行政書士は「やめとけ」と言われる理由|将来性の実態
「行政書士はやめとけ」「食えない」と言われる理由を、日行連の会員数・報酬額統計、行政書士試験研究センターの公表データで一つずつ検証。どこまでが事実で、どこからが誤解なのか。2026年施行の改正行政書士法とAIの影響まで率直に整理します。
結論|「やめとけ」の大半は正しい。ただし前提が抜けている
「行政書士 やめとけ」「行政書士 食えない」「行政書士 意味ない」。この記事にたどり着いた方の多くは、こうしたキーワードで検索してきたはずです。まず、擁護から入りません。ネットで言われている「やめとけ」の理由を、そのまま列挙します。
- 登録者が多い — 日本行政書士会連合会の公表値で、個人会員は54,186名(令和8年4月1日現在)
- 独占業務の単価が安いものがある — 日行連の報酬額統計では、車庫証明の平均報酬は13,428円
- 開業しても最初は仕事が来ない — 資格があっても顧客名簿は付いてこない
- AI・電子申請で定型業務が減る — 2026年1月1日施行の改正行政書士法は、一定の手続について行政書士以外の者による電磁的記録の作成を認めた
- 業務範囲の線引きが厳しい — 登記は司法書士、税務は税理士、紛争性のある案件は弁護士。「書けない書類」が多い
この5つは、いずれも事実を含んでいます。「そんなことはない」と否定する記事があれば、それは疑ったほうがいいでしょう。
ただし、この5つには共通して抜けている前提があります。それは「どの業務を、いくらで、どうやって受注するか」という変数です。 同じ資格を持ち、同じ独占業務を扱っていても、扱う分野が違えば1件13,428円と207,563円の差がつきます(後述する日行連の報酬額統計の実数値)。「行政書士は食えない」という文は、主語が大きすぎて検証できないのです。
本記事では、「やめとけ」と言われる理由を1つずつ取り上げ、事実として正しい部分と誤解・条件付きの部分を分けて検証します。数字は出典が確認できるものだけを使い、確認できないものは「公表データでは確認できない」と書きます。
この記事のスタンス
「行政書士は稼げない」とも「行政書士なら安泰」とも書きません。どちらも検証不可能な断定だからです。書くのは、公表データで確認できる事実と、そこから何が言えて何が言えないか、だけです。
まず現在地を数字で押さえる
議論の前に、出典が明確な数字を4つだけ確認します。ここから先の検証は、すべてこの土台の上で行います。
会員数:54,186名(個人)/1,719社(法人)
日本行政書士会連合会は、各都道府県行政書士会の会員数を公表しています。
出典:日本行政書士会連合会「各都道府県の行政書士会所在地・会員数等」
注意すべきは、この54,186名は「行政書士として登録・入会している人の数」であって、「行政書士業で生計を立てている人の数」ではないという点です。行政書士は登録しなければ業務を行えませんが(行政書士法6条1項)、登録しているからといって専業とは限りません。副業として登録している人、他士業と兼業している人、行政書士法人や他事務所の使用人として働いている人(行政書士法1条の5)、実質的にほとんど稼働していない人が、すべてこの数字に含まれます。
「54,186人がライバル」というのは、正確ではありません。同時に、「そのうち何割が専業か」を示す公表統計も存在しません。後者を断定している記事があれば、その根拠を確認してください。
令和7年度試験:受験者50,163人/合格者7,292人/合格率14.54%
行政書士試験研究センターが公表している、直近10年間の試験結果の推移です。
出典:行政書士試験研究センター「最近10年間における行政書士試験結果の推移」
ここに、しばしば見落とされる事実があります。合格者は毎年4,000〜7,300人出ているのに、会員数は54,186名です。もし合格者の大半が翌年登録していれば、会員数は毎年8〜13%のペースで増えるはずですが、実際にはそうなっていません。
日行連は会員数の年次推移を一覧の形では公表していないため、「合格者の何割が登録するか」を公表データから直接計算することはできません。ただし、上の2つの公表値を並べれば、合格者のかなりの割合が登録に至っていない、あるいは登録後に廃業していることは、構造として読み取れます。
これは「やめとけ」派にとっても、「将来性がある」派にとっても不都合な事実です。前者にとっては「ライバルは合格者数ほど増えていない」ことを意味し、後者にとっては「合格しても開業しない人が相当数いる」ことを意味するからです。
報酬額統計:487業務の実額データ
行政書士法10条の2第2項は、行政書士会および日行連に対し、報酬額の統計を作成・公表する努力義務を課しています。
行政書士会及び日本行政書士会連合会は、依頼者の選択及び行政書士の業務の利便に資するため、行政書士がその業務に関し受ける報酬の額について、統計を作成し、これを公表するよう努めなければならない。
― 行政書士法 第10条の2第2項
これに基づき、日行連は5年に1度、報酬額統計調査を実施しています。最新版は令和7年度報酬額統計調査(令和8年1月実施、487業務)で、業務ごとに回答者数・平均額・最小値・最大値・最頻値が公表されています。この記事で使う報酬の数字は、すべてこの調査の実数値です(消費税込・立替金を含まない)。
