行政不服審査法の教示制度|誤教示の効果も解説
行政不服審査法の教示制度を条文ベースで徹底解説。教示義務の内容(82条)、利害関係人からの教示請求、教示をしなかった場合(83条)・誤った教示をした場合(22条・55条)の救済、審査請求期間、行政事件訴訟法46条の教示との違いまで、試験頻出ポイントを表で整理します。
結論|教示制度とは何か(30秒でわかる要約)
教示制度とは、処分をする行政庁が、その処分に不服がある場合の争い方(どこに・いつまでに・何を申し立てられるか)を相手方に教え示す制度です。 行政不服審査法では82条が教示義務を、22条・55条・83条が教示に不備があった場合の救済を定めています。
最低限おさえるべき骨格は次の5点です。
- 誰が:不服申立てをすることができる処分をする行政庁
- いつ:その処分を書面でするとき(口頭でする処分には教示義務なし)
- 何を:①不服申立てができる旨 ②不服申立てをすべき行政庁 ③不服申立てができる期間(82条1項)
- どうやって:書面で。利害関係人から求められた場合は口頭でも足りるが、書面による教示を求められたら書面で(82条2項・3項)
- 不備があったら:教示しなかったときは処分庁に不服申立書を提出できる(83条1項)。誤って別の行政庁を教示したときは、その行政庁から送付され、初めから正しい審査庁に審査請求がされたものとみなされる(22条)
行政書士試験では、行政不服審査法の教示と行政事件訴訟法46条の教示を入れ替えた誤り肢が定番です。本記事は、両者の違いと誤教示・不教示の効果を、条文の項番号まで正確に整理します。
はじめに|教示制度の意義
教示制度とは、行政庁が処分を行う際に、その処分に不服がある場合の救済手段(不服申立てや取消訴訟の方法)を相手方に教え示す制度です。
行政上の不服申立てや行政訴訟の制度がどんなに充実していても、処分を受けた国民がその存在を知らなければ利用できません。教示制度は、国民の権利救済の実効性を確保するための重要な仕組みです。
行政書士試験では、行政不服審査法と行政事件訴訟法の教示制度がそれぞれ頻出です。両者は似ているようで異なる点が多く、比較問題として出題されることが少なくありません。本記事では、行政不服審査法の教示制度を中心に、行政事件訴訟法の教示制度との比較も含めて整理します。
なぜ教示制度が必要なのか(制度趣旨)
行政処分に対する不服申立てや取消訴訟には、提起先(どの機関へ)・提起期間(いつまでに)・提起方法(誰を相手に・どんな書面で)といった技術的なルールが定められています。これらは法律の専門知識を持たない一般国民にとって、必ずしも容易に把握できるものではありません。
仮に、救済手段が存在しても国民がその存在や手続を知らないために行使できないとすれば、せっかくの権利救済制度は「絵に描いた餅」になってしまいます。そこで、処分を行う行政庁の側に、救済手段の存在と手続を相手方へ知らせる義務(教示義務)を課したのが教示制度です。
教示制度の趣旨は、次の2点に整理すると理解しやすくなります。
- 情報格差の是正:処分を行う行政庁は救済手続を熟知しているのに対し、処分を受ける国民は手続を知らないことが多い。この情報の非対称性を行政の側から埋める。
- 権利救済の実効性確保:救済手段の存在を確実に伝えることで、不服申立て・出訴の機会を実質的に保障する。
行政不服審査法は平成26年に全部改正され(平成28年4月1日施行)、それまでの旧法(昭和37年制定)から大きく構造が変わりました。教示制度自体は旧法にも置かれていましたが、現行法では再調査の請求の創設などに伴い、教示すべき内容も条文の位置も整理されています。古い教材は条文番号がそのまま使えないため、条番号を覚え直す必要がある点に注意してください。
教示制度が置かれている位置
現行の行政不服審査法において、教示に関する規定は1か所にまとまっていません。ここが受験生のつまずきどころです。
82条・83条は第6章「補則」に、22条は第2章「審査請求」に、55条は第3章「再調査の請求」に置かれています。「教示義務は82条・83条、誤教示の救済は22条・55条」という配置をまず頭に入れてください。
行政不服審査法の教示義務(82条)
処分の相手方に対する教示(82条1項)
行政庁は、審査請求等をすることができる処分を書面でする場合には、処分の相手方に対し、以下の事項を教示しなければなりません(行政不服審査法82条1項)。
- 当該処分につき不服申立てをすることができる旨
- 不服申立てをすべき行政庁(審査請求をすべき行政庁など)
- 不服申立てをすることができる期間
行政庁は、審査請求若しくは再調査の請求又は他の法令に基づく不服申立て(以下この条において「不服申立て」と総称する。)をすることができる処分をする場合には、処分の相手方に対し、当該処分につき不服申立てをすることができる旨並びに不服申立てをすべき行政庁及び不服申立てをすることができる期間を書面で教示しなければならない。ただし、当該処分を口頭でする場合は、この限りでない。
――行政不服審査法82条1項
条文を分解すると、教示すべき内容は「①不服申立てができる旨」「②不服申立てをすべき行政庁」「③不服申立てができる期間」の3点であることがわかります。「審査請求」だけでなく、「再調査の請求」や「他の法令に基づく不服申立て」も総称して「不服申立て」とされている点に注意しましょう。
なお、82条1項が総称する「不服申立て」に列挙されているのは、審査請求・再調査の請求・他の法令に基づく不服申立ての3つです。行政不服審査法6条に基づく再審査請求は、この列挙には掲げられていません。細かい論点ですが、条文の文言を正確に読ませる出題ではここが差になります。
教示義務が発生する場面
