不利益処分と聴聞|弁明の機会との違いを比較
行政手続法の不利益処分と聴聞を完全解説。不利益処分の定義(2条4号)、聴聞と弁明の機会の付与の違いを比較表で整理、聴聞手続の流れ(15条〜28条)、理由の提示(14条)と判例、処分基準(12条)と審査基準(5条)の違いまで条文ベースで網羅します。
行政手続法の不利益処分に関する規定(第3章、12条〜31条)は、行政書士試験の択一式・記述式の両方で出題される超重要分野です。とりわけ「聴聞」と「弁明の機会の付与」の違いは、条文の細部を差し替えたひっかけが毎年のように仕込まれます。本記事では、不利益処分の定義から両手続の振り分け、聴聞手続の流れ、理由の提示(14条)と判例まで、e-Gov の法令データで条文を1つずつ照合したうえで体系的に解説します。
30秒でわかる結論|不利益処分と2つの意見陳述手続
先に全体像を確定させておきます。不利益処分とは、行政庁が法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、義務を課し又は権利を制限する処分をいいます(2条4号)。行政庁がこれをしようとするときは、あらかじめ「意見陳述のための手続」を執らなければならず(13条1項)、その手続には聴聞と弁明の機会の付与の2種類があります。どちらになるかは、処分の重さで決まります。
ひとことで言えば、「重い処分ほど手厚い手続」という比例関係で組み立てられた制度です。この骨格を押さえたうえで、以下で条文の細部を詰めていきます。
不利益処分の定義(2条4号)
不利益処分とは、行政庁が特定の者に対して不利益を課す処分をいいます。
行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいう。
― 行政手続法 第2条4号本文
不利益処分の4つの要素
不利益処分から除外されるもの(2条4号ただし書)
2条4号は本文で定義を置いたうえで、「ただし、次のいずれかに該当するものを除く」としてイ〜ニの4類型を除外しています。定義に当てはまっても除外されれば不利益処分ではないため、第3章(12条〜31条)の適用がありません。
ニの読み違えに注意してください。「要件事実が発生したから自動的に失効させる処分」ではありません。条文が求めているのは、名あて人自身から「基礎となった事実が消滅した」旨の届出があったことです。自分から廃業を届け出た以上、改めて言い分を聴く必要がないから除外される、という趣旨です。届出を経ずに行政庁が職権で効力を失わせる処分は、この除外に当たらず不利益処分になります。
イの除外事由も理由がはっきりしています。行政代執行法上の戒告や代執行令書による通知は、代執行という「事実上の行為」の前段階として法令が要求する手続にすぎません。実体的な義務を新たに課すものではないため、不利益処分から外されています(代執行そのものについては行政代執行法の要件と手続を参照)。
ロの除外事由は最頻出です。申請に対する拒否処分は、申請者にとって明らかに不利益ですが、行政手続法上の「不利益処分」ではありません。第2章(5条〜11条)の「申請に対する処分」として、審査基準(5条)・標準処理期間(6条)・理由の提示(8条)が適用されます。したがって拒否処分に聴聞や弁明の機会の付与は不要です。詳しくは申請に対する処分の3つの要件で整理しています。
行政庁が申請により求められた許認可等を拒否する処分をしようとする場合、行政手続法上、あらかじめ聴聞又は弁明の機会の付与を行わなければならない。○か×か。
【最重要】聴聞と弁明の機会の付与の違い
ここが本記事の核心です。行政書士試験の行政手続法では、この2つの手続の異同がほぼ毎年、形を変えて問われます。まず振り分けの条文を確認し、その後で違いを一覧で押さえます。
振り分けの条文(13条1項)
行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、次の各号の区分に従い、この章の定めるところにより、当該不利益処分の名あて人となるべき者について、当該各号に定める意見陳述のための手続を執らなければならない。
― 行政手続法 第13条1項
引用のポイントは「当該各号に定める意見陳述のための手続」の部分です。行政庁が聴聞と弁明の機会の付与を自由に選べるのではなく、各号が定めた手続に拘束されることを示す文言だからです。ここを「意見陳述のための手続を執らなければならない」とだけ覚えていると、「行政庁はいずれかを選択できる」という誤った肢に引っかかります。
聴聞が必要な場合(13条1項1号)
以下のイ〜ニのいずれかに該当するときは、聴聞を行わなければなりません。
ハは3つの類型を含む点に注意してください。「役員の解任」だけを覚えていると、「業務に従事する者の解任命令」「会員の除名命令」が出てきたときに判断できません。いずれも、名あて人(法人等)ではなくその内部にいる個人の地位を奪うという共通点で括られています。
ニは行政庁の裁量による格上げです。本来なら弁明の機会の付与で足りる処分であっても、行政庁が「相当と認める」なら聴聞にできます。逆方向、すなわち聴聞すべき処分を弁明の機会の付与に格下げすることはできません。ここは頻出のひっかけです。
弁明の機会の付与が必要な場合(13条1項2号)
13条1項2号は「前号イからニまでのいずれにも該当しないとき」を弁明の機会の付与としています。つまり、聴聞に当たらないものはすべて弁明という受け皿の構造です。ここから導かれる結論が重要です。
