号に規定する委員会を置く旨の定めがあるものに限る。)の認証を受け、この法律の施行後に成立する株式会社の定款には、新会社法第二条第十二号に規定する指名委員会等を置く旨の定めがあるものとみなす。
2旧会社法の規定による委員会設置会社の登記は、新会社法第九百十一条第三項第二十三号に掲げる事項の登記とみなす。
この法律の施行の際現に旧会社法第二条第十五号に規定する社外取締役又は同条第十六号に規定する社外監査役を置く株式会社の社外取締役又は社外監査役については、この法律の施行後最初に終了する事業年度に関する定時株主総会の終結の時までは、新会社法第二条第十五号又は第十六号の規定にかかわらず、なお従前の例による。
1施行日前に会社の他の会社に対する事業の譲渡に係る契約が締結された場合におけるその事業の譲渡については、新会社法第二十三条の二の規定は、適用しない。
2施行日前に会社の商人(会社を除く。以下この項において同じ。)に対する事業の譲渡又は商人の営業の譲受けに係る契約が締結された場合におけるその事業の譲渡又は営業の譲受けについては、新会社法第二十四条の規定にかかわらず、なお従前の例による。
施行日前に旧会社法第三十条第一項の認証を受けた定款に係る株式会社の設立に際して発行する設立時発行株式については、新会社法第五十二条の二、第百二条第三項及び第四項、第百二条の二並びに第百三条第二項及び第三項の規定は、適用しない。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「正しい」。
本問は「誤っているもの」を選ぶ問題ですから、正しい記述である本肢は正解肢ではありません。
根拠条文は会社法107条1項1号と108条1項4号です。107条1項1号は、株式会社は「その発行する全部の株式の内容として」、譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨を定款で定めることができるとしています。他方、108条1項4号は、内容の異なる二以上の種類の株式を発行する場合に、その一部の種類の株式についてのみ譲渡制限を付すことも認めています。つまり、全部の株式に一律に付す方法と、種類株式の内容として一部に付す方法の両方があるわけで、本肢はこの両方を正確に述べています。
理由づけとしては、株式は本来自由に譲渡できるのが原則(会社法127条)ですが、中小の同族会社などでは、望まない者が株主として経営に参加してくることを防ぐ必要があります。そこで会社法は、定款自治により譲渡による取得に会社の承認を要する仕組みを認めました。発行する全部の株式が譲渡制限株式である会社は「公開会社でない会社」(非公開会社。2条5号の反対解釈)となり、取締役の任期を10年まで伸長できる(332条2項)、総株主の半数以上であって総株主の議決権の4分の3以上に当たる多数による特殊決議を経て株主ごとに異なる取扱いをする属人的な定めを置ける(109条2項、309条4項)、募集株式の発行を原則として株主総会特別決議で行う(199条2項、309条2項5号)など、多くの規律が公開会社と異なってきます。
ひっかけポイントは、定款変更によって既存の株式に譲渡制限を新たに付す場合の決議要件です。この定款変更は株主の投下資本回収の機会を制約するため、通常の特別決議ではなく、議決権を行使できる株主の半数以上であって当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数による特殊決議が必要とされ(309条3項1号)、反対株主には株式買取請求権が認められます(116条1項1号)。設定の場面と、すでに設定済みの株式を譲渡する場面を混同しないようにしてください。
結論:この肢は「正しい」。
会社法136条は「譲渡制限株式の株主は、その有する譲渡制限株式を他人(当該譲渡制限株式を発行した株式会社を除く。)に譲り渡そうとするときは、当該株式会社に対し、当該他人が当該譲渡制限株式を取得することについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができる」と定めています。本肢はこの条文をそのまま述べたもので、正しい記述です。
理由づけとしては、譲渡制限株式であっても株主の投下資本回収の途を完全に塞ぐことは許されないため、会社法は、譲渡前にあらかじめ会社の意思を確認できる手続(事前の譲渡等承認請求)を株主に保障しました。会社が承認しない旨を決定した場合でも、株主が請求の際に「承認しないときは会社または指定買取人が買い取ることを請求する」旨を併せて求めていれば(138条1号ハ)、会社は自ら買い取るか(140条1項、株主総会特別決議。309条2項1号)、指定買取人を指定しなければなりません(140条4項)。これにより株主は換価の機会を確保できます。
ひっかけポイントは二つあります。第一に、条文の括弧書のとおり、譲渡の相手方が発行会社自身である場合は136条の対象外です。会社が自社株を取得するのは自己株式の取得の問題であり、155条以下の財源規制・手続規制に服します。第二に、会社が譲渡等承認請求の日から2週間(定款で短縮可)以内に承認・不承認の通知をしないときは、承認する旨の決定をしたものとみなされます(145条1号)。また、会社が不承認の通知をしたにもかかわらず、通知の日から40日以内に買取通知をしないときも承認とみなされます(145条2号)。期間の数字は頻出です。
施行日前に公開会社でない株式会社が公開会社となる旨の定款の変更に係る決議をするための株主総会の招集手続が開始された場合におけるその定款の変更後の発行可能株式総数については、新会社法第百十三条第三項の規定にかかわらず、なお従前の例による。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「正しい」。
会社法137条1項は、譲渡制限株式を取得した株式取得者は、株式会社に対し、当該譲渡制限株式を取得したことについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができると定めます。そして同条2項は、この請求は、利害関係人の利益を害するおそれがないものとして法務省令(会社法施行規則24条)で定める場合を除き、その取得した株式の株主として株主名簿に記載・記録された者またはその一般承継人と共同してしなければならないと定めています。本肢はこの内容を正確に述べており、正しい記述です。
理由づけは、なりすまし防止です。株式取得者が単独で「私はこの株式を取得した」と請求できてしまうと、実際には譲渡を受けていない者が名義書換の前段階の手続を悪用し、真の株主の地位を害するおそれがあります。そこで、原則として名簿上の株主との共同請求を要求し、譲渡の事実に争いがないことを担保しているのです。名義書換請求について共同請求を要求する133条2項と同じ発想です。共同請求が不要となる例外としては、株式取得者が確定判決を得た場合や、一般承継により株式を取得した場合などが施行規則24条に定められています。
ひっかけポイントは、136条の請求(譲渡しようとする株主による事前の請求)と137条の請求(すでに取得した者による事後の請求)の区別です。前者は譲渡人が単独でできますが、後者は原則として共同請求が必要です。また、いずれの請求も「譲渡等承認請求」として138条に定める事項を明らかにしてしなければならず、買取請求を併せてする場合には対象株式の数などを明示する必要があります。なお、会社の承認を欠く譲渡制限株式の譲渡は、判例上、会社との関係では効力を生じないものの、譲渡当事者間では有効と解されています(最判昭和48年6月15日)。
結論:この肢は「誤り」。
本問は「誤っているもの」を選ぶ問題ですから、本肢が正解です。誤りは二点あります。承認機関を一律に「株主総会」としている点と、決議要件を「特別決議」としている点です。
会社法139条1項は「株式会社が第136条又は第137条第1項の承認をするか否かの決定をするには、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない」と定めています。つまり、取締役会設置会社では取締役会が承認機関となるのが原則であり、株主総会が承認機関となるのは取締役会を設置していない会社の場合です。さらに、ここでいう株主総会の決議は普通決議で足ります。譲渡の承認は会社法309条2項が列挙する特別決議事項に含まれていませんから、特別決議は不要です。
