基礎法学の出題傾向と攻略法|2問を確実に取る戦略
行政書士試験の基礎法学(2問8点)の出題傾向と攻略法を解説。法の分類、法の解釈、裁判制度、法律用語など頻出テーマを整理し、2問を確実に得点するための効率的な学習法を紹介します。
目次
はじめに|基礎法学は2問だが侮れない
行政書士試験の基礎法学は、5肢択一式で2問(8点)の出題です。配点は小さいものの、試験全体の合格ラインが180点であることを考えると、8点の価値は決して軽視できません。
基礎法学の特徴は出題範囲が広く、法学全般から幅広く出題される点です。過去には法の分類、法の解釈方法、裁判制度、法律用語、法の効力、条約と国内法の関係など、多様なテーマが出題されています。
しかし、頻出テーマは限られており、効率的に学習すれば2問とも正解することは十分に可能です。本記事では、出題傾向を分析した上で、テーマ別に重要事項を整理します。さらに、過去問で実際に問われた角度、受験生が陥りやすい誤解、関連論点まで踏み込んで解説し、「捨て科目」ではなく「得点源」に変えるための戦略を提示します。
基礎法学の出題傾向
配点と出題形式
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 問題数 | 2問(問題1・問題2) |
| 出題形式 | 5肢択一式 |
| 配点 | 8点(1問4点) |
| 出題範囲 | 法学一般(法の分類、解釈、裁判制度、法律用語等) |
基礎法学は問題冊子の冒頭、問題1・問題2に配置されるのが通例です。試験開始直後の最初の2問であるため、ここで難問にぶつかって時間と精神的余裕を奪われると、その後の行政法・民法に悪影響が及びます。基礎法学の戦略は「得点」だけでなく「時間配分・メンタルコントロール」の観点からも重要です。
出題難易度の二極化
近年の基礎法学は、「易問」と「難問」が1問ずつ出題される傾向が指摘されています。
- 易問(1問): 法の解釈・法律用語・裁判制度など、頻出テーマの基本知識で解ける問題。ここを確実に取ることが最低目標。
- 難問(1問): 法制史、外国法、法哲学、マイナーな法令用語、時事的な司法制度の改正など、対策が困難な問題。捨て問になることも多い。
このため、現実的な目標設定は「2問中1問は確実に正解、もう1問は2択まで絞り込んで得点に期待」となります。2問とも満点を狙って深追いするより、頻出テーマを固めて1問を堅く取り、残り1問は本番で消去法に持ち込む方が費用対効果が高いといえます。
頻出テーマの分類
基礎法学の頻出テーマは、大きく以下の5つに分類できます。
- 法の分類と法源: 成文法と不文法、公法と私法、一般法と特別法
- 法の解釈: 文理解釈、論理解釈(拡張解釈・縮小解釈・類推解釈・反対解釈等)
- 裁判制度: 裁判所の種類、審級制度、裁判員制度、ADR
- 法律用語: 「及び」「並びに」「又は」「若しくは」等の使い分け、法律の条文構造
- 法の効力: 法律の時間的適用範囲、法律不遡及の原則
これらに加えて、法律家・法学者の格言(法格言)、法制史(律令、明治期の法典編纂、ボワソナードなど)、法思想・法哲学、国際法と国内法の関係が散発的に出題されます。後者のグループは難問側に回りやすく、深入りは禁物です。
テーマ1: 法の分類と法源
法源とは何か
「法源」とは、裁判官が裁判を行う際に拠り所とする法の存在形式(どこに法が現れているか)を指します。法源は大きく成文法源と不文法源に分けられます。日本は成文法主義(制定法主義)を採用しているため、法源の中心は成文法ですが、不文法も補充的に機能します。
成文法と不文法
| 分類 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 成文法 | 文書の形式で制定された法 | 憲法、法律、命令、条例、規則 |
| 不文法 | 文書化されていない法 | 慣習法、判例法、条理 |
日本は成文法主義を採用しており、法源の中心は成文法です。ただし、慣習法も法的効力を有する場合があります(法の適用に関する通則法第3条)。
法の適用に関する通則法第3条は、慣習が法律と同一の効力を有する場合を次のように規定しています。
公の秩序又は善良の風俗に反しない慣習は、法令の規定により認められたもの又は法令に規定されていない事項に関するものに限り、法律と同一の効力を有する。
― 法の適用に関する通則法 第3条