聴聞が原則ではなく、弁明の機会の付与が原則です。営業停止処分、業務改善命令、課徴金納付命令の多くは弁明の機会の付与で足ります。聴聞は、許認可等の取消しや資格のはく奪といった「その人の生業を断つ」重さの処分に限って要求される、例外的で手厚い手続です。
聴聞と弁明の機会の付与の比較表(この記事の要)
この表のうち、試験で最も狙われるのは主宰者・文書等の閲覧・参加人の3点です。いずれも「聴聞にはあるが弁明にはない」という組み合わせで、肢の主語を弁明にすり替えるだけで誤りの肢が作れるからです。
弁明の機会の付与に準用される規定は「15条3項・4項と16条」だけ
31条は「聴聞に関する手続の準用」を定めていますが、準用の範囲は驚くほど狭いものです。
第十五条第三項及び第四項並びに第十六条の規定は、弁明の機会の付与について準用する。
― 行政手続法 第31条
準用されるのは、15条3項・4項(所在不明の場合の公示による通知)と16条(代理人)だけです。18条(文書等の閲覧)も、17条(参加人)も、19条(主宰者)も、24条(調書・報告書)も、26条(参酌義務)も準用されていません。「31条の準用範囲は代理人と公示通知のみ」と一言で覚えておけば、比較表の大半は自力で再現できます。
弁明の機会の付与の手続においても、当事者は代理人を選任することができる。○か×か。
処分基準(12条)と審査基準(5条)の違い
処分基準に関する12条は、審査基準の5条との比較で出題されます。
行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない。
― 行政手続法 第12条1項
行政庁は、処分基準を定めるに当たっては、不利益処分の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。
― 行政手続法 第12条2項
審査基準(5条)と処分基準(12条)の比較(最重要)
この比較表は、行政書士試験で最も出題頻度が高い論点の一つです。設定と公表の2つの軸 × 審査基準と処分基準の2つ = 4マスのうち、努力義務なのは処分基準側の2マスだけ、と図で覚えるのが確実です。
なぜ処分基準だけ努力義務なのか
制度趣旨から理解しておくと忘れません。審査基準は、申請しようとする者が「何を満たせば許可されるか」を知るためのものですから、あらかじめ示されていないと申請自体ができません。だから設定も公表も法的義務です。
一方、処分基準は「どんな違反にどの程度の処分をするか」の目安です。これを詳細に公表してしまうと、「この程度なら営業停止3日で済む」という計算的な違反を誘発しかねません。また、違反の態様は多様で事前に網羅しきれない事情もあります。そこで、努力義務にとどめられました。
ただし、努力義務だから公表しなくてよい、という単純な話ではない点に注意が必要です。次の判例が示すとおり、いったん定めて公にした処分基準は、行政庁自身を強く拘束します。
判例|公にされた処分基準の拘束力(最判平成27年3月3日)
営業停止処分を受けた者が、停止期間の経過後もその取消しを求める訴えの利益を有するかが争われた事案です。
行政手続法12条1項に基づいて定められ公にされている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の定めがある場合、行政庁は、特段の事情がない限り、先行の処分を受けたことを理由として加重された後行の処分をすべきことになる。したがって、先行処分を受けた者は、その処分期間経過後も、当該処分の取消しを求める法律上の利益を有する。
― 最判平成27年3月3日(民集69巻2号143頁)の要旨
出題ポイント: 処分基準の設定・公表は12条1項の努力義務にすぎませんが、判例は、いったん公にされた処分基準には行政庁の裁量を実質的に縛る効力を認めました。「努力義務=法的な意味がない」と読み替えた肢は誤りです。この判例は行政事件訴訟法9条1項の訴えの利益の論点としても頻出なので、両方の文脈で押さえておきましょう。
行政手続法12条1項により、行政庁は処分基準を定め、かつ公にしておかなければならない。○か×か。
意見陳述手続が不要になる場合(13条2項の適用除外)
13条1項は「執らなければならない」と義務を課していますが、13条2項は「次の各号のいずれかに該当するときは、前項の規定は、適用しない」として5つの除外事由を置いています。該当すれば聴聞も弁明の機会の付与も一切不要になる、強力な例外です。
5号の文言に注意してください。「意見陳述手続によることが困難又は不必要であるもの」ではありません。条文が挙げているのは「課される義務の内容が著しく軽微」という理由です。市販の教材でもここを曖昧に要約しているものがあるため、原文の言い回しで確認しておく価値があります。
2号・3号に共通するのは「争う余地がない」という発想です。判決書で資格喪失が直接証明されている、あるいは計測で基準の不充足が確認されている場合、名あて人に言い分を聴いても結論が変わる余地がありません。逆にいえば、単に「資格がなさそうだ」という程度では2号に当たらず、客観的資料による直接証明が必要です。ここも肢の後半を削って誤りを作る定番の場所です。
第3章そのものが適用されない場合(3条・4条)
13条2項とは別に、行政手続法3条・4条による適用除外もあります。こちらは意見陳述手続だけでなく、処分に関する規定全体が適用されない点で射程が広いものです。代表例を挙げます。