理由づけとしては、譲渡承認は会社の日常的な業務判断に近く、機動的な処理が求められるため、取締役会設置会社では取締役会に委ねるのが合理的だからです。また、定款で別段の定めを置けば、代表取締役の決定に委ねることも可能と解されています。中小企業では「代表取締役の承認による」といった定款規定が置かれることも珍しくありません。
ひっかけポイントとして、譲渡承認手続の中で「特別決議」が要求される場面と混同しないでください。会社が承認せず、会社自身が対象株式を買い取る旨を決定する場合には、株主総会の特別決議が必要です(140条2項、309条2項1号)。このとき、譲渡等承認請求をした株主は原則としてその総会で議決権を行使できません(140条3項)。他方、指定買取人の指定は、定款に別段の定めがない限り、株主総会特別決議(取締役会設置会社では取締役会決議)によります(140条4項・5項)。「承認するか否かの決定=普通決議または取締役会決議」「会社が買い取る決定=特別決議」と整理しておきましょう。
施行日前に旧会社法第百十六条第一項各号の行為に係る決議をするための株主総会の招集手続が開始された場合(同項各号の行為をするために株主総会の決議を要しない場合にあっては、当該行為に係る取締役会の決議又は取締役若しくは執行役の決定が行われたとき)におけるその行為に係る株式買取請求については、なお従前の例による。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「正しい」。
会社法174条は「株式会社は、相続その他の一般承継により当該株式会社の株式(譲渡制限株式に限る。)を取得した者に対し、当該株式を当該株式会社に売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めることができる」と規定しています。本肢はこの条文をそのまま述べたもので、正しい記述です。
理由づけとしては、譲渡制限は「譲渡による取得」を対象とするため、相続や合併といった一般承継による株式の移転には承認手続が及びません。その結果、会社にとって望ましくない相続人が当然に株主となってしまい、閉鎖的な人的信頼関係を基礎とする会社の運営が困難になるおそれがあります。そこで会社法は、定款に定めを置くことを条件として、会社の側から売渡しを請求できる制度(相続人等に対する売渡請求)を用意しました。
手続としては、請求のたびに株主総会の特別決議で、請求する株式の数と相続人等の氏名・名称を定めなければならず(175条1項、309条2項3号)、この決議では対象となる相続人等は原則として議決権を行使できません(175条2項)。また、請求は相続その他の一般承継があったことを知った日から1年以内に限られます(176条1項ただし書)。売買価格は当事者の協議によりますが、協議が調わないときは、請求があった日から20日以内に裁判所に価格決定の申立てをすることができます(177条2項)。さらに、この売渡請求は自己株式の取得ですから、財源規制が及び、分配可能額を超えて対価を交付することはできません(461条1項5号)。
ひっかけポイントは、この制度が相続人による会社支配の防止に有効な反面、相続人側の議決権が排除される結果、少数派株主が相続を機に会社を乗っ取る「クーデター」に使われうる点です。定款に定めを置くかどうかは慎重な検討を要します。試験対策としては、対象が譲渡制限株式に限られること、そのつど特別決議が必要なこと、1年の期間制限があることの三点を押さえてください。
結論:この肢は「正しい」。
本問は「誤っているもの」を選ぶ問題ですから、正しい記述である本肢は正解肢ではありません。
根拠は会社法2条15号の社外取締役の定義規定です。同号イは、株式会社の取締役であって「当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役(会社法363条1項各号に掲げる取締役及び当該株式会社の業務を執行したその他の取締役をいう。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人でなく、かつ、その就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと」を要件としています。現に業務執行取締役等の地位にある者は社外取締役たりえない以上、社外取締役が当該会社またはその子会社の業務執行取締役・執行役・支配人その他の使用人を兼ねることはできません。よって本肢は正しい記述です。
理由づけとしては、社外取締役制度の趣旨が、業務執行から距離を置いた立場から経営を監督し、経営陣と会社・株主との利益相反を抑止することにあるからです。自ら業務を執行する者が同時に自分を監督するのでは、制度が空洞化してしまいます。
ひっかけポイントとして、2条15号は平成26年改正で要件が大きく組み替えられたことを押さえておきましょう。改正前は「過去に一度でも当該会社の業務執行取締役等であったことがない」という無期限の要件でしたが、改正後は「就任の前10年間」というクーリングオフ期間方式になり(同号イ・ロ)、他方で、親会社等の関係者(同号ハ)、兄弟会社の業務執行者(同号ニ)、当該会社の取締役・執行役・支配人その他の重要な使用人または親会社等の配偶者・二親等内の親族(同号ホ)が新たに社外性を否定する事由として追加されました。近親者要件が加わった点は出題されやすいところです。なお、社外監査役の定義(2条16号)も同様の構造をとっており、あわせて確認しておくと効率的です。
施行日前に旧会社法第百十八条第一項各号に掲げる定款の変更に係る決議をするための株主総会の招集手続が開始された場合におけるその定款の変更に係る新株予約権買取請求については、なお従前の例による。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「正しい」。
会社法331条6項は「監査等委員会設置会社においては、監査等委員である取締役は、3人以上で、その過半数は、社外取締役でなければならない」と定めています。本肢はこのうち社外取締役の割合に関する部分を述べたもので、正しい記述です。
理由づけとしては、監査等委員会設置会社は、監査役を置かず(327条4項)、取締役会の内部機関である監査等委員会が監査・監督機能を担う機関設計です。監査役会の場合に半数以上を社外監査役とする(335条3項)のと同様、あるいはそれ以上に、監査を担う委員の独立性を確保する必要があります。そこで、監査等委員である取締役は3人以上でその過半数を社外取締役とすることが要求されています。
関連知識として、監査等委員である取締役はそれ以外の取締役と区別して株主総会で選任され(329条2項)、任期は2年でこれを短縮することができません(332条1項・4項。他の取締役は1年)。また、監査等委員である取締役の解任は株主総会の特別決議によります(309条2項7号)。監査等委員は当該会社またはその子会社の業務執行取締役・支配人その他の使用人を兼ねることができません(331条3項)。
ひっかけポイントは、指名委員会等設置会社との数字の混同です。指名委員会等設置会社では、指名委員会・監査委員会・報酬委員会の各委員会は3人以上の取締役で構成され、その過半数が社外取締役でなければなりません(400条1項・3項)。「3人以上・過半数が社外」という点は共通ですが、監査等委員会設置会社は委員会が一つだけである点、監査等委員である取締役が株主総会で別枠選任される点が異なります。なお、監査役会設置会社の社外監査役は「半数以上」(過半数ではない)であることも、よく問われる差異です。
結論:この肢は「誤り」。
本問は「誤っているもの」を選ぶ問題ですから、本肢が正解です。ただし、出題当時(2018年)と現在とでは誤りとなる理由が変わっているため、両方を押さえてください。
出題当時の会社法327条の2は、事業年度の末日において監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る)であって金融商品取引法24条1項により有価証券報告書を提出しなければならないものが社外取締役を置いていない場合には、取締役は、当該事業年度に関する定時株主総会において「社外取締役を置くことが相当でない理由」を説明しなければならない、と定めていました。いわゆるコンプライ・オア・エクスプレイン(遵守せよ、さもなくば説明せよ)の規律であり、社外取締役の選任そのものは義務づけられていませんでした。したがって「選任しなければならない」とする本肢は、当時の法状態に照らして誤りでした。