在留外国人数:412万5,395人(令和7年末)
出入国在留管理庁の公表値です。
出典:出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」
初めて400万人を超えました。この数字は後半の「伸びている領域」の章で使います。
なお、行政書士業界全体の市場規模(売上高の総額)を示す公的統計は存在しません。 「行政書士市場は◯◯億円」という記述をネット上で見かけますが、その多くは登録者数に推定平均売上を掛けた独自推計です。本記事では、根拠を確認できないためこの種の推計値は掲載しません。
「やめとけ」と言われる理由を1つずつ検証する
ここからが本題です。冒頭に挙げた5つの理由に、よく見かける「食えない」を加えた6つについて、事実として正しい部分と誤解・条件付きの部分を分けて検証します。
理由①「登録者が多すぎて競争が激しい」
事実として正しい部分
個人会員54,186名(令和8年4月1日現在)という数字は、他士業と比べても少なくありません。しかも行政書士試験には受験資格の制限がなく、年齢・学歴・実務経験を問わず誰でも受験できます(行政書士法3条・2条1号)。参入障壁が低い分、母集団は増えやすい構造です。
さらに、行政書士は登録さえすれば全業務を扱える建付けです。専門分野の届出制度や配属研修のような仕組みはないため、同じ地域で同じ業務を扱う競合が突然増えることは十分に起こり得ます。
誤解・条件付きの部分
一方で、「54,186人全員がライバル」という前提は成り立ちません。理由は3つあります。
- 業務が地理的に分断されている — 建設業許可は都道府県知事許可、農地法許可は市町村農業委員会、車庫証明は所轄警察署が窓口です。窓口の運用や必要書類のローカルルールが地域ごとに異なるため、東京の行政書士と鳥取の行政書士は、実務上ほとんど競合しません。
- 業務が専門ごとに分断されている — 後述の報酬額統計を見ると、同じ調査に回答した行政書士でも、扱っている業務はまったく重なりません。「建設業許可の変更届出(事業年度終了)」には1,029人が回答した一方、「在留資格認定証明書交付申請(経営・管理)」の回答は103人でした。同じ資格でも、実際に競合する相手はごく一部です。
- 登録者と稼働者は別物 — 副業登録、他士業との兼業、使用人行政書士、実質休業者がすべて54,186名に含まれます。
ただし念のため書いておくと、「稼働者は登録者の◯割」という公表統計はありません。「実際に営業しているのは6〜7割」といった記述をよく見かけますが、根拠となる調査を確認できませんでした。本記事ではこの割合を数字で断定しません。
結論:競争が激しいのは事実。ただし競争の単位は「全国の54,186人」ではなく「自分の地域 × 自分の業務分野」です。分野と地域を特定せずに「競争が激しい」と言っても、意思決定の役には立ちません。
理由②「独占業務の単価が安い」
これは最も検証しやすく、そして最も誤解されている論点です。日行連の令和7年度報酬額統計調査から、代表的な業務の実額を並べます。
出典:日本行政書士会連合会「令和7年度報酬額統計調査の結果」(令和8年1月実施)。金額は消費税込・立替金を含まない。最大値には複数件の一括受注や特殊案件が含まれている可能性があるため、単純な「上限相場」とは読めません。
事実として正しい部分
安い業務は、本当に安いです。車庫証明の平均は13,428円で、最頻値は5,000円。この単価では、1件あたりの作業時間を短縮しない限り、年間の売上は積み上がりません。「行政書士の仕事は安い」という指摘は、この層の業務を指す限り正しい。
さらに、車庫証明のような定型業務は差別化が難しく、価格競争に陥りやすい構造です。ディーラーや中古車販売店からの継続受注が取れれば量でカバーできますが、その枠は既存の行政書士が押さえていることが多く、新規参入者が入り込みにくい領域でもあります。
誤解・条件付きの部分
しかし、同じ表の中で、経営・管理ビザの平均は207,563円です。車庫証明の15.5倍。 これは別の資格の話ではなく、同じ行政書士が同じ独占業務として扱える範囲の中での差です。
さらに注目すべきは、同じ業務の中の分散です。「遺産分割協議書の作成」は、最小1,000円・最大1,000,000円。同じ名前の業務で1,000倍の開きがあります。回答者705人の分布を見ると、2万円未満が10.5%(74人)いる一方で、20万円以上も5.1%(36人)います。
この分散こそが答えです。「行政書士は安い」も「行政書士は高く取れる」も、どちらも同じデータから引き出せてしまう。だから「行政書士は食えない/食える」という文は、そもそも真偽を判定できないのです。
判定できるのは、次の問いだけです。
- 自分が扱おうとしている業務の平均報酬はいくらか
- その業務を年間何件受注できる見込みがあるか
- 1件あたりの作業時間はどれくらいか
結論:安い業務があるのは事実。ただし単価は業務選択の結果であって、資格の性質ではありません。単価を「与えられるもの」と考えるか「選ぶもの」と考えるかで、この理由の重みはまったく変わります。
理由③「開業しても仕事が来ない期間がある」
事実として正しい部分
これは、ほぼ全面的に正しい指摘です。しかも、「やめとけ」の理由の中で最も多くの人が実際につまずくポイントでもあります。
