行政書士 記述式対策の完全ガイド|40字の書き方
行政書士試験の記述式(40字記述)の対策方法を完全解説。行政法1問・民法2問の出題形式、配点60点の重要性、キーワードの見つけ方、部分点の取り方、具体的な解答例まで網羅した記述式攻略ガイドです。
はじめに|記述式60点が合否を分ける
行政書士試験の記述式は、300点満点中60点を占める重要なパートです。択一式だけで180点の合格ラインに到達するのは至難の業であり、多くの合格者が記述式で20〜40点を上積みして合格を果たしています。
記述式の問題は全3問で、以下の構成です。
- 問題44:行政法から1問(20点)
- 問題45:民法から1問(20点)
- 問題46:民法から1問(20点)
各問は「40字程度で記述しなさい」という指示のもと、法的知識を正確かつ簡潔にまとめる力が試されます。
本記事では、記述式で安定して得点するための具体的なテクニックと対策法を徹底解説します。
なぜ記述式60点が合否を分けるのか
行政書士試験の合格基準は、次の3つをすべて満たすことです。
- 法令等科目(択一・多肢選択・記述)で満点244点中の50%以上=122点以上
- 一般知識等科目で満点56点中の40%以上=24点以上
- 試験全体で満点300点中の60%以上=180点以上
このうち記述式60点は法令等科目に含まれ、しかも1問20点という択一の約4〜5倍の重みを持ちます。択一1問(多くは5肢から1つ選ぶ形式)が4点であるのに対し、記述1問はその5倍。つまり記述で1問しっかり書ければ、択一5問分を一気に取り返せる計算です。
具体的な得点設計で考えてみましょう。択一・多肢選択で稼げる現実的なラインを次のように想定します。
この想定では記述以外で164点。合格に必要な180点まであと16点を記述で取れば合格です。逆に言えば、記述が0点なら不合格になります。多くの受験生が「択一は合格圏なのに記述が振るわず不合格」という結果に泣くのは、この構造ゆえです。記述式は「おまけ」ではなく、合否を最終確定させる本丸だと位置づけてください。
記述式の得点分布の現実
記述式は採点者の裁量が入るため、自己採点と実際の得点がずれやすいパートです。一般に、次のような傾向が知られています。
- 3問とも完答できる受験生はごく少数。多くの合格者は3問合計で20〜40点に収まる
- 1問あたり「半分(10点前後)取れれば上出来」という年も珍しくない
- 年度によって記述の難易度が大きく変動し、難しい年は採点が甘め、易しい年は厳しめになる傾向がある(合格率を一定範囲に保つ調整と推測される)
したがって戦略は明確です。満点を狙うのではなく、3問すべてで部分点を確実に積み上げ、合計40点を目標にする。これが現実的かつ合格に直結する考え方です。
記述式の出題形式を正確に理解する
40字記述とは何か
記述式の解答用紙には、1行あたり40字のマス目が用意されています。「40字程度」とは厳密に40字ぴったりという意味ではなく、35〜45字程度の幅が許容されます。
ただし、以下の点に注意が必要です。
- 句読点も1字としてカウントされる
- 漢字の誤字は減点対象になる
- 字数が大幅に不足すると得点が下がる(20字以下は実質0点に近い)
- 解答欄をはみ出して書くことはできない
出題パターン
記述式の問題文には大きく分けて2つのパターンがあります。
パターンA:「どのような○○をすべきか」型
例:「Xは、誰を被告として、どのような訴訟を提起すべきか。40字程度で記述しなさい。」
パターンB:「○○の要件を示して説明せよ」型
例:「Aは、Bに対してどのような請求をすることができるか。その根拠とともに40字程度で記述しなさい。」
いずれのパターンでも、問われている内容を正確に把握し、必要な法的要素を漏れなく記述することが重要です。
配点と部分点の仕組み
各問20点満点ですが、採点は部分点方式です。一般的に、以下のような配点がなされていると推測されています(公式な採点基準は非公開)。
- キーワード(法律用語・要件)1つにつき4〜8点
- 1問あたり2〜4個のキーワードが配点対象
- 文章全体の論理的整合性にも配点がある
つまり、完璧な解答が書けなくても、キーワードを1つでも入れれば部分点が得られる可能性があります。白紙で出すのは絶対に避けましょう。
キーワードの見つけ方|得点のカギを握る要素