教示義務が発生するのは、審査請求等をすることができる処分を書面でする場合です。以下の点に注意が必要です。
- 書面で処分をする場合に限定される(口頭で処分をする場合は教示義務なし)
- 教示は書面で行わなければならない
- 処分の相手方に対して教示する(第三者に対する能動的な教示義務は規定されていない)
- 対象は「不服申立てをすることができる処分」。そもそも不服申立ての対象とならない行為には教示の問題は生じない
「口頭処分には教示義務なし」の理解
82条1項ただし書は「当該処分を口頭でする場合は、この限りでない」と定め、口頭でする処分には教示義務を課していません。これは、口頭処分の場面で書面教示を求めるのは制度上なじまないこと、また口頭処分は比較的軽微・即時的な処分が多いことなどによります。
試験では「口頭で処分をする場合にも教示しなければならない」という選択肢が頻出の誤り肢です。「処分が書面 → 教示義務あり(書面で)」「処分が口頭 → 教示義務なし」という対応関係を確実に押さえてください。
このただし書は、行政事件訴訟法46条にも1項から3項まですべてに置かれています。「口頭処分には教示義務なし」は行審法・行訴法に共通するルールであり、ここは両法で差がつかない部分です。差がつくのはこの後に見る救済規定の側です。
利害関係人からの教示請求(82条2項・3項)
処分の相手方以外の利害関係人も、教示を求めることができます。行政庁に対し、当該処分が不服申立てをすることができる処分であるかどうか、できる場合の不服申立先や期間を教示するよう求めた場合、行政庁はその教示をしなければなりません(82条2項)。
行政庁は、利害関係人から、当該処分が不服申立てをすることができる処分であるかどうか並びに当該処分が不服申立てをすることができるものである場合における不服申立てをすべき行政庁及び不服申立てをすることができる期間につき教示を求められたときは、当該事項を教示しなければならない。
――行政不服審査法82条2項
ここでのポイントは、82条1項の教示が「処分の相手方」に対する行政庁の能動的義務であるのに対し、82条2項の教示は「利害関係人」からの請求に応じて行う受動的義務である点です。利害関係人には、相手方のように放っておいても教示されるわけではなく、自ら求めて初めて教示を受けられます。
もう一つ見落としやすいのが、教示すべき事項の中身が1項と2項で違うことです。1項は「不服申立てをすることができる処分」であることが前提なので、いきなり「その旨・行政庁・期間」を教示します。これに対し2項は、そもそも当該処分が不服申立てをすることができる処分であるかどうかという点から教示の対象になっています。利害関係人は当事者ではないため、不服申立ての可否そのものが分からない立場にあることが考慮されているのです。
そして、利害関係人への教示は原則として書面による義務はない点に注意してください。利害関係人から「書面で教示してほしい」と求められた場合には書面で教示しなければなりませんが、そうでなければ口頭での教示でも構いません(82条3項)。
前項の場合において、教示を求めた者が書面による教示を求めたときは、当該教示は、書面でしなければならない。
――行政不服審査法82条3項
82条の教示義務の整理表
この表は「相手方は書面・職権/利害関係人は請求があったとき・原則口頭(書面請求時のみ書面)」という対比で覚えると、引っかけ肢に強くなります。
行政不服審査法82条の教示義務は、行政庁が処分を口頭で行う場合にも適用される。○か×か。
審査請求期間の正確な整理(18条)
教示すべき事項の一つが「不服申立てをすることができる期間」である以上、期間のルールを正確に押さえていなければ、誤教示の論点も理解できません。ここで審査請求期間を整理しておきます。
主観的期間と客観的期間の二本立て
処分についての審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して三月(当該処分について再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定があったことを知った日の翌日から起算して一月)を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
――行政不服審査法18条1項
処分についての審査請求は、処分(当該処分について再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定)があった日の翌日から起算して一年を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
――行政不服審査法18条2項
審査請求期間は、主観的期間(知った日の翌日から起算して3か月)と客観的期間(処分があった日の翌日から起算して1年)の二本立てです。どちらか一方でも経過すれば、原則として審査請求はできません。そして、いずれにも「正当な理由があるときは、この限りでない」というただし書が付いています。このただし書が、後で述べる誤教示・不教示の救済を支える受け皿になります。
見落としやすいのが括弧書きです。再調査の請求をした場合は、起算点も期間も変わります。
- 主観的期間:再調査の請求についての決定があったことを知った日の翌日から起算して1か月
- 客観的期間:再調査の請求についての決定があった日の翌日から起算して1年
「3か月」がそのまま維持されるわけではなく「1か月」に短縮される点は、正誤判断の分かれ目になります。
郵送日数は算入しない(18条3項)
次条に規定する審査請求書を郵便又は……信書便で提出した場合における前二項に規定する期間(以下「審査請求期間」という。)の計算については、送付に要した日数は、算入しない。
――行政不服審査法18条3項(要旨)