3条2項の切り分けが頻出です。都道府県知事の処分であっても、根拠規定が法律にあれば行政手続法の処分の規定が適用されます。適用されないのは根拠が条例・規則の場合です。全体像は行政手続法の目的と適用範囲で図解しています。
公益上、緊急に不利益処分をする必要があるため意見陳述のための手続を執ることができないときは、行政庁は聴聞も弁明の機会の付与も行わずに不利益処分をすることができる。○か×か。
聴聞手続の流れ|通知から処分の決定まで
聴聞は、通知に始まり処分の決定に終わる一連の手続です。まず全体のステップを俯瞰し、その後で各段階の条文を確認します。
⑤で調書と報告書の中身を取り違えないことが、この手続を通じた最大の得点源です。詳しくは後述します。
聴聞の通知と聴聞通知書の記載事項(15条)
行政庁は、聴聞を行うに当たっては、聴聞を行うべき期日までに相当な期間をおいて、不利益処分の名宛人となるべき者に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。
― 行政手続法 第15条1項
条文の要素を分解すると、次の4つが要件です。
聴聞通知書に記載すべき事項(15条1項各号)は次の4つです。
- 予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項(1号)
- 不利益処分の原因となる事実(2号)
- 聴聞の期日及び場所(3号)
- 聴聞に関する事務を所掌する組織の名称及び所在地(4号)
通知書において教示しなければならない事項(15条2項各号)は次の2つです。
- 聴聞の期日に出頭して意見を述べ、及び証拠書類又は証拠物(証拠書類等)を提出し、又は聴聞の期日への出頭に代えて陳述書及び証拠書類等を提出することができること(1号)
- 聴聞が終結する時までの間、当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができること(2号)
1項各号が「これから何をされるのか」を知らせるための情報、2項各号が「あなたには何ができるのか」を知らせるための情報、という役割分担で整理すると混同しません。
所在が判明しない場合の公示による通知(15条3項・4項)
名宛人となるべき者の所在が判明しない場合、行政庁は公示の方法により通知することができます(15条3項)。公示事項を総務省令で定める方法により不特定多数の者が閲覧できる状態に置くとともに、公示事項を記載した書面を行政庁の事務所の掲示場に掲示するか、事務所に設置した電子計算機の映像面に表示したものを閲覧できる状態に置く措置をとって行います(15条4項)。
この措置を開始した日から2週間を経過したときに、通知が到達したものとみなされます(15条4項後段)。「2週間」という数字は記述式でも問われうるので押さえておきましょう。なお、この公示による通知の規定(15条3項・4項)は、31条により弁明の機会の付与にも準用されます。
代理人の選任(16条)
前条第一項の通知を受けた者(同条第四項後段の規定により当該通知が到達したものとみなされる者を含む。以下「当事者」という。)は、代理人を選任することができる。
― 行政手続法 第16条1項
ここで「当事者」という語が定義される点が重要です。行政手続法にいう当事者とは、15条1項の通知を受けた者(=不利益処分の名宛人となるべき者)を指します。参加人は当事者ではありません。
代理人に関する16条の4つの項を整理します。
「一切の行為をすることができる」のは2項、「書面で証明」が3項です。項番号を入れ替えた肢が出るため、対で覚えてください。また、代理人は複数選任することができ、その場合も各自が単独で行為できます(2項「各自」)。
なお、参加人も代理人を選任することができ(17条2項)、16条2項〜4項が準用されます(17条3項)。
参加人(17条)
第十九条の規定により聴聞を主宰する者(以下「主宰者」という。)は、必要があると認めるときは、当事者以外の者であって当該不利益処分の根拠となる法令に照らし当該不利益処分につき利害関係を有するものと認められる者(同条第二項第六号において「関係人」という。)に対し、当該聴聞に関する手続に参加することを求め、又は当該聴聞に関する手続に参加することを許可することができる。
― 行政手続法 第17条1項
参加人は主宰者の判断で認められるものであり、利害関係人が当然に参加できるわけではありません。条文を分解すると次のようになります。
判断権者が主宰者である点が最重要です。「行政庁は、必要があると認めるときは関係人の参加を許可することができる」という肢は、主語のすり替えによる誤りです。行政不服審査法13条の参加人が審理員の許可を要するのと対比しておくと定着します。
また、条文が「関係人」を定義していることも押さえてください。関係人のうち実際に参加した者が「参加人」です。この区別が、19条2項6号の「参加人以外の関係人」という欠格事由の読み方につながります。
参加人には、代理人の選任(17条2項・3項)、期日への出頭と意見陳述・証拠提出(20条2項)、補佐人との出頭(20条3項)、調書・報告書の閲覧(24条4項)が認められます。一方、18条の文書等の閲覧については「当該不利益処分がされた場合に自己の利益を害されることとなる参加人」に限られる点で、参加人全員に開かれているわけではありません。
文書等の閲覧(18条)
