行政書士法の基礎|欠格事由・独占業務・懲戒を条文で整理
行政書士法を条文ベースで整理。欠格事由(2条の2)で罰金刑がどう扱われるか、「禁錮以上の刑」が「拘禁刑以上の刑」に変わった点、第12条の守秘義務、懲戒請求の手順、独占業務(1条の3)と業際まで、2026年1月1日施行の改正条文で解説します。
はじめに|行政書士法は「条文番号」で問われる
行政書士法は、行政書士の使命・業務・義務・懲戒を定めた法律です。行政書士試験では、令和6年度から「行政書士の業務に関し必要な基礎知識」の一分野として「行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令」が明示され、出題対象であることがはっきりしました。加えて、実際に行政書士を目指す人にとっては「自分が登録できるのか(欠格事由)」「どこまでやってよいのか(独占業務)」「違反するとどうなるのか(懲戒・罰則)」という実務上の切実な問題でもあります。
この記事は、そのなかでも特に検索されることの多い次の3点に、条文で正面から答えることを目的としています。
- 欠格事由に「禁錮以上の刑」「罰金」はどう書かれているのか
- 行政書士法第12条とは何を定めた条文か
- 行政書士に対する懲戒請求は誰が・どこに・どのような手順で行うのか
なお本記事の条文は、2026年1月1日に施行された改正行政書士法(令和7年法律第65号)に基づいています。この改正で業務規定の条文番号が繰り下がっており、古い解説記事・古いテキストとは条文番号が食い違います。まずこの点から確認していきましょう。
この記事の結論(先に答え)
① 罰金刑は、原則として行政書士の欠格事由に当たりません。
欠格事由を定める行政書士法2条の2第3号が挙げているのは「拘禁刑以上の刑」であり、罰金・科料はこれに含まれません。同条には、罰金刑一般を欠格事由とする号は置かれていません。
② 「禁錮以上の刑」という表記は、現在は「拘禁刑以上の刑」です。
刑法改正(2025年6月1日施行)で懲役・禁錮が拘禁刑に一本化されたことに伴い、行政書士法2条の2第3号の文言も「拘禁刑以上の刑」に改められました。意味する範囲(=罰金より重い刑)は同じです。
③ 行政書士法第12条は「秘密を守る義務(守秘義務)」の条文です。
違反すると1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(22条1項)。しかもこの罪は親告罪です(22条2項)。
④ 懲戒請求は「何人も」できます。
行政書士法14条の3第1項により、依頼者でなくても、事務所所在地を管轄する都道府県知事に対して事実を通知し、適当な措置を求めることができます。通知を受けた知事には調査義務があります(同条2項)。
⑤ 独占業務の根拠条文は「1条の2」ではなく「1条の3」です。
2026年1月1日施行の改正で、業務規定が1条の2から1条の3へ、代理・相談等の規定が1条の3から1条の4へ繰り下がりました。
以下、それぞれを条文とともに詳しく見ていきます。
【重要】2026年1月1日施行の改正で条文番号が変わった
令和7年法律第65号による改正行政書士法が2026年1月1日に施行され、法律の冒頭部分が大きく組み替えられました。学習上もっとも影響が大きいのは、独占業務の根拠条文がずれたことです。
改正前後の条文対応表
何が実質的に変わったのか
条文番号の移動だけでなく、次の3つは中身の変更です。
- 第1条が「目的規定」から「使命規定」になった
旧1条は「この法律は、行政書士の制度を定め…」という法律の目的を語る書き方でしたが、新1条は「行政書士は、その業務を通じて…使命とする」と、行政書士という職業者を主語にした書き方に改められました。弁護士法1条や税理士法1条と同じ「使命規定」型です。
> 行政書士は、その業務を通じて、行政に関する手続の円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し、もつて国民の権利利益の実現に資することを使命とする。
> ― 行政書士法 第1条
- 第1条の2として「職責」の規定が新設された
旧10条(行政書士の責務)に置かれていた「誠実にその業務を行う」という部分が、より前面に出る形で1条の2に移りました。あわせてデジタル対応の努力義務が加わっています。
> 行政書士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない。
> 2 行政書士は、その業務を行うに当たつては、デジタル社会の進展を踏まえ、情報通信技術の活用その他の取組を通じて、国民の利便の向上及び当該業務の改善進歩を図るよう努めなければならない。
> ― 行政書士法 第1条の2
- 特定行政書士の代理できる範囲が広がった
旧1条の3第1項2号は「行政書士が作成した書類に係る許認可等」に関する不服申立ての代理と定めていましたが、新1条の4第1項2号は「行政書士が作成することができる書類に係る許認可等」に改められました。自分(や自分の事務所)が実際に作成した書類でなくても、行政書士が作成できる類型の書類であれば代理の対象になり得るという方向の拡大です。この点は後述します。
試験にはいつから反映されるか
行政書士試験は、試験日の属する年度の4月1日現在に施行されている法令を基準に出題されます。改正法の施行日は2026年1月1日ですから、令和8年度(2026年度)試験からは新条文が基準になります。「独占業務は1条の2」と書かれた教材は、この点だけは古い記述だと考えてください。