郵便・信書便で審査請求書を提出した場合、送付に要した日数は審査請求期間に算入されません。いわゆる発信主義に近い扱いで、郵送のタイムラグによって申立人が不利益を受けないようにする配慮です。
各不服申立ての期間の一覧
すべての期間に「正当な理由があるときは、この限りでない」のただし書が付いている点も共通です。
なお、行政不服審査法が「知った日の翌日から起算して」と定めているのに対し、行政事件訴訟法14条1項は「知つた日から六箇月」と定めており、起算点の書きぶりが異なります。行審法と行訴法を混ぜた出題では、この文言の差もチェックポイントになります。
処分庁を経由した審査請求と期間(21条)
審査請求をすべき行政庁が処分庁等と異なる場合、審査請求人は処分庁等を経由して審査請求をすることができます(21条1項)。この場合、処分庁等は直ちに審査請求書等を審査庁となるべき行政庁に送付しなければなりません(21条2項)。
そして期間の計算については、処分庁に審査請求書を提出した時に審査請求があったものとみなされます(21条3項)。教示が正しく行われた場合の通常ルートですが、後述する22条・83条の「みなし」規定と構造が似ているため、セットで整理しておくと混乱しません。
教示をしなかった場合の救済(83条)
処分庁に不服申立書を提出できる(83条1項)
行政庁が教示をしなかった場合、処分の相手方は、その処分について不服がある場合に、どこに審査請求をすればよいかわかりません。
このような場合の救済措置として、行政不服審査法83条は、処分庁に不服申立書を提出できると規定しています。
行政庁が前条の規定による教示をしなかった場合には、当該処分について不服がある者は、当該処分庁に不服申立書を提出することができる。
――行政不服審査法83条1項
ここで提出できるのは「処分庁」に対してであり、提出するのは「不服申立書」である点が重要です。教示がなかったために本来の審査庁がわからなくても、とりあえず処分を行った処分庁に出しておけば救済される、という建て付けです。「審査請求書」ではなく「不服申立書」という名称が使われていることにも注意しましょう。
なお、この不服申立書については、審査請求書の記載事項を定める19条(ただし5項1号・2号を除く)が準用されます(83条2項)。除外されているのは、再調査の請求についての決定を経ないで審査請求をする場合の記載事項です。教示がなかった以上、再調査の請求の存在も知らされていない前提だからです。
処分庁が受け取った後の処理(83条3項)
第一項の規定により不服申立書の提出があった場合において、当該処分が処分庁以外の行政庁に対し審査請求をすることができる処分であるときは、処分庁は、速やかに、当該不服申立書を当該行政庁に送付しなければならない。当該処分が他の法令に基づき、処分庁以外の行政庁に不服申立てをすることができる処分であるときも、同様とする。
――行政不服審査法83条3項
処分庁は、その処分が処分庁以外の行政庁に審査請求できる処分であるときは、速やかに不服申立書をその行政庁に送付しなければなりません。この送付義務を定めているのは83条3項です(項番号を2項と誤って覚えている受験生が多い箇所です)。
ここでもう一点、正確に押さえておきたいのが通知義務の有無です。83条3項には、22条1項のような「その旨を審査請求人に通知しなければならない」という文言は置かれていません。誤教示の救済規定である22条には各項に通知義務が明記されているのに対し、不教示の場合の83条3項には送付義務のみが定められている、という条文構造の違いです。
「初めから」のみなし効果は2種類(83条4項・5項)
83条の最大の急所は、みなし規定が2つあることです。どちらも「初めから」ですが、みなされる相手方が違います。
前項の規定により不服申立書が送付されたときは、初めから当該行政庁に審査請求又は当該法令に基づく不服申立てがされたものとみなす。
――行政不服審査法83条4項
第三項の場合を除くほか、第一項の規定により不服申立書が提出されたときは、初めから当該処分庁に審査請求又は当該法令に基づく不服申立てがされたものとみなす。
――行政不服審査法83条5項
- 83条4項:処分庁が他の行政庁に送付したとき → 初めから当該(送付先の)行政庁に審査請求等がされたものとみなす
- 83条5項:3項の場合以外(=処分庁自身が審査庁となる場合)に不服申立書が提出されたとき → 初めから当該処分庁に審査請求等がされたものとみなす
つまり、処分庁が審査庁でないケースは「送付先へのみなし」(4項)、処分庁がそのまま審査庁になるケースは「処分庁へのみなし」(5項)と、場面ごとに条文が分かれています。いずれにしても、みなしの基準時は送付の時点ではなく当初の提出時なので、提出者は期間の点で不利益を受けません。
審査請求期間との関係
教示がなされなかった場合に、処分庁に不服申立書を提出するまでの期間が審査請求期間(原則として処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月)を経過していた場合はどうなるでしょうか。
この点については、教示がなされなかったことについて処分の相手方に帰責事由がないのであれば、「正当な理由」(18条1項ただし書・2項ただし書)があるものとして、審査請求期間の経過後であっても審査請求が認められる余地があります。教示をしなかったのは行政庁側の落ち度であり、それによって国民が期間を徒過したのであれば、相手方を救済する解釈が妥当だからです。
ここは条文が「教示がなければ必ず期間制限を免れる」と定めているわけではない点に注意してください。あくまで18条のただし書にいう「正当な理由」の解釈問題として処理されます。「教示がなかった場合は審査請求期間の制限を受けない」と断定する肢は誤りです。