行政書士試験は、憲法・民法・行政法・商法という法律科目を問う試験です。合格に必要なのは法律知識であって、営業力ではありません。試験に受かっても、「誰に、どうやって、自分を知ってもらうか」は一切訓練されていないまま開業日を迎えます。
加えて、行政書士には勤務先が限られるという事情もあります。税理士や社労士に比べ、有資格者を雇う事務所の絶対数が少ないため、「まず勤務して実務を覚え、顧客との接し方を学んでから独立する」という王道ルートを取りにくい。法人会員は1,719社(令和8年4月1日現在)で、個人会員54,186名に対して規模が小さいことがわかります。
誤解・条件付きの部分
誤解があるとすれば、これを「行政書士固有の問題」と捉える点です。顧客ゼロから始める点は、あらゆる独立開業に共通します。税理士も社労士も、飲食店も美容室も同じです。行政書士だけが不利なわけではありません。
また、「仕事が来ない期間」の長さは、事前準備の量にほぼ比例します。開業前に地域の許認可需要を調べ、扱う業務を1〜2分野に絞り、その分野の実務書を読み込み、Webの受け皿を用意しておくかどうかで、初年度の景色は変わります。
結論:正しい。ただし「行政書士だから」ではなく「独立だから」です。この理由が刺さる人は、行政書士以外の独立でも同じ壁にぶつかります。逆に言えば、対策も独立一般の対策と同じで、業務の絞り込みと集客導線の事前構築に尽きます。
詳しい初年度の動き方は 開業1年目のリアルな売上と成功のコツ と 行政書士の営業方法 で扱っています。
理由④「AI・電子申請で定型業務が減る」
この理由は、2026年に法律レベルで裏付けが与えられました。これまで「将来そうなるかもしれない」という予測だったものが、条文になったのです。
事実として正しい部分
2026年1月1日施行の改正行政書士法は、業務の制限を定める19条1項に、次のただし書を加えました。
行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない。
― 行政書士法 第19条1項(2026年1月1日施行)
つまり、総務省令で指定された「定型的かつ容易な手続」については、行政書士でない者が電磁的記録を作成しても、19条違反にならないという例外が新設されました。総務大臣は、この省令を定めるにあたり当該手続を所管する国務大臣の意見を聴くものとされています(同条2項)。
これは、独占業務の外縁が法律上明示的に削られたということです。「AIで仕事が減る」という漠然とした不安ではなく、電子化を前提とした定型手続について、独占の範囲が縮む方向の立法が実際に行われたという事実は、率直に受け止めるべきです。
注意:条文番号にも改正が入っています。従来「業務」を定めていた1条の2は、改正後は1条の3になりました。1条の2は「職責」に、1条は新設の「使命」規定になっています。古い教材や記事では旧番号のままのものが多いので、条文を引くときは注意してください。
同時に、1条の2第2項には次の努力義務が置かれました。
行政書士は、その業務を行うに当たつては、デジタル社会の進展を踏まえ、情報通信技術の活用その他の取組を通じて、国民の利便の向上及び当該業務の改善進歩を図るよう努めなければならない。
― 行政書士法 第1条の2第2項
「デジタル化に対応せよ」が、行政書士自身の法律上の努力義務になったわけです。制度設計者が、行政書士に何を期待しているかがはっきり読み取れる条文です。
誤解・条件付きの部分
一方で、この改正を「行政書士の独占業務が全面的に開放された」と読むのは誤りです。例外の範囲は「定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続」に限定され、作成できる者も「相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者」に限定されます。誰でも何でも作れるようになったわけではありません。
また、AIについて言えば、行政書士の業務のボトルネックは書類の清書ではありません。「この事業計画で経営・管理の在留資格が下りるか」「この役員構成で経営業務の管理責任者の要件を満たすか」といった、要件充足の見立てと、それを満たすための事実関係の組み立てが本体です。ここは、依頼者から必要な事実を引き出す作業と、行政庁の運用の勘所を知っていることが前提になります。
結論:正しい。しかも法律で裏付けられた。ただし削られるのは「定型的かつ容易」な領域であり、要件充足の判断が必要な領域とは切り分けられています。この理由を重く受け止めるべきなのは、定型・低単価の反復業務を主軸に据えようとしている人です。
AIと行政書士の関係の詳細(代替されやすい業務・されにくい業務、必要なスキル、活用の実際)は AIと行政書士の将来性 で扱っています。本記事では概観にとどめます。電子申請の実務は 行政書士の電子申請対応 を参照してください。
理由⑤「業務範囲の線引きが厳しい」
事実として正しい部分
これも正しい指摘です。行政書士法1条の3第1項は、業務を「官公署に提出する書類(電磁的記録を含む)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む)を作成すること」と定めていますが、続く2項が重要です。