当事者及び当該不利益処分がされた場合に自己の利益を害されることとなる参加人(以下この条及び第二十四条第三項において「当事者等」という。)は、聴聞の通知があった時から聴聞が終結する時までの間、行政庁に対し、当該事案についてした調査の結果に係る調書その他の当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができる。この場合において、行政庁は、第三者の利益を害するおそれがあるときその他正当な理由があるときでなければ、その閲覧を拒むことができない。
― 行政手続法 第18条1項
文書閲覧権の重要ポイント:
- 閲覧を求めることができるのは「当事者等」(当事者+当該不利益処分がされた場合に自己の利益を害されることとなる参加人)。すべての参加人ではない
- 閲覧の期間は「聴聞の通知があった時から聴聞が終結する時まで」。通知前や終結後には請求できない
- 行政庁が閲覧を拒むことができるのは「第三者の利益を害するおそれがあるときその他正当な理由があるとき」のみ。それ以外は拒めない(「拒むことができない」という書き方に注目)
- 審理の進行に応じて必要となった資料の閲覧を、さらに求めることができる(18条2項)。1回限りではない
- 行政庁は、閲覧について日時及び場所を指定することができる(18条3項)
- 閲覧権は聴聞手続に特有の制度であり、弁明の機会の付与にはない(31条は18条を準用していない)
「閲覧」であって「謄写(コピー)」ではない点も押さえておきましょう。18条1項が認めているのは閲覧を求めることであり、写しの交付請求権まで定めた規定ではありません。開示請求としての謄写を求めるのであれば、情報公開法などの別の制度によることになります。
行政手続法上、弁明の機会の付与の手続においても、当事者は不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができる。○か×か。
聴聞の期日における審理と聴聞の終結(19条〜24条)
聴聞の主宰者(19条)
聴聞は、行政庁が指名する職員その他政令で定める者が主宰する。
― 行政手続法 第19条1項
主宰者の選任について、必ずしも外部の第三者である必要はありません。処分をしようとする行政庁が指名する職員でよいため、審理の中立性は制度上限定的です。この点は、行政不服審査法の審理員(同法9条)と対比して問われます。
主宰者になることができない者(19条2項各号)は次の6つです。条文の号の切れ目に注意してください。
4号が独立した号であることが盲点です。「かつて当事者の代理人だった者」も主宰者にはなれません。3号のかっこ書きとして処理してしまうと、号の数え方を問う肢に対応できなくなります。
6号の「参加人以外の関係人」という限定にも注意が必要です。関係人(17条1項かっこ書きが定義する、当該不利益処分につき利害関係を有すると認められる者)のうち、実際に参加人になった者は既に1号で欠格ですから、6号は参加していない関係人を捉えています。
聴聞の期日における審理(20条)
20条は6つの項からなり、期日の進め方を細かく定めています。
主宰者は、最初の聴聞の期日の冒頭において、行政庁の職員に、予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項並びにその原因となる事実を聴聞の期日に出頭した者に対し説明させなければならない。
― 行政手続法 第20条1項
6項の非公開原則は頻出です。「聴聞の期日における審理は公開して行われる」という肢は誤りになります。公開するかどうかを判断するのは主宰者ではなく行政庁である点も、主語をすり替えるひっかけになります。
2項の「質問」と4項の「質問」を混同しないでください。当事者から行政庁職員への質問(2項)には主宰者の許可が必要ですが、主宰者から当事者への質問(4項)に許可は不要です。
陳述書等の提出と続行期日(21条・22条)
期日に出頭できない当事者・参加人は、出頭に代えて、聴聞の期日までに主宰者に対し陳述書及び証拠書類等を提出することができます(21条1項)。主宰者は、期日に出頭した者の求めに応じて、その陳述書及び証拠書類等を示すことができます(21条2項)。
審理の結果、なお聴聞を続行する必要があると認めるときは、主宰者はさらに新たな期日を定めることができます(22条1項)。この場合、当事者及び参加人に対しあらかじめ次回の期日及び場所を書面により通知しなければなりませんが、期日に出頭した当事者及び参加人に対しては、その期日において告知すれば足ります(22条2項ただし書)。
当事者の不出頭等の場合における聴聞の終結(23条)
不出頭の場合の扱いを定めるのは20条ではなく23条です。ここは条番号を取り違えやすいので注意してください。
主宰者は、当事者の全部若しくは一部が正当な理由なく聴聞の期日に出頭せず、かつ、第二十一条第一項に規定する陳述書若しくは証拠書類等を提出しない場合、又は参加人の全部若しくは一部が聴聞の期日に出頭しない場合には、これらの者に対し改めて意見を述べ、及び証拠書類等を提出する機会を与えることなく、聴聞を終結することができる。
― 行政手続法 第23条1項
条文の要件を当事者と参加人とで分けて読むのがコツです。
当事者については「正当な理由なく」という限定と「陳述書等も出していない」という二重の要件がかかるのに対し、参加人については単に出頭しないだけで終結できるという非対称があります。当事者は処分を受ける本人ですから、より手厚く扱われているわけです。
さらに23条2項は、出頭が相当期間引き続き見込めないときは、期限を定めて陳述書及び証拠書類等の提出を求め、当該期限が到来したときに聴聞を終結することとできると定めています。1項が即時終結、2項が猶予付き終結、という違いです。