なお、19条2項5号は、審査請求書の記載事項として「処分庁の教示の有無及びその内容」を挙げています。教示の有無が手続の入口で申告される仕組みになっているのは、まさに教示の有無が救済の判断に影響するからです。
誤った教示がなされた場合の救済(22条・55条)
教示制度は、教示が「なかった」場合だけでなく、教示が「誤っていた」場合の救済も用意しています。行政不服審査法22条は、その名も「誤った教示をした場合の救済」という見出しを持つ条文で、5つの項に4つの場面が書き分けられています。この記事で最も出題可能性が高い部分です。
場面1|審査請求をすべき行政庁を誤って教示した(22条1項・2項)
審査請求をすることができる処分につき、処分庁が誤って審査請求をすべき行政庁でない行政庁を審査請求をすべき行政庁として教示した場合において、その教示された行政庁に書面で審査請求がされたときは、当該行政庁は、速やかに、審査請求書を処分庁又は審査庁となるべき行政庁に送付し、かつ、その旨を審査請求人に通知しなければならない。
――行政不服審査法22条1項
条文の要件を分解すると、次のようになります。
送付先が「処分庁又は審査庁となるべき行政庁」と選択的に書かれている点に注意してください。誤って教示された行政庁が処分庁に送付した場合には、さらに処分庁が速やかに審査庁となるべき行政庁に送付し、その旨を審査請求人に通知しなければなりません(22条2項)。2段階の送付があり得る構造です。
場面2|再調査の請求ができないのに「できる」と教示した(22条3項)
第一項の処分のうち、再調査の請求をすることができない処分につき、処分庁が誤って再調査の請求をすることができる旨を教示した場合において、当該処分庁に再調査の請求がされたときは、処分庁は、速やかに、再調査の請求書……又は再調査の請求録取書……を審査庁となるべき行政庁に送付し、かつ、その旨を再調査の請求人に通知しなければならない。
――行政不服審査法22条3項(要旨)
再調査の請求は、法律に定めがある処分についてしかできません。それにもかかわらず「再調査の請求ができる」と誤って教示し、その教示を信じて処分庁に再調査の請求がされた場合の規定です。処分庁は、その書面を審査庁となるべき行政庁に送付し、通知します。
場面3|審査請求ができる旨を教示しなかった(22条4項)
再調査の請求をすることができる処分につき、処分庁が誤って審査請求をすることができる旨を教示しなかった場合において、当該処分庁に再調査の請求がされた場合であって、再調査の請求人から申立てがあったときは、処分庁は、速やかに、再調査の請求書又は再調査の請求録取書及び関係書類その他の物件を審査庁となるべき行政庁に送付しなければならない。
――行政不服審査法22条4項(前段)
再調査の請求と審査請求のどちらも選べる処分なのに、審査請求ができることを教示しなかった場合です。ここでのポイントは、再調査の請求人からの「申立て」が要件になっていることです。1項〜3項が行政庁の職権による送付であるのに対し、4項は請求人の意思を待って送付する仕組みになっています。
なお、この場合の通知は、送付を受けた行政庁が再調査の請求人および参加人に対して行います(22条4項後段)。送付する側ではなく受け取る側が通知する点も、1項〜3項と異なります。
すべてに共通する「初めから」のみなし(22条5項)
前各項の規定により審査請求書又は再調査の請求書若しくは再調査の請求録取書が審査庁となるべき行政庁に送付されたときは、初めから審査庁となるべき行政庁に審査請求がされたものとみなす。
――行政不服審査法22条5項
1項から4項までのどの場面であっても、書面が審査庁となるべき行政庁に送付されたときは、初めから審査庁となるべき行政庁に審査請求がされたものとみなされます。送付された時点ではなく「初めから」である点が最重要です。
つまり、誤った教示に従って間違った行政庁に提出してしまった場合でも、正しい審査庁への送付が行われ、最初から正しい審査庁に提出したものとして扱われます。誤教示による期間の徒過という不利益を、みなし規定によって根本から解消しているわけです。
場面4|再調査の請求ができる旨を教示しなかった(55条)
22条と対になるのが、再調査の請求の章に置かれた55条です。見出しは22条と同じ「誤った教示をした場合の救済」ですが、動く方向が逆である点がポイントです。
再調査の請求をすることができる処分につき、処分庁が誤って再調査の請求をすることができる旨を教示しなかった場合において、審査請求がされた場合であって、審査請求人から申立てがあったときは、審査庁は、速やかに、審査請求書又は審査請求録取書を処分庁に送付しなければならない。ただし、審査請求人に対し弁明書が送付された後においては、この限りでない。
――行政不服審査法55条1項
第一項本文の規定により審査請求書又は審査請求録取書が処分庁に送付されたときは、初めから処分庁に再調査の請求がされたものとみなす。
――行政不服審査法55条3項
- 22条:審査庁となるべき行政庁の側へ送付 → 初めから審査請求がされたものとみなす
- 55条:処分庁の側へ送付 → 初めから再調査の請求がされたものとみなす
55条には、22条にはない時的限界が定められています。「審査請求人に対し弁明書が送付された後においては、この限りでない」(55条1項ただし書)。審査請求の審理がある程度進んだ後で処分庁の再調査に戻すのは適当でないという判断です。また、送付を受けた処分庁が審査請求人・参加人に通知します(55条2項)。「弁明書が送付された後は送付しない」という限界は55条だけのルールであり、狙われやすいポイントです。
審査請求期間を誤って教示した場合