つまり、慣習が成文法に優先するわけではなく、あくまで「法令が認めた場合」か「法令に規定のない事項」に限って法的効力を持つにすぎません。「慣習法は常に制定法に優先する」という選択肢は誤りであり、この点は出題ポイントになります。
成文法源の種類と効力順位
成文法源は、制定主体と形式によって序列があります。
| 法形式 | 制定主体 | 根拠 |
|---|---|---|
| 憲法 | 国民(最高法規) | 憲法第98条 |
| 法律 | 国会 | 憲法第59条 |
| 政令 | 内閣 | 憲法第73条第6号 |
| 内閣府令・省令 | 内閣総理大臣・各省大臣 | 内閣府設置法・国家行政組織法 |
| 規則 | 各機関(最高裁判所規則・議院規則・人事院規則等) | 憲法第77条等 |
| 条例 | 地方公共団体の議会 | 憲法第94条・地方自治法第14条 |
| 規則(自治体) | 地方公共団体の長 | 地方自治法第15条 |
条約は国内法としては法律と命令の中間的効力を持つと解されますが、憲法との関係では憲法が優位するとするのが通説です(条約優位説・憲法優位説の対立があるが、憲法優位説が通説)。
不文法源の種類
| 不文法源 | 内容 | 補足 |
|---|---|---|
| 慣習法 | 社会の慣行が法的確信に高まったもの | 通則法第3条で効力が限定される |
| 判例法 | 裁判所の判断の積み重ねが規範化したもの | 英米法では強い拘束力。日本では事実上の拘束力 |
| 条理 | 物事の道理・社会通念 | 成文法・慣習法がない場合の最後の拠り所 |
日本では判例に法的な意味での拘束力はありませんが、下級審は上級審(特に最高裁)の判断に事実上拘束されます。最高裁が過去の判例を変更するには大法廷で行う必要があります(裁判所法第10条第3号)。
一般法と特別法
一般法と特別法が競合する場合は、特別法が一般法に優先します(特別法優先の原則)。
| 関係 | 一般法 | 特別法 |
|---|---|---|
| 民法と商法 | 民法 | 商法 |
| 行政事件訴訟法と行政不服審査法 | ― | それぞれ別の救済手段 |
| 国家公務員法と地方公務員法 | ― | 適用対象が異なる |
一般法・特別法は相対的な概念である点が重要です。たとえば民法は商法に対しては一般法ですが、ある分野ではさらに特別な法律に対して一般法の地位に立つこともあります。「ある法律が常に一般法/特別法である」とは限らない、という点が問われます。
特別法優先の原則と後法優先の原則が衝突した場合(後から制定された一般法と、先に制定された特別法)、原則として特別法優先が貫かれると解されます。新しい一般法が古い特別法を当然に排除するわけではない、という点は応用論点として押さえておきましょう。
公法と私法
| 分類 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 公法 | 国家と国民の関係を規律する法 | 憲法、行政法、刑法、訴訟法 |
| 私法 | 私人間の関係を規律する法 | 民法、商法 |
| 社会法 | 公法・私法の中間的性質 | 労働法、経済法 |
公法・私法の区別基準には諸説があります(利益説・主体説・性質説・生活関係説など)。区別の実益は、適用される手続や原理の違いにあります。たとえば公法上の関係には民法の規定が直接適用されないことがあり、私法上の関係には私的自治の原則が妥当します。社会法は資本主義の発展に伴う弊害を是正するために登場した「公法と私法の中間領域」であり、20世紀以降に発達した比較的新しい法分野である点も押さえておきましょう。
テーマ2: 法の解釈
法の解釈は、試験で最も問われやすいテーマの一つです。
なぜ法の解釈が必要か
法文は一般的・抽象的に書かれているため、具体的事案に当てはめる際には言葉の意味を確定する作業が必要になります。これが「法の解釈」です。解釈の目的は、立法者の意図や法の趣旨を踏まえつつ、社会の実情に合った妥当な結論を導くことにあります。
有権解釈と学理解釈
法の解釈は、誰が行うかによって有権解釈(公権的解釈)と学理解釈(無権解釈)に分かれます。
- 有権解釈: 国家機関が公的な権限に基づいて行う解釈(立法解釈、司法解釈、行政解釈)
- 学理解釈: 学者等が学問上行う解釈(法的拘束力なし)
有権解釈はさらに次のように分かれます。
| 種類 | 主体 | 例 |
|---|---|---|
