1行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。
2行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。
1行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。
2行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。
申請の取下げ又は内容の変更を求める行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず当該行政指導を継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしてはならない。
結論:この肢は「誤り」。
収用によって土地所有者や関係人が受ける損失を補償するのは、事業を行う起業者であって、収用委員会が置かれている都道府県ではありません。
根拠は土地収用法68条です。同条は「土地を収用し、又は使用することに因つて土地所有者及び関係人が受ける損失は、起業者が補償しなければならない」と明文で定めています。ここでいう起業者とは、土地を収用または使用することを必要とする事業を行う者(同法8条1項)であり、道路事業であれば国土交通大臣、都道府県、市町村、あるいは高速道路会社などの事業主体を指します。都道府県が起業者となる道路事業であれば結果的に都道府県が補償することになりますが、それは起業者だからであって、収用委員会が都道府県に置かれているからではありません。
理由づけです。収用委員会は、都道府県に置かれる独立の行政委員会(土地収用法51条)であり、起業者・土地所有者・関係人の三者から独立した第三者的立場で審理を行い、権利取得裁決および明渡裁決という準司法的な判断を下す機関です。委員会の役割は、収用する土地の区域、損失補償の額、権利取得の時期などを裁決で確定することにあり(同法48条)、自ら補償金を支払う立場にはありません。収用委員会は判断者、起業者は支払義務者という役割分担を意識してください。補償金は起業者が権利取得の時期までに払い渡す必要があり(同法95条)、払い渡さないときは裁決の効力が失われます(同法100条)。
ひっかけポイントです。第一に、憲法29条3項の「正当な補償」を実現する主体は、財産権を公共のために用いる側、すなわち事業主体である起業者であるという原則を押さえること。第二に、事業認定(同法16条以下、国土交通大臣または都道府県知事が行う)と収用裁決(収用委員会が行う)とで機関が分かれる二段階構造を整理すること。第三に、補償金の支払をめぐる紛争では、起業者と土地所有者が当事者となる形式的当事者訴訟(同法133条3項)が用いられることも、この役割分担から自然に理解できます。誰が判断し、誰が払うのかを混同させる典型的な誤り肢です。
許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を有する行政機関が、当該権限を行使することができない場合又は行使する意思がない場合においてする行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、当該権限を行使し得る旨を殊更に示すことにより相手方に当該行政指導に従うことを余儀なくさせるようなことをしてはならない。
結論:この肢は「誤り」。
補償額の算定の基礎となるのは「近傍類地の取引価格等を考慮して算定した相当な価格」であって、当該事業のための都市計画制限を受けた状態の類地の取引価格ではありません。
根拠は土地収用法71条です。同条は「収用する土地又はその土地に関する所有権以外の権利に対する補償金の額は、近傍類地の取引価格等を考慮して算定した事業の認定の告示の時における相当な価格に、権利取得裁決の時までの物価の変動に応ずる修正率を乗じて得た額とする」と定めています。物価変動に応ずる修正率を乗じるという後半部分は肢の記述どおりですが、その基礎となる価格の捉え方が誤っています。
理由づけです。損失補償は、憲法29条3項の正当な補償を実現するものであり、収用がなかったとしたら所有者が置かれたであろう財産状態を回復させることを目的とします(完全補償の考え方。最判昭和48年10月18日は、土地収用法上の補償は収用の前後を通じて被収用者の財産価値を等しくならしめるものでなければならないとしています)。ところが、当該道路の都市計画決定によって課された建築制限は、まさにこれから行われる収用事業そのものによって生じた価格低下要因です。その低下を織り込んだ価格で補償すれば、事業を理由に補償額を減額することになり、被収用者に事業の負担を転嫁する結果となってしまいます。そこで、当該事業の影響による価格の変動は考慮しない(事業による値上がり・値下がりを除外する)というのが損失補償の基本原則であり、実務上の損失補償基準もこれを前提としています。