期間を誤って教示した場合について、行政不服審査法は22条・55条のような専用の送付・みなし規定を置いていません。したがって、次のように処理されます。
期間を誤って長く教示した場合(例:「3か月」なのに「6か月以内」と教示した場合)。実際の審査請求期間を経過した後に審査請求がなされたとしても、教示を信頼した相手方に帰責事由はないため、18条1項ただし書・2項ただし書の「正当な理由」があるとして救済される余地があります。行政庁の誤教示によって国民が期間を徒過したケースであり、相手方を保護すべき典型場面です。
期間を誤って短く教示した場合(例:「3か月」なのに「1か月以内」と教示した場合)。実際の審査請求期間内であれば当然に審査請求は適法です。教示によって法律上の本来の期間が縮減されるわけではありません。教示は法定の期間を知らせる行為にすぎず、期間を創設する行為ではないからです。
誤教示・不教示の救済まとめ表
行政不服審査法83条により、教示がなかった場合に処分庁へ不服申立書が提出され、審査庁となるべき行政庁に送付されたときは、その送付があった時点で審査請求がされたものとみなされる。○か×か。
再調査の請求に関する教示
再調査の請求も教示の対象になる
82条1項は「審査請求若しくは再調査の請求又は他の法令に基づく不服申立て」を「不服申立て」と総称しており、再調査の請求も教示の対象に含まれます。したがって、再調査の請求ができる処分を書面でする場合には、次の事項も書面で教示する必要があります。
- 再調査の請求をすることができる旨
- 再調査の請求をすべき行政庁(処分庁)
- 再調査の請求をすることができる期間(54条)
再調査の請求ができるのはどんな場合か(5条)
行政庁の処分につき処分庁以外の行政庁に対して審査請求をすることができる場合において、法律に再調査の請求をすることができる旨の定めがあるときは、当該処分に不服がある者は、処分庁に対して再調査の請求をすることができる。ただし、当該処分について第二条の規定により審査請求をしたときは、この限りでない。
――行政不服審査法5条1項
条文から読み取るべき要件は2つです。
- 処分庁以外の行政庁に対して審査請求をすることができる場合であること
- 法律に再調査の請求をすることができる旨の定めがあること
「再調査の請求はすべての処分でできる」という肢は誤りです。また、条例に基づく処分について再調査の請求を認めるには「法律」の定めが必要とされている(5条1項は「法律に」と規定)点も、細かいですが条文どおりに押さえておきましょう。
そして5条1項ただし書により、先に審査請求をしてしまうと、もはや再調査の請求はできません。逆に、再調査の請求を先にした場合は、原則としてその決定を経た後でなければ審査請求をすることができません(5条2項本文)。
前項本文の規定により再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定を経た後でなければ、審査請求をすることができない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
――行政不服審査法5条2項
例外は次の2つです(5条2項各号)。
- 再調査の請求をした日(不備の補正を命じられた場合は補正した日)の翌日から起算して3か月を経過しても処分庁が決定をしない場合
- その他、決定を経ないことにつき正当な理由がある場合
このように、審査請求と再調査の請求は「どちらを先に選ぶかは自由(自由選択主義)だが、選んだ後の進み方には制約がある」という関係にあります。教示の場面では、この選択関係を相手方が理解できるよう、双方について教示することになります。
行政事件訴訟法46条の教示との違い
行政事件訴訟法46条の教示
行政事件訴訟法にも教示制度があります(46条、見出しは「取消訴訟等の提起に関する事項の教示」)。しかも1項から3項まで、3つの類型が定められています。
(1)取消訴訟についての教示(46条1項)
行政庁は、取消訴訟を提起することができる処分又は裁決をする場合には、当該処分又は裁決の相手方に対し、次に掲げる事項を書面で教示しなければならない。ただし、当該処分を口頭でする場合は、この限りでない。
一 当該処分又は裁決に係る取消訴訟の被告とすべき者
二 当該処分又は裁決に係る取消訴訟の出訴期間
三 法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、その旨
――行政事件訴訟法46条1項
教示すべきは①被告とすべき者 ②出訴期間 ③審査請求前置の定めがあるときはその旨の3点です。
(2)裁決主義の場合の教示(46条2項)
法律に「審査請求に対する裁決に対してのみ取消訴訟を提起することができる」旨の定め(いわゆる裁決主義)がある場合、行政庁は当該処分をするときに、法律にその定めがある旨を書面で教示しなければなりません。処分そのものを争えないという重大な制約を知らせるための規定です。
(3)形式的当事者訴訟についての教示(46条3項)
当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分・裁決に関する訴訟で、法令の規定により法律関係の当事者の一方を被告とするもの(形式的当事者訴訟)を提起できる処分・裁決をする場合には、当該訴訟の被告とすべき者と出訴期間を書面で教示しなければなりません。土地収用法上の損失補償に関する訴えなどが典型です。
1項〜3項のすべてに「当該処分を口頭でする場合は、この限りでない」というただし書が置かれています。
行政事件訴訟法46条の教示制度は、平成16年の行政事件訴訟法改正で新設されたものです。それ以前は行政訴訟についての教示制度はなく、改正により行政不服審査法に倣って導入された経緯があります。
両制度の比較表
比較上の重要ポイント