記述式で得点するために最も重要なのは、出題者が求めているキーワードを正確に見抜くことです。
キーワードの種類
- 法律用語:取消訴訟、債務不履行、善意無過失など
- 条文上の要件:「正当な理由なく」「損害を知った時から」など
- 効果・結論:「損害賠償を請求できる」「処分の取消しを求める」など
- 当事者・被告:「処分をした行政庁の所属する国又は公共団体」など
キーワードを見つけるための3ステップ
ステップ1:問題文の指示を分解する
問題文が「Xは、Yに対して、どのような請求をすることができるか。根拠とともに述べよ。」であれば、解答に必要な要素は以下の3つです。
- 誰に対して(相手方)
- どのような請求か(請求の内容)
- その根拠(条文・法理)
ステップ2:該当する条文を思い出す
問題文の事実関係から、どの条文が問題になっているかを特定します。例えば、他人の不法行為による損害が問題なら民法709条、行政処分に不服があるなら行政事件訴訟法3条2項(取消訴訟)を思い出します。
ステップ3:条文の要件を解答に組み込む
特定した条文の要件をキーワードとして解答に盛り込みます。
具体例で実践
問題例:BがAの所有する建物を過失により焼損した場合、AはBに対してどのような請求ができるか。根拠とともに40字程度で記述しなさい。
ステップ1:誰に → B、何を → 請求、根拠 → 条文
ステップ2:不法行為 → 民法709条
ステップ3:要件 = 故意又は過失、権利侵害、損害の発生、因果関係
解答例(38字):
「Aは、Bに対し、民法709条に基づき、建物の焼損による損害賠償を請求できる。」
キーワード:「民法709条」「損害賠償」「請求」
40字以内にまとめるテクニック
テクニック1:結論ファーストで書く
「AはBに対し、○○を請求できる。なぜなら〜」ではなく、「AはBに対し、○○に基づき△△を請求できる。」と結論と根拠をコンパクトにまとめます。
40字という制限の中では、理由の説明に字数を使う余裕はありません。結論と根拠を一文で表現するのが基本です。
テクニック2:定型表現を覚える
記述式でよく使う定型表現を暗記しておくと、解答作成がスムーズになります。
行政法の定型表現
- 「○○を被告として、△△の取消しを求める取消訴訟を提起すべきである。」
- 「○○は、処分の取消訴訟と併せて、△△の義務付け訴訟を提起すべきである。」
- 「○○の所属する国又は公共団体を被告として、損害賠償を請求できる。」
民法の定型表現
- 「○○は、△△に対し、民法○○○条に基づき、損害賠償を請求できる。」
- 「○○は、△△に対し、契約を解除した上で、原状回復を請求できる。」
- 「○○は、△△に登記なくして所有権を対抗することができる。」
テクニック3:不要な語句を削る
40字に収めるために、以下の語句は省略可能です。
- 「すなわち」「つまり」などの接続詞
- 「この場合」「本件において」などの前置き
- 主語が明らかな場合の主語(ただし、出題で「誰が」を問われている場合は必須)
テクニック4:字数の調整方法
字数が多すぎる場合
- 「することができる」→「できる」に短縮
- 「請求することができる」→「請求できる」
- 「であるから」→ 削除して句読点に置換
字数が少なすぎる場合
- 条文番号を追加する(「民法709条に基づき」など)
- 要件を1つ追加する(「故意又は過失により」など)
- 具体的な請求内容を書く(「損害賠償」→「建物の修繕に要した費用相当額の損害賠償」)
40字答案構成テンプレート|要件→あてはめ→結論
記述式で安定して部分点を取るために、答案を「型」に落とし込む練習が決定的に重要です。本番で頭が真っ白になっても、型さえ覚えていれば手が動きます。基本となる3要素の型を覚えましょう。
基本テンプレート:要件→あてはめ→結論
40字記述の骨格は、次の3つの要素を1文に圧縮したものです。
40字では3要素を独立した文に分けず、1つの文に織り込むのがコツです。基本形は次のとおりです。
〔主体〕は、〔相手方〕に対し、〔根拠・要件〕により、〔結論(請求・訴訟)〕できる(すべきである)。
パターン別テンプレート
問題文の問い方に応じて、3つの定型に当てはめると迷いません。
① 民法「請求できるか」型のテンプレート
〔誰が〕は〔誰に〕に対し、〔条文・法律構成〕に基づき、〔何を〕を請求できる。
- 字数の中心は「条文・法律構成」と「何を」。ここにキーワードが集中する