同時に注意したいのは、中身の理解はほとんど変わらないということです。3類型の書類(官公署提出書類・権利義務書類・事実証明書類)も、「報酬を得て」「業として」という要件も、他士業の独占業務が除かれる構造も、そのまま維持されています。番号だけ差し替えれば従来の知識は使えます。条文を引く習慣そのものについては行政書士試験|条文の読み方・引き方の基本テクニックもあわせて参照してください。
行政書士法の欠格事由|禁錮以上の刑・罰金はどう扱われるか
ここからが本記事の中心です。「行政書士 欠格事由 禁錮以上の刑 罰金」という形で調べられることが非常に多い論点なので、条文を正確に確認します。
結論:罰金刑は原則として欠格事由に当たらない
もっとも重要な結論から述べます。行政書士法の欠格事由に、「罰金の刑に処せられた者」を一般的に含める規定はありません。 刑罰に関する欠格事由は2条の2第3号だけであり、そこで挙げられているのは「拘禁刑以上の刑」です。
拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつてから三年を経過しない者
― 行政書士法 第2条の2第3号
刑法上、刑の重さの順序は「死刑 → 拘禁刑 → 罰金 → 拘留 → 科料」です。したがって「拘禁刑以上の刑」とは死刑と拘禁刑を指し、罰金・拘留・科料は含まれません。たとえば道路交通法違反で罰金刑を受けた、といったケースは、それ自体では行政書士の欠格事由になりません。
ここは他士業と比較すると理解が深まります。たとえば税理士法4条は、国税・地方税に関する法令違反による罰金刑についても別途欠格事由としています。行政書士法にはそのような「罰金」の号が置かれていない、というのが条文の姿です。「他の士業にあるから行政書士法にもあるはずだ」と類推しないことが、この論点の要諦です。
ただし後述するとおり、罰金刑を受けた事実がまったく無関係かというとそうではなく、登録拒否事由の側で考慮される余地があります。この二段構えを押さえてください。
「禁錮以上の刑」は「拘禁刑以上の刑」に置き換わった
多くの受験生や実務家が記憶している「禁錮以上の刑」という表現は、現在の条文にはありません。刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(令和4年法律第68号)が2025年6月1日に施行され、懲役と禁錮が「拘禁刑」に一本化されたことに伴い、行政書士法2条の2第3号も「拘禁刑以上の刑」に改められました。
つまり、呼び名が変わっただけで、罰金が対象外である点も、3年という期間も変わっていません。旧表記で覚えていた知識はそのまま使えます。ただし試験で条文の文言そのものを問われた場合は、現行の「拘禁刑以上の刑」が正解になります。
欠格事由の一覧表(2条の2の各号)
行政書士法2条の2は、次の8つの号を欠格事由として定めています。2条の資格要件を満たしていても、これらのいずれかに該当すれば行政書士となる資格を有しません。
欠格事由の「3年」と起算点の違い
表を見てわかるとおり、期間はすべて「3年」で統一されています。「5年」に置き換えた誤り選択肢が定番なので、まずこの数字を固めましょう。試験に出る数字全般の横断整理は行政書士試験に出る数字・期間の暗記リスト|横断整理にまとめています。
一方で、起算点は2種類ある点が差がつくポイントです。
- 3号(刑罰)だけは「刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつてから」=刑を終えた時点から3年
- 4号〜8号はいずれも「処分(決定)の日から」=処分を受けた日から3年
3号だけが「処分の日から」ではないのは、刑の執行が終わるまでは社会復帰していないという当然の前提があるからです。「判決確定の日から3年」と書かれていたら誤りです。
執行猶予がついた場合の扱い
3号でよく問題になるのが執行猶予です。刑法27条により、執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予期間を経過したときは、刑の言渡し自体が効力を失います。そのため、猶予期間が満了した時点で「拘禁刑以上の刑に処せられた者」ではなくなると一般に解されており、そこからさらに3年待つ必要はないと説明されます。
逆に、執行猶予期間中は刑の言渡しの効力が残っているため、その間は欠格事由に該当したままです。「執行猶予がついたから直ちに登録できる」というのは誤りです。
罰金刑でも登録できないことがある|登録拒否事由という別ルート
ここが実務上もっとも誤解されやすいところです。罰金刑は欠格事由(2条の2)ではありませんが、登録の場面ではもう一つの関門があります。
日本行政書士会連合会は、前項の規定による登録の申請を受けた場合において、当該申請者が行政書士となる資格を有し、かつ、次の各号に該当しない者であると認めたときは行政書士名簿に登録し、当該申請者が行政書士となる資格を有せず、又は次の各号の一に該当する者であると認めたときは登録を拒否しなければならない。この場合において、登録を拒否しようとするときは、第十八条の四に規定する資格審査会の議決に基づいてしなければならない。
一 心身の故障により行政書士の業務を行うことができない者
二 行政書士の信用又は品位を害するおそれがある者その他行政書士の職責に照らし行政書士としての適格性を欠く者
― 行政書士法 第6条の2第2項
つまり、罰金刑を受けた事実は、その内容によっては2号の「行政書士の信用又は品位を害するおそれがある者」「行政書士としての適格性を欠く者」として、登録拒否の判断材料になり得ます。欠格事由に当たらない=自動的に登録される、ではありません。
整理すると次の二段構えです。
