この法律は、行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律(平成十四年法律第百五十一号)の施行の日から施行する。
この条文の過去問 17肢
結論:この肢は「誤り」。
即時強制とは、あらかじめ相手方に義務を命じることなく、直接に国民の身体または財産に実力を加えて、行政上必要な状態を実現する作用をいいます。ポイントは「義務の存在を前提としない」という点です。この肢は「行政上の義務を速やかに履行させることが緊急に必要とされる場合」と述べており、義務が先に存在していることを当然の前提にしています。これでは即時強制ではなく、行政上の強制執行(とりわけ直接強制)の説明になってしまいます。定義そのものを取り違えているため、記述は誤りです。
行政上の義務履行確保の手段は、代執行・執行罰(間接強制金)・直接強制・行政上の強制徴収の四つが伝統的な分類で、いずれも「義務の不履行」があってはじめて発動されます。これに対して即時強制は、義務を命じている時間的余裕がない場合や、そもそも義務を命じることが性質上なじまない場合に用いられるため、義務の賦課という段階を飛ばして実力行使に至ります。両者は「義務が前置されているか否か」という一点で截然と区別される、と押さえてください。
具体例を持っておくと判断が速くなります。即時強制の例としては、消防法29条の消火活動のための建物の破壊(破壊消防)、警察官職務執行法3条の泥酔者等の保護、同法4条の避難等の措置、感染症法に基づく患者の入院措置、食品衛生法に基づく危険食品の廃棄などがあります。いずれも「まず義務を命じ、履行しなければ強制する」という手順を踏んでいません。他方、直接強制の例としては、成田国際空港の安全確保に関する緊急措置法(いわゆる成田新法)3条に基づく工作物の使用禁止命令の実効性を担保する封鎖措置などが挙げられ、こちらは命令という義務賦課が先行しています。
ひっかけポイントとしてもう一つ。「個別の法律や条例の定めにより行われる」という部分自体は誤りではありません。即時強制も国民の権利を制約する権力的作用ですから法律または条例の根拠が必要であり、行政代執行法1条が法律の専管としているのは「行政上の義務の履行確保」の手段であって、義務を前提としない即時強制はこれに含まれないと解されています。そのため、条例を根拠に即時強制を定めること(放置自転車の撤去条例など)は可能だと説明されるのが一般的です。この肢は、条例の部分ではなく「義務を履行させる手段」と位置づけた点で誤っているのだ、と正確に切り分けておきましょう。
結論:この肢は「正しい」。
行政罰は、行政刑罰と行政上の秩序罰に大別されます。行政刑罰は、懲役・罰金・拘留・科料など刑法に刑名のある罰を科すもので、刑法総則が適用され、刑事訴訟法の手続に従って裁判所が科します。これに対して秩序罰は、届出義務違反や登記懈怠のように、直接には社会法益を害しないものの行政上の秩序に障害を与えるおそれのある軽微な義務違反に対して「過料」を科すものです。過料は刑罰ではないため、刑法総則の適用はなく、前科にもならず、刑事訴訟法によらない手続で科されます。この肢は、この基本的な性質を正確に述べています。
手続の根拠条文が本問の核心です。法律に基づく過料、すなわち国の法令違反に対する秩序罰は、非訟事件手続法119条以下(過料事件)の定めるところにより科されます。同法119条により、過料事件は原則として当事者(過料の裁判を受ける者となる者)の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属し、同法120条により、裁判所は、あらかじめ検察官の意見を聴くとともに当事者の陳述を聴いたうえで、理由を付した決定によって過料の裁判をします。過料の裁判に対しては当事者および検察官が即時抗告をすることができ(同法120条3項)、過料の裁判は検察官の命令により執行されます(同法121条1項)。したがって「非訟事件手続法の定めるところにより、所定の裁判所によって科される」という記述は正しいのです。
ひっかけポイントは、地方公共団体の条例・規則違反に対する過料との対比です。地方自治法14条3項は条例違反に対して5万円以下の過料を、同法15条2項は規則違反に対して5万円以下の過料を定めることを認めていますが、これらの過料は、同法255条の3により、普通地方公共団体の長が行政処分として科します。長はあらかじめ過料の処分を受ける者に告知して弁明の機会を与えなければならず、この過料処分に不服がある者は、審査請求や取消訴訟によって争うことになります。つまり、国の法律に基づく過料は「裁判所」、条例・規則に基づく過料は「地方公共団体の長」という振り分けが、本試験で最も狙われるところです。