- 例:「Aは、Bに対し、債務不履行に基づき、契約解除と原状回復を請求できる。」
② 行政法「どんな訴訟・処分か」型のテンプレート
〔誰が〕は、〔被告〕を被告として、〔訴訟類型・救済手段〕を提起すべきである。
- 行政法では「被告は誰か」「訴訟類型は何か」が二大配点ポイント
- 例:「Xは、A県を被告として、拒否処分の取消訴訟を提起すべきである。」
③ 「要件を示して説明せよ」型のテンプレート
〔制度・請求〕には、〔要件1〕、〔要件2〕、〔要件3〕が必要であり、本件は〇〇にあたる。
- 要件列挙型は、要件そのものがキーワード。要件を並べるだけで部分点が積み上がる
- 例:「表見代理の成立には、代理権授与の表示、相手方の善意無過失が必要である。」
テンプレートを使った組み立て手順
本番では次の順序で答案を組み立てます。
- 結論を先に決める(誰が・何を・できる/すべき)
- 結論を導く根拠(条文番号・法律構成)を決める
- 問題文の事実から、あてはめに必要な要件キーワードを拾う
- テンプレートの空欄を埋める
- 字数を数えて35〜45字に調整する
この手順なら、知識があやふやでも「結論+根拠+要件のどれか」を埋められ、確実に部分点に届きます。
行政法の記述式|傾向と対策
出題傾向
行政法の記述式(問題44)は、主に以下のテーマから出題されます。
- 取消訴訟の被告・訴訟要件
- 義務付け訴訟・差止訴訟の要件
- 国家賠償法の要件
- 行政手続法の手続的瑕疵
- 行政不服審査法の審査請求
行政法の解答例
例題1:Xが、A市長による建築許可の拒否処分に対して取消訴訟を提起する場合、被告は誰か。40字程度で記述しなさい。
解答例(36字):
「Xは、処分をしたA市長の所属するA市を被告として、取消訴訟を提起すべきである。」
行政事件訴訟法第11条第1項
「処分又は裁決をした行政庁が国又は公共団体に所属する場合には、取消訴訟は、当該処分又は裁決をした行政庁の所属する国又は公共団体を被告として提起しなければならない。」
例題2:Xが、行政庁Aに対して許認可の申請をしたが何ら応答がない場合、Xはどのような訴訟を提起できるか。40字程度で記述しなさい。
解答例(39字):
「Xは、Aの所属する国又は公共団体を被告として、申請型義務付け訴訟を提起できる。」
行政事件訴訟法第3条第6項第2号
「行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないとき」に義務付けの訴えを提起できる。
行政法の頻出テーマを要件レベルで押さえる
行政法の記述は、訴訟要件を問う問題が中心です。以下の頻出テーマは、要件を丸ごとキーワードとして覚えておくと、ほぼそのまま解答に転用できます。
処分性(行政事件訴訟法3条2項)
取消訴訟の対象となる「処分」とは何かを問うテーマです。判例の定義がそのまま記述のキーワードになります。
行政事件訴訟法第3条第2項
「この法律において『処分の取消しの訴え』とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。)の取消しを求める訴訟をいう。」
判例(最判昭39.10.29)は、処分性を「公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているもの」と定義します。記述では「直接」「国民の権利義務を形成・確定」という語が配点キーワードになります。
原告適格(行政事件訴訟法9条)
「処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者」が誰かを問うテーマです。
行政事件訴訟法第9条第1項
「処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴えは、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者……に限り、提起することができる。」
第三者の原告適格が問われた場合、9条2項が定める考慮要素(処分の根拠法令の趣旨・目的、害される利益の内容・性質)を踏まえ、「個別的利益として保護されているか」を論じます。キーワードは「法律上の利益」「個別的利益として保護」。
狭義の訴えの利益