聴聞調書と報告書(24条)── 中身の取り違えに注意
この記事で最も間違えられやすい論点です。調書と報告書は、作成者は同じ主宰者ですが、記載内容も作成時期も異なります。
主宰者は、聴聞の審理の経過を記載した調書を作成し、当該調書において、不利益処分の原因となる事実に対する当事者及び参加人の陳述の要旨を明らかにしておかなければならない。
― 行政手続法 第24条1項
主宰者は、聴聞の終結後速やかに、不利益処分の原因となる事実に対する当事者等の主張に理由があるかどうかについての意見を記載した報告書を作成し、第一項の調書とともに行政庁に提出しなければならない。
― 行政手続法 第24条3項
調書に主宰者の意見は書きません。調書は「誰が何を言ったか」の記録であり、「その言い分に理由があるか」という評価は報告書の役割です。この2つを入れ替えた肢は、行政手続法の頻出パターンの一つです。
閲覧請求権(24条4項)についても、条文の主語を正確に押さえましょう。
当事者又は参加人は、第一項の調書及び前項の報告書の閲覧を求めることができる。
― 行政手続法 第24条4項
18条1項の文書等の閲覧では主体が「当事者等」(当事者+自己の利益を害されることとなる参加人)に絞られていたのに対し、24条4項は「当事者又は参加人」です。参加人であれば、自己の利益を害されるかどうかを問わず、調書・報告書を閲覧できます。18条と24条4項で主体の範囲が違うという点は、精度の高い受験生を分ける論点です。
聴聞調書には、不利益処分の原因となる事実に対する当事者等の主張に理由があるかどうかについての主宰者の意見を記載しなければならない。○か×か。
聴聞の終結後の手続と不利益処分の決定
聴聞の再開(25条)
聴聞が終結した後に、行政庁が新たな事情に気づくこともあります。
行政庁は、聴聞の終結後に生じた事情にかんがみ必要があると認めるときは、主宰者に対し、前条第三項の規定により提出された報告書を返戻して聴聞の再開を命ずることができる。
― 行政手続法 第25条
聴聞の再開を定めるのは25条です。再開を命じることができるのは行政庁であり、主宰者が自らの判断で再開するのではありません。また、再開の要件は「聴聞の終結後に生じた事情にかんがみ必要があると認めるとき」であり、終結前から存在していた事情を後から持ち出す場面は想定されていません。
再開の場合には、22条2項本文(次回の期日・場所の書面通知)及び3項(所在不明時の通知方法)が準用されます。
不利益処分の決定(26条)
行政庁は、不利益処分の決定をするときは、第二十四条第一項の調書の内容及び同条第三項の報告書に記載された主宰者の意見を十分に参酌してこれをしなければならない。
― 行政手続法 第26条
行政庁は聴聞調書・報告書の内容を「十分に参酌」しなければなりませんが、主宰者の意見に拘束されるわけではありません。最終的な処分の決定権限は行政庁にあります。したがって、「主宰者が当事者の主張に理由があるとの意見を述べた場合、行政庁は不利益処分をすることができない」という肢は誤りです。参酌義務と拘束力の区別が問われます。
審査請求の制限(27条)
現行の27条は、次のとおり「審査請求の制限」を定める1か条です。
この節の規定に基づく処分又はその不作為については、審査請求をすることができない。
― 行政手続法 第27条
制限されるのは「この節の規定に基づく処分又はその不作為」、つまり聴聞手続の過程で行われる行為(文書等の閲覧の拒否、参加の許可・不許可など)に対する審査請求です。聴聞を経てされた不利益処分そのものに対する審査請求が禁止されているわけではありません。
平成26年の行政不服審査法の全部改正前は、聴聞を経てされた不利益処分について異議申立てを制限する規定が置かれていましたが、この改正に伴って整理されました。現行法のもとでは、聴聞を経てされた不利益処分に対しても、行政不服審査法による審査請求ができます。旧規定の記憶で「聴聞を経た処分には審査請求できない」と覚えている場合は上書きが必要です。行政不服審査の全体像は行政不服審査法の全体像で確認してください。
役員等の解任等を命ずる不利益処分の特例(28条)
13条1項1号ハ(役員の解任命令、業務に従事する者の解任命令、会員の除名命令)に該当する不利益処分では、名あて人は法人等であるのに、実際に地位を失うのは個人です。そこで28条1項は、解任・除名されるべきこととされている役員・従業者・会員を、15条1項の通知を受けた者(=当事者)とみなすこととしました。名あて人ではない個人に、自ら聴聞で防御する道を開く規定です。
28条2項は、この聴聞が行われた場合、名あて人がその処分に従わないことを理由として法令の規定によりされる当該役員等を解任する不利益処分については、行政庁は改めて当該役員等について聴聞を行うことを要しないと定めています。同じ争点で二度聴聞を行う無駄を避ける規定です。
弁明の機会の付与の手続(29条〜31条)
弁明の機会の付与は条文がわずか3か条で、聴聞と比べて格段に簡素です。だからこそ、「聴聞にあって弁明にないもの」を問う形で出題されます。
弁明の方式(29条)
弁明は、行政庁が口頭ですることを認めたときを除き、弁明を記載した書面(以下「弁明書」という。)を提出してするものとする。
― 行政手続法 第29条1項
原則は書面(弁明書)の提出です。口頭でできるのは、行政庁が口頭ですることを認めたときに限られます。「当事者が希望すれば口頭で弁明できる」という肢は誤りです。認めるかどうかを決めるのは行政庁であり、当事者に選択権はありません。