行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。
― 行政書士法 第1条の3第2項
つまり、他士業法が押さえている領域は、行政書士の業務範囲から除かれます。
相続を例に取ると、遺産分割協議書の作成は行政書士の業務ですが、その協議書に基づく不動産の相続登記は司法書士、相続税の申告は税理士、相続人間で争いがあれば弁護士です。会社設立でも、定款作成は行政書士、設立登記は司法書士です。
「一つの案件を最後まで自分で完結できない」場面が多いのは、行政書士という資格の構造的な特徴です。
誤解・条件付きの部分
ただし、この「線引きの厳しさ」には裏面があります。他士業が押さえていない広大な領域を、行政書士が押さえているのです。
建設業許可、産業廃棄物処理業許可、宅建業免許、古物商許可、飲食店営業許可、農地法許可、風俗営業許可、運送業許可、在留資格関連、帰化申請。これらはいずれも、他士業には扱えません。報酬額統計が487業務をカバーしていること自体が、業務範囲の広さを物語っています。
もう1点。連携を「弱み」ではなく「入口」と捉える見方があります。相続案件で司法書士と組む、建設業許可で社労士と組む、といった形で、他士業から案件が流れてくるルートを作っている行政書士は少なくありません。線引きが明確だからこそ、他士業にとって行政書士は「競合しない紹介先」になり得ます。
結論:正しい。ただし「できないことが多い」と読むか「他士業が触れない許認可を独占している」と読むかで意味が反転します。他士業連携については 他士業との連携 を参照してください。
理由⑥「食えない・年収が低い」
事実として正しい部分
「食えない人が一定数いる」ことは、ほぼ確実です。理由①〜⑤がすべて重なる人、つまり競合の多い地域で、低単価の定型業務を、営業導線なしで、開業後の準備もなく始めた人は、売上が立ちません。これは行政書士に限らず独立一般の話ですが、行政書士は参入障壁が低い分、この条件に当てはまる人が入ってきやすい構造にあります。
誤解・条件付きの部分
ここで注意が必要なのは、「行政書士の平均年収」として流通している数字の出所です。行政書士だけを対象にした、母集団が明示された公的な年収調査を、本記事の調査時点で確認できませんでした。
- 日行連の報酬額統計調査は業務単位の報酬額の調査であり、会員の年収・売上を調査したものではありません
- 求人サイトの平均年収は、求人を出している事務所の勤務行政書士が母集団であり、開業行政書士の実態を表しません
- 「行政書士の年収は◯◯万円」という記述を見たら、必ず「誰を何人調べた数字か」を確認してください
確認できない以上、本記事では行政書士の平均年収を数字で示しません。代わりに言えるのは、報酬額統計の分散から読み取れることです。同じ「遺産分割協議書の作成」で1,000円から1,000,000円まで開くのであれば、年収の分布も同程度に広いと考えるのが自然です。平均値を出したところで、その分布を代表しません。
結論:「食えない人がいる」は正しい。「行政書士は食えない」は検証不可能。年収については 行政書士の平均年収 と 報酬額の設定と相場 でも扱っていますが、そこに書かれた数字も含め、出所を確かめる習慣を持ってください。
「やめとけ」が当たる人・当たらない人
ここまでの6つの検証を、判断材料の形に組み直します。
「やめとけ」がそのまま当たる人
以下の条件が重なるほど、「やめとけ」は正しい忠告になります。
「やめとけ」が当たらない人
逆に、以下に当てはまる場合、この忠告はあまり意味を持ちません。
この2つの表の差は、能力の差ではありません。前提条件の差です。「行政書士に将来性があるか」ではなく、「自分の前提条件で行政書士を選ぶことに合理性があるか」が、答えを出せる唯一の問いです。
数字で確認できる「伸びている領域」
「将来性がある」という言葉は、それだけでは何も言っていません。ここでは、公表統計で増加が確認できる領域と、増加を数字で確認できない領域を、正直に分けて書きます。
入管業務(外国人関連)— 公表統計で明確に増加している
在留外国人分野は、本記事で扱う分野の中で唯一、政府統計で増加が明確に確認できる領域です。
出典:出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」
在留外国人数は令和7年末に初めて400万人を超えました。特に特定技能が1年で10万人以上増えている点は見逃せません。特定技能の在留者は在留期間更新が必要であり、受入れ機関側にも各種の届出義務があります。制度の性質上、人数の増加がそのまま反復的な手続き需要につながる構造です。
報酬水準の面でも、この分野は他より高い位置にあります。前掲の報酬額統計で、在留資格認定証明書交付申請(経営・管理)の平均は207,563円、同(就労資格)は120,174円でした。
一方で注意点もあります。この分野の回答者数は、建設業許可分野より明らかに少ない。在留資格認定証明書交付申請(経営・管理)の回答者は103人、在留期間更新許可申請(就労資格)は213人でした。建設業変更届出(事業年度終了)の1,029人と比べると、扱っている行政書士がまだ少ない領域だと読めます。これを「参入余地がある」と読むか「案件が少ない」と読むかは、地域によって答えが変わります。
