1行政庁は、聴聞を行うに当たっては、聴聞を行うべき期日までに相当な期間をおいて、不利益処分の名あて人となるべき者に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。
一 予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項
二 不利益処分の原因となる事実
三 聴聞の期日及び場所
四 聴聞に関する事務を所掌する組織の名称及び所在地
2前項の書面においては、次に掲げる事項を教示しなければならない。
一 聴聞の期日に出頭して意見を述べ、及び証拠書類又は証拠物(以下「証拠書類等」という。)を提出し、又は聴聞の期日への出頭に代えて陳述書及び証拠書類等を提出することができること。
二 聴聞が終結する時までの間、当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができること。
3行政庁は、不利益処分の名あて人となるべき者の所在が判明しない場合においては、第一項の規定による通知を、その者の氏名、同項第三号及び第四号に掲げる事項並びに当該行政庁が同項各号に掲げる事項を記載した書面をいつでもその者に交付する旨を当該行政庁の事務所の掲示場に掲示することによって行うことができる。この場合においては、掲示を始めた日から二週間を経過したときに、当該通知がその者に到達したものとみなす。
この条文の過去問 2肢
結論:この肢は「誤り」。
本肢が述べているのは、行政手続法2条8号ハに定める「処分基準」の定義そのものです。すなわち処分基準とは、不利益処分をするかどうか、またはどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準をいいます。そして重要なのは、この処分基準が同条8号にいう「命令等」に含まれているという点です。同法39条1項は、命令等制定機関は命令等を定めようとする場合には、原則として意見公募手続を実施しなければならないと定めていますから、処分基準を定めるに当たっても意見公募手続が必要です。したがって「実施する必要はない」とする本肢は誤りです。
理由づけとして、行政手続法2条8号の「命令等」には、イ 法律に基づく命令または規則、ロ 審査基準、ハ 処分基準、ニ 行政指導指針の四つが挙げられています。法規命令だけでなく、行政の内部基準にすぎない審査基準・処分基準や、法的拘束力のない行政指導指針までもが意見公募手続の対象とされているのが、この制度の大きな特徴です。これらの基準は、法規の形式こそとらないものの、実際には国民の権利義務に大きな影響を及ぼすため、その策定過程を透明化し国民の意見を反映させる必要があると考えられたからです。
ひっかけポイントは、処分基準の設定が12条1項で「努めなければならない」という努力義務にとどまることとの混同です。処分基準を定めるかどうか自体は努力義務ですが、いったん定めようとする以上は命令等として意見公募手続の対象になります。「設定は努力義務、設定するなら手続は必要」という二段構えを整理しておきましょう。なお、審査基準(2条8号ロ)については、5条1項で設定が法的義務とされ、同条3項で公表も義務づけられている点が処分基準と異なります(処分基準の公表も12条1項の努力義務です)。
関連知識として、処分基準の法的意義については、最判平成27年3月3日が、処分基準が定められ公にされている場合において、先行処分を受けたことを理由に後行処分を加重する旨の処分基準があるときは、特段の事情がない限りその基準に従って加重される可能性があるとして、先行処分の期間経過後も取消しを求める訴えの利益が失われないとしました。基準の外部効果を意識させる重要判例です。
結論:この肢は「誤り」。
行政手続法2条8号ニは、「行政指導指針」を「命令等」の一つとして明示的に掲げています。行政指導指針とは、同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときにこれらの行政指導に共通してその内容となるべき事項をいいます(同法2条8号ニ)。命令等である以上、これを定めようとするときは39条1項により原則として意見公募手続を実施しなければなりません。したがって「実施する必要はない」とする本肢は誤りです。
理由づけとして、本肢が挙げる二つの根拠、すなわち「任意に設定するものである」「法的拘束力を有しない」という点は、いずれも結論を導きません。まず、行政指導指針の策定は任意ではありません。36条は、同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときは、行政機関はあらかじめ事案に応じて行政指導指針を定め、かつ行政上特別の支障がない限りこれを公表しなければならないと定めており、策定・公表は義務です。次に、行政指導自体に法的拘束力がなく、相手方の任意の協力によってのみ実現されるものである(32条1項)ことは確かですが、だからこそ、行政指導が事実上の強制力をもって国民の活動を左右する場面を規律する必要があり、その指針の内容を事前に国民の目にさらす意味があります。法的拘束力の有無と、意見公募手続の要否は連動していないのです。
ひっかけポイントは、「法的拘束力がない=行政手続法の規律も緩い」という直感です。行政手続法は、法的拘束力のない行政指導についてこそ、一般原則(32条)、申請に関連する行政指導(33条)、許認可等の権限に関連する行政指導(34条)、方式(35条)、指針(36条)、中止等の求め(36条の2)、処分等の求め(36条の3)と厚い規律を置いています。特に36条の2と36条の3は平成26年改正で新設された条文で、出題頻度が高い部分です。
関連知識として、地方公共団体の機関が定める命令等については、行政手続法第6章(意見公募手続等)の適用が除外され(3条3項)、各地方公共団体が条例等で必要な措置を講ずるよう努めるものとされています(46条)。国の命令等と地方の命令等で扱いが違う点も、よく問われます。