もっとも、令和元年(2019年)の会社法改正(令和3年3月1日施行)により327条の2は改められ、現在は「監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る。)であって金融商品取引法第24条第1項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものは、社外取締役を置かなければならない」とされ、社外取締役の設置が義務化されています。しかし、義務の対象は「有価証券報告書提出会社」に限られます。本肢は「公開会社であり、かつ、大会社である監査役会設置会社」であればすべて義務があるかのように述べており、有価証券報告書提出会社という限定を欠いています。したがって現行法(2026年時点)を基準としても、本肢は誤りです。
ひっかけポイントは、会社法上の「公開会社」(2条5号。発行する全部または一部の株式に譲渡制限がない会社)と、上場会社・有価証券報告書提出会社とは別概念だという点です。非上場でも公開会社に当たる会社は多数あり、それらには327条の2の義務は及びません。なお、指名委員会等設置会社(400条3項)および監査等委員会設置会社(331条6項)では、機関設計上当然に社外取締役が必要となる点と区別して整理しておきましょう。
施行日前に旧会社法第百七十一条第一項の決議をするための株主総会の招集手続が開始された場合におけるその全部取得条項付種類株式の取得については、なお従前の例による。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「正しい」。
会社法911条3項21号は、株式会社の設立の登記事項として、特別取締役による議決の定めがあるときは、イ「特別取締役による議決の定めがある旨」、ロ「特別取締役の氏名」、ハ「取締役のうち社外取締役であるものについて、社外取締役である旨」を掲げています。登記事項に変更が生じたときは2週間以内に変更の登記をしなければなりません(915条1項)。本肢はこの登記事項を正確に述べており、正しい記述です。
特別取締役の制度は、取締役会設置会社であって取締役が6人以上おり、そのうち1人以上が社外取締役である会社において、あらかじめ選定した3人以上の特別取締役のうち議決に加わることができるものの過半数が出席し、その過半数をもって、重要な財産の処分・譲受けおよび多額の借財(362条4項1号・2号)を決定できるとするものです(373条1項)。大規模な会社で、機動的な意思決定を可能にするための仕組みです。
理由づけとしては、特別取締役による議決は取締役会の権限の一部を少人数に委ねる例外的な仕組みであり、その存在と構成メンバーは会社と取引する第三者にとって重要な情報です。また、社外取締役が1人以上いることが制度の前提要件になっているため(373条1項2号)、誰が社外取締役であるかも公示させる必要があります。本肢が社外取締役である旨の登記に触れているのは、この要件と結びついているからです。
ひっかけポイントとして、社外取締役である旨の登記が要求される場面は限られている点に注意してください。特別取締役による議決の定めがある会社のほか、監査等委員会設置会社(911条3項22号ロ)や指名委員会等設置会社(同項23号ロ)でも社外取締役である旨が登記事項とされていますが、単に社外取締役を任意に置いているだけの会社では、社外である旨は登記事項ではありません。また、特別取締役は「選定」であり、株主総会で選任されるわけではなく、取締役会の決議で選定される点も押さえておきましょう。
結論:この肢は「正しい」。
会社法427条1項は、株式会社は、取締役(業務執行取締役等であるものを除く。)、会計参与、監査役または会計監査人(これらを「非業務執行取締役等」といいます)の423条1項の責任について、当該非業務執行取締役等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度とする旨の契約を締結することができる旨を定款で定めることができる、と規定しています。社外取締役は業務執行取締役等ではありませんから非業務執行取締役等に含まれ、責任限定契約の対象となります。よって本肢は正しい記述です。
理由づけとしては、社外取締役や社外監査役などの非業務執行者に、業務執行者と同じ無限定の損害賠償リスクを負わせると、有能な人材が就任を敬遠し、経営監督機能の担い手を確保できなくなります。そこで、悪意・重過失がない場合に限って責任の上限をあらかじめ画することを認め、就任のインセンティブを確保したのです。最低責任限度額は、社外取締役等を含む非業務執行取締役等については報酬等の2年分に相当する額です(425条1項1号ハ)。
手続面では、責任限定契約の定めを設ける定款変更の議案を株主総会に提出するには、監査役設置会社では監査役全員(監査等委員会設置会社では監査等委員全員、指名委員会等設置会社では監査委員全員)の同意が必要です(427条3項、425条3項)。また、契約を締結した会社は、その後に責任が生じた場合、責任の原因となった事実等を最初の株主総会で開示しなければなりません(427条4項)。
ひっかけポイントは、平成26年改正による対象範囲の拡大です。改正前は「社外」取締役・「社外」監査役に限られていましたが、改正後は社外性を問わず、業務執行に当たらない取締役一般(非業務執行取締役等)に広がりました。さらに令和元年改正では、会社補償(430条の2)および役員等賠償責任保険契約(D&O保険。430条の3)の規律が新設されており、責任限定契約と混同しないよう整理しておきましょう。
施行日前に旧会社法第百八十条第二項の決議をするための株主総会の招集手続が開始された場合におけるその株式の併合については、なお従前の例による。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「誤り」。
会社法105条1項は、株主の基本的権利として、剰余金の配当を受ける権利(1号)、残余財産の分配を受ける権利(2号)、株主総会における議決権(3号)を掲げています。そして同条2項は「株主に前項第1号及び第2号に掲げる権利の全部を与えない旨の定款の定めは、その効力を有しない」と明記しています。したがって、配当請求権と残余財産分配請求権の両方を全部奪う定款規定を設けることはできず、仮に定めても無効です。本肢は誤りです。
理由づけとしては、株式会社は営利法人であり、その営利性の中核は、会社が得た利益を最終的に構成員である株主に分配することにあります。剰余金の配当と残余財産の分配は、まさにその経済的利益の分配経路そのものですから、その両方を完全に奪えば、株主は出資に対する経済的リターンをおよそ期待できなくなり、株式会社としての本質を失います。そこで会社法は、この両権利の全部を奪う定款規定を効力なきものとしました。
ひっかけポイントは「両方の全部」という限定です。裏を返せば、一方だけを与えない旨の定めは可能です。たとえば、剰余金の配当については優先権を与える一方で残余財産の分配には参加させない、あるいは残余財産の分配のみを受けられるといった種類株式は、108条1項1号・2号により適法に設計できます。完全無配当・完全無分配の株式だけが禁じられているのだ、と押さえてください。
なお、議決権については扱いが異なります。105条2項は1号・2号のみを対象としており、議決権については、108条1項3号の議決権制限種類株式として、およそ議決権を有しない株式(完全無議決権株式)を発行することが認められています。ただし、公開会社では議決権制限株式が発行済株式総数の2分の1を超えたときは、直ちにその割合を2分の1以下にするための必要な措置をとらなければなりません(115条)。
結論:この肢は「誤り」。
会社法453条は「株式会社は、その株主(当該株式会社を除く。)に対し、剰余金の配当をすることができる」と定めており、配当は会社の権利であって義務ではありません。また461条1項は、配当により株主に交付する金銭等の帳簿価額の総額が「効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならない」と定めているにすぎず、分配可能額は配当の上限を画するものです。上限まで配当しなければならないという規定はどこにもありません。したがって本肢は誤りです。
理由づけとしては、企業経営上、稼いだ利益をどこまで内部留保し、どこまで株主に還元するかは、将来の設備投資や研究開発、財務健全性の確保との兼ね合いで決めるべき経営判断事項です。分配可能額の全額を毎期吐き出さなければならないとすれば、成長投資の余地がなくなり、かえって株主の中長期的利益を損ないます。そこで会社法は上限規制のみを置き、実際にいくら配当するかは、原則として株主総会の決議(454条1項、普通決議)に委ねています。無配とすることも当然に可能です。