なお、成年被後見人・被保佐人は、かつては欠格事由に列挙されていましたが、令和元年法律第37号(成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律)により削除されました。現在は上記6条の2第2項1号の「心身の故障により行政書士の業務を行うことができない者」という個別審査型の登録拒否事由に置き換わっています。古い教材には「成年被後見人は欠格事由」と書かれていることがあるので注意してください。
登録後に欠格事由に該当したらどうなるか
すでに登録している行政書士が後から欠格事由に該当した場合は、登録の抹消の対象になります。
日本行政書士会連合会は、行政書士の登録を受けた者が次の各号のいずれかに該当する場合には、その登録を抹消しなければならない。
一 第二条の二第二号から第四号まで又は第六号から第八号までに掲げる事由のいずれかに該当するに至つたとき。
― 行政書士法 第7条第1項第1号(抜粋)
細かい点ですが、ここで参照されているのは「2号から4号まで又は6号から8号まで」であり、1号(未成年者)と5号は除かれています。登録後に未成年者に戻ることはあり得ず、5号(不正登録による登録取消し)は同項4号で別に手当てされているためです。条文の作り込みを味わうポイントです。
資格(2条)と欠格事由(2条の2)と登録(6条)の関係
欠格事由を正確に位置づけるために、資格取得の全体像を確認しておきましょう。行政書士となる資格を有する者は次のとおりです(2条)。
6号は「公務員特認」と呼ばれます。単に公務員であった期間ではなく「行政事務を担当した期間」である点、行政執行法人・特定地方独立行政法人の役員・職員として行政事務に相当する事務を担当した期間も通算される点、そして20年/17年という数字が入れ替えられやすい点に注意します。
そのうえで、資格取得から業務開始までの流れは次の3段階です。
- 資格を有する(2条)…試験合格・弁護士等の資格・公務員特認
- 欠格事由に該当しない(2条の2)…該当すれば資格を有しない
- 登録を受ける(6条)…日本行政書士会連合会の行政書士名簿に登録され、同時に行政書士会の会員となる
「合格=行政書士」ではありません。 登録をしなければ、行政書士を名乗ることも独占業務を行うこともできません。合格後の具体的な手続・費用・期間は行政書士になるには|合格後の登録手続き・必要書類・費用・期間を完全ガイドで詳しく扱っています。
罰金の刑に処せられた者は、その執行を終わってから3年を経過しなければ行政書士となる資格を有しない。
行政書士法第12条とは|守秘義務を定めた条文
「行政書士法第12条」という条文番号で直接調べられることの多い条文です。結論として、12条は守秘義務(秘密を守る義務)の規定です。
行政書士は、正当な理由がなく、その業務上取り扱つた事項について知り得た秘密を漏らしてはならない。行政書士でなくなつた後も、また同様とする。
― 行政書士法 第12条
12条の3つの要素
条文は短いですが、正誤判断に直結する要素が3つ入っています。
「正当な理由」の典型例としては、法令に基づく報告や証言、本人の同意がある場合などが挙げられます。逆に「自分の宣伝のために事例を実名で紹介する」といった行為は正当な理由に当たりません。
12条違反の罰則と親告罪
12条違反には罰則があります。
第十二条又は第十九条の三の規定に違反した者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
― 行政書士法 第22条
ここで押さえるべきは2点です。
- 法定刑は1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(改正前は「1年以下の懲役」と表記されていました)
- 親告罪である(22条2項)。秘密の主体である被害者の意思を尊重する趣旨で、告訴がなければ公訴を提起できません
「守秘義務違反は罰金刑のみ」「親告罪ではない」といった誤り選択肢に注意しましょう。
使用人・従業者の守秘義務(19条の3)
12条とセットで押さえたいのが19条の3です。守秘義務は行政書士本人だけの義務ではありません。
行政書士又は行政書士法人の使用人その他の従業者は、正当な理由がなく、その業務上取り扱つた事項について知り得た秘密を漏らしてはならない。行政書士又は行政書士法人の使用人その他の従業者でなくなつた後も、また同様とする。
― 行政書士法 第19条の3
事務所の補助者・アルバイトであっても守秘義務を負い、しかも22条により行政書士本人と同じ罰則が適用されます。「有資格者ではないから守秘義務はない」というのは誤りです。
なお、行政書士法人については13条の17による準用の対象に12条が入っていません。法人の従業者は19条の3で直接カバーされる、という条文の作りになっています。
行政書士の守秘義務は、行政書士でなくなった後は消滅する。
行政書士の懲戒請求の手順|誰が・どこに・どのように
行政書士に問題のある行為があったとき、どう対応できるのかを条文に沿って整理します。
懲戒権者は都道府県知事(14条)
行政書士が、この法律若しくはこれに基づく命令、規則その他都道府県知事の処分に違反したとき又は行政書士たるにふさわしくない重大な非行があつたときは、都道府県知事は、当該行政書士に対し、次に掲げる処分をすることができる。
一 戒告
二 二年以内の業務の停止
三 業務の禁止
― 行政書士法 第14条
懲戒処分を行うのは都道府県知事です。日本行政書士会連合会でも、都道府県の行政書士会でもありません。登録は日行連、懲戒は知事という主体の対比が最頻出です。
懲戒事由は2つ
条文から読み取れる懲戒事由は次の2類型です。
②は「重大な」非行に限られる点に注意します。軽微な非行は懲戒ではなく、行政書士会による注意勧告(17条の2)で対応されることになります。
懲戒処分の3種類
業務停止の上限が「2年以内」である点、業務の禁止を受けるとその日から3年間は欠格事由となり再登録できない点は、そのまま出題されます。