弁明をするときは、証拠書類等を提出することができます(29条2項)。書面審理だからといって証拠が出せないわけではない点に注意してください。
弁明の機会の付与の通知(30条)
行政庁は、弁明書の提出期限(口頭による弁明の機会の付与を行う場合には、その日時)までに相当な期間をおいて、不利益処分の名あて人となるべき者に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。
― 行政手続法 第30条
通知は書面によることが必要です。弁明そのものは書面が原則、通知も書面、と覚えます。記載事項は次の3つです。
15条1項が4号まであるのに対し、30条は3号までです。また、15条2項のような教示事項の定めが30条にはありません。文書等の閲覧権がない以上、その旨を教示する必要もないからです。
準用される規定(31条)
前述のとおり、31条が準用するのは15条3項・4項(公示による通知)と16条(代理人)だけです。以下の対比で覚えてください。
- 準用される: 所在不明時の公示による通知、代理人の選任
- 準用されない: 参加人(17条)、文書等の閲覧(18条)、主宰者(19条)、期日の審理(20条〜22条)、聴聞の終結(23条)、調書・報告書(24条)、聴聞の再開(25条)、参酌義務(26条)
弁明の機会の付与において、当事者は口頭で弁明することを求めることができ、行政庁はこれを拒むことができない。○か×か。
不利益処分の理由の提示(14条)
意見陳述手続が「処分の前」の手続であるのに対し、理由の提示は「処分の時点」の手続です。両者は独立しており、13条2項で意見陳述手続が不要になる場合でも、14条の理由提示義務は別途かかります。
条文の3つの項
行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りでない。
― 行政手続法 第14条1項
行政庁は、前項ただし書の場合においては、当該名あて人の所在が判明しなくなったときその他処分後において理由を示すことが困難な事情があるときを除き、処分後相当の期間内に、同項の理由を示さなければならない。
― 行政手続法 第14条2項
不利益処分を書面でするときは、前二項の理由は、書面により示さなければならない。
― 行政手続法 第14条3項
3項の「前二項」という文言に注目してください。1項の同時提示と2項の事後提示の両方について、書面による処分なら理由も書面によることを求めています。ここを「前項」と読み替えてしまうと、事後提示の場合だけが対象という誤った理解になります。市販の要約でも取り違えの多い箇所です。
条文の構造を整理すると次のとおりです。
「差し迫った必要」があっても理由提示義務が消えるのではなく、時期がずれるだけというのが2項の趣旨です。「緊急の場合には理由を示さなくてよい」という肢は、2項を無視した誤りになります。
理由の提示に関する8条と14条の比較
例外の効果が決定的に違います。8条は「求めがあれば示す」で足りるのに対し、14条は「求めがなくても事後に示す」義務が残ります。8条と14条の例外部分を入れ替えた肢は定番です。
判例|理由提示の程度(最判平成23年6月7日・一級建築士免許取消事件)
理由提示は「何か書いてあればよい」というものではありません。どの程度具体的に示す必要があるかを最高裁が判断した重要判例があります。
耐震偽装事件に関連して一級建築士の免許取消処分を受けた者が、処分の通知書に示された理由が不十分であるとして処分の取消しを求めた事案です。通知書には、建築基準法令に定める構造基準に適合しない設計を行ったという処分の原因となる事実と根拠法条は示されていましたが、複数ある懲戒処分の中からどの処分を選ぶかの基準として公にされていた処分基準の適用関係は全く示されていませんでした。
公にされている処分基準の適用関係が示されずにされた建築士法10条1項2号及び3号に基づく一級建築士免許取消処分は、行政手続法14条1項本文の定める理由提示の要件を欠き、違法である。
― 最判平成23年6月7日(民集65巻4号2081頁、一級建築士免許取消処分等取消請求事件)の要旨
出題ポイント: この判例は、12条(処分基準)と14条(理由の提示)を橋渡しする位置にあります。処分基準の設定・公表は努力義務にすぎませんが、いったん公にされた処分基準がある以上、その適用関係を示さなければ理由提示として不十分になる、という論理です。「原因事実と根拠条文さえ書けば理由提示として足りる」という肢は、この判例に照らして誤りとなります。
理由提示の程度が争われた判例としては、行政手続法制定前のものですが、旅券法に基づく一般旅券発給拒否処分について、単に根拠条項を示すだけでは理由付記として不十分としたもの(最判昭和60年1月22日)や、青色申告に係る更正処分の理由付記に関するもの(最判昭和38年5月31日)も、同じ問題意識の系譜にあります。
理由提示の3つの趣旨
なぜ理由の提示が求められるのか、趣旨から押さえておくと応用が利きます。
- 恣意抑制機能: 理由を書かせることで、行政庁の判断の慎重さと合理性を担保する
- 争訟便宜機能: 名あて人が不服申立てや取消訴訟でどこを争えばよいかを知ることができる
- 説明責任: 行政運営の公正の確保と透明性の向上という、行政手続法1条の目的の実現
理由提示を欠いた処分はそれ自体が手続的違法となり、実体的な判断が正しかったとしても処分が取り消されうる、という帰結が上記の平成23年判例です。手続の瑕疵と処分の効力の関係は行政行為の瑕疵でも扱っています。