ひっかけポイントとして、配当の決定機関の例外を押さえておきましょう。まず、取締役会設置会社は、一事業年度の途中において1回に限り取締役会の決議で中間配当をすることができる旨を定款で定めることができます(454条5項。ただし配当財産は金銭に限られます)。また、会計監査人設置会社であって、監査役会設置会社(取締役の任期が1年のもの)、監査等委員会設置会社または指名委員会等設置会社であるなど一定の要件を満たし、かつ会計監査報告に無限定適正意見が付されているなどの場合には、剰余金の配当等を取締役会が決定できる旨を定款で定めることができます(459条1項)。分配可能額の算定(461条2項)とあわせ、条文を追って確認してください。
施行日前に旧会社法第百九十九条第二項に規定する募集事項の決定があった場合におけるその募集株式については、新会社法第二百五条第二項、第二百六条の二、第二百九条第二項及び第三項、第二百十三条の二並びに第二百十三条の三の規定は、適用しない。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「誤り」。
会社法462条1項は、461条1項の規定に違反して株式会社が金銭等の交付をした場合には、当該行為により金銭等の交付を受けた者は、当該金銭等の交付を受けた者が交付を受けた金銭等の帳簿価額に相当する金銭を株式会社に対して支払う義務を負う、と定めています。ここでは株主の善意・悪意は要件とされていません。したがって、違法配当であることを知らなかった善意の株主であっても、会社に対して支払義務を負います。本肢は誤りです。
理由づけとしては、分配可能額規制は会社債権者の引当てとなる会社財産を確保するための制度です。会社と株主の間の主観的事情によって返還の可否が左右されるとすると、規制の実効性が失われ、債権者保護が図れません。そこで会社法は、株主の主観を問わずに返還義務を課しました。加えて、当該行為に関する職務を行った業務執行者や、株主総会・取締役会に議案を提案した取締役等も、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明しない限り、同額の支払義務を連帯して負います(462条1項柱書・2項)。
もっとも、善意の株主が全く保護されないわけではありません。会社法463条1項は、株主が交付を受けた金銭等について違法配当であることにつき善意であったときは、支払義務を履行した業務執行者等からの求償の請求に応ずる義務を負わないと定めています。つまり、会社に対する義務は負うが、業務執行者からの求償は拒めるという構造です。本肢はこの463条1項と462条1項を混同させる典型的なひっかけです。
さらに、会社債権者は、違法配当を受けた株主に対し、交付を受けた金銭等の帳簿価額(債権額が上限)に相当する金銭を自己に支払わせることができます(463条2項)。また、462条の株主の義務は、総株主の同意があっても、行為時の分配可能額を超える部分については免除できません(462条3項)。分配可能額を超えて交付した部分こそが債権者保護の核心だからです。
結論:この肢は「誤り」。
会社法453条は「株式会社は、その株主(当該株式会社を除く。)に対し、剰余金の配当をすることができる」と定めています。括弧書が示すとおり、会社が保有する自己株式については剰余金の配当をすることができません。本肢は「当該株式会社に対し」配当できるとしており、この括弧書に反する誤った記述です。
理由づけとしては、自己株式に配当をしても、会社の財産が会社自身に戻ってくるだけで実質的な意味がないばかりか、分配可能額を無駄に費消し、他の株主への配当原資を減らすことになります。また、会社が自己株式について配当を受けられるとすると、実質的に会社が自らの利益を水増しして表示することにもつながりかねません。同じ趣旨から、自己株式には議決権もありません(308条2項)し、残余財産の分配(504条3項)や株式無償割当て・新株予約権無償割当てにおいても自己株式は割当ての対象から除かれます(186条2項、278条2項)。
ひっかけポイントは、条文の括弧書を読み落としてしまう点です。「株主に対して配当できる」という部分だけを見ると正しそうに見えますが、会社自身も自己株式を通じて形式的には「株主」の地位に立つため、条文はわざわざ括弧書で除外しています。会社法の条文は括弧書に例外が仕込まれていることが多く、本試験でもそこを狙われます。
関連知識として、自己株式の取得それ自体は、会社法155条各号の場合に限って認められ、株主との合意による有償取得には財源規制(461条1項2号・3号)が及びます。取得した自己株式は保有し続けることができ(金庫株)、消却する場合には取締役会設置会社では取締役会の決議によります(178条2項)。自己株式の帳簿価額は分配可能額の算定において控除項目となる点(461条2項3号)も、あわせて確認しておきましょう。
1施行日前に旧会社法第二百三十八条第一項に規定する募集事項の決定があった場合におけるその募集新株予約権については、新会社法第二百四十四条第三項、第二百四十四条の二、第二百八十二条第二項及び第三項、第二百八十六条の二並びに第二百八十六条の三の規定は、適用しない。
2施行日前に発行された新株予約権(募集新株予約権を除く。)については、新会社法第二百八十二条第二項及び第三項、第二百八十六条の二並びに第二百八十六条の三の規定は、適用しない。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「誤り」。
根拠となるのは商法504条と、最高裁大法廷判決昭和43年4月24日です。商法504条本文は、商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでこれをした場合であっても、その行為は本人に対して効力を生ずると定めています。民法99条1項が要求する顕名主義の例外、いわゆる非顕名主義(非顕名代理)です。そのうえで同条ただし書は、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げない、と定めています。
判例(最大判昭和43年4月24日)は、このただし書の場面について、商法504条本文により本人と相手方との間に法律関係が生じるとともに、代理人を取引の当事者だと信じた相手方を保護するため、相手方と代理人との間にも同一の法律関係が生じ、相手方はその選択に従い、本人との法律関係と代理人との法律関係のいずれかを主張することができる、という構成を採りました。すなわち二個の法律関係が併存し、そのどちらを主張するかは相手方の選択に委ねられます。
この肢は「いずれの間にも法律関係が生じ」という前半だけを見れば判例と重なるようにも見えますが、後半の「本人および代理人は連帯して履行の責任を負う」という部分が判例の構成と食い違うため、全体として妥当ではありません。連帯債務であれば、相手方は本人と代理人の双方に対して同時に全部の履行を請求でき、どちらに請求するかを一度決めた後も他方への請求が自由に残ります。しかし判例が採るのは、あくまで相手方の一方的な「選択」による法律関係の確定であり、相手方がいったん本人との法律関係を選択して本人に対し履行を請求した以上、その後に代理人との法律関係を主張することは許されない、とされています。連帯という多数当事者の債務関係とは構造がまったく異なるのです。
ひっかけポイントは、「連帯」という語の座りのよさです。両者に責任が及ぶ場面を見ると連帯債務を連想しがちですが、商法504条ただし書の帰結は選択的併存であって連帯ではありません。また、本問では相手方が善意かつ無過失であることが前提とされていますが、相手方が悪意であればただし書の適用はなく、504条本文どおり本人との法律関係だけが生じます。相手方に過失がある場合の扱いについては、前掲大法廷判決の補足意見や学説で議論がありますが、試験対策としては「悪意なら本人のみ」「善意なら選択可能」と整理しておけば足ります。
結論:この肢は「正しい」。
本問は「正しいもの」を選ぶ問題ですから、本肢が正解です。