| 立法解釈 | 立法機関 | 法律の定義規定(例:民法第85条「物とは有体物をいう」) |
| 司法解釈 | 裁判所 | 判決による法令の解釈 |
| 行政解釈 | 行政機関 | 通達・訓令による解釈 |
立法解釈は「法律自身がその意味を定義している」点が特徴で、最も強い効力を持ちます。学理解釈は文理解釈と論理解釈に分かれ、論理解釈にさまざまな技法が含まれます。
文理解釈と論理解釈
| 解釈方法 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 文理解釈 | 法文の文言に忠実に解釈する | 「猛犬注意」→犬のみに適用 |
| 拡張解釈 | 文言の意味を通常より広く解釈 | 「猛犬注意」→猛獣全般に適用 |
| 縮小解釈 | 文言の意味を通常より狭く解釈 | 「車両通行止め」→自転車は除外 |
| 類推解釈 | 類似の事項に規定を適用 | AについてのルールをBにも適用 |
| 反対解釈 | 規定のない事項には適用しない | Aの規定があればA以外には適用しない |
| 勿論解釈 | 当然に含まれる事項に適用 | 「猛犬注意」→猛獣は当然に含む |
試験頻出ポイント: 類推解釈と反対解釈は結論が正反対になる。また、刑法では罪刑法定主義の要請から、被告人に不利な類推解釈は禁止されている(類推解釈の禁止)。
各解釈技法の正確な整理
ここは取り違えやすいので、定義と関係を丁寧に整理します。
- 拡張解釈と類推解釈の違い: 拡張解釈は「文言の意味の範囲内で広げる」のに対し、類推解釈は「文言の意味の範囲を超えて、似た事案に当てはめる」点が異なります。たとえば「車馬通行止め」の「馬」に牛を含めるのは、文言の枠を超えるため類推解釈に近い処理になります。
- 縮小解釈(限定解釈): 文言を文字どおり読むと広すぎる場合に、趣旨に照らして狭く読む手法です。
- 反対解釈と勿論解釈の違い: 反対解釈は「規定がない事項には適用しない」、勿論解釈は「規定の趣旨から当然に含まれる事項には適用する」。同じ「規定のない事項」でも、趣旨を考慮するかどうかで結論が逆になります。
罪刑法定主義と類推解釈の禁止
刑法では「法律なければ刑罰なし」という罪刑法定主義が妥当します。被告人に不利益となる類推解釈は、明文のない行為を処罰することになり禁止されます。一方で、被告人に有利な類推解釈は許されるとするのが一般的理解です。また、拡張解釈は文言の範囲内であれば刑法でも許されるとされ、「拡張解釈と類推解釈の境界」が論点になります。
なお、罪刑法定主義の派生原則として、慣習刑法の排除(成文の法律によらない処罰の禁止)、刑罰法規不遡及の原則、絶対的不定期刑の禁止、明確性の原則などがあり、これらもまとめて出題されることがあります。
よくある誤解
- 「文理解釈より論理解釈が優れている」というわけではありません。まず文理解釈が出発点であり、文言から離れた解釈は慎重であるべきとされます。
- 「類推解釈は民事でも禁止される」は誤り。類推解釈の禁止は刑罰法規(および侵害的な行政法規)の場面で問題になるのであって、民事では類推適用が広く認められます(例:賃貸借に関する規定の使用貸借への類推など、判例上の類推適用は多数)。
テーマ3: 裁判制度
裁判所の種類
日本の裁判所は、最高裁判所と下級裁判所(高等裁判所・地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所)で構成されています(裁判所法第2条)。
特別裁判所の設置は禁止されています(憲法第76条第2項)。これは、特定の身分・事件のために通常の裁判所系列から独立した裁判所を作ることの禁止を意味します。家庭裁判所は通常裁判所の系列に属するため特別裁判所ではない、という点が出題ポイントです。
三審制と上訴
原則として3回の審理を受ける機会が保障されています。
- 控訴: 第一審の判決に不服がある場合
- 上告: 控訴審の判決に不服がある場合
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 控訴 | 第一審判決に対する上訴 |
| 上告 | 控訴審(第二審)判決に対する上訴 |
| 抗告 | 決定・命令に対する上訴 |
| 上訴 | 控訴・上告・抗告の総称 |
民事と刑事では第一審が地裁か簡裁かで審級ルートが変わります。簡易裁判所が第一審の民事事件では、控訴審が地方裁判所、上告審が高等裁判所となり、最高裁に至らないこともあります。「三審制だから常に最高裁まで争える」というのは不正確で、事件の種類により審級が異なる点に注意が必要です。