さらに関連知識として、過料と刑罰の併科が二重処罰(憲法39条)に当たるかという論点があります。判例は、過料は刑罰ではなく、目的や手続を異にする制裁であるとして、併科を憲法39条に反しないとしています(追徴税と刑罰の併科について最大判昭和33年4月30日)。なお、2025年6月1日に施行された改正刑法により懲役と禁錮は「拘禁刑」に一本化されましたので、現在の行政刑罰の刑名は拘禁刑・罰金・拘留・科料となっている点も、現行法の知識として補っておいてください。
結論:この肢は「誤り」。
交通反則通告制度は、大量に発生する軽微な道路交通法違反を刑事手続から切り離して簡易迅速に処理するために設けられた制度です。警察本部長が反則者に対して反則金の納付を通告し(道路交通法127条)、通告を受けた者が期間内に反則金を納付すれば、その事件について公訴を提起されない(同法128条2項)という仕組みになっています。ここで重要なのは、反則金を納付するかどうかは通告を受けた者の任意の判断に委ねられており、納付を強制されるわけではないという点です。納付しなければ、通常の刑事手続に移行し、そこで違反の成否が審理されます。
判例は、交通反則金の納付通告に対して取消訴訟を提起することはできないとしています(最判昭和57年7月15日民集36巻6号1169頁)。理由は次のとおりです。反則金の納付通告は、これを受けた者に納付義務を課すものではなく、納付するか否かは自由であって、納付しない場合には刑事手続が開始され、そこで違反事実の有無を争うことができます。にもかかわらず行政訴訟による救済を認めると、同一の事実について行政訴訟と刑事手続という二つのルートで審理が行われ、判断の抵触を招くおそれがあるうえ、道路交通法が反則行為の成否を刑事手続で確定させることとした制度の趣旨に反することになります。そこで判例は、通告の適否を争う者は、反則金を納付せず、刑事手続の中で無罪を主張して争うべきであるとしました。
したがって、「刑事手続で無罪を主張するか、納付通知の取消訴訟を提起するかのいずれかを選択することができる」という記述は誤りです。選択の余地はなく、争うルートは刑事手続一本に限られます。
ひっかけポイントとして、行政上の制裁のなかで「争い方」が異なるものを整理しておきましょう。(1)交通反則金の通告は取消訴訟不可、刑事手続で争う(最判昭和57年7月15日)。(2)地方自治法255条の3に基づく長の過料処分は行政処分なので、審査請求・取消訴訟で争う。(3)法律に基づく過料は裁判所の決定なので、即時抗告で争う。(4)課徴金納付命令(独占禁止法など)は行政処分なので、審査請求・取消訴訟の対象になります。制裁の種類ごとに、誰が科すのか・どこで争うのかをセットで覚えておくと、この種の出題で迷わなくなります。
結論:この肢は「誤り」。
国家行政組織法5条3項は、「各省大臣は、国務大臣のうちから、内閣総理大臣が命ずる。ただし、内閣総理大臣が自ら当たることを妨げない。」と規定しています。前半の「国務大臣のうちから内閣総理大臣が命ずる」という部分は条文どおりで正しいのですが、この肢はただし書を正反対にひっくり返して「内閣総理大臣が自ら各省大臣に当たることはできない」としています。条文が明文で認めていることを否定しているため、記述は誤りです。
条文の構造を確認しておきましょう。同法5条1項は「各省の長は、それぞれ各省大臣とし、内閣法にいう主任の大臣として、それぞれ行政事務を分担管理する」と定め、各省の長が各省大臣であること、そして各省大臣が内閣法3条1項にいう「主任の大臣」として行政事務を分担管理することを明らかにしています。その上で3項が、誰を各省大臣に充てるかは内閣総理大臣が国務大臣のうちから命じる、と定めているわけです(なお、平成27年改正で挿入された同条2項は、各省大臣が特定の内閣の重要政策に関する企画立案・総合調整事務を掌理する旨を定めています)。
理由づけとしては、日本国憲法が内閣総理大臣に強い地位を与えていることが背景にあります。内閣総理大臣は国務大臣の任免権を持ち(憲法68条)、内閣を代表して議案を国会に提出し、行政各部を指揮監督します(憲法72条)。その内閣総理大臣が、必要に応じてある省の長を兼ねることを禁じる理由はありません。実際にも、内閣改造の狭間や不測の事態で大臣が欠けた場合などに、内閣総理大臣が臨時に外務大臣や財務大臣などを兼務した例があります。
ひっかけポイントは、「国務大臣のうちから」という限定です。各省大臣は必ず国務大臣でなければならず、国務大臣でない者が省の長になることはありません。他方で、すべての国務大臣が省の長であるとは限りません。内閣法3条2項が「前項の規定は、行政事務を分担管理しない大臣の存することを妨げるものではない」と定めており、これがいわゆる無任所大臣の根拠です。「国務大臣=各省大臣」ではないという点を、この肢とセットで確認しておきましょう。
結論:この肢は「誤り」。