ひっかけポイントを整理します。第一に、土地収用法71条の価格固定時期は「事業の認定の告示の時」であり、権利取得裁決の時ではありません。裁決時までの物価変動は修正率で調整します。この点について、最判平成14年6月11日は、事業認定告示時の価格を基準とする71条の仕組みが憲法29条3項に違反しないとしています。第二に、都市計画法53条の建築制限それ自体については、判例(最判平成17年11月1日)は原則として補償を要しないとしていますが、これは収用時の補償額算定の話とは別問題です。制限段階の補償と収用段階の補償額算定を混同させるのが本肢の狙いです。
結論:この肢は「誤り」。
建物の移転に要する費用(移転料)だけでなく、移転に伴って生じる営業上の損失も補償の対象となります。
根拠は土地収用法88条です。同条は「第71条、第72条、第74条、第75条、第77条、第80条及び第80条の2に規定する損失の補償の外、離作料、営業上の損失、建物の移転による賃貸料の損失その他土地を収用し、又は使用することに因つて土地所有者又は関係人が通常受ける損失は、補償しなければならない」と定め、営業上の損失を明示的に補償対象に含めています。これがいわゆる通損補償(通常受ける損失の補償)です。なお、土地上の建物等の物件は、原則として移転料を補償して移転させる仕組みがとられており(同法77条、移転料の補償は同法78条・79条の関係も参照)、その移転に伴って営業を一時休止せざるを得ない場合の休業補償や、得意先を失うことによる損失などが88条により補償されます。
理由づけです。損失補償は、収用によって被収用者が受ける財産上の不利益を金銭で填補し、収用の前後を通じて財産価値を等しくすることを目的とします(最判昭和48年10月18日)。土地と建物の価値だけを補償し、その土地で現に営まれていた営業が受ける打撃を無視すれば、被収用者は事業のために特別の犠牲を強いられたままとなり、正当な補償(憲法29条3項)とはいえません。そこで土地収用法は、土地そのものの価格補償(71条)に加え、残地補償(74条)、みぞかき補償(75条)、離作料・営業損失等の通損補償(88条)といった重層的な補償を用意しているのです。
ひっかけポイントです。第一に、通損補償の具体例(離作料、営業上の損失、建物の移転による賃貸料の損失、移転雑費など)を条文で確認しておくこと。第二に、いわゆる文化財的価値や主観的・感情的な価値は補償対象とならないとするのが判例です(最判昭和63年1月21日)。何が補償されて何が補償されないのかを、条文の列挙と判例の否定例の両面から整理しておくと、この種の肢は迷わず切れます。
1行政指導に携わる者は、その相手方に対して、当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示さなければならない。
2行政指導に携わる者は、当該行政指導をする際に、行政機関が許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を行使し得る旨を示すときは、その相手方に対して、次に掲げる事項を示さなければならない。
一 当該権限を行使し得る根拠となる法令の条項
二 前号の条項に規定する要件
三 当該権限の行使が前号の要件に適合する理由
3行政指導が口頭でされた場合において、その相手方から前二項に規定する事項を記載した書面の交付を求められたときは、当該行政指導に携わる者は、行政上特別の支障がない限り、これを交付しなければならない。
4前項の規定は、次に掲げる行政指導については、適用しない。
一 相手方に対しその場において完了する行為を求めるもの
二 既に文書(前項の書面を含む。)又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によりその相手方に通知されている事項と同一の内容を求めるもの
結論:この肢は「正しい」。
建築基準法の規定が民法の規定の特則として働き、民法234条1項の適用が排除される、というのが判例の立場です。