「何人も」懲戒請求ができる(14条の3第1項)
懲戒手続の入口を定めるのが14条の3です。
何人も、行政書士又は行政書士法人について第十四条又は前条第一項若しくは第二項に該当する事実があると思料するときは、当該行政書士又は当該行政書士法人の事務所の所在地を管轄する都道府県知事に対し、当該事実を通知し、適当な措置をとることを求めることができる。
2 前項の規定による通知があつたときは、同項の都道府県知事は、通知された事実について必要な調査をしなければならない。
― 行政書士法 第14条の3第1項・第2項
ここでのポイントは3つです。
- 主体は「何人も」。依頼者や直接の被害者に限られません。第三者でも通知できます。
- 宛先は都道府県知事。しかも「当該行政書士の事務所の所在地を管轄する」知事です。依頼者の住所地でも、行為地でもありません。
- 知事には調査義務がある。「調査することができる」ではなく「調査をしなければならない」と義務として書かれている点が、出題の狙い目です。
懲戒請求から処分までの手順(6ステップ)
実際の流れをステップで示します。
ステップ1|懲戒事由の有無を確認する
14条の2類型(法令等違反/重大な非行)に当たる事実があるかを整理します。単なる不満や相性の問題ではなく、法令違反または重大な非行の事実であることが前提です。
ステップ2|宛先の都道府県知事を特定する
対象となる行政書士の事務所所在地を管轄する都道府県知事が宛先です。都道府県の担当課(行政書士制度を所管する市町村課・法務課等)が窓口になります。
ステップ3|事実を通知する(=懲戒請求)
14条の3第1項の「通知」を行います。誰でも行えるため、資格や利害関係の証明は不要です。実務上は、いつ・誰が・何をしたのかという事実と、それを裏づける資料(契約書、領収書、やり取りの記録等)を添えることが求められます。
ステップ4|都道府県知事の調査
通知を受けた知事は、通知された事実について必要な調査をしなければなりません(同条2項)。調査手段としては、13条の22の立入検査(事務所に立ち入り、業務に関する帳簿・関係書類を検査する)も用意されています。この立入検査は「日没から日出までの時間を除き」行うものとされ、また犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない旨が明記されています。
ステップ5|聴聞(業務停止・業務の禁止の場合)
知事が業務停止や業務の禁止を行おうとするときは、聴聞が必要です。
3 都道府県知事は、第十四条第二号又は前条第一項第二号若しくは第二項第二号の処分をしようとするときは、行政手続法第十三条第一項の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない。
4 前項に規定する処分又は第十四条第三号若しくは前条第一項第三号の処分に係る行政手続法第十五条第一項の通知は、聴聞の期日の一週間前までにしなければならない。
5 前項の聴聞の期日における審理は、公開により行わなければならない。
― 行政書士法 第14条の3第3項〜第5項
行政手続法の原則では、許認可等を取り消す処分など重い不利益処分には聴聞、それ以外には弁明の機会の付与が対応します。業務停止は本来なら弁明の機会の付与で足りる場面もあり得ますが、行政書士法は「区分にかかわらず聴聞を行わなければならない」と加重しています。さらに、行政手続法上の聴聞は非公開が原則であるのに対し、行政書士法は審理を公開とし、通知も1週間前までと明示しています。行政手続法の一般原則からの上乗せという構造で理解しておくと、行政法分野の知識とつながります。聴聞手続そのものは不利益処分と聴聞手続き|要件と流れを完全解説で詳しく解説しています。
ステップ6|処分と公告
処分が行われると、公告されます。
都道府県知事は、第十四条又は第十四条の二の規定により処分をしたときは、遅滞なく、その旨を当該都道府県の公報をもつて公告しなければならない。
― 行政書士法 第14条の5
公告先は「当該都道府県の公報」であって、官報ではありません。細かい点ですが、条文に書かれている以上は出題され得ます。
なお、処分手続の途中で登録を抹消して処分を免れることを防ぐため、14条の4は、知事が業務停止・業務の禁止をしようとする場合に日行連へ通知し、日行連は処分手続が結了するまで登録の抹消をすることができないと定めています。「廃業届を出せば懲戒を逃れられる」という抜け道は塞がれています。
行政書士会に相談するルート(17条・17条の2)
懲戒請求のほかに、所属の行政書士会に情報を伝えるルートもあります。行政書士会は、会員が法令等に違反したと認めるときは都道府県知事に報告しなければならず(17条2項)、違反のおそれがあると認めるときは会則の定めるところにより注意を促し、又は必要な措置を講ずべきことを勧告できます(17条の2)。
行政書士法人に対する懲戒(14条の2)
法人にも懲戒制度があります。個人と処分の種類が異なる点に注意してください。
法人の場合、最も重い処分は「業務の禁止」ではなく「解散」です。また、従たる事務所の所在地を管轄する知事も、その従たる事務所に関する違反等であれば、戒告と当該都道府県内の事務所についての業務停止を行うことができます(14条の2第2項)。さらに、法人を処分する場合に社員個人にも懲戒事由があるときは、社員である行政書士に対して懲戒処分を併せて行うことが妨げられません(同条5項)。
行政書士に懲戒事由に該当する事実があると思料する者は、依頼者であるかどうかを問わず、当該行政書士の事務所の所在地を管轄する都道府県知事に対し、その事実を通知して適当な措置をとるよう求めることができる。