根拠は会社法454条1項1号です。同号は、剰余金の配当をしようとするときに株主総会で定めるべき事項として「配当財産の種類(当該株式会社の株式等を除く。)及び帳簿価額の総額」を掲げています。ここでいう「株式等」とは、株式、社債および新株予約権をいいます(107条2項2号ホ)。つまり、配当財産の種類から自社の株式・社債・新株予約権が明文で除外されており、これらを配当財産として交付することはできません。本肢はこの規律を正確に述べています。
理由づけとしては、剰余金の配当は、会社財産を株主に払い出す行為であり、分配可能額の範囲内で会社の純資産を減少させるものです。ところが、自社の株式を交付しても会社財産は社外に流出せず、単に株式数が増えて既存株主の持分が希釈されるだけで、およそ「配当」の実質を欠きます。自社の新株予約権も同様です。また、自社の社債を配当として交付することは、実質的には株主に対する会社の債務を新たに創出することにほかならず、財産の払出しとは異なる規律(募集社債の発行手続)に服させるべきです。そこで会社法は、これらを配当財産から除外しました。自社の株式や新株予約権を株主に無償で交付したい場合には、株式無償割当て(185条以下)や新株予約権無償割当て(277条以下)という別の制度が用意されています。
ひっかけポイントは、配当財産が金銭に限られるわけではないという点です。会社法は金銭以外の財産を配当財産とする現物配当を認めており(454条1項1号、同条4項)、たとえば子会社株式や自社製品を配当することは可能です。ただし、株主に金銭分配請求権(配当財産に代えて金銭を交付することを請求する権利)を与えない現物配当をするには、株主総会の特別決議が必要です(309条2項10号)。金銭分配請求権を与える場合は普通決議で足ります。また、中間配当の配当財産は金銭に限られます(454条5項)。
「現物配当はできるが、自社の株式・社債・新株予約権はダメ」と、限定の中身を正確に記憶してください。
施行日前に旧会社法第二百七十八条第一項各号に掲げる事項の決定があった場合におけるその新株予約権無償割当てについては、なお従前の例による。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「誤り」。
商法504条本文が明文で、商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでした行為も本人に対して効力を生ずる、と定めているからです。この規定は民法99条1項の顕名主義に対する商法上の例外であり、商取引が大量・反復・迅速に行われることに対応して、いちいち本人の名を示さなくても代理の効果が本人に帰属するようにしたものです。したがって「本人には何らの効果も及ばない」という部分が、条文と正面から衝突します。
商法504条ただし書は、相手方が代理人が本人のためにすることを知らなかったときに、代理人に対して履行の請求をすることを妨げない、と定めますが、これは相手方の保護のために代理人に対する関係を追加的に認める規定にすぎず、本文による本人への効果帰属そのものを否定するものではありません。判例(最大判昭和43年4月24日)も、善意の相手方については本人との法律関係と代理人との法律関係が併存し、相手方がそのいずれかを選択して主張できる、という理解を示しています。本人との法律関係が初めから生じないという構成ではないのです。
理由づけとしては、非顕名主義の趣旨に立ち返ると分かりやすくなります。商法504条は、商人の営業活動においては支配人や使用人など補助者を通じた取引が常態であり、相手方も背後に営業主本人がいることを一般に想定できるため、顕名がなくても効果を本人に帰属させるのが取引の実情に合う、という発想に立っています。効果帰属の原則が本人である以上、本人に何らの効果も及ばないという説明は成り立ちません。
ひっかけポイントは、民法100条との混同です。民法100条本文は、代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は自己のためにしたものとみなすと定め、同条ただし書で、相手方が本人のためにすることを知り、または知ることができたときは本人に効果が帰属するとします。民法は「原則として代理人に帰属、例外的に本人」であるのに対し、商法504条は「原則として本人に帰属、例外的に代理人にも主張できる」という逆向きの建て付けになっています。この肢は民法100条本文の発想をそのまま商行為の場面に持ち込んだもので、商法の特則を知っているかを試す典型的な誤答肢です。
結論:この肢は「誤り」。
一見すると商法504条の条文の文言をそのままなぞった記述であり、最も紛らわしい肢です。同条ただし書は確かに「代理人に対して履行の請求をすることを妨げない」と書いており、字面だけを追えばこの肢が正しいようにも読めます。しかし本問は「商法の規定および判例に照らし」と問うており、判例(最大判昭和43年4月24日)が示した法律構成に照らすと妥当ではありません。
判例は、商法504条ただし書の場合、相手方と本人との間に法律関係が生じるとともに、相手方と代理人との間にも「同一の法律関係」が生じ、相手方はその選択に従っていずれかの法律関係を主張することができる、と述べています。ここで生じるのは履行請求権という個別の権利ではなく、契約関係そのものです。したがって相手方は、代理人との法律関係を選択した場合、履行の請求だけでなく、債務不履行を理由とする契約の解除や損害賠償の請求など、契約当事者としての権利を代理人に対して行使できることになります。「履行の請求に限り」という限定を付す点で、この肢は判例の構成より狭く、妥当でないと評価されます。
また、この肢は本人との法律関係を本体としたうえで、代理人に対しては請求権だけが付加的に認められる、という一元的な構成を前提にしています。これも、二個の法律関係が併存し相手方の選択で決まるという判例の理解とは異なります。判例の構成では、相手方が代理人との法律関係を選択した場合、その取引の当事者は代理人だという扱いになるのです。
ひっかけポイントを整理します。第一に、条文の文言に忠実な肢が常に正解とは限らないこと。本問のように判例の解釈が条文の文言より広い場合、条文だけを覚えていると誤答します。第二に、「履行の請求に限り」「〜に限る」といった限定句は、選択肢を誤りに転じさせる典型的な仕掛けなので、見つけたら必ず疑ってかかることです。なお、判例が相手方の選択権を認めた反面、いったん本人との法律関係を選択して履行を請求した後は、もはや代理人との法律関係を主張できないとした点もあわせて押さえておきましょう。
施行日前に会計監査人の選任若しくは解任又は会計監査人を再任しないことに関する決議をするための株主総会の招集手続が開始された場合における会計監査人の選任若しくは解任又は会計監査人を再任しないことに係る手続については、新会社法第三百四十四条の規定にかかわらず、なお従前の例による。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「誤り」。
商法504条本文は、商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでした行為も本人に対して効力を生ずると定めており、効果帰属の原則はあくまで本人です。この肢は、原則として代理人に法律関係が生じ、本人に対しては履行の請求ができるにとどまる、という組立てになっていますが、これは商法504条の建て付けを本人と代理人で入れ替えたもので、条文に反します。
さらに判例(最大判昭和43年4月24日)は、相手方が善意の場合について、本人との法律関係と代理人との法律関係が併存し、相手方はその選択によりいずれかを主張できるとしています。本人に対する関係が「履行の請求に限り」認められるという限定も、判例の構成にはありません。相手方が本人との法律関係を選択すれば、本人を契約当事者として、解除や損害賠償請求を含む契約上の権利を行使できます。したがって、前半の原則の立て方も、後半の限定も、いずれも誤りです。
理由づけとして、なぜ商法が民法と逆の原則を採るのかを押さえておくと記憶が安定します。商取引では、支配人・番頭・使用人など営業主の補助者が本人の名を示さずに取引を行うことが日常的であり、相手方もその背後に営業主がいることを通常は前提としています。そこで商法504条は、顕名がなくても効果は本人に帰属するという原則を立て、そのうえで、代理人を取引当事者だと信じた善意の相手方の期待を守るため、ただし書で代理人に対する主張も認めた、という二段構えになっているのです。
