1行政庁は、審査基準を定めるものとする。
2行政庁は、審査基準を定めるに当たっては、許認可等の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。
3行政庁は、行政上特別の支障があるときを除き、法令により申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により審査基準を公にしておかなければならない。
この条文の過去問 5肢
結論:この肢は「正しい」。
国家行政組織法11条は、「各省大臣は、主任の行政事務について、法律又は政令の制定、改正又は廃止を必要と認めるときは、案をそなえて、内閣総理大臣に提出して、閣議を求めなければならない」と規定しています。この肢は、この条文をほぼそのまま述べたものであり、正しい記述です。
条文のポイントを分解しておきましょう。第一に、主体は「各省大臣」です。第二に、対象は「主任の行政事務について」、すなわち自らが分担管理する行政事務についてです。第三に、対象となる法形式は「法律又は政令」であり、省令は含まれません。省令は各省大臣が自ら発することができる(同法12条1項)ため、閣議を求める必要がないからです。第四に、手続は「案をそなえて、内閣総理大臣に提出して、閣議を求める」ことであり、そして第五に、これは「求めることができる」という裁量的な規定ではなく、「求めなければならない」という義務規定として書かれています。
理由づけは、内閣の一体性と合議制にあります。日本国憲法66条3項は、内閣が行政権の行使について国会に対し連帯して責任を負うと定め、内閣法4条1項は「内閣がその職権を行うのは、閣議によるものとする」と定めています。法律案の国会提出や政令の制定は内閣としての意思決定である以上、一人の大臣が単独で決めることはできず、必ず閣議という合議の場に載せなければなりません。そのために、担当大臣が案を作成して内閣総理大臣に提出し、閣議を求めるという手順が法定されているわけです。閣議の主宰者は内閣総理大臣であり(内閣法4条2項)、案件の提出先が内閣総理大臣とされているのもこのためです。
関連知識として、内閣法4条3項が「各大臣は、案件の如何を問わず、内閣総理大臣に提出して、閣議を求めることができる」と定めている点を押さえてください。こちらは、自分の主任の事務に限らずどんな案件についても閣議を求めることができるという、大臣一般の権能を定めた「できる」規定です。国家行政組織法11条の「しなければならない」規定と、内閣法4条3項の「できる」規定は、対象範囲も語尾も異なりますので、両方を並べて整理しておくと、本試験でどちらを問われても迷いません。なお、閣議の議決方法について法律に明文はありませんが、慣行として全員一致によることが定着している点も、あわせて覚えておくとよいでしょう。
結論:この肢は「誤り」。
国家行政組織法12条1項は、「各省大臣は、主任の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、それぞれその機関の命令として省令を発することができる」と規定しています。この肢は、最後の「省令」を「規則その他の特別の命令」に差し替えたものです。各省大臣が発する命令の形式は省令であって、規則ではありませんから、記述は誤りです。
「規則その他の特別の命令」を発するのは誰かというと、同法13条1項が「各委員会及び各庁の長官は、別に法律の定めるところにより、政令及び省令以外の規則その他の特別の命令を自ら発することができる」と定めています。すなわち、公正取引委員会規則、国家公安委員会規則、人事院規則(人事院については国家公務員法に基づく)といった委員会規則や、庁の長官が発する命令がこれに当たります。省大臣は省令、委員会・庁の長官は規則、という主体と形式の対応関係が本問の急所です。
条文の他の部分は正確に写されています。「法律若しくは政令を施行するため」に発する省令が執行命令、「法律若しくは政令の特別の委任に基づいて」発する省令が委任命令に当たります。日本国憲法41条が国会を唯一の立法機関としている以上、行政機関が国民の権利義務に関わる規範を定めるには法律の委任が必要であり、この二類型に限定されているわけです。なお、同法12条3項は「省令には、法律の委任がなければ、罰則を設け、又は義務を課し、若しくは国民の権利を制限する規定を設けることができない」と定めており、委任の必要性を明文で確認しています。
ひっかけポイントとして、命令の種類を階層で整理しておきましょう。内閣が制定するのが政令(憲法73条6号、内閣法11条)、内閣総理大臣が内閣府の長として発するのが内閣府令(内閣府法7条3項)、各省大臣が発するのが省令(国家行政組織法12条1項)、委員会および庁の長官が発するのが規則その他の特別の命令(同法13条1項)です。さらに、内閣法11条も「政令には、法律の委任がなければ、義務を課し、又は権利を制限する規定を設けることができない」と定めており、12条3項と同趣旨です。名称の入替えは行政組織法分野で最頻出のひっかけですから、条文の主語と目的語をセットで暗記するのが最短ルートです。
結論:この肢は「誤り」。
行政手続法2条8号は「命令等」を定義し、そのニにおいて「行政指導指針(同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときにこれらの行政指導に共通してその内容となるべき事項をいう。以下同じ。)」を掲げています。行政指導指針は命令等の一種ですから、これを定めようとする命令等制定機関は、原則として39条1項に基づき意見公募手続(パブリックコメント)を実施しなければなりません。そして、この定義のどこにも「法令の根拠に基づく行政指導に係るものに限る」という限定はありません。したがって、法令の根拠なく行われる行政指導についての指針であっても、意見公募手続の対象になります。本肢は存在しない限定を付け加えている点で誤りです。