行政書士の独占業務|1条の3の3類型と業際
「行政書士 独占業務」で調べる人がもっとも知りたいのは、「行政書士だけができる仕事は何か」「他の士業との線引きはどこか」です。条文から順に確認します。
独占業務の根拠条文(1条の3第1項)
行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
2 行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。
― 行政書士法 第1条の3
条文に電磁的記録が明記されているのが現行法の特徴です。紙の書類だけでなく、その作成に代えて電磁的記録を作成する場合も業務に含まれます。行政手続のオンライン化を条文レベルで取り込んだもので、実務面は行政書士の電子申請と実務DX|デジタル時代の業務変革でも扱っています。
独占業務を構成する要件
1条の3と、非行政書士の業務を禁じる19条1項を合わせて読むと、規制の対象は次の要件で画されます。
② の「報酬を得て」は、2026年1月1日施行の改正で19条1項にも明記されました。
行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない。
― 行政書士法 第19条第1項
「いかなる名目によるかを問わず」という文言があるため、「手数料」「実費」「謝礼」などの名称に置き換えても報酬は報酬です。逆に、家族や知人のために純粋に無償で書類を作成する行為は、行政書士でない者が行っても19条違反にはなりません。
なお、ただし書には、総務省令で定める定型的かつ容易な手続について、一定の者が電磁的記録を作成する場合という例外が置かれています。デジタル化に伴い設けられた新しい例外で、条文の存在自体を押さえておけば十分です。
3類型の書類の意味
- 官公署に提出する書類…国・地方公共団体の機関に提出する許認可申請書・届出書など。建設業許可申請、飲食店営業許可、産業廃棄物処理業許可、風俗営業許可、農地転用許可、車庫証明、各種補助金申請書などが典型です。
- 権利義務に関する書類…権利の発生・存続・変更・消滅を目的とする意思表示を内容とする書類。契約書、遺産分割協議書、示談書、内容証明郵便など。
- 事実証明に関する書類…社会生活に交渉を有する事項を証明するに足りる文書。実地調査に基づく図面類、各種議事録、会計帳簿、財務諸表類など。条文が「実地調査に基づく図面類を含む」とわざわざ書いている点も押さえどころです。
「権利義務」と「事実証明」は混同されやすいので、権利義務=法的効果を狙う書類、事実証明=事実を証明する書類と対比して覚えると整理できます。
他士業との業際|比較表
1条の3第2項により、他の法律で制限されている業務は行政書士の業務から除かれます。
行政書士が作成できる「権利義務に関する書類」は、紛争性がない範囲にとどまります。すでに紛争となっている事件について報酬を得て法律事務を扱えば、弁護士法72条違反(非弁行為)となるおそれがあります。この「紛争性の有無」が行政書士と弁護士の境界を分ける最重要の視点です。資格そのものの比較は行政書士と司法書士の違い|どっちを目指すべき?、実務での協業のあり方は行政書士と他士業の連携術|紹介ネットワークの作り方を参照してください。
非独占業務(1条の4)
行政書士は、独占業務のほかに次の事務を業とすることができます(1条の4第1項)。これらは行政書士でない者が行っても19条違反にはなりません。
書類の「作成」は独占業務、書類作成についての「相談」は非独占業務という対比が定番の出題ポイントです。相談業務は1条の4に置かれているため、行政書士でない者が行っても行政書士法違反にはなりません。
見落とされやすいのが1号です。聴聞や弁明の機会の付与の手続における代理は、特定行政書士でなくてもできます。「行政庁に対する手続の代理はすべて特定行政書士の専権」と覚えると誤ります。
特定行政書士とは(1条の4第2項)
2 前項第二号に掲げる業務は、当該業務について日本行政書士会連合会がその会則で定めるところにより実施する研修の課程を修了した行政書士(以下「特定行政書士」という。)に限り、行うことができる。
― 行政書士法 第1条の4第2項
条文上の要件は「日本行政書士会連合会がその会則で定めるところにより実施する研修の課程を修了した行政書士」です。研修の課程には考査が含まれる運用となっていますが、条文の文言は「研修の課程を修了した」である点を押さえてください。修了すると、日行連が行政書士名簿に特定行政書士である旨を付記します(7条の3)。
権限の限界も重要です。
- 代理できるのは行政庁に対する不服申立て(審査請求・再調査の請求・再審査請求等)であり、裁判所に対する訴訟の代理はできません。行政事件訴訟の代理は弁護士の業務です。
- 対象は、1条の4第1項2号により「前条の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類に係る許認可等」に関する不服申立てです。2026年1月1日施行の改正前は「行政書士が作成した書類」と限定されていましたが、改正で「作成することができる」に改められ、対象が広がりました。
「特定行政書士なら行政訴訟も代理できる」は典型的な誤りです。不服申立て(行政庁の手続)と訴訟(裁判所の手続)の区別は、行政不服審査法の全体像|行政書士試験の重要論点を整理と行政事件訴訟法の基本|訴訟類型と取消訴訟の要件もあわせて確認してください。
業務独占と名称独占
行政書士法は、業務独占(19条)と名称独占(19条の2)を別々に定めています。
行政書士でない者は、行政書士又はこれと紛らわしい名称を用いてはならない。
2 行政書士法人でない者は、行政書士法人又はこれと紛らわしい名称を用いてはならない。