ひっかけポイントは、民法100条の構造との取り違えです。民法100条は本文で「自己のためにしたものとみなす」=代理人帰属を原則とし、ただし書で相手方が悪意または有過失のときに本人帰属を認めます。この肢は、その民法の原則に商法504条ただし書の文言をつぎはぎしたような記述で、両者の原則・例外の向きを正確に理解しているかを試しています。「商法は本人が原則、民法は代理人が原則」と対にして覚えるのが確実です。
結論:この肢は「正しい」。
最高裁大法廷判決昭和43年4月24日が示した、商法504条ただし書の法律構成そのものです。判例は、商行為の代理人が顕名をせずに取引をし、相手方が代理人が本人のためにすることを知らなかった場合について、商法504条本文により本人と相手方との間に法律関係が生じるとともに、代理人を取引の相手と信じた相手方を保護するため、相手方と代理人との間にも同一の法律関係が生じるとしたうえで、相手方はその選択に従い、本人との法律関係と代理人との法律関係のいずれかを主張することができる、と判示しました。この肢はその結論をそのまま述べています。
条文を確認しておきます。商法504条本文は、商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでこれをしたときであっても、その行為は本人に対してその効力を生ずると定め、民法99条1項の顕名主義の例外(非顕名主義)を規定します。同条ただし書は、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げない、と定めます。判例は、このただし書を単なる履行請求権の付与ではなく、代理人との間にも契約関係が併存的に生じる趣旨と読み、相手方に選択権を認めたわけです。
理由づけは、二つの利益の調整にあります。商取引の迅速性・大量性からは、顕名がなくても本人に効果を帰属させるのが合理的です。他方、目の前の代理人を当事者だと信じて取引に入った相手方にとっては、突然本人が現れて当事者になるのは不意打ちになりかねません。そこで、本人への効果帰属という原則を維持しつつ、善意の相手方には代理人との法律関係を主張する道も開き、どちらを選ぶかを相手方に委ねた、というのが判例の発想です。
ひっかけポイントと関連知識を三点挙げます。第一に、これは連帯債務ではありません。選択によりいずれかの法律関係が確定するのであって、両者が同時に全部の責任を負い続ける関係ではありません。第二に、判例は、相手方がいったん本人との法律関係を選択して本人に履行を請求した以上、その後に代理人との法律関係を主張することは許されないとしています。選択には確定的な効果があるということです。第三に、この保護は善意の相手方に限られ、相手方が代理であることを知っていた場合は504条本文どおり本人との法律関係だけが生じます。本問が「相手方に過失はないものとする」とわざわざ断っているのは、相手方が有過失の場合の扱いに争いがあるため、その論点を切り離す趣旨です。
取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人の施行日前の行為に基づく責任の一部の免除及び当該責任の限度に関する契約については、新会社法第四百二十五条から第四百二十七条までの規定にかかわらず、なお従前の例による。この場合において、当該責任の一部の免除をしようとする時に監査等委員会設置会社(新会社法第二条第十一号の二に規定する監査等委員会設置会社をいう。)である株式会社についての旧会社法第四百二十五条第三項(旧会社法第四百二十六条第二項及び第四百二十七条第三項において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)の規定の適用については、旧会社法第四百二十五条第三項中「監査役設置会社又は委員会設置会社」とあるのは「監査等委員会設置会社(会社法の一部を改正する法律(平成二十六年法律第九十号)による改正後の会社法(以下この項において「新会社法」という。)第二条第十一号の二に規定する監査等委員会設置会社をいう。)」と、「次の各号に掲げる株式会社の区分に応じ、当該各号に定める者」とあるのは「各監査等委員(新会社法第三十八条第二項に規定する監査等委員をいう。)」とする。
施行日前に子会社の株式又は持分の全部又は一部の譲渡に係る契約が締結された場合におけるその譲渡については、新会社法第四百六十七条第一項及び第五百三十六条第一項の規定にかかわらず、なお従前の例による。
施行日前に旧会社法第四百六十八条第一項に規定する事業譲渡等に係る契約が締結された場合におけるその事業譲渡等については、新会社法第四百六十九条及び第四百七十条の規定にかかわらず、なお従前の例による。
この条文の過去問 1肢
結論:この肢は「誤り」。
株主総会における議決権の行使に、6か月の継続保有要件は課されていません。会社法308条1項は、株主は株主総会において、その有する株式1株につき1個の議決権を有すると定めるだけで、保有期間による制限を置いていないからです。議決権は株式に当然に付着する共益権の中核であり、株式を取得した瞬間から行使できるのが原則です。
株主総会で誰が議決権を行使できるかを画するのは、保有期間ではなく基準日の制度です。会社法124条1項は、会社が一定の日(基準日)を定めて、その日に株主名簿に記載・記録されている株主を権利行使できる者と定めることができるとし、同条2項は基準日から権利行使日までを3か月以内としなければならないと定めます。上場会社が3月期決算で6月に定時株主総会を開く場合、3月31日を基準日とするのはこの規定によるものです。したがって、基準日の直前に株式を取得した株主であっても、基準日時点で株主名簿上の株主であれば議決権を行使できます。6か月間持っていなければならないという要件はどこにもありません。
理由づけとしては、議決権が株主の最も基本的な権利であることが挙げられます。6か月の継続保有要件は、権利行使のためだけに株式を取得して会社を攪乱する濫用的な行為を防ぐために、一部の監督是正権について例外的に課されるものです。議決権のような基本的な自益権・共益権にまでこれを及ぼせば、株式の自由譲渡性(127条)を実質的に損なうことになります。
ひっかけポイントは、基準日の「3か月以内」と継続保有要件の「6か月」を混同させる点です。数字が近いだけに、どの制度の何の期間なのかを正確に区別してください。なお、単元株制度を採用している会社では単元未満株式に議決権がありませんが(189条1項)、これは保有期間ではなく保有株式数による制限です。本問の正解は、株主代表訴訟(責任追及等の訴え)を挙げる肢5です。
施行日前に旧会社法第四百七十五条各号に掲げる場合に該当することとなった清算株式会社の監査役については、新会社法第四百七十八条第六項及び第七項の規定にかかわらず、なお従前の例による。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「誤り」。
会計帳簿の閲覧謄写請求権に、6か月の継続保有要件はありません。会社法433条1項は、総株主の議決権の100分の3以上の議決権を有する株主、または発行済株式(自己株式を除く)の100分の3以上の数の株式を有する株主は、会社の営業時間内はいつでも、会計帳簿またはこれに関する資料の閲覧または謄写の請求をすることができると定めています。定款でこの割合を引き下げることは可能ですが、条文が課しているのは持株要件(3%以上)だけであり、保有期間の要件は規定されていません。
この請求をするときは、請求の理由を明らかにしてしなければならず(433条1項後段)、会社は同条2項各号に該当する事由があるときは拒絶できます。拒絶事由には、請求者が権利の確保・行使に関する調査以外の目的で請求したとき(1号)、会社の業務を妨げ株主共同の利益を害する目的で請求したとき(2号)、請求者が会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営みまたはこれに従事するものであるとき(3号)などがあります。3号については、主観的な加害意図や競業に利用する目的がなくても拒絶事由に当たるとするのが判例です(最決平成21年1月15日)。濫用的な請求は、保有期間ではなくこの拒絶事由によってコントロールされている、という構造を理解しておいてください。
ひっかけポイントは、同じ3%要件の他の少数株主権との対比です。たとえば株主総会の招集請求権について、会社法297条1項は、総株主の議決権の100分の3以上の議決権を有する株主に請求を認めたうえで、公開会社ではその議決権を6か月前から引き続き有することを要求しています(公開会社でない株式会社では、同条2項によりこの期間要件は課されません)。これに対し、会計帳簿閲覧請求権(433条)や、業務財産状況調査のための検査役選任の申立て(358条1項)には、3%の持株要件はあっても保有期間の要件はありません。同じ3%の少数株主権でも期間要件の有無が分かれる、この振り分けが問われるのです。
