行政法の記述式の書き方|出題パターン別40字テンプレ
行政書士試験・行政法の記述式の書き方を出題パターン別に解説。訴訟類型の判別フロー、被告適格、行政手続法・行政不服審査法の手続、40字の解答テンプレートと加点キーワードを条文で確認しながら整理します。
結論:行政法の記述式で問われる「型」は5つしかない
行政法の記述式(問題44・20点)は、一見すると無限にパターンがあるように見えます。しかし実際に問われている型は、次の5つにほぼ収束します。
- 訴訟類型を答えさせる型 — 取消訴訟/無効等確認訴訟/不作為の違法確認訴訟/義務付け訴訟/差止訴訟のどれを選ぶか
- 被告適格を答えさせる型 — 「誰を被告として」。答えは原則「処分をした行政庁が所属する国または公共団体」
- 行政手続法の手続名と要件を答えさせる型 — 聴聞/弁明の機会の付与/理由の提示
- 行政不服審査法の手続を答えさせる型 — 審査請求/再調査の請求/再審査請求/教示
- 国家賠償を答えさせる型 — 国賠法1条(公権力の行使)か2条(営造物の設置管理の瑕疵)か
そして解答の骨格も、ほぼ次の一文に集約されます。
「〔誰が〕は、〔誰を〕被告として、〔何〕の〔取消し/義務付け/差止め〕を求める〔訴訟類型〕を提起すべきである。」
つまり行政法の記述式は、型を5つ覚え、それぞれの空欄に事例の固有名詞と法律用語を流し込む作業です。ゼロから文章を組み立てる必要はありません。本記事では、5つの型それぞれについて「設問例 → 使う条文 → 40字の解答例 → 加点キーワード」の順で解答テンプレートを示し、最後に訴訟類型の判別フローと加点キーワード集をまとめます。
なお、本記事は行政法の記述式に特化しています。記述式全体の総論(3問の構成、採点の考え方、民法も含めた対策の全体設計)は行政書士 記述式対策の完全ガイド|40字の書き方を、試験当日の時間配分は行政書士試験の時間配分|180分の解く順番と当日の進め方をご覧ください。
はじめに:行政法記述式の重要性
行政書士試験の記述式は合計3問60点ですが、そのうち行政法からは1問20点が出題されます。択一式と合わせると行政法全体で112点の配点があり、合格ライン180点の62%を占める最重要科目です。
記述式の1問20点という配点は、択一式の5問分に相当します。つまり、記述式で高得点を取ることは、択一式で5問多く正解するのと同じインパクトがあるのです。
しかし、記述式は多くの受験生が苦手とする出題形式です。択一式は「正解を選ぶ」作業ですが、記述式は「自分の言葉で法的に正確な文章を書く」作業であり、求められるスキルが根本的に異なります。
さらに、記述式には合格戦略上の特別な意味があります。行政書士試験は、法令等科目(5肢択一+多肢選択+記述式)で122点以上、かつ全体で180点以上という二段階の合格基準を採用しています。記述式60点は法令等科目の中で大きな比重を占めるため、択一式が伸び悩んだ受験生が記述式で挽回するケースも、逆に択一式が好調でも記述式の取りこぼしで不合格になるケースも珍しくありません。記述式は「最後の合否を分ける」配点帯なのです。
加えて、記述式は対策の費用対効果が高い分野でもあります。行政法の記述式は出題テーマが行政事件訴訟法・行政手続法・行政不服審査法という3法に集中しており、論点の総数が択一式に比べてはるかに限られています。出題パターンを体系的に押さえ、40字の型を身につければ、短期間でも安定して得点できるようになります。
本記事では、行政法の記述式について、過去の出題テーマの分析、頻出パターンの整理、40字の構成法、部分点を取るテクニック、そして実際の練習方法まで、合格に必要なノウハウを体系的に解説します。
行政法記述式の基本
出題形式と採点基準
行政法の記述式は、試験問題の問題44として出題されます。問題文に事例が示され、その事例に基づいて40字程度で解答を書く形式です。
解答用紙には45字分のマス目が用意されています。解答は35〜45字程度で書くのが理想です。30字以下では必要な情報が不足している可能性が高く、45字を超えるとマス目に収まりません。
採点基準は公式には公表されていませんが、過去の合格者の分析から、以下のような方式で採点されていると推測されます。
- キーワード採点方式:法的に重要なキーワード(法律用語、結論、要件等)が含まれているかどうかで加点される
- 部分点あり:完璧な解答でなくても、正しいキーワードが含まれていれば部分点が付与される
- 誤りによる減点:明らかに誤った法律用語や結論を書くと減点される可能性がある
問題文の構造を読み解く
行政法記述式の問題文は、ほぼ例外なく「事例の提示」と「設問」の2つの部分から構成されています。事例部分には、誰が・どのような行政活動の対象になり・どのような不利益や争いが生じているかが具体的に書かれています。設問部分には「どのような訴訟を提起すべきか」「誰を被告として」「いかなる違法事由を主張すべきか」といった問いの角度が示されます。
ここで決定的に重要なのは、設問が問うている要素を漏れなく拾うことです。記述式の設問は、しばしば「①どのような訴訟を、②誰を被告として、③何の取消しを求めて提起すべきか」というように、複数の小問が一文に詰め込まれています。採点はこの①②③それぞれに配点されている可能性が高く、ひとつでも欠落すると、その分だけ得点を失います。問題文を読む段階で「答えるべき要素はいくつあるか」を指折り数える習慣をつけましょう。
行政法記述式で問われる能力
行政法の記述式では、以下の3つの能力が問われます。
第一に、正確な法的知識です。行政事件訴訟法、行政手続法、行政不服審査法などの条文を正確に理解し、適切な場面で適用できる知識が必要です。
第二に、事例分析力です。問題文に示された事例から、法的に何が問題になっているのかを読み取り、論点を的確に把握する力が求められます。