在留資格の種類や実務は 在留資格の種類と要件、外国人支援業務の実務、帰化申請の実務 を参照してください。
建設業許可 — 「安定」だが、内訳を見る必要がある
報酬額統計で最も回答者が多かった業務は、「建設業変更届出(事業年度終了)」の1,029人でした。平均報酬は42,997円。建設業許可を持つ事業者には毎年の決算変更届が義務づけられるため、一度受注すれば毎年発生する反復業務です。
出典:日本行政書士会連合会「令和7年度報酬額統計調査の結果」
この表は、行政書士の実務の重心がどこにあるかを端的に示しています。最も多くの行政書士が扱っているのは、単価15万円の新規許可申請ではなく、単価4万円台の年次届出です。継続顧客からの反復受注が事務所経営の土台になっているという構造が、公表データから読み取れます。
裏を返せば、理由②で見た「単価が安い」問題は、この反復業務層で最も強く効きます。1件43,000円の業務で年商を組み立てるには、相当な件数と効率化が必要です。
建設業許可の実務は 建設業許可申請の実務 と 建設業許可の更新手続 で扱っています。
相続関連 — 扱う人は多いが、単価の分散が最も激しい
相続分野は、報酬額統計の回答者数から見ても、行政書士に広く扱われている領域です。
出典:日本行政書士会連合会「令和7年度報酬額統計調査の結果」
この分野を「将来性がある」と紹介する記事は多いのですが、同時に見るべきは分散の大きさです。遺産分割協議書の作成は、回答者705人のうち2万円未満が74人(10.5%)、20万円以上が36人(5.1%)。同じ業務名で、報酬が2桁違います。
つまり相続分野は、「需要はある」が「単価は自分で決めている」領域です。相続人調査から遺言、財産目録、金融機関の手続きサポートまでを一連のサービスとして設計している事務所と、協議書1枚を単発で請け負う事務所とでは、同じ「相続業務」でも売上構造がまったく違います。
なお、令和7年度の報酬額統計では「相続土地国庫帰属の承認申請」が新規業務として追加されました。制度改正が新しい業務を生む例です。
相続実務の詳細は 相続・遺言業務の実務 と 遺産分割協議書の作成 を参照してください。
補助金・助成金申請支援 — 単価は高いが、扱っている人は少ない
報酬額統計から、この分野の実像がよくわかります。
出典:日本行政書士会連合会「令和7年度報酬額統計調査の結果」
平均247,375円は、487業務の中でも高い水準です。回答者32人のうち26人(81.3%)が10万円以上と回答しています。
一方で、回答者はわずか32人。建設業の年次届出(1,029人)と比べると、この分野を実際に扱っている行政書士がいかに少ないかがわかります。単価が高いのに扱う人が少ない理由は、おそらく難易度と成果報酬型の性質にあります。補助金は採択・不採択があり、事業計画の内容そのものを組み立てる力が要求されます。「書類を整える」スキルではなく「事業を言語化する」スキルの領域です。
補助金業務については 補助金・助成金申請支援の実務 で扱っています。
環境・エネルギー関連 — 許認可の受け皿として着実
産業廃棄物処理業の許可は、報酬額統計でも一定の規模があります。
出典:日本行政書士会連合会「令和7年度報酬額統計調査の結果」
新規申請と更新申請の回答者数がほぼ同数である点に注目してください。産廃許可は5年ごとの更新が必要で、一度取れば継続的な関係になる業務です。建設業許可と同じ「反復型」の構造を持っています。
太陽光発電設備や省エネ法関連の届出も、カーボンニュートラル政策の進展に伴って言及されることが増えていますが、行政書士業務としての件数や報酬水準を示す公表統計を確認できませんでした。この記事では「拡大している」と断定しません。
産廃許可の実務は 産業廃棄物処理業許可の実務 を参照してください。
DX関連(電子申請・デジタル行政)
行政手続きのオンライン化は着実に進んでいます。建設業許可の電子申請システム、在留申請オンラインシステム、法人設立ワンストップサービスなど、行政書士が日常的に使う手続きの多くが、すでに電子申請の受け皿を持っています。
ただし、DXを「新しいビジネスチャンス」と単純に描くのは、この記事の立場ではありません。理由④で見たとおり、2026年施行の改正19条は、独占の外縁を削る方向の立法です。電子化が行政書士に有利にはたらくという保証はありません。
現時点で言えるのは、次の2点にとどめます。
- 電子申請への対応は、行政書士法1条の2第2項の努力義務として明文化された。対応しない選択肢は制度上想定されていない
- 電子化によって短縮された作業時間を何に振り向けるかで、事務所ごとの差が開く
AIとの関係|この記事では概観にとどめる
「行政書士 AI 仕事なくなる」は、「やめとけ」と並んで検索されるテーマです。ここでは結論だけを整理し、詳細は専用の記事に譲ります。
押さえるべき3点
1. 影響は「予測」ではなく「立法」の段階に入った
理由④で見たとおり、2026年1月1日施行の改正行政書士法19条1項ただし書は、総務省令で定める「定型的かつ容易に行える手続」について、行政書士以外の者による電磁的記録の作成を認めました。AIの影響を語るとき、この条文を外して議論することはできません。
2. 削られるのは「作成」であって「見立て」ではない