再審
確定判決に重大な瑕疵がある場合に、確定判決の取消しと再度の審理を求める非常救済手続が再審です。通常の上訴(確定前の不服申立て)とは区別される点が問われます。
裁判の公開
裁判の対審および判決は公開法廷で行うのが原則です(憲法第82条第1項)。ただし、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると決した場合には、対審を非公開にできます(同条第2項本文)。もっとも、政治犯罪・出版に関する犯罪・憲法上保障する国民の権利が問題となっている事件の対審は、常に公開しなければならず、また判決は常に公開されます(同項ただし書)。この「対審は非公開にできるが判決は必ず公開」という区別は頻出です。
裁判員制度
重大な刑事事件について、国民が裁判員として裁判に参加する制度です。裁判員裁判は地方裁判所で行われます(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第2条)。
裁判員制度のポイントを整理します。
- 対象は重大な刑事事件(死刑または無期の懲役・禁錮に当たる罪など)に限られ、民事事件・行政事件は対象外。
- 原則として裁判官3人+裁判員6人の合議体で審理する。
- 裁判員は事実認定と量刑の双方に関与する(法令の解釈など法律問題は裁判官のみが担当)。
- 有罪・量刑の判断には、裁判官・裁判員双方を含む過半数の賛成が必要。
「裁判員は事実認定のみで量刑には関与しない」という選択肢は誤りであり、頻出の引っかけです。
ADR(裁判外紛争解決手続)
裁判によらずに民事上の紛争を解決する手続の総称です。仲裁、調停、あっせん等が含まれます。ADR法(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律)により制度が整備されています。
| 手続 | 特徴 |
|---|---|
| 仲裁 | 第三者(仲裁人)の判断(仲裁判断)に服する。原則として判決と同様の効力。不服でも訴訟で争えないのが原則 |
| 調停 | 第三者が間に入り当事者の合意による解決を目指す。合意ができなければ不成立 |
| あっせん | 第三者が当事者の話し合いを仲介・調整する |
ADRの長所は、迅速・低廉・専門性・非公開(プライバシー保護)にあるとされます。仲裁は当事者の合意(仲裁合意)を前提とし、いったん仲裁判断が出ると原則として裁判で蒸し返せない点で調停・あっせんと性質が大きく異なります。
テーマ4: 法律用語
接続詞の使い分け
法律特有の接続詞の使い分けは、基礎法学の定番テーマです。
「及び」と「並びに」(併合的接続詞)
- 及び: 単純な並列。同じレベルの事項を結ぶ
- 並びに: 段階的な並列。大きなグループを結ぶ場合に使用
例: A及びB並びにC及びD → (A・B)と(C・D)の大きな並列
「又は」と「若しくは」(選択的接続詞)
- 又は: 最も大きい選択肢を結ぶ
- 若しくは: 小さい選択肢を結ぶ
例: A若しくはB又はC若しくはD → (AかB)か(CかD)の選択
ポイント: 併合では小→大(及び→並びに)、選択では大→小(又は→若しくは)の順に使う。
接続詞の覚え方と階層整理
併合と選択で「小→大/大→小」の順序が逆になるため混乱しやすいところです。次のように対称で覚えると整理できます。
| 種類 | 小さい結合 | 大きい結合 | 順序 |
|---|---|---|---|
| 併合的(〜と〜) | 及び | 並びに | 及び→並びに(小→大) |
| 選択的(〜か〜) | 若しくは | 又は | 若しくは→又は(小→大の「語の登場」) |
選択的接続詞の理解のコツは、「最も大きな選択の段階だけに『又は』を1回だけ使い、それより小さい段階はすべて『若しくは』を使う」という点です。3段階以上になる場合、最上位だけ「又は」、それ以外はすべて「若しくは」になります。併合的接続詞も同様に、「最上位の大きなくくりにだけ『並びに』、それ以外は『及び』」という構造です。
実際の条文に当てはめて読む練習をしておくと、本番で条文を引用した出題にも対応できます。
その他の法律用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 善意・悪意 | 事実を知らない・知っている(道徳的意味ではない) |