出題ポイントとひっかけの型
この分野の誤りの肢は、作られ方がかなり定型的です。どこをどう改変すると誤りになるかを型として持っておくと、初見の肢でも狙いを見抜けます。
ひっかけの型8パターン
択一式での頻出論点
- 審査基準(5条)と処分基準(12条)の比較: 設定・公表がそれぞれ法的義務か努力義務かを正確に区別する。公にされた処分基準の拘束力を認めた最判平成27年3月3日もセットで
- 聴聞と弁明の機会の付与の振り分け: 13条1項1号イ〜ニに該当すれば聴聞、それ以外は弁明。ハが3類型を含むことに注意
- 31条の準用範囲: 準用されるのは15条3項・4項と16条のみ
- 主宰者の欠格事由: 19条2項の6つの号。特に4号(過去に1〜3号に当たった者)が独立していること
- 調書と報告書の記載内容: 24条1項=陳述の要旨、24条3項=主宰者の意見
- 理由の提示: 8条と14条の比較、特に例外の効果の違い(求めがあれば足りる/事後に示す義務が残る)
- 理由提示の程度: 最判平成23年6月7日。公にされた処分基準の適用関係を示す必要がある
記述式での出題可能性
40字程度でまとめる練習をしておきましょう。解答例は文字数の目安付きです。
Q1. 行政庁がAに対して飲食店営業許可の取消処分をしようとする場合、行政手続法上どのような意見陳述手続を執らなければならないか。40字程度で述べよ。
解答例: 許認可等を取り消す処分に当たるため聴聞を行い、期日までに相当な期間をおいて書面で通知する。(44字)
Q2. 不利益処分をする場合の処分基準の設定・公表について、審査基準と対比して40字程度で述べよ。
解答例: 審査基準の設定・公表は法的義務であるのに対し、処分基準の設定・公表はいずれも努力義務にとどまる。(47字)
Q3. 主宰者が作成する聴聞調書と報告書には、それぞれ何を記載しなければならないか。40字程度で述べよ。
解答例: 調書には当事者及び参加人の陳述の要旨を、報告書には当事者等の主張に理由があるかの意見を記載する。(47字)
Q4. 行政庁が不利益処分をする際、理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要があった場合、その後どうすべきか。40字程度で述べよ。
解答例: 名あて人の所在不明等で困難な場合を除き、処分後相当の期間内に理由を示さなければならない。(43字)
記述式の答案作法そのものは記述式の書き方ガイド、行政法の頻出テーマは記述式行政法の頻出10テーマで整理しています。
行政手続法13条1項1号により、許認可等を取り消す不利益処分をしようとする場合は、弁明の機会の付与ではなく聴聞を行わなければならない。○か×か。
まとめ
不利益処分と聴聞手続に関する重要ポイントを整理します。
- 不利益処分の定義: 行政庁が法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に義務を課し又は権利を制限する処分(2条4号)。申請拒否処分はロで除外され、不利益処分に該当しない
- 除外事由ニ: 「許認可等の基礎となった事実が消滅した旨の届出があったことを理由としてされる」失効処分。届出が要件であることを落とさない
- 振り分け: 許認可等の取消し・資格や地位の直接のはく奪・役員等の解任命令や会員の除名命令・行政庁が相当と認めるときは聴聞(13条1項1号)、それ以外は弁明の機会の付与(13条1項2号)。弁明が原則
- 聴聞と弁明の違い: 主宰者・文書等の閲覧・参加人・調書と報告書・参酌義務はすべて聴聞のみ。31条が準用するのは15条3項・4項と16条だけ
- 13条2項の適用除外: 緊急・資格欠格の客観的証明・技術基準不充足の客観的確認・金銭関係・義務の内容が著しく軽微な政令指定処分の5類型
- 聴聞の通知: 期日までに相当な期間をおいて書面で通知(15条1項)。1項各号=記載事項4つ、2項各号=教示事項2つ
- 調書と報告書: 調書=陳述の要旨(24条1項)、報告書=主張に理由があるかの意見(24条3項)。閲覧できるのは「当事者又は参加人」(24条4項)
- 決定: 行政庁は調書と報告書の意見を「十分に参酌」するが、拘束はされない(26条)
- 理由の提示: 処分と同時が原則(14条1項)。差し迫った必要があるときは処分後相当の期間内に(2項)。書面処分なら「前二項」の理由を書面で(3項)
- 判例: 公にされた処分基準の適用関係を示さない理由提示は違法(最判平成23年6月7日)/公にされた処分基準の加重規定は行政庁を実質的に拘束する(最判平成27年3月3日)
聴聞手続は条文数が多いぶん、条番号と内容の対応を丁寧に確認すれば確実な得点源になります。特に13条の振り分け・31条の準用範囲・24条の調書と報告書の3点は、比較の形で繰り返し確認してください。
演習で定着させる
この論点は、聴聞と弁明の機会の付与の振り分け、主宰者の権限が本試験で繰り返し問われます。読んで理解した状態と、肢の言い回しを変えられても正誤を判断できる状態のあいだには差があります。行政書士ブートラボの肢別演習は過去問を一問一答に分解して出題するため、その差をその場で潰していけます。行政法は法令科目のなかで最も出題数が多い科目なので、関連する論点をまとめて回すのが得点効率の面でも有利です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 聴聞と弁明の機会の付与の最大の違いは何ですか?