行政書士の業務の実質は、書式を埋める作業ではなく、要件を満たすかどうかの判断と、満たすための事実関係の組み立てです。建設業許可であれば経営業務の管理責任者と専任技術者の要件、経営・管理の在留資格であれば事業の実在性と継続性。ここは依頼者から必要な事実を聞き出し、行政庁の運用に照らして構成する作業であり、テンプレートの自動生成とは性質が異なります。
3. ただし「見立てが必要な業務」に移れるとは限らない
よくある結論は「定型業務はAIに任せて、コンサルティングに移行しよう」です。しかし、それは移行できる人の話です。定型業務を効率よく回すことで成立している事務所が、明日からコンサルティング型に転換できるわけではありません。移行には、扱う分野の変更、単価の再設定、集客導線の作り直しが伴います。
代替されやすい業務・されにくい業務の具体的な整理、必要なスキル、AIツールの実務的な使い方については、AIと行政書士の将来性 で詳しく扱っています。
それでも続けている人・伸びている人は何をしているか
ここまでの検証を踏まえて、「やめとけ」の理由が当てはまる構造の中で、それでも成立させている人が何をしているかを4つに整理します。精神論ではなく、報酬額統計から読み取れる構造に沿った話です。
1. 専門特化して、扱う業務を絞っている
報酬額統計の回答者数を見れば、行政書士が実際には「全業務を扱っていない」ことがはっきりわかります。487業務のうち、回答者が500人を超えたのは10業務程度。多くの業務は回答者が数十人以下です。
これは、行政書士が現実には専門分化していることを意味します。「何でもやります」は、統計上むしろ少数派です。
特化がなぜ効くのかは、単価の構造から説明できます。
分野の選び方は 専門分野の選び方 で扱っています。前職の業界知識と接続する分野を選べるかどうかが、初速を大きく左右します。
2. 単価を「決めている」
報酬額統計を業務ごとに見ると、必ず最小値と最大値に大きな開きがあります。遺産分割協議書は1,000円〜1,000,000円、建設業許可(法人・新規)知事は30,000円〜365,000円。
この開きは、業務の難易度だけでは説明できません。同じ書類を作るのに、価格を「相場に合わせる」人と「提供価値から決める」人がいる、というのが実態に近いでしょう。
行政書士には、報酬額を事務所の見やすい場所に掲示する義務があります(行政書士法10条の2第1項)。掲示するということは、自分で決めた額があるということです。報酬額統計は、依頼者の選択と行政書士の業務の利便に資するために公表されているものであって(同条2項)、従うべき基準額ではありません。
価格設定の考え方は 報酬額の設定と相場 を参照してください。
3. 他士業と連携している
理由⑤で見たとおり、行政書士の業務範囲は他士業法によって明確に区切られています(行政書士法1条の3第2項)。この線引きを、案件が流入する入口として使っている人がいます。
重要なのは、これらの連携先にとって行政書士は競合ではないという点です。業務範囲が法律で切り分けられているからこそ、安心して紹介できる。「線引きが厳しい」ことが、そのまま紹介ルートの根拠になっています。
連携の実務は 他士業との連携、ダブルライセンス戦略は 行政書士と社労士のダブルライセンス、司法書士とのダブルライセンス で扱っています。
4. Web集客の導線を持っている
行政書士業務の多くは、依頼者にとって人生に数回、あるいは事業で数年に一度しか発生しない手続きです。建設業許可を取りたい事業者は、知り合いに行政書士がいなければ検索します。相続で協議書が必要になった人も同じです。
つまり、紹介ネットワークを持たない新規参入者にとって、検索は数少ない対等な入口です。
ここで効いてくるのが、1つ目の「専門特化」です。「行政書士」で検索上位を狙うのは現実的ではありませんが、「◯◯市 建設業許可 行政書士」「産廃 収集運搬 許可 ◯◯県」といった、地域 × 業務の掛け合わせであれば、個人事務所でも十分に勝負になります。理由①で見た「業務が地理的・専門的に分断されている」構造が、ここでは有利にはたらきます。
集客の具体策は 事務所の集客方法、SNS・YouTubeを使った集客、ブランディング戦略 を参照してください。
公表データでは確認できないこと
この記事の信頼性のために、確認できなかったことを明示しておきます。「行政書士 やめとけ」系の記事の多くは、以下の数字を出典なしで書いています。読むときは注意してください。
確認できない数字を書かないのは、隠すためではありません。「行政書士の平均年収は400万円」と書いた瞬間、読者はそれを判断材料にしてしまいます。根拠のない数字で人のキャリア選択を左右するのは、この記事の目的ではありません。
一方で、本記事が使った数字はすべて出典を示しています。
制度は行政書士をどう位置づけているか
「やめとけ」の議論は、どうしても市場や単価の話に寄ります。しかし、制度の側が行政書士をどう位置づけようとしているかも、将来性を考える材料になります。2026年1月1日施行の改正法は、この点で示唆に富んでいます。
使命規定の新設(1条)
改正法は、行政書士法の冒頭に「使命」規定を新設しました。