| 推定する | 反証があれば覆る |
| みなす | 反証があっても覆らない(擬制) |
| 直ちに | 即時に(最も緊急度が高い) |
| 遅滞なく | 正当な理由がなければ直ちに |
| 速やかに | できるだけ早く(訓示的) |
頻出の対概念をさらに整理
| 用語 | 意味 | 補足 |
|---|---|---|
| 「者」「物」「もの」 | 「者」は人(自然人・法人)、「物」は有体物、「もの」はそれ以外(権利・事業体・前述語句の限定) | 使い分けが問われる |
| 「以上・以下」と「超える・未満」 | 「以上・以下」は基準数を含む、「超える・未満」は含まない | 数の境界で頻出 |
| 「適用」と「準用」 | 適用はその規定をそのまま当てはめる、準用は必要な読替えをして他の事項に当てはめる | 条文操作で重要 |
| 「科する」と「課する」 | 「科する」は刑罰・過料、「課する」は税・負担金 | 漢字の使い分け |
| 「時」と「とき」 | 「時」は特定の時点、「とき」は場合・条件 | 条文読解で重要 |
| 「その他」と「その他の」 | 「その他」は並列(別個)、「その他の」は例示(包含) | 解釈に影響 |
| 「することができる」と「しなければならない」 | 前者は任意(裁量)、後者は義務 | 行政法でも頻出 |
「速やかに」は訓示的(守らなくても直ちに違法とは限らない)とされる点、緊急度は「直ちに > 速やかに > 遅滞なく」とは限らず、一般に「直ちに」が最も即時性が高く、「遅滞なく」は合理的理由があれば多少の遅れが許容される、と整理されます。3者の厳密な順位付けは文脈によるため、「直ちに」が最も強い即時性を要求する点を中心に押さえれば十分です。
「善意・悪意」の試験的意味
民法を中心に頻出する「善意・悪意」は、ある事実を知っているか否かという認識の有無を指す技術的概念であり、道徳的な善悪とは無関係です。さらに「善意無過失」「善意有過失」のように過失の有無と組み合わせて要件が定まることが多く、基礎法学で用語の意味を確認したうえで民法の各制度(即時取得、94条2項類推、表見代理など)につなげると効率的です。
テーマ5: 法の効力
法律不遡及の原則
法律は原則として施行後の事実にのみ適用され、施行前の事実には適用されません(法律不遡及の原則)。特に刑罰法規については、憲法第39条により事後法の禁止が明文で規定されています。
憲法第39条前段は次のように定めています。
何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。
― 日本国憲法 第39条
前段前半が事後法の禁止(遡及処罰の禁止)、前段後半が一事不再理、後段が二重処罰の禁止に対応すると整理されます。なお、法律不遡及は一般原則であって、刑罰法規以外では遡及立法が絶対に禁止されるわけではなく、行為者に不利益でない場合や合理的理由がある場合には遡及適用が認められることもあります。「あらゆる法律で遡及適用が禁止される」という選択肢は誤りです。
後法優先の原則
同一の事項について新しい法律と古い法律が矛盾する場合、後法(新法)が優先します。ただし前述のとおり、後から制定された一般法と従来の特別法が衝突する場面では、特別法優先の原則が優先するのが原則です。
上位法優先の原則
法の形式的効力は、憲法 > 法律 > 命令(政令・省令)> 条例の順です。下位の法規が上位の法規に違反する場合は無効です。
| 原則 | 内容 | 適用場面 |
|---|---|---|
| 上位法優先 | 効力の高い法が低い法に優先 | 異なる形式の法が矛盾するとき |
| 後法優先 | 新しい法が古い法に優先 | 同一形式・同一事項で矛盾するとき |
| 特別法優先 | 特別法が一般法に優先 | 一般法と特別法が競合するとき |
これら3原則の適用順序を整理しておくと、複合的な出題に対応できます。形式的効力が異なれば上位法優先、同じ形式なら後法優先・特別法優先で処理する、という考え方が基本です。
法律の時間的・場所的・人的効力
| 効力の範囲 | 内容 |
|---|---|
| 時間的効力 | 施行から廃止まで効力を持つ。施行日は公布後に定められる |
| 場所的効力 | 原則として日本の領域全体に及ぶ(属地主義)。条例は当該自治体の区域内 |
| 人的効力 | 原則として領域内の全ての人に及ぶ。例外として外交官の治外法権など |