処分が取り消されても回復すべき利益が残っているか、というテーマです。建築工事完了後の建築確認取消しの訴えの利益(最判昭59.10.26=消滅する)、運転免許停止処分の期間経過(訴えの利益消滅)などが典型。記述では「処分の効果が期間経過等により消滅した」「回復すべき法律上の利益」がキーワードです。
行政不服審査法の審査請求
行政不服審査法第2条
「行政庁の処分に不服がある者は、第四条及び第五条第二項の定めるところにより、審査請求をすることができる。」
審査請求先(処分庁に上級行政庁があれば最上級行政庁=4条)、審査請求期間(処分を知った日の翌日から起算して3か月=18条1項)が頻出。「審査請求」「最上級行政庁」「3か月」がキーワードです。訴訟(取消訴訟)と審査請求は別制度なので、問われた制度を取り違えないこと。
行政手続法の手続的瑕疵
不利益処分における理由の提示(14条)、申請に対する処分の審査基準(5条)・標準処理期間(6条)、聴聞・弁明の機会の付与(13条)が頻出です。
行政手続法第14条第1項
「行政庁は、不利益処分をする場合には、その名宛人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。」
理由提示の不備が処分の取消事由になるか(最判平23.6.7=なる場合がある)が記述で問われやすく、「理由の提示」「名宛人」「不利益処分」がキーワードになります。
行政法で落としやすいポイント
- 被告を間違える:行政庁ではなく行政庁の所属する国又は公共団体が被告
- 訴訟類型を間違える:義務付け訴訟と差止訴訟の区別、申請型と非申請型の区別
- 行政事件訴訟法と行政不服審査法を混同する:訴訟と審査請求は別の制度
- 「処分性」と「原告適格」を混同する:処分性は対象(行為)の問題、原告適格は主体(誰が訴えられるか)の問題
民法の記述式|傾向と対策
出題傾向
民法の記述式(問題45・46)は、主に以下のテーマから出題されます。
- 債務不履行に基づく損害賠償請求
- 不法行為に基づく損害賠償請求
- 物権変動と対抗要件
- 代理(無権代理・表見代理)
- 契約解除と原状回復
- 抵当権の物上代位
- 債権譲渡
- 相続
民法の解答例
例題1:AがBに甲土地を売却したが、BがCに甲土地を転売し移転登記を済ませた後、AがBの債務不履行を理由に売買契約を解除した。AはCに甲土地の返還を請求できるか。40字程度で記述しなさい。
解答例(40字):
「AはCに対し甲土地の返還を請求できない。解除前の第三者Cは登記を備えており保護される。」
民法第545条第1項ただし書
「ただし、第三者の権利を害することはできない。」
判例(最判昭33.6.14)は、解除前の第三者は対抗要件(登記)を備えていれば保護されるとしています。
例題2:Aが代理権を有しないBに甲土地の売却を委任されたと称してCと売買契約を締結した場合、Cはどのような主張ができるか。40字程度で記述しなさい。
解答例(38字):
「Cは、Aに対し相当の期間を定めて追認するかどうかの催告をすることができる。」
民法第114条
「前条の場合において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。」
民法は「要件と効果」で覚える
民法の記述で得点する最短ルートは、頻出テーマを「要件(こういう事実があれば)→効果(こういう請求ができる)」のセットで暗記することです。問題文の事実が要件を満たすかを判定し、効果を結論として書けば答案になります。主要テーマの要件・効果を整理します。
債務不履行解除のテンプレ解答例
問題:「AがBに建物を売ったが、Bが期日を過ぎても代金を支払わない。Aは契約を解除できるか。要件とともに40字程度で記述しなさい。」
民法第541条本文
「当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。」
解答例(40字):「Aは、相当の期間を定めて催告し、期間内に履行がなければ売買契約を解除できる。」
キーワード:「相当の期間」「催告」「期間内に履行がない」「契約の解除」。要件をそのまま並べるだけで4つのキーワードが入り、部分点を確実に拾えます。
民法で落としやすいポイント
- 条文番号を間違える:特に債務不履行(415条)と不法行為(709条)の混同に注意
- 当事者の関係を取り違える:問題文の事実関係を図に書いて整理する