前半は正しく、後半で用語が入れ替えられています。国家行政組織法10条は「各省大臣、各委員会の委員長及び各庁の長官は、その機関の事務を統括し、職員の服務について、これを統督する」と定めていますので、前半は条文どおりです。問題は後半です。同法14条2項は「各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、命令又は示達をするため、所管の諸機関及び職員に対し、訓令又は通達を発することができる」と規定しています。つまり、命令・示達のために発するのは「訓令又は通達」であって、「告示」ではありません。
告示について定めているのは、同法14条1項です。そこでは「各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、公示を必要とする場合においては、告示を発することができる」とされています。キーワードは「公示」です。告示は、行政機関の決定や指定などを広く外部に知らせるための形式であり、内部の下級機関や職員に対して指示を下すための道具ではありません。
理由づけとして、両者の性質の違いを押さえてください。訓令・通達は行政組織内部における上級機関から下級機関への命令であり、行政組織法上の指揮監督権に基づくものです。したがって、原則として国民の権利義務を直接左右する法規としての性質を持たず、裁判所を拘束することもありません。判例も、通達は原則として処分性を有しないとしています(最判昭和43年12月24日・墓地埋葬通達事件。もっとも同判決は、通達が国民の権利義務に直接影響を及ぼす例外的場合があり得ることを完全に否定したものではないと読まれています)。これに対して告示は、その内容によっては法規たる性質を持つことがあり、たとえば学習指導要領のように、法令の委任に基づいて実質的な法規範を定める告示も存在します。
ひっかけポイントは三つ。第一に、「告示=公示」「訓令・通達=命令・示達」という対応関係。第二に、省令を発することができるのは各省大臣(12条1項)であり、規則その他の特別の命令を発するのは各委員会および各庁の長官(13条1項)であるという主体の違い。第三に、これら14条の告示・訓令・通達を発する主体には、各省大臣だけでなく各委員会および各庁の長官も含まれることです。条文の主語・目的語を丁寧に読む訓練がそのまま得点になる分野です。
結論:この肢は「誤り」。
前半は正しいのですが、後半が明文に反します。内閣法3条1項は「各大臣は、別に法律の定めるところにより、主任の大臣として、行政事務を分担管理する」と定め、国家行政組織法5条1項も各省大臣が主任の大臣として行政事務を分担管理する旨を規定していますので、前半は条文どおりです。しかし、内閣法6条は「内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督する」と明記しています。したがって、「内閣総理大臣が行政各部を指揮監督することはできない」という記述は誤りです。
憲法上の根拠は72条です。同条は、内閣総理大臣が内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務および外交関係について国会に報告し、行政各部を指揮監督すると定めています。内閣法6条は、この憲法上の指揮監督権を、「閣議にかけて決定した方針に基いて」行使するものとして具体化した規定です。分担管理原則と指揮監督権は矛盾するものではなく、日常の行政事務は各主任の大臣が分担して処理し、その全体を内閣総理大臣が閣議決定の方針に沿って統轄する、という重層的な構造になっていると理解してください。
判例も、この関係について重要な判断を示しています。ロッキード事件丸紅ルートの最高裁判決(最大判平成7年2月22日刑集49巻2号1頁)は、内閣総理大臣が行政各部に対して指揮監督権を行使するには閣議にかけて決定した方針が存在することを要するとしつつ、閣議決定した方針が存在しない場合においても、内閣総理大臣は、少なくとも、内閣の明示の意思に反しない限り、行政各部に対し、随時、その所掌事務について一定の方向で処理するよう指導、助言等の指示を与える権限を有すると判示しました。内閣総理大臣が「内閣の首長」(憲法66条1項)として位置づけられていることを踏まえた判断です。
ひっかけポイントとして、分担管理に関連する権限争いの調整規定も押さえておきましょう。内閣法7条は「主任の大臣の間における権限についての疑義は、内閣総理大臣が、閣議にかけて、これを裁定する」と定めています。また同法8条は、内閣総理大臣が行政各部の処分または命令を中止させ、内閣の処置を待つことができるとする中止権を定めています。いずれも、内閣総理大臣が単なる同輩中の首席ではなく、内閣の首長として行政各部を統轄する地位にあることを示す規定です。
結論:この肢は「誤り」。