法律は「公布」(官報による国民への周知)と「施行」(現実に効力を持つこと)が区別されます。公布即施行ではなく、施行期日を定めるのが通例であり、この公布と施行の違いも基礎法学・憲法で問われます。
過去問で問われた角度とよくある誤解
基礎法学では、知識の正確さを突く「引っかけ」が多用されます。代表的な角度を整理します。
- 「みなす」と「推定する」の逆転: 「推定する」は反証で覆る、「みなす」は覆らない。この逆を書いた選択肢が定番。
- 接続詞の順序の逆転: 「及び」「並びに」「又は」「若しくは」の階層を逆に説明する選択肢。
- 裁判員の関与範囲: 「裁判員は量刑に関与しない」「裁判員は民事にも参加する」は誤り。
- 特別裁判所の禁止: 「家庭裁判所は特別裁判所である」は誤り。
- 裁判公開の例外: 「判決も非公開にできる」は誤り(判決は常に公開)。
- 慣習法の効力: 「慣習法は常に制定法に優先する」は誤り(通則法3条で限定)。
- 類推解釈の禁止範囲: 「民法でも類推解釈は禁止される」は誤り(刑罰法規等の場面の問題)。
- 法格言・法制史: ラテン語法格言の意味、ローマ法・近代法典編纂史(ナポレオン法典、ボワソナードによる旧民法、明治期の法典論争など)は難問側に出ることがあるが、深追いは非効率。
「正しい知識を一文で言い換えられるか」を意識して学習すると、引っかけに強くなります。
効率的な学習法
基礎法学は範囲が広いため、メリハリをつけた学習が重要です。
- 頻出テーマを最優先: 法の解釈、法律用語、法の分類は毎年のように出題される
- 過去問で傾向を把握: 過去10年分の過去問を解き、出題パターンを確認する
- 深追いしない: 基礎法学に過度の時間を割くのは非効率。行政法・民法の学習を優先する
- 常識で解ける問題も多い: 法学の基本的な考え方を理解していれば、初見の問題にも対応できる
学習の優先順位とコスパ
| 優先度 | テーマ | 理由 |
|---|---|---|
| ◎ 最優先 | 法の解釈・法律用語・法の効力(3原則) | 頻出かつ暗記で対応可。コスパ最高 |
| 〇 重要 | 裁判制度(裁判員・公開・審級)・法源 | 憲法・行政法と知識を共有でき一石二鳥 |
| △ 余力があれば | 法格言・法制史・法哲学・国際法 | 難問側。深追いせず広く浅く |
基礎法学のために専用の分厚い対策時間を確保するのは非効率です。憲法・行政法・民法の学習を通じて自然に身につく知識(裁判制度は憲法、法律用語は民法・行政法)を土台にしつつ、法の解釈・接続詞・法の効力など「基礎法学固有の暗記事項」だけを直前期に短時間で詰めるのが王道です。
本番での解き方
問題1・問題2で難問にぶつかったら、いったん飛ばして後回しにする判断が重要です。最初の2問に時間を使いすぎると、配点の大きい行政法・民法に皺寄せが及びます。基礎法学は「解ける1問を確実に拾い、難問は消去法で2択に絞って先へ進む」のが鉄則です。
類推解釈とは、法律の規定がない事項について、類似の事項に関する規定を適用する解釈方法である。
法律用語の「及び」は大きなグループの並列に使い、「並びに」は小さなグループの並列に使う。
法律用語で「推定する」とは反証があっても覆すことができない効果を持つ。
裁判の対審は、裁判官の全員一致で公序良俗を害するおそれがあると決した場合には非公開とできるが、判決は常に公開しなければならない。
裁判員制度における裁判員は、事実の認定には関与するが、量刑の判断には一切関与しない。
まとめ
基礎法学は2問8点という小さな配点ですが、出題テーマは法の分類・法の解釈・裁判制度・法律用語・法の効力に大別でき、効率的に学習すれば確実に得点できる分野です。
特に法の解釈方法(文理解釈・拡張解釈・縮小解釈・類推解釈・反対解釈)の区別と、法律用語(「及び」と「並びに」、「推定する」と「みなす」等)の正確な理解は、ほぼ毎年出題される最重要テーマです。これらは暗記でカバーでき、コストパフォーマンスが極めて高い領域です。
一方で、法格言・法制史・法哲学・国際法といった難問側のテーマは、深追いせず広く浅く触れる程度にとどめ、本番では難問を飛ばして易問を確実に拾う戦略が有効です。基礎法学固有の暗記事項は直前期に短時間で固め、学習時間の主軸は行政法・民法・憲法に置きましょう。
深追いは禁物ですが、頻出テーマを押さえて2問中最低1問、できれば2問とも正解を目指しましょう。