行政書士は、その業務を通じて、行政に関する手続の円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し、もつて国民の権利利益の実現に資することを使命とする。
― 行政書士法 第1条(2026年1月1日施行)
士業法に使命規定が置かれるのは、その資格を制度上どう位置づけるかの宣言です。「行政手続の円滑な実施」と「国民の権利利益の実現」の両方が挙げられている点が重要で、単なる代行者ではなく、手続と権利の間に立つ職能として位置づけられています。
出題ポイント:使命規定(1条)・職責規定(1条の2)・業務規定(1条の3)・代理等の規定(1条の4)の条文番号は、2026年1月1日施行の改正でシフトしました。旧法で「業務」を定めていた1条の2は、改正後は1条の3です。過去問や古い教材を使う際は、必ず条文番号を確認してください。
特定行政書士(1条の4第1項2号・2項)
不服申立ての代理は、特定行政書士に限って行うことができます。
前条の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成すること。
― 行政書士法 第1条の4第1項2号
前項第二号に掲げる業務は、当該業務について日本行政書士会連合会がその会則で定めるところにより実施する研修の課程を修了した行政書士(以下「特定行政書士」という。)に限り、行うことができる。
― 行政書士法 第1条の4第2項
この制度が示しているのは、行政書士の業務が「申請」から「争い」の手前まで広がったということです。自分が代理した許認可申請が不許可になったとき、その不服申立てまで一貫して扱える。理由⑤で見た「線引きの厳しさ」の中で、行政書士側に拡張された数少ない領域です。
ただし対象は、行政書士が作成できる書類に係る許認可等に関する不服申立てに限られます。あらゆる行政不服申立てを扱えるわけではありません。
不服申立て手続の詳細は 行政不服審査と行政事件訴訟の比較、審査請求の手続 を参照してください。
使用人・法人という選択肢(1条の5、13条の3)
改正法は、行政書士が他の行政書士や行政書士法人の使用人として業務に従事することを妨げないと定めています(1条の5)。また、行政書士法人の設立も認められています(13条の3)。
法人会員は1,719社(令和8年4月1日現在)。個人会員54,186名に対しては小さい数字ですが、「合格したら即独立開業」以外の道が制度上用意されていることは、リスクの見積もりを変えます。使用人として実務を覚えてから独立する、あるいは使用人のまま働き続けるという選択肢は、制度上塞がれていません。
行政書士法人については 行政書士法人の仕組み、行政書士法の全体像は 行政書士法の基礎 を参照してください。
まとめ
「行政書士 やめとけ」という検索に対する、この記事の回答をまとめます。
1. 「やめとけ」の理由は、大半が事実を含んでいる
登録者が多いこと、安い業務があること、開業直後は仕事が来ないこと、定型業務の独占が削られる方向にあること、業務範囲が他士業法で区切られていること。いずれも事実です。これらを否定する記事は信用しないでください。
2. ただし、どの理由も「業務と地域を特定しない限り」検証できない
車庫証明の平均報酬は13,428円、経営・管理ビザは207,563円。同じ資格で15倍以上の差があります。遺産分割協議書に至っては、同じ業務名で1,000円から1,000,000円まで開きます(日行連 令和7年度報酬額統計調査)。「行政書士は食えない」は、主語が大きすぎて真偽を判定できない文です。
3. 制度は縮んでもいるし、広がってもいる
2026年1月1日施行の改正法は、19条1項ただし書で定型的な手続の独占を一部外す一方、1条に使命規定を新設し、1条の2第2項でデジタル対応の努力義務を課しました。縮小と拡張が同時に起きているというのが、正確な理解です。
4. 答えを出せる問いは1つだけ
「行政書士に将来性があるか」ではなく、「自分の前提条件(前職の業界知識・語学力・地域・営業経験・副業可否)で、どの業務を、いくらで、どうやって受注するのか」。この問いに具体的に答えられるなら、「やめとけ」はあなたに向けられた忠告ではありません。答えられないなら、それは資格の問題ではなく、計画の問題です。
5. 数字は出典を確かめる
行政書士の平均年収、市場規模、廃業率。これらを示す信頼できる公表統計を、本記事では確認できませんでした。数字を見たら「誰を何人調べたのか」を確認する習慣が、この分野では特に重要です。
日本行政書士会連合会が公表している会員数は、行政書士業を専業としている人の数を示している。
2026年1月1日施行の改正行政書士法により、行政書士でない者であっても、総務省令で定める定型的かつ容易な手続について、総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合には、業務の制限(19条1項)に違反しないこととなった。
2026年1月1日施行の改正行政書士法では、行政書士の「業務」を定める規定は1条の2である。
不服申立ての代理は、日本行政書士会連合会が実施する研修の課程を修了した特定行政書士に限り行うことができ、その対象は行政書士が作成できる書類に係る許認可等に関する不服申立てに限られる。
よくある質問(FAQ)
Q1. 結局、行政書士は本当に食えないのですか?