行政手続法36条の2第1項は、「法令に違反する行為の是正を求める行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)の相手方は、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと思料するときは、当該行政指導をした行政機関に対し、その旨を申し出て、当該行政指導の中止その他必要な措置をとることを求めることができる」と規定しています。申出をすることができるのは「当該行政指導の相手方」であって、「何人も」ではありません。この一語の差し替えが本肢の誤りです。
「何人も」と規定されているのは、隣の条文である36条の3(処分等の求め)です。同条1項は、「何人も、法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分又は行政指導がされていないと思料するときは、当該処分をする権限を有する行政庁又は当該行政指導をする権限を有する行政機関に対し、その旨を申し出て、当該処分又は行政指導をすることを求めることができる」と定めています。この二つは、いずれも2014年(平成26年)改正で新設された制度で、条文番号も内容も似ているため、まとめて狙われます。
両者の違いを整理しましょう。36条の2の中止等の求めは、すでに自分に対して行われている行政指導が違法であるとして「やめてくれ」と申し出る制度ですから、申出権者は相手方本人に限られます。これに対し36条の3の処分等の求めは、法令違反状態が放置されている場合に「取り締まってくれ」と第三者が発動を促す制度ですから、申出権者を「何人も」と広く認めているのです。自分の利益を守るための制度か、公益の実現を促す制度かという性格の違いが、申出権者の範囲に反映されていると理解すると忘れません。
なお、対象範囲についても確認しておきましょう。36条の2は「その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る」という括弧書きにより、法律の根拠を持たない行政指導を対象から外しています。そして36条の3第1項にも「(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)」という同様の括弧書きが置かれており、申出の対象となる処分・行政指導は法律に根拠規定のあるものに限られます。両制度の本質的な違いは、この対象の限定ではなく、申出権者の範囲(相手方か何人か)にあります。なお、いずれの制度も、申出を受けた行政機関は必要な調査を行い、必要があると認めるときは中止その他の措置または処分・行政指導をしなければならないとされていますが、申出人に対して結果を通知する義務や、申出に対する応答が処分として争えるといった仕組みは設けられていません。この点も出題実績のある重要ポイントです。
結論:この肢は「誤り」。
行政手続法2条6号は、行政指導を「行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう」と定義しています。この肢は、定義の中核である「特定の者に」という要件を落としたうえで、「その相手方が特定か不特定かは問わない」と述べています。定義規定の要件を正面から否定しているため、記述は誤りです。
「特定の者に」という要件が置かれている理由を考えてみましょう。行政手続法の第4章(32条から36条の2まで)は、行政指導の相手方の権利利益を保護するための規定群です。たとえば、35条1項は趣旨・内容・責任者を明確に示すことを求め、35条3項は口頭でされた場合の書面交付を定めています。これらは、名宛人が特定されていてはじめて意味を持つルールです。不特定多数に向けた広報・啓発活動(節電の呼びかけ、感染症予防のキャンペーンなど)にまで同じ手続を課すのは現実的ではありませんし、そもそもそれらは特定人の権利利益を具体的に制約する場面ではありません。そこで、定義の段階で「特定の者に」と絞りをかけているわけです。
もっとも、複数の者に対して行政指導をする場合が第4章の対象外になるわけではありません。行政手続法36条は、「同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときは、行政機関は、あらかじめ、事案に応じ、行政指導指針を定め、かつ、行政上特別の支障がない限り、これを公表しなければならない」と定めています。行政指導指針とは、これらの行政指導に共通してその内容となるべき事項をいいます(2条8号ニ)。ここでいう「複数の者」は、一定の条件で画された特定可能な者の集団であり、「不特定」とは異なります。