3 行政書士会又は日本行政書士会連合会でない者は、行政書士会若しくは日本行政書士会連合会又はこれらと紛らわしい名称を用いてはならない。
― 行政書士法 第19条の2
両者は別個の規制です。したがって「無償だから業務独占には触れないが、行政書士を名乗れば名称独占に違反する」という場面があり得ます。
行政書士の義務|条文ベースの一覧
行政書士法が定める義務を、条文番号とともに整理します。2026年1月1日施行の改正で1条の2(職責)が新設され、10条が「信用失墜行為の禁止」に純化された点が変更箇所です。
義務の出題ポイント
- 事務所(8条)…個人の行政書士は事務所を1つしか設けられません。さらに、使用人である行政書士等は事務所を設けてはならない(8条3項)という規定もあります。行政書士法人が従たる事務所を設けられるのとの対比で「個人=1事務所、法人=複数可」と覚えます。
- 帳簿(9条)…保存期間は「帳簿閉鎖の時から2年間」です。起算点が「作成の時」ではなく「閉鎖の時」である点、そして「行政書士でなくなつたときも、また同様とする」と明記されている点が問われます。
- 報酬額の掲示(10条の2)…報酬額そのものは各行政書士が自由に定めますが、掲示は義務です。第2項では、行政書士会及び日行連が報酬額の統計を作成・公表するよう努めるものとされています。報酬水準の実際は行政書士の報酬設定|相場と適正価格の決め方を参照してください。
- 依頼に応ずる義務(11条)…「正当な事由がある場合でなければ、依頼を拒むことができない」という構造で、原則として依頼を拒めません。「行政書士は自由に依頼を断れる」は誤りです。
- 研修(13条の2)…「努めなければならない」=努力義務です。「研修を受けなければ業務を行えない」は言い過ぎになります。実際の研修制度は行政書士の研修制度と継続学習|スキルアップの方法で扱っています。
意外な出題ポイント|罰則がある義務
義務のうち、違反に直接の罰則があるものは限られています。ここは差がつきます。
第九条又は第十一条の規定に違反した者は、百万円以下の罰金に処する。
― 行政書士法 第23条第1項
つまり、帳簿義務(9条)違反と依頼に応ずる義務(11条)違反には、100万円以下の罰金が定められています。「依頼を断っただけで罰金なのか」と驚く条文ですが、条文上そうなっています(もちろん「正当な事由」があれば違反になりません)。一方、信用失墜行為の禁止(10条)や報酬額の掲示(10条の2)には直接の罰則がなく、懲戒処分(14条)で対応する構造です。
登録の手続|取消しと抹消の違いに注意
登録の流れ
行政書士となる資格を有する者が、行政書士となるには、行政書士名簿に、住所、氏名、生年月日、事務所の名称及び所在地その他日本行政書士会連合会の会則で定める事項の登録を受けなければならない。
2 行政書士名簿は、日本行政書士会連合会に備える。
3 行政書士名簿の登録は、日本行政書士会連合会が行う。
― 行政書士法 第6条
「都道府県知事が登録する」「行政書士会が登録する」は誤りです。申請は行政書士会を経由するだけで、登録するのは日行連です。
登録拒否と、拒否された場合の争い方
6条の2第2項の拒否事由(心身の故障/信用・品位を害するおそれ等)に当たると認めたときは、日行連は登録を拒否しなければなりません。手続的な保障として、次の2つが用意されています。
- 資格審査会の議決に基づいてしなければならない(6条の2第2項後段、18条の4)
- あらかじめ申請者に通知し、相当の期間内に弁明する機会を与えなければならない(6条の2第3項)
登録を拒否された者は、総務大臣に対して審査請求をすることができます(6条の3第1項)。また、申請の日から3か月を経過しても何らの処分がされない場合は、登録を拒否されたものとみなして総務大臣に審査請求をすることができます(同条2項)。この場合、審査請求があった日に日行連が登録を拒否したものとみなされます。「知事に審査請求する」「不作為では争えない」といった誤りに注意しましょう。
なお、資格審査会は日行連に置かれ、会長及び委員4人で組織されます(18条の4第3項)。会長は日行連の会長が充て、委員は会長が総務大臣の承認を受けて、行政書士・総務省の職員・学識経験者のうちから委嘱します。委員の任期は2年です。
登録の「取消し」と「抹消」は別物
ここは既存の解説でも混同されやすい部分です。行政書士法は、この2つを厳密に区別しています。
死亡や廃業は「抹消」であって「取消し」ではありません。 「登録の取消し」は不正登録の場合に限られる制裁的な処分であり、だからこそ3年間の欠格事由につながります。
そして、懲戒処分としての「業務の禁止」(14条3号)とも区別が必要です。
登録関係は日行連、懲戒は都道府県知事という主体の対比を軸に整理すると混乱しません。
行政書士法人
設立と社員
行政書士法人は、1条の3および1条の4第1項(2号を除く)に規定する業務を行うことを目的として、行政書士が設立する法人です(13条の3)。
一人法人が可能になった改正
かつては「社員が一人になり、その日から引き続き6か月間その社員が二人以上にならなかった場合」が解散事由とされており、実質的に社員2人以上が必要でした。令和元年の改正(2021年6月4日施行)で、設立手続の「共同して定款を定める」という文言が削除され、解散事由も「社員の欠亡」(社員がゼロになること)に改められました。これにより、社員1人の行政書士法人(一人法人)を設立・維持できます。古い教材の「2人以上必要」という記述は現在の法律に合いません。
法人の業務範囲と特定業務