根拠となるのは最判平成元年9月19日です。同判決は、建築基準法65条(出題当時の条数。平成30年改正により現在は63条)が、防火地域または準防火地域内にある建築物で外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができると規定していることについて、同条は、民法234条1項の特則を定めたものであると解するのが相当であるとし、右の建築物については民法234条1項の規定は適用されないと判示しました。本肢はこの判旨をそのまま述べたものです。
理由づけ。民法234条1項は「建物を築造するには、境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならない」と定め、隣地の日照・通風・防火・プライバシーといった相隣関係上の利益を保護しています。これに対し建築基準法の当該規定は、防火地域・準防火地域という延焼防止が特に要請される区域において、外壁が耐火構造であれば延焼のおそれが小さく、むしろ壁を接して連続させることが防火上有効であり、かつ限られた敷地の合理的・効率的な利用を可能にするという政策判断に基づくものです。この趣旨を全うするためには、民法234条1項による距離制限をそのまま及ぼしたのでは規定の意味が失われてしまいます。そこで、後法かつ特別法である建築基準法の規定が優先し、民法の適用は排除されることになります。
ひっかけポイント。第一に、この特則が及ぶのは「防火地域または準防火地域内」で「外壁が耐火構造」の建築物という限定された場合だけです。これらの要件を欠く建築物には民法234条1項がそのまま適用されます。第二に、民法234条2項は、違反建築に対して隣地所有者が建築の中止または変更を請求できるとしつつ、建築着手から1年経過後または建物完成後は損害賠償の請求のみができるとしています。第三に、民法236条により、異なる慣習があるときはその慣習に従います。行政法と民法が交錯する典型論点として、公法と私法の適用関係を問う文脈で繰り返し出題されています。
結論:この肢は「誤り」。
入居者が死亡した場合に同居の相続人が使用権を当然に承継することは認められない、というのが判例です。
根拠となるのは最判平成2年10月18日です。同判決は、公営住宅法が入居者資格として住宅に困窮する低額所得者であることを要求し、事業主体の長が入居者を決定する仕組みを採っていることなどからすれば、入居者が死亡した場合に、その相続人が公営住宅を使用する権利を当然に承継すると解する余地はない、と判示しました。本肢は「当然に承継することが認められる」としており、判旨と正反対です。なお、公営住宅法の目的(同法1条)に関する記述部分自体は正しく、その正しい前提から誤った結論を導いている点に注意が必要です。
理由づけ。公営住宅は、公費を投じて低廉な家賃で供給される限られた資源であり、入居できる者は法の定める資格要件を満たし、かつ公募と選考という手続を経て決定された者に限られます(公営住宅法22条・25条)。もし相続によって使用権が当然に承継されるとすれば、資格要件を満たさない者が入居し続けることになり、公募原則が骨抜きになって、より住宅に困窮する者の入居機会が奪われてしまいます。使用権が一身専属的なものとされるのは、このような制度趣旨によります。
ひっかけポイント。第一に、承継が一切認められないわけではありません。公営住宅法27条6項は、入居者が死亡し、または退去した場合において、その同居者が引き続き当該公営住宅に居住しようとするときは、事業主体の承認を受けなければならないと定めています。つまり「当然承継」ではなく「事業主体の承認」という行政の判断を介する仕組みです。第二に、肢1で扱った最判昭和59年12月13日が公営住宅使用関係への民法・借家法の適用を認めていることとの関係で、借地借家法36条(居住用建物賃貸借の承継)が当然に及ぶわけではない点も押さえてください。公営住宅法という特別法の定めが優先するからです。二つの公営住宅判例は必ずセットで整理しておきましょう。
結論:この肢は「誤り」。
盛土・切土に要する費用が補償対象となるのはそのとおりですが、通路・溝・かき・さくその他の工作物の新築等に要する費用も同じ条文により補償の対象となります。後半が誤りです。
根拠は土地収用法75条、いわゆる「みぞかき補償」の規定です。同条は「同一の土地所有者に属する一団の土地の一部を収用し、又は使用することに因つて、残地に通路、みぞ、かき、さくその他の工作物の新築、改築、増築若しくは修繕又は盛土若しくは切土をする必要が生ずるときは、これに要する費用を補償しなければならない」と定めています。条文が工作物の新築等と盛土・切土を並列で列挙している以上、一方だけを補償対象から外す理由はありません。「みぞ」「かき」という語がそのまま条文に出てくることから、みぞかき補償と呼ばれています。