ひっかけポイントとして、定義規定の他の要素も確認しておきましょう。第一に、「その任務又は所掌事務の範囲内」という限定があり、これは32条1項の一般原則にも「当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならない」という形で繰り返されています。第二に、「処分に該当しないもの」という限定があるため、法的拘束力を持つ処分は行政指導ではありません。第三に、行政指導はあくまで相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであり(32条1項)、従わなかったことを理由とする不利益な取扱いは禁止されています(32条2項)。この任意性の原則が、行政指導に関するすべての規定の背骨になっています。
結論:この肢は「誤り」。
行政手続法3条3項は、「地方公共団体の機関がする処分(その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)及び行政指導、地方公共団体の機関に対する届出(前条第7号の通知の根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)並びに地方公共団体の機関が命令等を定める行為については、次章から第6章までの規定は、適用しない」と定めています。ここで注目すべきは、「行政指導」には括弧書きの限定が付いていないという点です。つまり、地方公共団体の機関がする行政指導は、その根拠が条例・規則にあろうと国の法律にあろうと、およそすべて行政手続法の適用除外になります。したがって、「根拠が国の法律に置かれているものについてはその適用がある」とする本肢は誤りです。
条文の読み方のコツは、括弧書きがどの語にかかっているかを確認することです。3条3項が列挙する四つの行為類型のうち、括弧書きによる限定があるのは「処分」と「届出」だけです。すなわち、地方公共団体の機関がする処分でも、根拠規定が国の法律に置かれているもの(法定受託事務に係る許認可など)には行政手続法が適用されます。届出も同様です。これに対して、行政指導と命令等を定める行為(意見公募手続)は、根拠のいかんを問わず一律に適用除外とされています。
理由づけとしては、地方自治の尊重が挙げられます。行政指導は法律の根拠なしに行われることも多く、その運用は地域の実情に応じて地方公共団体が自主的に律するのが適当だと考えられました。同様に、命令等の制定手続も自治立法の作用に密接に関わるため、国の法律で一律に縛るのは適当でないとされたのです。
もっとも、適用除外は「何もしなくてよい」という意味ではありません。行政手続法46条は、地方公共団体に対し、同法の適用除外とされた処分・行政指導・届出・命令等を定める行為に関する手続について、この法律の規定の趣旨にのっとり、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならないと定めています。これを受けて、多くの地方公共団体が行政手続条例を制定しており、実際にはそこで行政手続法とほぼ同内容のルールが定められています。「法律の適用はないが、条例で同等の規律が置かれている」という二段構えを押さえておきましょう。
結論:この肢は「正しい」。
行政手続法35条3項は、「行政指導が口頭でされた場合において、その相手方から前二項に規定する事項を記載した書面の交付を求められたときは、当該行政指導に携わる者は、行政上特別の支障がない限り、これを交付しなければならない」と規定しています。ここでいう「前二項に規定する事項」のうち1項の事項が、まさに「当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者」です。したがって、本肢は条文の内容を正確に述べたものであり、正しい記述です。
条文の構造を整理しましょう。35条1項は、行政指導に携わる者は、その相手方に対して、当該行政指導の趣旨・内容・責任者を明確に示さなければならないと定めます。これは口頭であっても書面であっても妥当する原則です。35条2項は、許認可等をする権限またはこれに基づく処分をする権限を行使し得る旨を示して行政指導をする場合に、その権限の根拠となる法令の条項、その条項に規定する要件、当該権限の行使が要件に適合する理由を示さなければならないと定めています。これは、いわゆる権限をちらつかせる形の行政指導に歯止めをかけるための規定です。そして35条3項が、これら1項・2項の事項について、口頭でされた場合の書面化請求権を認めているわけです。
押さえるべきポイントは三つあります。第一に、書面交付が問題になるのは行政指導が「口頭で」された場合であること。書面でされていれば改めて交付を求める必要がありません。第二に、行政庁が自発的に書面を交付するのではなく、相手方からの求めが要件になっていること。第三に、義務の程度は「行政上特別の支障がない限り」という留保付きの義務であり、絶対的な義務ではないことです。ただし、留保が付いているとはいえ「交付しなければならない」という法的義務である点は動きません。