- 教示しなかった場合の救済規定:行政不服審査法には処分庁への不服申立書提出を認める救済規定(83条)があるが、行政事件訴訟法には教示をしなかった場合の救済規定はない
- 誤教示の場合の救済規定:行政不服審査法には送付・みなし規定(22条・55条)があるが、行政事件訴訟法には誤教示そのものを直接救済する送付・みなし規定はない
- 利害関係人からの教示請求:行政不服審査法では利害関係人からの教示請求権が認められている(82条2項)が、行政事件訴訟法にはこのような規定はない
- 教示すべき内容:行政不服審査法は「不服申立先」と「期間」、行政事件訴訟法は「被告」「出訴期間」「審査請求前置の有無」と、内容が異なる
- 教示の類型の数:行政不服審査法82条は「相手方への教示」「利害関係人への教示」の2類型、行政事件訴訟法46条は「取消訴訟」「裁決主義」「形式的当事者訴訟」の3類型
なぜ行訴法には教示しなかった場合の救済規定がないのか
行政事件訴訟法に「教示しなかった場合の救済規定」が置かれていない理由は、訴訟が裁判所に対して提起されるものであり、行政庁内部での送付・回付という処理がなじまないこと、また訴え提起の方式や被告の誤りについては別途、被告変更(15条)などの訴訟法上の手当てがあることによります。出訴期間についても「正当な理由」があれば例外が認められる余地があり(行訴法14条1項ただし書・2項ただし書)、誤教示を信頼して出訴が遅れた場合の救済はこの解釈に委ねられています。
この「行審法には83条・22条・55条の救済があるが、行訴法には教示欠缺・誤教示に対応する送付・みなし規定がない」という対比は、本テーマで最も問われやすい論点です。
ただし行訴法14条3項は「誤教示」を明文で扱っている
ここで一つ、精密に理解しておくべき条文があります。行政事件訴訟法14条3項です。
処分又は裁決につき審査請求をすることができる場合又は行政庁が誤つて審査請求をすることができる旨を教示した場合において、審査請求があつたときは、処分又は裁決に係る取消訴訟は、その審査請求をした者については、前二項の規定にかかわらず、これに対する裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したとき又は当該裁決の日から一年を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
――行政事件訴訟法14条3項
本当は審査請求ができないのに、行政庁が誤って「審査請求ができる」と教示し、それを信じて審査請求をした場合、その審査請求をした者については、出訴期間の起算点が裁決を知った日から6か月/裁決の日から1年にスライドします。誤教示を信じて審査請求に時間を費やしているうちに処分の出訴期間が過ぎてしまう、という事態を防ぐ規定です。
したがって、「行政事件訴訟法には誤教示に関する規定は一切ない」と言い切るのは不正確です。正しくは、「46条の教示義務に対応する送付・みなし型の救済規定はないが、14条3項が誤教示の場合の出訴期間について特則を置いている」と理解してください。
被告の誤りに関する救済(行訴法15条)
行政事件訴訟法には、教示制度とは別に、被告を誤った場合の救済規定があります。見出しは「被告を誤つた訴えの救済」です。
取消訴訟において、原告が故意又は重大な過失によらないで被告とすべき者を誤つたときは、裁判所は、原告の申立てにより、決定をもつて、被告を変更することを許すことができる。
――行政事件訴訟法15条1項
第一項の決定があつたときは、出訴期間の遵守については、新たな被告に対する訴えは、最初に訴えを提起した時に提起されたものとみなす。
――行政事件訴訟法15条3項
みなし規定を置いているのは15条3項です。効果は「出訴期間の遵守については、最初に訴えを提起した時に提起されたものとみなす」であり、行審法22条5項・83条4項の「初めから」と同じ発想です。あわせて、決定があったときは従前の被告に対しては訴えの取下げがあったものとみなされ(15条4項)、この決定に対して不服を申し立てることはできません(15条5項)。申立てを却下する決定に対しては即時抗告ができます(15条6項)。
要件として「故意又は重大な過失によらないで」被告を誤ったことが必要である点は必ず押さえてください。誤った教示を信じて被告を誤ったのであれば、通常は重過失がないと評価されるでしょう。教示制度(46条)と被告変更(15条)はいずれも被告を誤った国民を保護する機能を持ち、相互に補完し合う関係にあります。
行政事件訴訟法には、行政庁が教示をしなかった場合に、処分庁に訴状を提出できるとする救済規定がある。○か×か。
行政事件訴訟法46条の教示において、行政庁は被告とすべき者・出訴期間のほか、審査請求前置とされている場合にはその旨も教示しなければならない。○か×か。
試験に出るポイントと、ひっかけの型
出題の急所5つ
- 教示義務の発生場面:書面で処分をする場合に限定。口頭での処分には教示義務なし(行審法・行訴法に共通)
- 教示内容:行審法は「不服申立てができる旨・不服申立てをすべき行政庁・期間」、行訴法は「被告・出訴期間・審査請求前置の有無」
- 教示しなかった場合:行審法は処分庁に不服申立書提出可(83条1項)→送付(3項)→初めからのみなし(4項・5項)。行訴法には対応規定なし
- 誤教示の場合:行審法22条(審査請求の側へ)と55条(再調査の請求の側へ)の2本立て。いずれも「初めから」のみなし
- 利害関係人からの教示請求:行審法はあり(82条2項、原則口頭・書面請求時のみ書面)、行訴法はなし
ひっかけの型|言い換えパターン別
出題者が誤り肢を作る際に使う「型」は限られています。型で覚えておくと、初見の肢でも警戒が働きます。
型1:方式のすり替え