理由づけです。土地の一部だけが収用されると、残された土地(残地)は形状が不整形になったり、道路との接続が失われたり、隣地との段差が生じたりして、従前どおりの利用ができなくなることがあります。収用されていない土地であっても、収用に起因して生じた不利益である以上、これを放置すれば被収用者に特別の犠牲を負わせることになります。そこで土地収用法は、残地の価格が減じるなど損失が生じる場合の残地補償(74条)と、残地に工事が必要となる場合の工事費補償(75条)を用意しているのです。さらに、残地を従来利用していた目的に供することが著しく困難となるときは、土地所有者は残地の収用を請求することができます(残地収用請求、同法76条)。
ひっかけポイントです。第一に、74条(残地の価格低下等に対する補償)、75条(残地に必要となる工事費の補償)、76条(残地収用請求)の三点セットを条文番号とともに整理しておくこと。第二に、本肢のように、条文が並列で列挙している事項の一方だけを否定する形の作問は頻出パターンです。条文の列挙部分は、キーワードを声に出して覚えておくと効果的です。第三に、これらの補償も当然、起業者が支払うものである点(68条)も確認しておきましょう。
結論:この肢は「正しい」。
収用委員会の裁決のうち、損失の補償に関する部分に不服がある場合には、裁決の取消しを求める抗告訴訟ではなく、起業者を被告とする当事者訴訟(形式的当事者訴訟)を提起することになります。
根拠は土地収用法133条です。同条2項は、収用委員会の裁決のうち損失の補償に関する訴えは、裁決書の正本の送達を受けた日から6か月以内に提起しなければならないと定め、同条3項は「前項の規定による訴えは、これを提起した者が起業者であるときは土地所有者又は関係人を、土地所有者又は関係人であるときは起業者を、それぞれ被告としなければならない」と規定しています。つまり、損失補償に関する訴えでは、処分をした収用委員会(が所属する都道府県)ではなく、補償金を支払う相手方である起業者が被告となるのです。これは行政事件訴訟法4条前段が定める「当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの」、すなわち形式的当事者訴訟の典型例です。
理由づけです。補償金の額をめぐる争いは、実質的には起業者と被収用者との間の金銭給付をめぐる対等な利害調整であり、真の利害関係人はこの二者です。裁決という行政処分の形式に着目して収用委員会を被告としても、実際に増額分を支払うのは起業者ですから、紛争解決としては迂遠です。そこで法は、処分の存在を前提としつつ、当事者間の訴訟として構成することにしたのです。訴訟の実体は形式的当事者訴訟であっても、その性質は当事者訴訟なので、出訴期間や被告適格については土地収用法の特則が適用されます。
ひっかけポイントです。第一に、収用そのものの適否(収用の要否や収用する土地の区域など)を争う場合は、通常どおり裁決の取消訴訟(抗告訴訟)によります。補償額だけを争うのか、収用自体を争うのかで訴訟類型が変わる点が最重要です。第二に、収用委員会の裁決についての審査請求では、損失の補償についての不服をその裁決についての不服の理由とすることができず(土地収用法132条2項)、補償額への不服は専ら訴訟で争う仕組みとされています。第三に、形式的当事者訴訟の例としては、ほかに特許法183条の対価をめぐる訴えなどが挙げられます。実質的当事者訴訟(公務員の地位確認、公法上の金銭給付請求など)との区別も押さえておきましょう。
同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときは、行政機関は、あらかじめ、事案に応じ、行政指導指針を定め、かつ、行政上特別の支障がない限り、これを公表しなければならない。
結論:この肢は「誤り」。
特別区は現在も特別地方公共団体であり、普通地方公共団体とされたことはありません。後半の「区長が公選されている」という部分は正しいのですが、前半が誤りであるため、記述全体としては妥当でありません。
根拠条文を確認します。地方自治法1条の3は、地方公共団体を普通地方公共団体と特別地方公共団体に区分し、2項で普通地方公共団体を都道府県および市町村と定め、3項で特別地方公共団体を特別区、地方公共団体の組合および財産区と定めています。そして同法281条1項は「都の区は、これを特別区という」と規定しています。したがって、特別区は条文上明確に特別地方公共団体に位置づけられています。
