1弁明は、行政庁が口頭ですることを認めたときを除き、弁明を記載した書面(以下「弁明書」という。)を提出してするものとする。
2弁明をするときは、証拠書類等を提出することができる。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢の組合せは「誤り」。
A=重大な損害、C=執行停止は正しいのですが、B=民事訴訟とD=一時的にせよが誤りです。二つの空欄が誤っているため、組合せとしては成立しません。
まず正しい部分を確認します。Aについては、行政事件訴訟法37条の4第1項本文が差止訴訟の訴訟要件として「重大な損害を生ずるおそれ」を要求していますから、ア「重大な損害」で正しいです。Cについては、処分がされた後の暫定的な救済手段は執行停止(同法25条2項)ですから、イ「執行停止」で正しくなります。
問題はBです。Cを「執行停止」としながらBを「民事訴訟」とするのは、そもそも文章として整合しません。執行停止は取消訴訟(または無効等確認訴訟)の提起があることを前提として、その本案訴訟に付随して申し立てる制度だからです(行政事件訴訟法25条2項は「処分の取消しの訴えの提起があつた場合において」と定めています)。民事訴訟を提起して執行停止の決定を受けるということはあり得ません。判決文は「処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものではなく」と述べており、B=イ「取消訴訟」が正解です。Bは文章の後半にも登場し、「事後的にその違法性を争う取消訴訟等による救済になじまない性質のもの」という形で、処分の違法性を事後的に争う手段としての取消訴訟を指しています。
次にDです。この判決は厚木基地の自衛隊機の運航差止めが争われた事案で、原告らが飛行場周辺の第一種区域に居住し、航空機が離着陸するたびに騒音被害を受けていることを重視しています。「上記被害もそれに応じてその都度発生し、これを D 受けることにより蓄積していくおそれのある」という記述からも明らかなように、D=イ「反復継続的に」でなければ「蓄積していく」という結論につながりません。
ひっかけポイントです。差止訴訟の重大な損害の判断では、同法37条の4第2項が「損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分又は裁決の内容及び性質をも勘案する」と定めています。この2項の考慮要素は義務付け訴訟(37条の2第2項)と共通です。本判決は、被害が反復継続的に蓄積する性質のものであることを、事後救済になじまない事情として重視した点に意義があります。
結論:この肢の組合せは「正しい」。
A=重大な損害、B=取消訴訟、C=執行停止、D=反復継続的に、という組合せがすべて正しく当てはまります。引用されているのは、自衛隊機の運航差止めが争われた最一小判平成28年12月8日(厚木基地第4次訴訟)です。
空欄ごとに根拠を確認します。Aは行政事件訴訟法37条の4第1項本文そのままで、差止訴訟の訴訟要件は「一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合」です。BとCは、差止訴訟の補充性・事前救済性から導かれます。処分がされた後の救済ルートは、本案としての取消訴訟と、その暫定的救済としての執行停止(同法25条2項)です。この事後救済ルートで容易に救済を受けられるのであれば、あえて処分前に差止めを命ずる必要はない、というのが判例の発想です。逆にいえば、事後的な取消訴訟+執行停止では救済として不十分な場合にはじめて「重大な損害を生ずるおそれ」が認められます。この判断枠組みは、最一小判平成24年2月9日(東京都の教職員に対する国歌斉唱職務命令違反を理由とする懲戒処分の差止め等が争われた事件)で示されたものを踏襲しています。
Dについては、判決文の論理をたどれば明らかです。飛行場周辺の第一種区域に居住する原告らは、航空機が離着陸するたびに睡眠妨害や精神的苦痛を受け、その被害は「その都度発生し」「蓄積していくおそれのある」ものとされています。したがって、D=「反復継続的に」でなければ文意が通りません。被害が一回的なものではなく反復継続して積み重なるからこそ、事後的に違法性を争う取消訴訟による救済にはなじまないという結論が導かれるのです。
理由づけを補足します。行政事件訴訟法37条の4第2項は、重大な損害の判断につき「損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分又は裁決の内容及び性質をも勘案する」と定めています。本判決は、この考慮要素に沿って、騒音被害の性質(反復・蓄積)と回復困難性を評価したものといえます。
ひっかけポイントです。本判決は、自衛隊機の運航に関する防衛大臣の権限行使を抗告訴訟の対象となる「公権力の行使」と捉え、行政事件訴訟法上の差止訴訟で争わせる枠組みを前提としています。なお、自衛隊機の運航の差止めを民事訴訟で求めることは不適法とするのが判例です(第1次厚木基地訴訟・最判平成5年2月25日)。また、差止訴訟の訴訟要件には重大な損害のほか、補充性(37条の4第1項ただし書、他に適当な方法がないこと)と原告適格(同条3項・4項)があり、本案勝訴要件は同条5項に定められています。要件の所在を条文で確認しておきましょう。