さらに、株主総会招集請求権(297条)、株主提案権(303条2項・305条1項)、取締役の違法行為差止請求権(360条)、役員解任の訴え(854条)などには公開会社について6か月の継続保有要件がある一方、会計帳簿閲覧請求権、定款・株主名簿・議事録の閲覧請求権、各種の会社の組織に関する訴えの提起には期間要件がありません。この振り分けを一覧で整理しておくと、本問のような出題に強くなれます。
結論:この肢は「誤り」。
新株発行無効の訴え(会社法828条1項2号にいう「株式会社の成立後における株式の発行の無効の訴え」)の提訴権者に、6か月の継続保有要件はありません。会社法828条2項2号は、この訴えを提起できる者を、当該株式会社の株主等(株主、取締役または清算人。監査役設置会社では監査役、指名委員会等設置会社では執行役を含む。828条2項1号かっこ書参照)と定めるのみで、株式の保有期間による制限を置いていないからです。新株発行後に株主となった者でも提訴できます。
むしろこの訴えで重要なのは提訴期間の制限です。会社法828条1項2号は、株式の発行の効力が生じた日から6か月以内(公開会社でない株式会社にあっては1年以内)に訴えを提起しなければならないと定めています。ここに「6か月」という数字が登場するため、本問のような出題では継続保有要件と取り違えやすいのですが、これは権利行使者の資格要件ではなく、法律関係の早期安定のための出訴期間です。
新株発行無効の訴えの関連知識も押さえておきましょう。無効判決には対世効があり(838条)、遡及効はありません(839条)。すなわち将来に向かってのみ無効となり、会社は払込みを受けた金額を株主に返還します(840条1項)。無効原因は狭く解されており、判例は、公開会社において取締役会決議を欠く新株発行や、代表取締役が権限なく行った新株発行も原則として無効原因とならないとしつつ(最判昭和36年3月31日など)、株主への通知・公告を欠いたために差止めの機会が奪われた場合には無効原因になるとしています(最判平成9年1月28日)。また、新株発行の差止請求(210条)は単独株主権であり、これにも保有期間要件はありません。
ひっかけポイントは、繰り返しになりますが「6か月」という数字の使われ方です。828条の6か月は出訴期間、847条の6か月は継続保有期間です。数字だけを手掛かりに選ばず、条文がその期間を何のために設けているのかまで意識して覚えてください。本問の正解は肢5です。
施行日前に合併契約、吸収分割契約若しくは株式交換契約が締結され、又は組織変更計画、新設分割計画若しくは株式移転計画が作成された組織変更、合併、吸収分割、新設分割、株式交換又は株式移転については、なお従前の例による。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「誤り」。
株主総会決議取消しの訴えの提訴権者に、6か月の継続保有要件はありません。会社法831条1項は、株主総会等の決議の日から3か月以内に、株主等(株主、取締役、監査役、執行役、清算人)が決議取消しの訴えを提起することができると定めるだけで、保有期間や持株数による制限を置いていないからです。決議取消しの訴えは単独株主権であり、1株しか持たない株主でも、また決議後に株主となった者でも提起できます。
決議の当時に株主でなかった者であっても、その後に株式を取得して株主となれば、当該決議の取消しを訴求できると解されています。決議の瑕疵は会社の運営の適正に関わるものであり、現に株主である者に是正の機会を与えるべきだからです。また、判例は、自己に対する招集手続の瑕疵がなくても、他の株主に対する招集手続の瑕疵を理由として取消しを求めることができるとしています(最判昭和42年9月28日)。
ここで重要なのは「3か月」という提訴期間です。会社法831条1項の3か月は除斥期間と解されており、この期間を過ぎると取消しを主張できなくなります。しかも判例は、期間経過後に新たな取消事由を追加して主張することは許されないとしています(最判昭和51年12月24日)。会社の組織に関する法律関係を早期に安定させる趣旨です。
ひっかけポイントは、決議の瑕疵を争う三つの訴えの区別です。決議取消しの訴え(831条)は3か月の出訴期間があり提訴権者も限定されますが、決議不存在確認の訴えおよび決議無効確認の訴え(830条)には出訴期間の制限がなく、確認の利益がある限り誰でも提起できます。取消事由は、招集手続・決議方法の法令定款違反または著しい不公正、決議内容の定款違反、特別利害関係人が議決権を行使したことによる著しく不当な決議、の三類型です(831条1項各号)。いずれについても6か月の保有期間は問題になりません。本問で6か月の継続保有が要求されるのは、肢5の株主代表訴訟です。
結論:この肢は「正しい」。
取締役の責任を追及する訴え、すなわち株主代表訴訟(会社法が「責任追及等の訴え」と呼ぶもの)については、会社法847条1項が、6箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主は、株式会社に対し、書面その他の法務省令で定める方法により、発起人、設立時取締役、設立時監査役、役員等または清算人の責任を追及する訴えの提起を請求することができる、と定めています。本問の問題文の表現は、この条文の文言をそのまま引いたものです。
手続の流れも押さえておきましょう。株主はまず会社に対して提訴請求を行い、会社が請求の日から60日以内に責任追及等の訴えを提起しないときに、初めて自ら会社のために訴えを提起できます(847条3項)。ただし、60日の経過により会社に回復することができない損害が生ずるおそれがある場合には、直ちに訴えを提起することができます(847条5項)。また、責任追及等の訴えが当該株主もしくは第三者の不正な利益を図りまたは会社に損害を加えることを目的とする場合には、提訴請求をすることができません(847条1項ただし書)。
なぜ代表訴訟にだけ継続保有要件が課されるのかという理由づけです。代表訴訟は単独株主権であり、1株の株主でも会社の役員を被告として訴訟を追行できる強力な制度です。しかも訴訟の目的の価額は算定不能なものとみなされ、手数料は一律とされているため(847条の4第1項)、提訴の負担が小さい。そこで、訴訟を起こす目的だけで株式を買い集める濫用を防ぐため、6か月の継続保有という時間的な絞りをかけたのです。
ひっかけポイントと関連知識を挙げます。第一に、この6か月要件は公開会社についてのものであり、公開会社でない株式会社では継続保有要件は不要です(847条2項)。非公開会社では株式の譲渡自体が制限されており、濫用目的での取得が想定しにくいためです。本問が冒頭で「公開会社の株主であって」と限定しているのはこの点を踏まえたものです。第二に、定款で6か月を下回る期間を定めることはできますが、上回る期間を定めることはできません。株主に不利な変更は許されないからです。第三に、6か月の継続保有要件は代表訴訟だけでなく、株主総会の招集請求(297条1項・2項)、株主提案権のうち議題提案権および議案要領通知請求権(303条2項、305条1項ただし書)、取締役の違法行為差止請求権(360条1項・3項)、役員解任の訴え(854条1項・2項)などにも課されています。逆に、会計帳簿閲覧請求(433条)、各種の会社の組織に関する訴えの提起(828条、831条)、募集株式発行の差止請求(210条)には期間要件がありません。この振り分けが本問の実質的な出題意図です。なお、平成26年改正で導入された多重代表訴訟(特定責任追及の訴え、847条の3)でも、最終完全親会社等の株主に6か月の継続保有要件が課されている点も、関連知識として押さえておきましょう。
1施行日前に旧会社法第八百四十七条第一項に規定する責任追及等の訴えが提起された場合における当該責任追及等の訴えについては、なお従前の例による。
2施行日前に新会社法第八百四十七条の二第一項各号に掲げる行為の効力が生じた場合については、同条の規定は、適用しない。
3施行日前にその原因となった事実が生じた特定責任(新会社法第八百四十七条の三第四項に規定する特定責任をいう。)については、同条の規定は、適用しない。