- 「行政庁は、口頭で処分を行う場合にも、教示をしなければならない」→ 誤り(82条1項ただし書。口頭処分には教示義務なし)
- 「利害関係人から教示を求められた行政庁は、常に書面で教示しなければならない」→ 誤り(82条3項。書面による教示を求められた場合のみ書面。原則は口頭で足りる)
型2:みなしの基準時のすり替え
- 「誤教示により誤った行政庁に提出した場合、送付された時点で審査請求がされたものとみなされる」→ 誤り(22条5項。「初めから」審査請求がされたものとみなされる)
- 「被告変更の決定があったときは、決定の時に訴えが提起されたものとみなされる」→ 誤り(行訴法15条3項。「最初に訴えを提起した時」)
型3:法律間の入れ替え
- 「利害関係人は行政事件訴訟法に基づき教示を求めることができる」→ 誤り(利害関係人の教示請求は行審法82条2項にのみ規定)
- 「行政事件訴訟法には、教示をしなかった場合に救済する送付・みなし規定がある」→ 誤り(行審法83条のような規定はない)
- 行審法の教示内容に「被告」や「出訴期間」を混ぜ込む肢 → 誤り
型4:主体・要件の差し替え
- 「誤って教示された行政庁は、審査請求書を審査庁となるべき行政庁にのみ送付しなければならない」→ 誤り(22条1項。送付先は「処分庁又は審査庁となるべき行政庁」)
- 「22条4項の送付は、処分庁が職権で行う」→ 誤り(22条4項。再調査の請求人からの申立てが要件)
- 「55条の送付は、審査請求の審理の段階を問わずに行われる」→ 誤り(55条1項ただし書。審査請求人に弁明書が送付された後はできない)
型5:期間のすり替え
- 「審査請求は、処分があったことを知った日から3か月以内にしなければならない」→ 不正確(18条1項は「知った日の翌日から起算して3か月」)
- 「再調査の請求をした場合でも、審査請求期間は決定を知った日の翌日から起算して3か月である」→ 誤り(18条1項括弧書。1か月)
- 「取消訴訟は、処分があったことを知った日の翌日から起算して6か月以内に提起しなければならない」→ 不正確(行訴法14条1項は「知つた日から六箇月」)
よくある誤解
- 「教示制度に違反すると処分自体が違法・無効になる」という誤解。教示の欠如・誤りは処分の効力には影響しないと一般に解されています。教示はあくまで救済手段を案内する手続であり、教示を怠っても処分の適法性そのものが直ちに左右されるわけではなく、83条・22条・55条・「正当な理由」といった救済規定によって国民の不利益が回復される建て付けになっています。
- 「教示がなかった場合は審査請求期間の制限を受けない」という誤解。行政不服審査法にそのような規定はありません。18条1項・2項ただし書の「正当な理由」の有無として処理されます。
- 「再調査の請求はすべての処分でできる」という誤解。再調査の請求は、処分庁以外の行政庁に審査請求ができる場合で、かつ法律に定めがある場合に限り認められます(5条1項)。教示の場面でも、再調査の請求についての教示が必要になるのは、その定めがある場合だけです。
- 「83条のみなしは1つだけ」という誤解。処分庁が他の行政庁に送付した場合(83条4項)と、処分庁自身が審査庁である場合(83条5項)で条文が分かれています。
関連論点
教示制度は、不服申立て・行政訴訟の入口に位置する制度です。理解を深めるためには、次の関連テーマと併せて学習すると効果的です。
- 審査請求期間と「正当な理由」(18条):誤教示・不教示の救済を支える受け皿
- 審査請求の提出先・処理(21条・22条・83条):経由・送付・みなしの3つの規定を横に並べる
- 再調査の請求と自由選択主義(5条・54条・55条):教示すべき内容と選択の関係
- 取消訴訟の出訴期間・被告適格(行訴法14条・11条・15条):行訴法の教示内容の前提知識
- 審理員・行政不服審査会:教示の後に始まる審理手続の全体像
これらを横断的に整理しておくと、比較問題・組合せ問題に強くなります。行政不服審査法の全体像は行政不服審査法の全体像|行政書士試験の重要論点を整理で、行審法と行訴法の相違点は行政不服審査法vs行政事件訴訟法|2法の徹底比較で確認できます。審理手続の担い手については行政不服審査法の審理員と審査会|改正の要点整理も参照してください。
まとめ
教示制度は、国民の権利救済を実効的なものとするために欠かせない仕組みです。行政書士試験では、以下の点を正確に理解しておくことが重要です。
- 教示義務は書面による処分の場合に発生し、教示自体も書面で行う(口頭処分には教示義務なし)。これは行審法82条1項・行訴法46条に共通するルール
- 教示すべき内容は、行審法では「不服申立てができる旨・不服申立てをすべき行政庁・期間」、行訴法では「被告・出訴期間・審査請求前置の有無」
- 教示しなかった場合は処分庁に不服申立書を提出する救済(83条1項)が認められ、処分庁以外が審査庁なら送付により「初めから当該行政庁」に(83条4項)、処分庁が審査庁ならそのまま「初めから当該処分庁」に(83条5項)審査請求がされたものとみなされる
- 誤った教示に従って誤った行政庁に提出した場合も、正しい審査庁への送付(22条)により「初めから」審査請求がされたものとして救済される。再調査の請求の教示を欠いた場合は55条が処分庁の側へ戻す
- 利害関係人は教示を請求でき(82条2項)、原則は口頭で足りるが、書面請求があれば書面で教示する(82条3項)
- 審査請求期間は「知った日の翌日から起算して3か月」「処分があった日の翌日から起算して1年」の二本立てで、いずれも「正当な理由」があれば例外がある(18条)