- 善意・悪意、過失の有無を見落とす:第三者保護規定では主観的要件が重要
- 要件の一部しか書かない:「催告」だけでなく「相当の期間」「期間内に履行がない」まで書いて初めて満点に近づく
記述式の学習スケジュール
試験1年前〜半年前:基礎固め期
- 択一式の学習と並行して、重要条文の要件と効果を正確に覚える
- 「AがBに対して○○を請求できる」という形式で条文の効果をまとめるノートを作成する
- この段階では記述式の問題を解く必要はなく、知識のインプットを優先する
試験半年前〜3か月前:実践期
- 過去問の記述式を解き始める
- 最初は時間制限なしで丁寧に解答を作成し、模範解答と照らし合わせる
- キーワードを何個拾えたかをチェックし、自分の弱点テーマを把握する
- 1日1問ペースで記述式の練習を積む
試験3か月前〜直前:仕上げ期
- 時間を計って解答する練習(1問5〜7分が目安)
- 過去10年分の記述式を最低2周回す
- 予備校の模試で記述式の添削を受ける
- 頻出テーマの模範解答を暗記する
本番での解答戦略
時間配分
行政書士試験の試験時間は3時間(180分)です。記述式3問に割ける時間は20〜25分程度が目安です。
本番で使える5つのルール
- 白紙で出さない:キーワードを1つでも書けば部分点の可能性がある
- 問題文の指示に正確に答える:「誰を被告として」と聞かれたら被告を書く
- 略字・略語は使わない:「取消訴訟」を「取消し」と略さない
- 漢字に自信がなければひらがなで書く:誤字は減点対象
- 下書きをしてから清書する:問題用紙の余白を使って字数を確認する
過去問の解答例分析|部分点はこう積み上がる
記述式の採点がどう動くかを、典型的な過去問パターンを使って分解してみます。出題者が想定するキーワードを「採点ブロック」として可視化すると、部分点の取り方が見えてきます。
分析例:行政法・取消訴訟の被告と訴訟類型
問題:「A県知事の営業許可拒否処分を争うため、Xはどのような被告に対し、いかなる訴訟を提起すべきか。40字程度で記述しなさい。」
満点解答例(39字):「Xは、A県を被告として、営業許可拒否処分の取消訴訟を提起すべきである。」
この解答を採点ブロックに分解すると次のようになります。
ここから部分点の取り方が見えます。
- 訴訟類型を「取消訴訟」と書ければ、被告を間違えても約8点は確保できる
- 逆に「A県知事を被告として」と書くと被告ブロックは0点だが、訴訟類型と対象で約12点は残る
- どこか1ブロックでも正しく書けば加点されるのが部分点方式
分析例:民法・無権代理
問題:「Bの代理人と称するAがCと契約したが、Aに代理権はなかった。Cが本人Bに対して取りうる手段を、40字程度で記述しなさい。」
満点解答例(40字):「Cは、Bに対し、相当の期間を定めて追認するかどうかの催告をすることができる。」
「催告」という用語だけでも約8点。さらに「相当の期間」を添えれば約16点。用語1語が大きな配点を持つことがわかります。だからこそ白紙は厳禁であり、思いついたキーワードは1つでも書き込むべきなのです。
書いてはいけないNG|減点・0点になる答案
部分点方式とはいえ、次のような答案は加点されないどころか減点や実質0点になります。
- 問いに答えていない:「被告は誰か」と聞かれているのに被告を書かず、訴訟の流れだけ説明する。問いに対応しない記述は配点ブロックに乗らない
- 法律用語を日常語で言い換える:「取消訴訟」を「やめさせる裁判」、「催告」を「お願いする」などと書くとキーワード認定されない
- 条文・要件をぼかす:「何らかの請求ができる」「適切な訴訟を起こす」のような中身のない記述は0点
- 誤った条文番号・誤った法律構成:間違った条文を断定的に書くと、その部分は加点されず論理破綻として全体の心証も悪化する
- 字数の極端な不足:20字未満は内容が薄く、実質的に部分点が付きにくい
- 解答欄をはみ出す・複数解答を併記する:「AまたはBを被告として」のように逃げで両論併記すると、誤りを含む分だけ評価が下がることがある
- 判読不能な乱筆・誤字:採点者が読めない字は採点対象外。法律用語の誤字(「賠償」を「倍償」など)は減点
「やりがち」だが避けるべき書き方
- 理由を長々書いて結論を書く前に字数が尽きる(結論ファースト原則違反)
- 問題文の事実をそのまま書き写すだけで法的評価を加えない