区長の選任方法については、沿革を押さえておく必要があります。1952年(昭和27年)の地方自治法改正により区長公選制はいったん廃止され、区議会が都知事の同意を得て選任する方式に改められましたが、1974年(昭和49年)の改正により区長公選制が復活し、1975年から実施されています。現在は、地方自治法283条1項により市に関する規定が特別区に適用される結果、区長は住民の直接選挙で選ばれます。ですから、この肢は「公選」という正しい要素を混ぜて、前半の誤りを見えにくくしている構成です。
理由づけとして、なぜ特別区が普通地方公共団体でないのかも押さえましょう。特別区は、大都市地域における行政の一体性・統一性を確保するため、上下水道、消防、大都市特有の事務などを都が処理する(地方自治法281条の2第1項)という特別の役割分担が法定されており、市町村と完全に同じ権能を有するわけではありません。この特殊性ゆえに、基礎的な地方公共団体としての性格を認められつつ(同法281条の2第2項)、区分としては特別地方公共団体に置かれているのです。
ひっかけポイントです。第一に、特別地方公共団体は特別区・地方公共団体の組合(一部事務組合、広域連合)・財産区の3類型であること。第二に、特別区の区長・区議会議員はいずれも住民の直接選挙で選ばれること。第三に、判例は特別区について、憲法93条2項の「地方公共団体」に当たらないとしたことがある(最大判昭和38年3月27日)点も、憲法との横断知識として押さえておきましょう。
結論:この肢は「誤り」。
指定都市に置かれる区(いわゆる行政区)は独立の法人格を有しません。したがって「法人格を有する点では相違はない」という前提部分が誤っています。
根拠を確認します。地方自治法252条の20第1項は、指定都市はその区域を分けて区を設け、区の事務所またはその出張所を置くものとすると定めています。ここでいう区は、指定都市という一つの法人の内部を地域的に区分した内部組織にすぎず、地方公共団体ではありません。区長は市長が任命する一般職の職員であり、区議会も存在せず、区として条例を制定する権限もありません。他方、特別区は地方自治法1条の3第3項により特別地方公共団体とされ、同法2条1項により法人格を有する地方公共団体です。区議会が置かれ(283条1項による市に関する規定の適用)、区長は公選され、区の議会が条例を制定します。
理由づけです。両者の決定的な違いは、法人格の有無、すなわち権利義務の帰属主体となり得るかどうかです。行政区は市の一部にすぎないため、行政区が独自に契約を結んだり、財産を保有したり、訴訟の当事者になったりすることはできません。処分の名宛人に対して行政区の名で処分がされる場合も、その効果は市に帰属します。この点を押さえれば、肢が挙げる「議会」「公選の区長」「条例制定権限」の違いも、法人格の有無から派生する当然の帰結として理解できます。肢は、本来最も大きな相違点である法人格の有無を「相違はない」と述べてしまっている点で、決定的に誤っているのです。
ひっかけポイントを整理します。第一に、指定都市には区のほか、総合区(地方自治法252条の20の2)を設けることもでき、総合区長は市長が議会の同意を得て選任する特別職ですが、総合区にもやはり法人格はありません。第二に、中核市(同法252条の22)には区の制度はありません。第三に、特別区は基礎的な地方公共団体とされる一方(281条の2第2項)、都が一体的処理を要する事務を担う点で市町村とは異なるという整理も併せて確認してください。「行政区は法人ではない」という一点を覚えておけば、この種の肢は即座に切れます。
1法令に違反する行為の是正を求める行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)の相手方は、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと思料するときは、当該行政指導をした行政機関に対し、その旨を申し出て、当該行政指導の中止その他必要な措置をとることを求めることができる。ただし、当該行政指導がその相手方について弁明その他意見陳述のための手続を経てされたものであるときは、この限りでない。
2前項の申出は、次に掲げる事項を記載した申出書を提出してしなければならない。
一 申出をする者の氏名又は名称及び住所又は居所
二 当該行政指導の内容
三 当該行政指導がその根拠とする法律の条項
四 前号の条項に規定する要件
五 当該行政指導が前号の要件に適合しないと思料する理由
六 その他参考となる事項