- 行政不服審査法と行政事件訴訟法の教示制度は、教示内容・救済措置・利害関係人の教示請求の有無が異なり、行訴法には教示欠缺・誤教示に対応する送付・みなし規定がない。ただし行訴法14条3項が誤教示の場合の出訴期間の特則を置いている
両法の教示制度の違いは比較表を用いて整理し、条文の項番号まで正確に覚えるようにしましょう。関連して、審査請求の手続全体や行政事件訴訟法の救済規定も併せて学習すると、得点が安定します。
行政不服審査法において、処分の相手方以外の利害関係人が教示を求めた場合、行政庁は必ず書面で教示しなければならない。○か×か。
再調査の請求をすることができる処分について、処分庁が誤って審査請求をすることができる旨を教示しなかった場合、処分庁は再調査の請求人の申立てがなくても、職権で審査庁となるべき行政庁に書類を送付しなければならない。○か×か。
FAQ|教示制度のよくある疑問
Q1. 教示をしなかった場合、処分は違法になって取り消されますか。
いいえ。教示は処分に不服がある場合の争い方を案内する手続であり、処分そのものの適法要件ではありません。教示を怠っても処分が当然に違法・無効になるわけではないと一般に解されています。その代わり、行政不服審査法83条が処分庁への不服申立書の提出を認め、送付と「初めから」のみなしによって、申立人が期間の点で不利益を受けないよう手当てしています。
Q2. 教示された期間を信じて審査請求したら、実際の期間を過ぎていました。救済されますか。
行政不服審査法には「誤って長く教示された場合は期間経過後でも適法」と明記した条文はありません。しかし18条1項ただし書・2項ただし書は「正当な理由があるときは、この限りでない」と定めており、行政庁の誤教示を信じて期間を徒過したのであれば、この「正当な理由」があるとして救済される余地があります。逆に、実際より短く教示された場合は、本来の法定期間内であれば当然に適法です。教示によって法定期間が縮まることはありません。
Q3. 誤って教示された行政庁に審査請求書を出したら、自分で出し直す必要がありますか。
必要ありません。行政不服審査法22条1項により、教示された行政庁が速やかに審査請求書を処分庁又は審査庁となるべき行政庁に送付し、その旨を審査請求人に通知します。処分庁に送付された場合は、処分庁がさらに審査庁となるべき行政庁に送付します(22条2項)。そして送付されたときは、初めから審査庁となるべき行政庁に審査請求がされたものとみなされます(22条5項)。出し直しによって期間を徒過するリスクは制度上排除されています。
Q4. 利害関係人は、放っておいても教示してもらえますか。
いいえ。行政庁が職権で教示しなければならないのは、82条1項の「処分の相手方」に対してだけです。利害関係人は、自ら行政庁に教示を求めて初めて教示を受けられます(82条2項)。しかもその教示は原則として口頭で足り、書面での教示を受けたければ「書面による教示」を求める必要があります(82条3項)。「相手方=職権・書面/利害関係人=請求・原則口頭」という対比で覚えてください。
Q5. 行政不服審査法の教示と行政事件訴訟法の教示は、何がいちばん違うのですか。
一言でいえば「教示に不備があったときの後始末の有無」です。行政不服審査法は、教示しなかった場合(83条)と誤って教示した場合(22条・55条)について、書面を正しい行政庁へ送付し、「初めから」そこに申立てがされたものとみなす仕組みを持っています。行政事件訴訟法46条にはこれに対応する規定がありません。教示内容の違い(行審法=不服申立先と期間/行訴法=被告・出訴期間・審査請求前置の有無)も重要ですが、救済規定の有無のほうが出題頻度は高い論点です。
Q6. 再調査の請求についても教示が必要ですか。
必要です。82条1項は「審査請求若しくは再調査の請求又は他の法令に基づく不服申立て」を「不服申立て」と総称しており、再調査の請求も教示の対象に含まれます。ただし、再調査の請求ができるのは、処分庁以外の行政庁に審査請求ができる場合で、かつ法律に再調査の請求ができる旨の定めがあるときに限られます(5条1項)。定めがない処分について「再調査の請求ができる」と教示すれば、それは誤教示であり、22条3項の送付・通知の対象になります。
Q7. 再審査請求についても82条の教示は必要ですか。
82条1項が総称する「不服申立て」に列挙されているのは、審査請求・再調査の請求・他の法令に基づく不服申立ての3つで、行政不服審査法6条に基づく再審査請求は明示的には掲げられていません。細かい論点ですが、条文の文言を正確に読ませる出題に備えて、82条1項の括弧書きの中身は一度自分の目で確認しておくことをおすすめします。
Q8. 「初めからみなす」規定は結局いくつあるのですか。
教示に関連するものだけで4つあります。①22条5項(誤教示→初めから審査庁となるべき行政庁に審査請求)②83条4項(不教示・送付あり→初めから当該行政庁に審査請求等)③83条5項(不教示・送付なし→初めから当該処分庁に審査請求等)④55条3項(再調査の請求の不教示→初めから処分庁に再調査の請求)。これに加えて、教示とは別の場面ですが21条3項(処分庁経由の審査請求)と行訴法15条3項(被告変更)も同種のみなし規定です。「みなしの向き(どこに、何の申立てがされたことになるのか)」を条文ごとに言えるようにしておくと、組合せ問題で確実に得点できます。
演習で定着させる
この論点は、教示義務が生じる場面と、誤教示・不教示があった場合の救済ルートが本試験で繰り返し問われます。読んで理解した状態と、肢の言い回しを変えられても正誤を判断できる状態のあいだには差があります。行政書士ブートラボの肢別演習は過去問を一問一答に分解して出題するため、その差をその場で潰していけます。行政法は法令科目のなかで最も出題数が多い科目なので、関連する論点をまとめて回すのが得点効率の面でも有利です。