1この法律の施行の際現に監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社は、この法律の施行後最初に監査役が就任し、又は退任するまでの間は、新会社法第九百十一条第三項第十七号イに掲げる事項の登記をすることを要しない。
2株式会社についてこの法律の施行の際現に旧会社法第九百十一条第三項第二十五号又は第二十六号の規定による登記がある場合は、当該株式会社は、当該登記に係る取締役又は監査役の任期中に限り、当該登記の抹消をすることを要しない。
施行日前にした行為及びこの附則の規定によりなお従前の例によることとされる場合における施行日以後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
この条文の過去問 1肢
結論:この肢は「正しい」。
会社法295条1項が、株主総会は、この法律に規定する事項および株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる、と定めているからです。本問の会社は取締役会を設置していない株式会社ですので、この原則規定がそのまま適用されます。すなわち、取締役会非設置会社の株主総会は、会社に関するあらゆる事項を決議できる万能の機関です。
これに対して、取締役会設置会社では扱いが逆転します。会社法295条2項は、取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項および定款で定めた事項に限り決議をすることができる、と定めます。取締役会という業務執行の意思決定機関を置いた以上、日常的な経営判断は取締役会に委ね、株主総会は法定事項と定款所定事項に限って決議する、という役割分担がされているのです。会社の規模や所有と経営の分離の程度に応じて、機関の権限配分を変える会社法の基本的な発想がここに表れています。
理由づけとしては、取締役会非設置会社は、株主が少数で、株主自身が経営に関与する閉鎖的な会社を典型として想定していることが挙げられます。そうした会社では、所有者である株主が集まって何でも決められるほうが実態に合致します。逆に取締役会設置会社では、機動的な経営判断を確保するため、株主総会の権限を絞り込むほうが合理的です。
ひっかけポイントと関連知識です。第一に、295条1項と2項のどちらが原則でどちらが例外かを取り違えないこと。「一切の事項」と書いてあれば非取締役会設置会社、「法律に規定する事項および定款で定めた事項に限り」と書いてあれば取締役会設置会社です。第二に、295条3項は、株主総会以外の機関が決定することができることを内容とする定款の定めは、その効力を有しないと定めています。取締役の責任の免除など、株主の利益保護のために株主総会の決議を要するとされている事項を、定款で取締役会に委ねることはできません。第三に、取締役会非設置会社であっても、株主総会の招集通知は会日の1週間前までに発するのが原則で(299条1項)、書面投票・電子投票を採用しない非公開会社では定款でさらに短縮でき、株主全員の同意があれば招集手続を省略できます(300条)。
この附則に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「正しい」。
株主提案権のうちの議題提案権について、会社法303条1項は、株主は、取締役に対し、一定の事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る)を株主総会の目的とすることを請求することができる、と定めています。この1項には持株要件も継続保有要件も付されておらず、単独株主権として認められます。本問の会社は取締役会を設置していない株式会社ですから、この原則規定が適用され、1株しか持たない株主でも議題提案ができます。
これに対し、取締役会設置会社では要件が加重されます。会社法303条2項は、取締役会設置会社においては、総株主の議決権の100分の1(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権または300個(これを下回る数を定款で定めた場合にあっては、その数)以上の議決権を6か月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主に限り、この請求をすることができるとし、しかもこの請求は株主総会の日の8週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までにしなければならない、と定めます。さらに同条3項は、公開会社でない取締役会設置会社については、6か月の継続保有要件を課さない、としています。持株要件・保有期間・請求期限という三段構えの違いを、会社類型ごとに整理しておきましょう。
関連する制度として、議案提出権(304条)と議案要領通知請求権(305条)があります。議案提出権は、株主総会の場で議題について議案を提出する権利で、単独株主権であり会社類型による区別はありません。議案要領通知請求権は、株主が提出しようとする議案の要領を招集通知に記載させる権利で、取締役会設置会社では303条2項と同様の少数株主権とされ、株主総会の日の8週間前までに請求する必要があります(305条1項ただし書)。なお、令和元年改正会社法(令和3年3月施行)により、株主が同一の株主総会に提案できる議案の数は10までに制限されました(305条4項)。この改正は本問の結論に影響しませんが、現行法の知識として押さえておいてください。
ひっかけポイントは、「持株数にかかわらず」という表現です。取締役会設置会社の場面であればこの表現は誤りになりますが、本問は取締役会非設置会社に限定した出題ですので正しい記述となります。問題文冒頭の会社類型の限定を必ず確認する習慣をつけてください。
結論:この肢は「誤り」。
会社法326条1項は、株式会社には、一人または二人以上の取締役を置かなければならない、と定めています。すなわち取締役は最低1人いれば足り、2人以上を要求する規定はありません。本問の会社は取締役会を設置していない株式会社ですので、取締役1人だけの会社(いわゆる一人会社の一人取締役)も適法に成立します。したがって「2人以上の取締役を置かなければならない」とする本肢は誤りであり、これが正解肢です。
2人以上、正確には3人以上の取締役が必要となるのは、取締役会を設置する場合です。会社法331条5項は、取締役会設置会社においては、取締役は3人以上でなければならないと定めています。取締役会は合議体であり、過半数の出席と過半数の賛成で決議する(369条1項)以上、最低3人が必要だという趣旨です。本問の会社は取締役会非設置会社ですから、この規定は適用されません。
理由づけとしては、会社法が採用した機関設計の柔軟化があります。平成17年制定の会社法は、それ以前の商法・有限会社法を統合し、有限会社に相当する小規模閉鎖会社も株式会社の枠組みで設立できるようにしました。株主が1人、取締役が1人という会社を想定するのが自然であり、一律に複数の取締役を強制すれば、小規模な事業者にとって過大な負担となります。そこで会社法326条1項は、取締役の員数の下限を1人としたのです。会社法は、公開会社(327条1項1号により取締役会の設置が必要)や監査役会設置会社など、一定の類型についてのみ機関の設置と員数を強制する建て付けを採っています。
ひっかけポイントを挙げます。第一に、本肢が「コーポレートガバナンスの観点から」というもっともらしい理由づけを添えている点です。政策的な当否と現行法の規定は別物であり、会社法の条文がどう定めているかだけで判断してください。試験問題では、条文にない一般論・理念的説明を付して誤りを紛れ込ませる手法がよく使われます。第二に、取締役会設置会社の3人以上(331条5項)、監査役会設置会社の監査役3人以上でその半数以上が社外監査役(335条3項)、指名委員会等設置会社の各委員会は委員3人以上でその過半数が社外取締役(400条1項・3項)といった員数要件と混同しないことです。第三に、令和元年改正会社法により、監査役会設置会社(公開会社かつ大会社)であって有価証券報告書提出会社には社外取締役の設置が義務づけられました(327条の2)が、これも本問の会社類型には無関係です。
政府は、この法律の施行後二年を経過した場合において、社外取締役の選任状況その他の社会経済情勢の変化等を勘案し、企業統治に係る制度の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて、社外取締役を置くことの義務付け等所要の措置を講ずるものとする。