- 「〜と思われる」「〜ではないだろうか」など曖昧な語尾で締める
記述式のよくある誤解
記述式には受験生が陥りやすい思い込みがあります。代表的なものを正しておきます。
誤解1:記述式は満点を取らないと意味がない
誤りです。記述式は部分点方式で、合格者の多くは3問合計20〜40点です。満点ではなく「各問で部分点を積む」のが正解の戦略です。
誤解2:字数は40字ぴったりにしないと減点される
誤りです。「40字程度」は概ね35〜45字が許容範囲です。字数を1字合わせることに神経を使うより、キーワードを漏らさないことが先決です。
誤解3:きれいな文章・うまい文章が評価される
誤りです。採点はキーワードの有無が中心で、文学的なうまさは評価されません。むしろ装飾的な表現は字数を浪費します。
誤解4:記述対策は直前期だけで間に合う
危険な誤解です。記述で問われる知識は択一の知識と同じ条文・判例ですが、「正確にアウトプットする」訓練は別物です。最低でも試験3か月前からは答案作成の練習が必要です。
誤解5:行政法は2問、民法は1問出る
誤りです。行政法1問・民法2問が正しい構成です。配分を逆に覚えていると学習バランスを誤ります。
よくある質問(FAQ)
Q. 記述式は何点取れば合格に十分ですか。
A. 一概には言えませんが、択一・多肢選択で160点前後を確保できる前提なら、記述で20点取れば合格ラインに届く計算です。逆に択一が伸び悩む場合は記述で40点以上を狙う必要があります。いずれにせよ「3問とも部分点を取る」ことが最重要です。
Q. 漢字を間違えたら必ず0点ですか。
A. キーワード全体が判読不能になるほどの誤字は加点されない可能性が高いですが、軽微な誤字は減点にとどまることもあります。自信のない漢字はひらがなで書く方が安全です。法律用語(取消訴訟、損害賠償など)はひらがなでも意味が通れば加点され得ます。
Q. 結論と理由のどちらを優先して書くべきですか。
A. 結論を優先してください。40字では理由を詳述する余裕がありません。「結論+根拠(条文・要件のキーワード)」を一文に圧縮するのが基本です。
Q. 過去問は何年分やればよいですか。
A. 最低でも過去10年分を2周が目安です。記述式はテーマが循環するため、過去問の頻出テーマを潰すことが最も効率的な対策になります。
Q. 予備校の添削は受けるべきですか。
A. 可能なら受けることを強く推奨します。記述式は自己採点が甘くなりがちで、第三者の客観的な採点で「どのキーワードが抜けたか」を把握できると弱点が明確になります。模試の記述添削だけでも活用価値があります。
Q. 本番で全く分からない問題が出たらどうすればよいですか。
A. 白紙だけは避けてください。問題文に登場する法律用語、思いつく条文番号、関連しそうなキーワードを1つでも書き込みます。部分点方式なので、的外れでなければ加点される可能性が残ります。
確認問題
行政書士試験の記述式は、行政法2問・民法1問の合計3問で構成されている。
記述式の採点では部分点が認められており、キーワードを1つでも書ければ得点の可能性がある。
取消訴訟の被告は、処分をした行政庁そのものである。
記述式の「40字程度」とは厳密に40字ちょうどを意味し、字数が1字でもずれると減点される。
債務不履行に基づく契約解除を記述する場合、「相当の期間を定めた催告」と「期間内に履行がないこと」は配点キーワードになりうる。
まとめ
行政書士試験の記述式は、60点という大きな配点を持ち、合否を左右する重要なパートです。
記述式攻略の要点
- 出題構成:行政法1問・民法2問の計3問(各20点、合計60点)
- キーワードが命:法律用語・条文の要件・効果を正確に書くことが得点のカギ
- 40字の技術:結論ファースト、定型表現の暗記、不要語句の削除
- 部分点を狙う:完璧でなくても、キーワードを1つでも多く書く
- 白紙は厳禁:何か書けば得点の可能性がある
学習の進め方
- 試験1年前〜半年前:条文の要件・効果を正確にインプット
- 試験半年前〜3か月前:過去問を使った実践演習(1日1問)
- 試験3か月前〜直前:時間を計った演習と模範解答の暗記
記述式は「知識の正確さ」と「表現力」の両方が求められる問題です。日頃から「40字でまとめる」練習を重ね、本番で確実に得点できるようにしましょう。次の記事では、行政法・民法それぞれの頻出パターン10選を具体的な解答例とともに解説します。