ひっかけポイントとして、35条4項の適用除外を覚えておきましょう。同項は、(1)相手方に対しその場において完了する行為を求めるもの、(2)既に文書または電磁的記録によりその相手方に通知されている事項と同一の内容を求めるもの、については書面交付の規定を適用しないと定めています。街頭での一過性の指導や、既に文書で伝えてある内容の口頭での念押しにまで書面交付を義務づけるのは無意味だからです。また、複数の者を対象とする行政指導については、行政機関はあらかじめ事案に応じ行政指導指針を定め、行政上特別の支障がない限りこれを公表しなければなりません(36条)。細かい条文ですが、択一で問われれば差がつくところです。
結論:この肢は「正しい」。設問は誤っている記述を選ぶものですから、この肢は正解にはなりません。
根拠条文は行政不服審査法21条です。同条1項前段は、審査請求をすべき行政庁が処分庁等と異なる場合における審査請求は、処分庁等を経由してすることができると定めています。そして同項後段は、この場合において審査請求人は処分庁等に審査請求書を提出し、または処分庁等に対し口頭で審査請求をしなければならないとし、同条2項は、処分庁等は審査請求書の提出を受けたときはこれを直ちに審査庁となるべき行政庁に送付しなければならないと定めています。したがってこの肢は条文どおりで正しい記述です。
理由づけとして、処分庁経由の審査請求が認められているのは、審査請求人にとって、身近な処分庁の窓口に書類を出せば足りるようにして手続の負担を軽減するためです。もっとも、処分庁は単なる受付窓口ではなく、審査請求書(口頭による場合は審査請求録取書)を直ちに送付する義務を負っており、実務上も速やかな送付が求められます。
ひっかけポイントとして押さえておきたいのが、審査請求期間との関係です。行政不服審査法21条3項は、処分庁等を経由して審査請求がされた場合、審査請求期間の計算については、処分庁等に審査請求書が提出され、または口頭による審査請求がされたときに審査請求があったものとみなすと定めています。つまり、審査庁に実際に到達した日ではなく、処分庁に提出した時点が基準になりますので、処分庁の送付が遅れて期間を徒過するという不利益は生じません。あわせて、審査請求期間は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月(主観的期間、18条1項)、処分があった日の翌日から起算して1年(客観的期間、同条2項)であり、いずれも正当な理由があるときは例外が認められる点も確認しておきましょう。なお審査請求は書面でするのが原則で、法律または条例に口頭でできる旨の定めがある場合に限り口頭ですることができます(19条1項)。
結論:この肢は「正しい」。設問は誤っている記述を選ぶものですから、この肢は正解にはなりません。
根拠条文は行政不服審査法24条です。同条1項は、審査請求が不適法であるが補正することができる場合において、審査請求人が23条により定められた相当の期間内に不備を補正しないときは、審査庁は審理手続を経ないで、裁決で当該審査請求を却下することができると定め、同条2項は、審査請求が不適法であって補正することができないことが明らかなときも同様とすると定めています。したがってこの肢は条文どおりで正しい記述です。
理由づけとしては、手続の経済にあります。平成26年改正後の行政不服審査法は、審査庁が審理員を指名し(9条1項)、審理員が主張・立証を整理して審理員意見書を作成し(42条)、審査庁が行政不服審査会等に諮問する(43条)という重厚な審理構造を採用しました。しかし、審査請求期間を明らかに徒過している場合や、そもそも処分性のない行為を対象としている場合など、本案の審理に入るまでもなく不適法であることが明白なケースにまでこの手続を要求するのは無駄です。そこで、審理員による審理手続を省略して直ちに却下裁決ができることとされています。
ひっかけポイント。24条による却下裁決をする場合には、行政不服審査会等への諮問も不要です(43条1項各号のうち、審査請求が不適法であり却下する場合が除外事由として掲げられています)。また、審理員を指名しないことができる場合として、9条1項ただし書が定める場合(審査庁が委員会等である場合や、条例に基づく処分について条例に特別の定めがある場合など)も併せて確認してください。なお、補正命令は23条により「相当の期間を定めて」行うものであり、いきなり却下できるわけではない点にも注意が必要です。
結論:この肢は「正しい」。設問は誤っている記述を選ぶものですから、この肢は正解にはなりません。
根拠条文は行政不服審査法2条です。同条は「行政庁の処分に不服がある者は、第四条及び第五条第二項の定めるところにより、審査請求をすることができる」と定めており、処分の根拠法に個別の不服申立て規定があるかどうかを問いません。これを一般概括主義(概括主義)といいます。逆に、審査請求ができる処分を法律が個別に列挙する立法主義を列記主義といい、旧訴願法が採用していましたが、行政不服審査法は制定当初から一般概括主義を採っています。したがってこの肢は正しい記述です。
