1行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない。
2行政庁は、処分基準を定めるに当たっては、不利益処分の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。
この条文の過去問 3肢
結論:この肢は「誤り」。
一般法と特別法の優先関係が逆に述べられている点で誤りです。信頼関係の法理の適用があるという結論部分は判例と一致していますが、そこに至る論理が逆立ちしています。
根拠となるのは最判昭和59年12月13日です。同判決は、公営住宅の使用関係については、公営住宅法およびこれに基づく条例が特別法として、一般法である民法および借家法(現在の借地借家法)に優先して適用されるとしたうえで、公営住宅法および条例に特別の定めがない限りは、民法および借家法の適用があり、その契約関係を規律するについては、信頼関係の法理の適用があるものと解すべきである、と判示しました。すなわち、まず特別法である公営住宅法・条例が適用され、その定めがない部分について一般法である民法・借家法が補充的に適用されるという順序です。本肢はこれを「一般法である民法および借家法が、特別法である公営住宅法およびこれに基づく条例に優先して適用される」と述べており、特別法優先の原則そのものに反します。
理由づけ。公営住宅は、住宅に困窮する低額所得者に低廉な家賃で住宅を賃貸するという公的目的のもとに供給されるものですから、入居者資格や家賃の決定、明渡請求の要件などについて公営住宅法や条例が詳細な規律を置いています。この公的規律が及ぶ限りではそれが優先し、それ以外の日常的な賃貸借関係の処理については、私人間の建物賃貸借と実質的に異ならないため民法・借家法が適用される、という二層構造で理解するのが判例の立場です。
ひっかけポイント。結論だけを見ると判例知識と一致するため、油断すると正しい肢に見えてしまいます。行政法の判例問題では、結論よりも「どの法律がどの順序で適用されるのか」という枠組み部分に誤りを仕込むパターンが頻出します。なお、同判決を前提に、事業主体が入居者に対し公営住宅法および条例所定の明渡事由があるとして明渡しを求める場合であっても、信頼関係を破壊すると認めるに足りない特段の事情があるときは明渡請求は認められない、と解されています。現行法では「借家法」は借地借家法(平成3年制定)に統合されている点にも注意してください。
結論:この肢は「正しい」。設問は誤っているものを選ぶ問題ですので、本肢は正解肢ではありません。
根拠条文。行政手続法36条は「同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときは、行政機関は、あらかじめ、事案に応じ、行政指導指針を定め、かつ、行政上特別の支障がない限り、これを公表しなければならない」と規定しています。本肢のいう「当該行政指導の共通する内容」とは、行政手続法2条8号ニが定める「行政指導指針」、すなわち同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときにこれらの行政指導に共通してその内容となるべき事項をいいます。本肢は条文の内容を言い換えたものであり、正しい記述です。
理由づけ。行政指導は法的拘束力のない事実行為ですが、実際には相手方に事実上大きな影響を及ぼします。同種の事案について担当者ごとにばらばらの指導がされたのでは、平等原則に反し、名宛人の予測可能性も損なわれます。そこで、複数の者を対象とする行政指導については、あらかじめ共通する内容を指針として定め、公表することを義務づけたのです。行政の透明性の向上(行政手続法1条1項)を体現する規定といえます。
ひっかけポイント。第一に、行政指導指針の策定・公表は努力義務ではなく法的義務です(「公表しなければならない」)。行政指導に関する規定の多くが相手方の任意性を強調する非権力的なものであるため、つい努力義務と誤読しがちですが、36条は義務です。ただし公表については「行政上特別の支障がない限り」という留保が付きます。
第二に、行政指導指針は「命令等」に該当します(行政手続法2条8号ニ)。したがって、これを定めようとするときは、第6章の意見公募手続(パブリックコメント、39条以下)を実施しなければなりません。行政指導指針を定めるプロセスと、定めた後の公表義務の両方が規律されているわけです。命令等に当たるものは、法律に基づく命令または規則、審査基準、処分基準、行政指導指針の四つですので、あわせて記憶してください。
結論:この肢は「正しい」。設問は誤っているものを選ぶ問題ですので、本肢は正解肢ではありません。
根拠条文。行政手続法36条の2第1項本文は「法令に違反する行為の是正を求める行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)の相手方は、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと思料するときは、当該行政指導をした行政機関に対し、その旨を申し出て、当該行政指導の中止その他必要な措置をとることを求めることができる」と規定しています。本肢はこの条文をほぼそのまま述べたものであり、正しい記述です。
制度の内容。この「行政指導の中止等の求め」は、平成26年改正により新設された制度で、同時に新設された「処分等の求め」(36条の3)とあわせて、国民の側から行政の是正を促す仕組みとして位置づけられています。申出は、申出書を提出して行わなければならず(36条の2第2項)、申出書には申出をする者の氏名または名称および住所または居所、当該行政指導の内容、当該行政指導がその根拠とする法律の条項、前号の条項に規定する要件、当該行政指導が当該要件に適合しないと思料する理由その他参考となる事項を記載します。申出を受けた行政機関は、必要な調査を行い、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと認めるときは、当該行政指導の中止その他必要な措置をとらなければなりません(同条3項)。
ひっかけポイント。第一に、対象が二重に限定されている点が重要です。(1)法令に違反する行為の是正を求める行政指導であること、(2)その根拠となる規定が法律に置かれているものに限られること、の二つです。したがって、根拠が政省令や要綱にとどまる行政指導、あるいは是正を求めるものではない助成的・調整的な行政指導は対象外です。
第二に、同条1項ただし書は、当該行政指導がその相手方について弁明その他意見陳述のための手続を経てされたものであるときは、この申出をすることができないとしています。すでに意見を述べる機会が与えられているからです。
第三に、この申出は法定の手続ですが、行政不服審査法上の審査請求ではありませんし、申出に対する行政機関の応答自体は処分ではないと解されています。救済手段の性質を正確に理解しておきましょう。