行政書士法人は、1条の3および1条の4第1項(2号を除く)の業務を行うほか、定款で定めれば、総務省令で定める業務や1条の4第1項2号の業務(不服申立ての代理)も行えます。ただし後者は「特定業務」として、社員のうちに特定行政書士がいる法人に限られ(13条の6)、その特定社員が常駐していない事務所では取り扱えません(13条の15)。運営面の実際は行政書士法人の設立と運営|個人事務所との違いで扱っています。
なお13条の17により、1条(使命)、1条の2(職責)、8条1項(事務所)、9条〜11条(帳簿・信用失墜・報酬掲示・依頼応諾)、13条(会則遵守)が行政書士法人に準用されます。
行政書士会と日本行政書士会連合会
組織と役割分担
行政書士会・日行連はいずれも法人です(15条3項、18条の5)。
強制加入と自動的な入退会
行政書士は、第六条の二第二項の規定による登録を受けた時に、当然、その事務所の所在地の属する都道府県の区域に設立されている行政書士会の会員となる。
2 行政書士は、他の都道府県の区域内に事務所を移転したときは、その移転があつたときに、当然、従前の行政書士会を退会し、当該都道府県の区域に設立されている行政書士会の会員となる。
― 行政書士法 第16条の5第1項・第2項
「当然」という文言がポイントです。入会・退会の手続を別途とるのではなく、登録・移転・登録抹消という事実に連動して自動的に会員資格が動きます。「加入は任意である」「別途入会申込みが必要」は誤りです。
監督
都道府県知事は行政書士会につき、総務大臣は日行連につき、必要があると認めるときは報告を求め、又はその行う業務について勧告することができます(18条の6)。監督主体が二本立てである点、そして日行連の会則の認可は総務大臣が行う(18条の5による16条の2の読替え)点を押さえましょう。
以上をまとめると、登録=日行連、指導・連絡=行政書士会、懲戒=都道府県知事という三者の役割分担になります。
罰則の整理
行政書士法の罰則を、条文どおりに整理します。刑法改正により「懲役」の表記は「拘禁刑」に改められています。
罰則で押さえる3点
- 基本ラインは「1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金」。守秘義務違反・非行政書士の業務・虚偽申請による登録がこれに当たります。
- 名称使用制限違反と、帳簿・依頼応諾義務違反は罰金のみ(100万円以下)。自由刑がない点で一段軽くなっています。
- 両罰規定がある(23条の3)。法人の代表者や従業者が21条の2・22条の4・23条2項・23条の2の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、法人又は人に対しても罰金刑が科されます。
なお、業務停止処分に違反して業務を行ったこと自体を処罰する規定は、行政書士法には置かれていません。この場合は、より重い懲戒処分(業務の禁止)で対応することになります。「業務停止違反は1年以下の拘禁刑」といった記述を見かけたら、条文に当たって確認してください。行政上の制裁の全体像は行政罰の種類|行政刑罰と秩序罰(過料)の違いで整理しています。
行政書士に対する懲戒処分は、日本行政書士会連合会が行う。
試験での出題ポイント
行政書士法は、令和6年度試験から「行政書士の業務に関し必要な基礎知識」の一分野として「行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令」が明示され、出題対象であることが明確になりました。総務省は、この改正は現行試験の内容・出題範囲そのものを変更するものではないと説明していますが、出題範囲として明記された以上、対策の優先度は上がったと考えるべきです。基礎知識分野全体の戦略は一般知識対策の総合戦略|足切りを確実に突破する、隣接する基礎法学の対策は基礎法学の出題傾向と攻略法|2問を確実に取る戦略を参照してください。
得点に直結する論点を10個に絞ると次のとおりです。
- 欠格事由(2条の2)…期間はすべて「3年」。刑罰は「拘禁刑以上の刑」であり罰金は含まれない。3号だけ起算点が「刑の執行を終わり/執行を受けることがなくなつてから」
- 独占業務(1条の3)…官公署提出書類・権利義務書類・事実証明書類の作成。「他人の依頼を受け」「報酬を得て」「業として」が要件
- 独占業務と非独占業務の区別…書類の「作成」は独占、「相談」は非独占(1条の4第1項4号)
- 業際…他士業の独占業務は除外(1条の3第2項)。弁護士との境界は「紛争性の有無」
- 守秘義務(12条)…正当な理由があれば例外/行政書士でなくなった後も継続/違反は1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金で親告罪
- 依頼に応ずる義務(11条)…正当な事由がなければ拒めない。違反には100万円以下の罰金(23条)
- 登録(6条)…行政書士会を経由して申請、登録するのは日行連。拒否されたら総務大臣に審査請求
- 懲戒(14条・14条の3)…懲戒権者は都道府県知事。処分は戒告/2年以内の業務停止/業務の禁止。懲戒請求は「何人も」でき、知事には調査義務
- 聴聞(14条の3第3項〜5項)…業務停止・業務の禁止には行政手続法の区分にかかわらず聴聞。通知は1週間前まで、審理は公開
- 事務所(8条)/法人…個人は事務所を2以上設けられない。行政書士法人は社員1人でも設立可、社員は無限責任
暗記のコツ|数字と主体で覚える
行政書士法は数字と主体の組み合わせで整理すると効率的です。
都道府県知事は、行政書士に対し2年以内の業務の停止の処分をしようとするときは、行政手続法上の意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない。
よくある誤解の整理
FAQ
Q1. 罰金刑を受けたことがありますが、行政書士に登録できますか?