3当該行政機関は、第一項の規定による申出があったときは、必要な調査を行い、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと認めるときは、当該行政指導の中止その他必要な措置をとらなければならない。
結論:この肢は「誤り」。
特別区が地方税を賦課徴収できる点は正しいのですが、他の地方公共団体から交付金を受けることを禁じられているという部分が誤りです。むしろ地方自治法は、都から特別区へ交付金を交付する仕組み(都区財政調整制度)を明文で定めています。
根拠は地方自治法282条です。同条1項は、都は、都および特別区・特別区相互間の財源の均衡化を図り、特別区の行政の自主的かつ計画的な運営を確保するため、政令で定めるところにより、条例で、特別区財政調整交付金を交付するものとする旨を定めています。この交付金の原資となるのは、本来であれば市町村税である固定資産税や市町村民税法人分などを、大都市地域の一体性の観点から都が特別区の存する区域において課税している分(いわゆる調整三税)です。特別区自身は、特別区民税などを賦課徴収する権限を有していますが、それだけでは財政需要を賄えず、また区ごとの税源の偏在も大きいため、都が調整役として交付金を配分する仕組みが不可欠なのです。
理由づけです。肢は「行政の自主的かつ計画的な運営を確保するため」という条文由来のフレーズを使いながら、その帰結を正反対の「交付金を受けることを禁じられている」と結んでいます。実際には、まさにその自主的・計画的な運営を確保するために交付金が交付されるのですから、条文の趣旨を真逆に述べていることになります。条文の文言を知っていれば一瞬で切れる肢であり、逆に知らないと「自主性のために外部からの財政支援を排するのだろう」という一般論に流されやすい作りになっています。
ひっかけポイントです。第一に、都区財政調整制度の枠組み(地方自治法282条、都区協議会は同法282条の2)を条文とセットで押さえること。第二に、地方交付税や国庫支出金など、他の団体から財源が移転する仕組みは地方財政の常態であり、これを一律に禁じる法制はないという常識的な視点を持つこと。第三に、特別区の財政については、都と特別区の間で協議する場として都区協議会が設けられ、財政調整交付金に関する条例の制定改廃の際に意見を聴くこととされている点も、あわせて確認しておきましょう。
結論:この肢は「正しい」。
地方自治法281条1項が「都の区は、これを特別区という」と定めているとおり、同法上の特別区は都に置かれる区を指しますが、2012年(平成24年)に制定された「大都市地域における特別区の設置に関する法律」(いわゆる大都市地域特別区設置法)により、道府県においても所定の手続を経て特別区を設置することが可能となりました。
根拠を確認します。同法は、道府県の区域内において、一の指定都市、または一の指定都市および当該指定都市に隣接する同一道府県の市町村の人口の合計が200万以上である地域(特別区設置対象市町村の区域)について、関係市町村を廃止し、特別区を設けることを認めています。手続としては、関係市町村と関係道府県が共同して特別区設置協議会を設け、特別区設置協定書を作成し、関係市町村および関係道府県の議会の承認を得たうえで、関係市町村において選挙人の投票(住民投票)に付し、有効投票の総数の過半数の賛成があったときに、総務大臣への申請を経て設置される、という流れになります。したがって、「廃止される関係市町村における住民投票などの手続を経て」「一定の要件を満たす他の道府県においても設けることが可能となった」という記述は正確です。
理由づけです。この法律は、いわゆる大阪都構想を念頭に置いて、大都市地域における広域行政と基礎自治行政の役割分担を再編できるようにするために制定されました。市町村の廃止を伴う極めて重大な制度変更であるため、議会の議決だけでなく住民投票による直接の意思確認を要求している点に特徴があります。実際、大阪市では2015年と2020年の二度にわたり住民投票が実施され、いずれも反対多数となって特別区の設置には至っていません(2026年時点でも、都以外に特別区が設置された例はありません)。
ひっかけポイントです。第一に、地方自治法上の定義(281条1項)と特別法による設置可能性は矛盾しないこと。第二に、この住民投票は、地方自治法上の直接請求や住民投票条例に基づくものではなく、大都市地域特別区設置法という個別法が定める法定の住民投票であること。第三に、市町村の廃置分合は通常、都道府県知事が議会の議決を経て定め総務大臣に届け出る(地方自治法7条)のに対し、特別区設置は住民投票を必須とする特別の手続によるという違いも意識しておきましょう。