「食えない人がいる」は事実ですが、「行政書士は食えない」は検証できません。
日行連の令和7年度報酬額統計調査では、同じ「遺産分割協議書の作成」で報酬が1,000円から1,000,000円まで分布しています。業務別の平均も、車庫証明13,428円から経営・管理ビザ207,563円まで15倍以上の開きがあります。この分散を前に「行政書士は食えない/食える」と一括りにするのは、統計的に無理があります。
なお、行政書士のみを対象とした信頼できる年収調査を、本記事では確認できませんでした。求人サイトの「行政書士の平均年収」は勤務行政書士の求人が母集団であり、開業行政書士の実態を表しません。
Q2. 開業してから何年で軌道に乗りますか?
この問いに答えられる公表データはありません。「◯年で軌道に乗る」「◯年以内に◯%が廃業する」といった数字を示している記事を見かけますが、根拠となる調査を確認できたものはありませんでした。
言えるのは構造だけです。行政書士試験は法律知識を問う試験であり、営業を訓練しません。したがって、開業後の立ち上がり速度は、開業前にどれだけ「業務の絞り込み」と「集客導線の準備」を済ませたかにほぼ依存します。同じ日に開業しても、前職で建設業界にいた人と、まったく接点のない人とでは、初年度の景色が違って当然です。
具体的な立ち上げの動き方は 開業1年目のリアルな売上と成功のコツ を参照してください。
Q3. 他の士業と比べて、行政書士は割に合わないのでは?
比較の軸によります。
「割に合うか」は、投下する学習コストと、その後の業務選択の両方で決まります。受験コストが相対的に低いことは事実で、その分、参入者が多いことも事実です。他資格との比較は 法律系資格の難易度ランキング、行政書士と司法書士の比較、行政書士の難易度比較 で扱っています。
Q4. AIで行政書士の仕事はなくなりますか?
「なくなる」ではなく「削られる領域が特定されつつある」が正確です。
2026年1月1日施行の改正行政書士法19条1項ただし書は、総務省令で定める「定型的かつ容易に行える手続」について、行政書士以外の者による電磁的記録の作成を業務制限の例外としました。これは予測ではなく、成立した条文です。
一方で、要件を満たすかどうかの見立てと、満たすための事実関係の組み立ては、性質が異なります。詳細は AIと行政書士の将来性 を参照してください。
Q5. 今から目指す価値はありますか?
この問いは、そのままでは答えが出ません。次の3つに分解してください。
- どの業務を扱うか — 前職の業界知識、語学力、地域の産業構造と接続できるか
- いくらで受注するか — 報酬額統計で、その業務の平均・分布を確認したか
- どうやって受注するか — 紹介ルートか、検索か、既存顧客への追加提案か
この3つに具体的に答えられるなら、目指す価値はあります。答えられないなら、まずそこを詰めるべきで、それは資格を取る前でもできる作業です。
Q6. 「登録者が多すぎる」というのは、どのくらい深刻ですか?
全国レベルでは多いが、競合の単位は全国ではありません。
報酬額統計の回答者数を見ると、「建設業変更届出(事業年度終了)」には1,029人が回答した一方、「在留資格認定証明書交付申請(経営・管理)」は103人、「公的補助金・助成金の受給申請」は32人でした。同じ資格を持っていても、扱っている業務はほとんど重なりません。
加えて、建設業許可は都道府県知事許可、農地法許可は市町村農業委員会が窓口であるように、多くの業務は地理的にも分断されています。「自分の地域 × 自分の業務分野」で数えると、競合の数はまったく違う姿になります。
Q7. 副業から始めるのは現実的ですか?
制度上の障害はなく、「やめとけ」の理由の一部を無効化できます。
理由③で見た「開業しても仕事が来ない期間がある」は、収入が途切れることが問題の本質です。本業を持ったまま登録すれば、この期間のリスクを負わずに済みます。行政書士法1条の5は、他の行政書士や行政書士法人の使用人として業務に従事することも妨げていません。
ただし、勤務先の副業規定、事務所要件、日中の役所対応(多くの許認可窓口は平日日中のみ)といった実務上の制約があります。詳細は 行政書士の副業 を参照してください。
Q8. 「行政書士 オワコン」という言葉をよく見ますが、実際どうですか?
制度は縮小と拡張が同時に進行しています。
「オワコン」という言葉は、この2方向を1語に潰してしまいます。縮んでいるのは「定型・低単価・反復」の領域であって、資格そのものではありません。ただし、その領域を主軸に据えるつもりなら、「オワコン」という指摘は自分に向けられていると受け止めるべきです。
Q9. 行政書士の登録者数や市場規模のデータは、どこで確認できますか?
一次情報の所在は以下のとおりです。
市場規模(売上総額)を示す公的統計は存在しません。この点は繰り返しておきます。
Q10. 試験勉強中ですが、この記事を読んで不安になりました
不安になるのは正常です。この記事は、否定的な情報を隠さずに書くことを方針にしています。
ただし、切り分けてください。受験期にコントロールできるのは、合格することだけです。単価も競合も集客も、登録後に決める変数であり、いま悩んでも答えは出ません。そして、Q5の3つの問い(どの業務・いくらで・どうやって)は、合格発表を待たずに、いまから情報収集を始められます。
学習の進め方は 行政書士試験の勉強法、合格後の流れは 合格後の登録・開業手続き を参照してください。
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