1設立時募集株式の引受人は、発起人が定めた時間内は、いつでも、第三十一条第二項各号に掲げる請求をすることができる。ただし、同項第二号又は第四号に掲げる請求をするには、発起人の定めた費用を支払わなければならない。
2設立時募集株式の引受人は、株式会社の成立の時に、第六十三条第一項の規定による払込みを行った設立時発行株式の株主となる。
3設立時募集株式の引受人は、第六十三条第一項の規定による払込みを仮装した場合には、次条第一項又は第百三条第二項の規定による支払がされた後でなければ、払込みを仮装した設立時発行株式について、設立時株主及び株主の権利を行使することができない。
4前項の設立時発行株式又はその株主となる権利を譲り受けた者は、当該設立時発行株式についての設立時株主及び株主の権利を行使することができる。ただし、その者に悪意又は重大な過失があるときは、この限りでない。
5民法第九十三条第一項ただし書及び第九十四条第一項の規定は、設立時募集株式の引受けの申込み及び割当て並びに第六十一条の契約に係る意思表示については、適用しない。
6設立時募集株式の引受人は、株式会社の成立後又は創立総会若しくは種類創立総会においてその議決権を行使した後は、錯誤、詐欺又は強迫を理由として設立時発行株式の引受けの取消しをすることができない。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「誤り」。妥当なものを選ぶ本問の正解肢ではありません。
前半は正しい記述です。会社法214条は、株式会社はその株式(種類株式発行会社にあっては全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨を定款で定めることができると規定しており、定款に定めを置いた会社だけが株券発行会社となります。すなわち会社法は株券不発行を原則としているのであり、この点の説明に誤りはありません。
誤っているのは後半です。会社法215条1項は、株券発行会社は株式を発行した日以後遅滞なく、当該株式に係る株券を発行しなければならないと定めています。株式の併合をしたとき(同条2項)、株式の分割をしたとき(同条3項)も同様に遅滞なく発行しなければなりません。株主からの請求があるまで株券を発行しないでよいという扱いが認められるのは、同条4項により「公開会社でない株券発行会社」に限られます。本肢は株券発行会社一般について請求時発行で足りるとしている点で、明文に反します。
理由づけとして、公開会社では株式が転々流通することが予定されています。株券発行会社では株券の交付が株式譲渡の効力要件とされ(128条1項)、株券の占有者は適法な権利者と推定され(131条1項)、株券の交付を受けた者には善意取得が認められます(同条2項)。株券がなければ株主は株式を譲渡することすらできませんから、会社に遅滞なく発行させる必要があるのです。これに対し非公開会社では譲渡が想定されにくく、株券の作成・保管コストや紛失のリスクのほうが大きいため、請求があるまで発行を留保することが認められています。
ひっかけポイントと関連知識をいくつか挙げます。まず、株券発行会社である旨は定款の定めであると同時に登記事項です(911条3項10号)。次に、株券不所持の申出(217条)と混同しないこと。これは株券発行会社の株主が、自分の株式については株券を所持しない旨を申し出る制度であり、会社の発行義務そのものを免除する215条4項とは別の制度です。さらに、上場株式については社債株式振替法により株券が発行されず、振替口座簿の記載が権利移転の要件となります(同法128条1項、140条)。
結論:この肢は「正しい」。妥当なものを選ぶ本問の正解肢です。
会社法310条1項は、株主は代理人によってその議決権を行使することができると定め、この場合には当該株主または代理人が代理権を証明する書面を株式会社に提出しなければならないとしています。株主が自ら総会に出席できない場合でも議決権行使の機会を実質的に確保するための規定です。
問題は、この規定に反して定款で代理人の資格を株主に限定できるかです。判例は、議決権を行使する代理人の資格を株主に限る旨の定款の定めについて、株主総会が株主以外の第三者によって撹乱されることを防止し会社の利益を保護する趣旨に出たものと認められ、合理的な理由による相当程度の制限であるとして、旧商法239条2項(現行会社法310条1項)に反せず有効であると判断しました(最判昭和43年11月1日)。この判断は会社が公開会社であるか否かによって区別されていませんから、公開会社であっても同様の定款規定を置くことができます。したがって本肢は妥当です。
理由づけとして、310条1項が保障しているのは株主が代理人を通じて議決権を行使できること自体であって、誰を代理人に選ぶかまで無制限に保障するものではありません。総会屋のような第三者が代理人として大量に出席し、審議を撹乱することを防ぐという実務的必要も、制限の合理性を支えています。
もっとも、この定款規定の効力には限界があります。判例は、株主である地方公共団体や株式会社が、その職員または従業員を代理人として株主総会に出席させて議決権を行使させた事案について、当該職員等が総会を撹乱し会社の利益を害するおそれがないと認められる場合には、定款の定めを理由にその議決権行使を拒むことはできないとしました(最判昭和51年12月24日)。定款規定は有効だが、その適用は制限の趣旨に照らして限定される、という二段構えで理解してください。
関連知識として、代理権の授与は株主総会ごとにしなければならず、包括的・継続的な授権は認められません(310条2項)。また会社は、株主総会に出席することができる代理人の数を制限することができます(同条5項)。書面投票(311条)・電子投票(312条)や議決権の不統一行使(313条)とあわせて条文を確認しておきましょう。