理由づけとしては、意見公募手続の趣旨を考えると腑に落ちます。意見公募手続は、行政の意思決定過程に国民の意見を反映させ、公正の確保と透明性の向上を図る制度です(1条1項参照)。むしろ、法令の根拠を持たない行政指導は、法律による民主的コントロールが及びにくい分、その基準づくりの過程で広く意見を聴く必要性が高いともいえます。根拠がないからこそ手続的な統制が必要なのであって、逆ではありません。
関連する条文を整理しておきましょう。まず、命令等には、(イ)法律に基づく命令または規則、(ロ)審査基準、(ハ)処分基準、(ニ)行政指導指針の四つがあります(2条8号)。このうち審査基準・処分基準・行政指導指針という三つの基準類は、それ自体が法規ではないにもかかわらず、意見公募手続の対象とされている点が重要です。次に、行政指導指針については36条が、あらかじめ定めたうえで「行政上特別の支障がない限り、これを公表しなければならない」と定めています。つまり、事前の意見公募(39条)と事後の公表(36条、43条)の両面から手続的統制が及んでいるわけです。
ひっかけポイントとして、適用除外も押さえておきましょう。行政手続法3条3項により、地方公共団体の機関が命令等を定める行為には意見公募手続の規定は適用されません(多くの自治体は行政手続条例で同様の手続を設けています)。また、39条4項は、公益上緊急に定める必要がある場合など、意見公募手続を要しない場合を列挙しています。さらに、39条3項は意見提出期間を案の公示の日から起算して30日以上とすることを定め(40条1項は、やむを得ない理由があるときに理由を明らかにして30日を下回る期間を定め得るとする特例)、42条は提出意見を十分に考慮しなければならないこと、43条は結果の公示について定めています。意見公募手続は条文数が多くありませんので、39条から45条までを一気に読み通しておくと得点源になります。
結論:この肢は「正しい」。
建築基準法の規定が民法の規定の特則として働き、民法234条1項の適用が排除される、というのが判例の立場です。
根拠となるのは最判平成元年9月19日です。同判決は、建築基準法65条(出題当時の条数。平成30年改正により現在は63条)が、防火地域または準防火地域内にある建築物で外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができると規定していることについて、同条は、民法234条1項の特則を定めたものであると解するのが相当であるとし、右の建築物については民法234条1項の規定は適用されないと判示しました。本肢はこの判旨をそのまま述べたものです。
理由づけ。民法234条1項は「建物を築造するには、境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならない」と定め、隣地の日照・通風・防火・プライバシーといった相隣関係上の利益を保護しています。これに対し建築基準法の当該規定は、防火地域・準防火地域という延焼防止が特に要請される区域において、外壁が耐火構造であれば延焼のおそれが小さく、むしろ壁を接して連続させることが防火上有効であり、かつ限られた敷地の合理的・効率的な利用を可能にするという政策判断に基づくものです。この趣旨を全うするためには、民法234条1項による距離制限をそのまま及ぼしたのでは規定の意味が失われてしまいます。そこで、後法かつ特別法である建築基準法の規定が優先し、民法の適用は排除されることになります。
ひっかけポイント。第一に、この特則が及ぶのは「防火地域または準防火地域内」で「外壁が耐火構造」の建築物という限定された場合だけです。これらの要件を欠く建築物には民法234条1項がそのまま適用されます。第二に、民法234条2項は、違反建築に対して隣地所有者が建築の中止または変更を請求できるとしつつ、建築着手から1年経過後または建物完成後は損害賠償の請求のみができるとしています。第三に、民法236条により、異なる慣習があるときはその慣習に従います。行政法と民法が交錯する典型論点として、公法と私法の適用関係を問う文脈で繰り返し出題されています。
結論:この肢は「誤り」。
入居者が死亡した場合に同居の相続人が使用権を当然に承継することは認められない、というのが判例です。
根拠となるのは最判平成2年10月18日です。同判決は、公営住宅法が入居者資格として住宅に困窮する低額所得者であることを要求し、事業主体の長が入居者を決定する仕組みを採っていることなどからすれば、入居者が死亡した場合に、その相続人が公営住宅を使用する権利を当然に承継すると解する余地はない、と判示しました。本肢は「当然に承継することが認められる」としており、判旨と正反対です。なお、公営住宅法の目的(同法1条)に関する記述部分自体は正しく、その正しい前提から誤った結論を導いている点に注意が必要です。
理由づけ。公営住宅は、公費を投じて低廉な家賃で供給される限られた資源であり、入居できる者は法の定める資格要件を満たし、かつ公募と選考という手続を経て決定された者に限られます(公営住宅法22条・25条)。もし相続によって使用権が当然に承継されるとすれば、資格要件を満たさない者が入居し続けることになり、公募原則が骨抜きになって、より住宅に困窮する者の入居機会が奪われてしまいます。使用権が一身専属的なものとされるのは、このような制度趣旨によります。
ひっかけポイント。第一に、承継が一切認められないわけではありません。公営住宅法27条6項は、入居者が死亡し、または退去した場合において、その同居者が引き続き当該公営住宅に居住しようとするときは、事業主体の承認を受けなければならないと定めています。つまり「当然承継」ではなく「事業主体の承認」という行政の判断を介する仕組みです。第二に、肢1で扱った最判昭和59年12月13日が公営住宅使用関係への民法・借家法の適用を認めていることとの関係で、借地借家法36条(居住用建物賃貸借の承継)が当然に及ぶわけではない点も押さえてください。公営住宅法という特別法の定めが優先するからです。二つの公営住宅判例は必ずセットで整理しておきましょう。