手続の厚みです。 聴聞は口頭審理を原則とし(20条2項)、主宰者が置かれ(19条)、文書等の閲覧(18条)、参加人(17条)、補佐人(20条3項)、調書・報告書(24条)、行政庁の参酌義務(26条)といった防御と公正の仕組みが一通りそろっています。これに対し弁明の機会の付与は、行政庁が口頭を認めたときを除き弁明書の提出だけで完結し(29条1項)、31条が準用するのは公示による通知と代理人の規定のみです。「重い処分ほど手厚い手続」という比例関係の表れと理解してください。
Q2. 営業停止処分をされそうです。聴聞と弁明のどちらになりますか?
原則として弁明の機会の付与です。 営業停止は許認可等を「取り消す」処分ではなく、一定期間その効力を停止するにとどまるため、13条1項1号イには当たりません。資格・地位を直接はく奪するものでもないのでロにも当たらず、13条1項2号の受け皿に落ちて弁明の機会の付与になります。ただし、13条1項1号ニにより、行政庁が相当と認めれば聴聞にすることもできます。個別法が聴聞を要求している場合もあるため、根拠法令の確認は必要です。
Q3. 申請を拒否された場合、聴聞を求めることはできますか?
できません。 申請により求められた許認可等を拒否する処分は、2条4号ロにより不利益処分から除外されており、第3章(意見陳述手続)の適用がありません。代わりに第2章が適用され、審査基準(5条)に従った審査を受け、拒否されたときは8条により処分と同時に理由を示してもらうことになります。不服がある場合は審査請求や取消訴訟で争うことになります。
Q4. 処分基準は努力義務なら、行政庁は無視してもよいのですか?
いいえ。 12条1項の設定・公表は確かに努力義務ですが、いったん定めて公にした処分基準には重い意味が生じます。最判平成27年3月3日は、公にされた処分基準に先行処分による加重の定めがある場合、行政庁は特段の事情がない限りこれに従って加重処分をすべきことになるとしました。また最判平成23年6月7日は、公にされた処分基準がある以上、その適用関係を示さない理由提示は14条1項に反し違法としています。「努力義務=法的意味がない」という理解は誤りです。
Q5. 聴聞に代理人として出席してもらうことはできますか?
できます。 当事者は代理人を選任でき(16条1項)、代理人は各自、当事者のために聴聞に関する一切の行為をすることができます(16条2項)。ただし代理人の資格は書面で証明する必要があり(16条3項)、資格を失ったときは選任した当事者が書面で行政庁に届け出なければなりません(16条4項)。参加人も同様に代理人を選任できます(17条2項・3項)。なお、弁明の機会の付与でも31条により16条が準用されるため、代理人を立てることができます。
Q6. 聴聞の期日に出頭できない場合はどうなりますか?
陳述書と証拠書類等を提出することで防御できます。 21条1項により、期日への出頭に代えて、期日までに主宰者に対し陳述書及び証拠書類等を提出できます。逆に、正当な理由なく出頭せず、かつ陳述書等も提出しない場合には、主宰者は改めて機会を与えることなく聴聞を終結できます(23条1項)。出席できないときは、必ず陳述書を出しておくことが実務上も重要です。なお、当事者や参加人の一部が出頭しないだけであれば、主宰者は審理をそのまま行うことができます(20条5項)。
Q7. 聴聞を経てされた処分に対して審査請求はできますか?
できます。 27条が審査請求を制限しているのは「この節の規定に基づく処分又はその不作為」、つまり文書等の閲覧の拒否や参加の不許可といった聴聞手続の過程で行われる行為です。聴聞を経てされた不利益処分そのものは対象外なので、行政不服審査法による審査請求も、行政事件訴訟法による取消訴訟も可能です。平成26年の行政不服審査法全部改正前の規定の記憶で混同しやすい箇所です。
Q8. 意見陳述手続を執らずにされた処分は違法になりますか?
13条2項の適用除外に当たらない限り、手続的に違法となります。 13条1項は「執らなければならない」と義務を課しているため、これを欠いた処分は手続の瑕疵を帯びます。理由提示についても、最判平成23年6月7日が示すとおり、不備があれば実体判断の当否にかかわらず処分が取り消されうる扱いです。手続の瑕疵と処分の効力の関係については行政行為の瑕疵もあわせて確認してください。