理由づけ。一般概括主義は、国民の権利利益の救済範囲を広くとり、簡易迅速な救済を可能にするための基本設計です。もっとも、これには例外があり、7条1項が適用除外となる処分を各号で列挙しています。たとえば、国会の両院もしくは一院または議会の議決によってされる処分(1号)、裁判所もしくは裁判官の裁判により、または裁判の執行としてされる処分(2号)、刑事事件に関する法令に基づいて検察官等がする処分(6号)などです。また、7条2項は、国の機関または地方公共団体その他の公共団体もしくはその機関に対する処分で、これらの機関等がその固有の資格において相手方となるものについては適用除外としています。この肢が「法律上適用除外とされていない限り」と留保している点は、まさに7条を意識したもので、記述として正確です。
ひっかけポイント。8条は、7条により審査請求ができない処分についても、別に法令で当該処分の性質に応じた不服申立ての制度を設けることを妨げないと定めています。また、行政手続法にも同様に適用除外規定(3条・4条)がありますが、両者の除外事由は一致しないため、混同しないよう整理しておきましょう。なお、不作為についても一般概括主義がとられ、法令に基づく申請に対して相当の期間内に何らの処分もされない場合には審査請求ができます(3条)。
結論:この肢は「誤り」。行政不服審査法には、このような地方公共団体の努力義務を定めた規定は存在しません。
この肢の文言は、行政手続法46条の言い回しを行政不服審査法に置き換えて作られたひっかけです。行政手続法46条は「地方公共団体は、第3条第3項において第2章から前章までの規定を適用しないこととされた処分、行政指導及び届出並びに命令等を定める行為に関する手続について、この法律の規定の趣旨にのっとり、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない」と定めています。行政手続法は、地方公共団体の機関がする処分のうち条例・規則を根拠とするものや、行政指導・届出・命令等制定行為の一部を適用除外としているため(3条3項)、そこに空白が生じないよう努力義務を課す必要があったのです。
これに対し、行政不服審査法は、地方公共団体の機関がする処分についても、条例に基づく処分を含めて原則としてそのまま適用されます。適用除外を定める7条1項各号に該当しない限り審査請求が可能であり(一般概括主義、2条)、地方公共団体だけを取り出して努力義務規定を置く必要がありません。したがって、行政手続法46条に相当する条文は行政不服審査法には置かれていないのです。
ひっかけポイント。行政手続法と行政不服審査法は条文構造が似ている部分があるため、条文を「入れ替えて」出題されるのが定番です。地方公共団体に関する行政不服審査法の規定として押さえるべきは、①執行機関の附属機関として第三者機関(地方公共団体の行政不服審査機関)を置くこと(81条1項)、②不服申立ての状況等に鑑み常設が不適当または困難なときは条例で定めるところにより事件ごとに置くことができること(81条2項)、③その組織および運営に必要な事項は条例で定めること(81条4項)の3点です。なお、行政不服審査法1条2項は、行政庁の処分等に関する不服申立てについて、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによるとする一般法としての位置づけを明らかにしています。
結論:この肢は「誤り」。議会の議決によってされる処分は、そもそも行政不服審査法の適用除外であり、議長が審査庁となることはありません。
根拠条文は行政不服審査法7条1項1号です。同号は「国会の両院若しくは一院又は議会の議決によってされる処分」を、審査請求をすることができない処分として掲げています。ここでいう「議会」には地方公共団体の議会も含まれます。したがって、地方議会の議決によってされる処分(たとえば議員の除名処分など)については、行政不服審査法に基づく審査請求をすることができず、審査庁も観念されません。
理由づけ。行政不服審査法は一般概括主義を採用し、処分に不服がある者は広く審査請求ができるのが原則です(2条)。しかし、7条1項は、その処分の性質上、行政部内での簡易迅速な見直しになじまないものを適用除外としています。議会の議決による処分は、合議体である議会の民主的な意思決定を経てされたものであり、これを行政庁の内部的な不服審査手続で覆すことは制度趣旨に合いません。同様の趣旨から、裁判所もしくは裁判官の裁判により、または裁判の執行としてされる処分(2号)、刑事事件に関する法令に基づき検察官等がする処分(6号)なども除外されています。