欠格事由(2条の2)には該当しません。 欠格事由として刑罰を挙げているのは第3号の「拘禁刑以上の刑」だけで、罰金・拘留・科料は含まれないからです。ただし、登録の段階では6条の2第2項2号の「行政書士の信用又は品位を害するおそれがある者その他行政書士の職責に照らし行政書士としての適格性を欠く者」に当たるかどうかが日本行政書士会連合会(資格審査会の議決)で審査されます。罰金刑の内容・時期・業務との関連性によっては登録が拒否される可能性はゼロではありません。個別の判断については、事務所を置こうとする都道府県の行政書士会に相談するのが確実です。
Q2. 欠格事由の「3年」はいつから数えるのですか?
号によって起算点が違います。 3号(拘禁刑以上の刑)は「刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつてから」3年です。判決確定の日からでも、刑が言い渡された日からでもありません。これに対し、4号〜8号(公務員の懲戒免職、登録取消し、業務の禁止、他士業の懲戒処分、税理士法48条1項の決定)はいずれも「処分(決定)の日から」3年です。
Q3. 執行猶予がついた場合はどうなりますか?
執行猶予期間中は刑の言渡しの効力が残っているため、欠格事由に該当します。猶予期間を取消しなく経過すれば、刑法27条により刑の言渡し自体が効力を失うため、その時点で欠格事由に該当しなくなると一般に解されています。さらに3年間待つ必要はない、という説明が通例です。
Q4. 「禁錮以上の刑」と「拘禁刑以上の刑」は何が違うのですか?
呼び名が変わっただけで、対象範囲は同じです。刑法改正(2025年6月1日施行)で懲役と禁錮が「拘禁刑」に一本化されたことに伴う文言整理で、いずれも「罰金より重い刑」=死刑と自由刑を指します。罰金が含まれない点も、経過期間が3年である点も変わっていません。ただし試験で条文の文言が問われた場合は、現行の「拘禁刑以上の刑」が正しい表記です。
Q5. 行政書士に対する懲戒請求は誰でもできますか?費用はかかりますか?
「何人も」できます(14条の3第1項)。依頼者や直接の被害者である必要はありません。宛先は、対象となる行政書士の事務所の所在地を管轄する都道府県知事です。法律上、請求のための手数料を定めた規定はありません。ただし、通知を受けた知事に調査義務が生じる(同条2項)以上、いつ・誰が・何をしたのかという具体的な事実と裏づけ資料を示すことが実質的に重要になります。
Q6. 行政書士法第12条は何を定めた条文ですか?
守秘義務(秘密を守る義務)です。「行政書士は、正当な理由がなく、その業務上取り扱つた事項について知り得た秘密を漏らしてはならない。行政書士でなくなつた後も、また同様とする」と定めています。違反すると1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(22条1項)で、告訴がなければ公訴を提起できない親告罪です(同条2項)。なお、使用人その他の従業者の守秘義務は19条の3に別に置かれ、罰則は同じです。
Q7. なぜ独占業務の条文が1条の2ではなく1条の3になっているのですか?
2026年1月1日に施行された改正(令和7年法律第65号)により、第1条が使命規定に改められ、第1条の2として職責の規定が新設された結果、従来1条の2にあった業務規定が1条の3へ、1条の3にあった代理・相談等の規定が1条の4へ繰り下がったためです。中身(3類型の書類、報酬を得て業として等の要件)は維持されているので、番号を読み替えれば従来の知識はそのまま使えます。行政書士試験は試験日の属する年度の4月1日現在施行の法令が基準なので、令和8年度(2026年度)試験からは新しい番号が前提になります。
Q8. 業務停止処分を受けた行政書士が業務を行ったらどうなりますか?
行政書士法の罰則には、業務停止処分違反そのものを直接処罰する規定は置かれていません。この場合は、14条の懲戒として、より重い処分(業務の禁止)で対応することになります。なお業務停止処分を受けた場合、行政書士証票は遅滞なく日行連に返還しなければならず(7条の2第1項後段)、業務を行えることとなったときは申請により再交付を受けます(同条2項)。
まとめ
行政書士法の要点を3行で整理します。
- 欠格事由(2条の2)は「拘禁刑以上の刑」であり、罰金刑は含まれない。 期間はすべて3年だが、刑罰の3号だけは「刑の執行を終わってから」起算する。罰金刑は登録拒否事由(6条の2第2項)の側で考慮され得るという二段構えを理解する。
- 独占業務は1条の3、代理・相談等は1条の4。 2026年1月1日施行の改正で条文番号が繰り下がった。「作成」は独占、「相談」は非独占という区別と、他士業との業際(弁護士との境界は紛争性の有無)は従来どおり。
- 登録は日行連、懲戒は都道府県知事。 懲戒請求は「何人も」でき、知事には調査義務がある。業務停止・業務の禁止には公開の聴聞が必要で、通知は1週間前まで。
行政書士法は、条文の文言そのものが正誤問題の素材になる分野です。「3年」「2年」「1週間」「3か月」という数字と、「都道府県知事」「日行連」「総務大臣」という主体を組み合わせて整理すれば、短時間で得点源にできます。さらに、懲戒手続の聴聞は行政手続法の、特定行政書士の不服申立て代理は行政不服審査法の学習とそのまま接続します。行政法の知識を使い回せる分野だと考えて取り組んでください。
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