ひっかけポイント・関連知識。適用除外であっても司法救済まで閉ざされるわけではありません。8条は、7条により審査請求ができない処分についても、別に法令で当該処分の性質に応じた不服申立ての制度を設けることを妨げないと定めています。また、地方議会による議員の懲罰については、最大判令和2年11月25日が、出席停止の懲罰も司法審査の対象となるとして、従来の部分社会論に基づく判例(最大判昭和35年10月19日)を変更しました。除名処分が司法審査の対象となることは以前から認められており、議決による処分をめぐる救済は行政事件訴訟によることになります。
結論:この肢は「正しい」。条文どおりの内容であり、これが正解です。
根拠条文は行政不服審査法81条4項です。同項は、前三項に定めるもののほか、第1項または第2項の機関の組織および運営に関し必要な事項は、当該機関を置く地方公共団体の条例で定めると規定しています。ここでいう第1項の機関とは、地方公共団体に執行機関の附属機関として置かれる、行政不服審査法の規定によりその権限に属させられた事項を処理するための機関(本問でいう行政不服審査機関)であり、第2項の機関とは、不服申立ての状況等に鑑み常設の機関を置くことが不適当または困難であるときに、条例で定めるところにより事件ごとに置かれる機関です。
理由づけ。地方公共団体の附属機関の設置およびその組織・運営は、地方自治法138条の4第3項により法律または条例に基づかなければならないとされています。行政不服審査法81条4項は、この考え方に沿って、委員の定数・任期・任命方法、会議の招集や議事の運営といった具体的事項を国の政令ではなく当該団体の条例に委ねたものです。地方自治の尊重と、各団体の規模・事件数に応じた柔軟な制度設計を可能にする趣旨といえます。実際に、多くの自治体が「行政不服審査法施行条例」「行政不服審査会条例」といった名称の条例を制定しています。
ひっかけポイント・関連知識。81条3項は、国の行政不服審査会について定める規定(委員の任命、守秘義務、調査権限、審査関係人の主張書面の提出など)を地方公共団体の機関に準用しており、政令に委ねられている事項は条例と読み替えられます。したがって、地方の第三者機関も、国の行政不服審査会と同様に、審査庁からの諮問を受けて審理員意見書等を調査審議し、答申を行うという役割を担います。答申には法的拘束力はありませんが、審査庁は答申を踏まえて裁決をしなければならず、答申と異なる裁決をするときは裁決書にその理由を記載する必要があります(50条1項4号)。
結論:この肢は「正しい」。
本肢は、横浜市保育所廃止条例事件の最高裁判決(最判平成21年11月26日)が、条例制定行為の処分性を肯定するにあたって述べた理由づけを正確に踏まえたものです。
同判決は、市立保育所を廃止する条例が、他に行政庁の処分を待つことなくその施行によって保育所廃止の効果を発生させ、当該保育所に現に入所中の児童およびその保護者という限られた特定の者に対して、直接、当該保育所において保育を受けることを期待しうる地位を奪う結果を生じさせるものであることから、その制定行為は行政庁の処分と実質的に同視しうるとしました。そのうえで、市立保育所の廃止のような事柄については、処分の取消判決や執行停止の決定に第三者効(行政事件訴訟法32条)が認められていることなどにかんがみると、当該条例の制定行為の適法性を争って有効かつ適切な紛争解決を図るには抗告訴訟によることに合理性がある、という趣旨を判示しています。
根拠条文は行政事件訴訟法32条です。同条1項は「処分又は裁決を取り消す判決は、第三者に対しても効力を有する」と定め、同条2項は執行停止の決定等についてこれを準用しています。この第三者効(対世効)があるからこそ、多数の児童・保護者が関係する保育所廃止という場面でも、訴訟当事者となった一部の者について取消判決や執行停止が得られれば、その効力が関係者全体に及び、法律関係を画一的に規律することができます。仮にこれを当事者訴訟や民事訴訟で争うとすると、判決の効力は当事者間にしか及ばず(既判力の相対効)、同じ条例について人によって結論が食い違う事態が生じかねません。抗告訴訟という枠組みを用いることが有効かつ適切だというのは、こうした紛争解決の実効性の観点からの説明です。
ひっかけポイントと関連知識を整理します。第一に、この判決は条例一般に処分性を認めたものではありません。特定の保育所を名指しで廃止するという、実質的に個別処分と同視できる例外的な条例についての判断です。第二に、最高裁は処分性を肯定しましたが、上告人である児童らがすでに卒園していたため訴えの利益は失われたと判断し、結論としては上告を棄却しています。処分性が認められることと本案で救済されることは別問題である点に注意してください。第三に、第三者効を有する取消判決との関係では、自己の責めに帰することができない理由で訴訟に参加できなかった第三者を救済する第三者の再審の訴え(34条)や、訴訟参加の制度(22条)が用意されていることも、セットで押さえておきましょう。