第三に、法的文章の作成力です。把握した論点について、40字という制限の中で法的に正確かつ簡潔な文章を書く力が必要です。
この3つの能力は独立しているわけではなく、相互に依存しています。条文知識が曖昧だと事例のどこが論点かを見抜けず、論点が見抜けなければ何を40字に書くべきかも定まりません。逆に言えば、択一式で身につけた条文知識を「事例にあてはめて文章化する」という一段上の訓練を加えるだけで、記述式の得点は大きく伸びます。記述式は新しい知識を仕入れる作業ではなく、すでに持っている知識を出力可能な形に変換する作業だと捉えると、対策の方向性が明確になります。
過去の出題テーマ分析
行政事件訴訟法からの出題
行政法の記述式で最も出題頻度が高いのは、行政事件訴訟法に関するテーマです。過去の出題を分析すると、以下のようなテーマが繰り返し問われています。
取消訴訟の要件
行政事件訴訟法第3条第2項は、「処分の取消しの訴え」を次のように定義しています。
この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
― 行政事件訴訟法 第3条第2項
ここで用語について1点だけ正確に押さえてください。第3条第2項が定義しているのは「処分の取消しの訴え」であり、「取消訴訟」という語そのものを定義しているのは第9条第1項の括弧書きです。 第9条第1項は「処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下『取消訴訟』という。)」と規定しており、取消訴訟とは処分の取消しの訴えと裁決の取消しの訴えを合わせた総称です。記述式で条文番号を書くときに「取消訴訟の定義は3条2項」と機械的に書くと不正確になりうるので、処分の取消しの訴え=3条2項/裁決の取消しの訴え=3条3項/両者の総称としての取消訴訟=9条1項括弧書きという対応で覚えておくと安全です。また、第3条第2項の括弧書きは「次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く」であって「次号」ではありません(第3条は項で構成されているためです)。細部ですが、条文を引用する型の設問では差がつきます。
記述式では、「どのような訴訟を提起すべきか」という形で出題され、取消訴訟の訴訟要件(処分性、原告適格、訴えの利益、出訴期間、被告適格等)を40字で記述することが求められます。
過去には、処分の取消訴訟と裁決の取消訴訟の区別を問う問題や、原処分主義(行政事件訴訟法第10条第2項)に関連して「裁決固有の瑕疵」を問う問題が出題されています。原処分主義については条文を正確に押さえておきましょう。
処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には、裁決の取消しの訴えにおいては、処分の違法を理由として取消しを求めることができない。
― 行政事件訴訟法 第10条第2項
つまり、原処分の違法は原処分の取消訴訟で、裁決固有の瑕疵(手続違反など裁決そのものの違法)は裁決の取消訴訟で争うという役割分担です。記述式では「裁決固有の瑕疵を主張すべき」というキーワードが正答の核になることがあります。
原告適格
原告適格(行政事件訴訟法第9条)とは、取消訴訟を提起する法律上の利益を有するかどうかの問題です。記述式では、「Aに原告適格が認められるか」「法律上の利益があるといえるか」といった形で出題されます。
原告適格の判断基準として、同法第9条第2項の考慮事項(法律の趣旨・目的、処分の根拠法令の趣旨・目的、処分により侵害される利益の内容・性質等)を40字に盛り込む必要がある場合もあります。第9条第2項は2004年(平成16年)改正で追加された規定で、処分の名宛人以外の第三者の原告適格を判断する際の考慮要素を明文化したものです。
裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。…
― 行政事件訴訟法 第9条第2項
第三者の原告適格をめぐっては、判例が「法律上保護された利益説」を採用していることも押さえておきましょう。すなわち、当該処分の根拠法令が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、個々人の個別的利益としても保護する趣旨を含むと解される場合に、その利益を侵害される者に原告適格が認められます。小田急高架訴訟大法廷判決(最大判平成17年12月7日)は、第9条第2項の考慮要素を駆使して、鉄道高架事業の認可に対する周辺住民の原告適格を肯定した代表的判例です。
訴えの利益
訴えの利益(狭義の訴えの利益、回復すべき法律上の利益)とは、処分が取り消された場合に原告が回復すべき法律上の利益があるかどうかの問題です。たとえば、営業停止処分の期間が経過した場合に取消訴訟の訴えの利益が認められるかどうかが問われます。
行政事件訴訟法第9条第1項は、原告適格と訴えの利益の双方の根拠条文となります。括弧書きの「処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお…回復すべき法律上の利益を有する者を含む」という部分が、いわゆる訴えの利益の消滅の問題に対応します。
処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。
― 行政事件訴訟法 第9条第1項
訴えの利益が問題となる典型例として、建築確認後に建築工事が完了した場合(工事完了により建築確認の取消しを求める利益は失われるとされる、最判昭和59年10月26日)、運転免許停止処分から1年が経過し前歴とならなくなった場合(最判昭和55年11月25日)などがあります。一方、公務員の免職処分は、その後に公職へ立候補して公務員の地位を失っても、給与請求等の利益が残るため訴えの利益が存続するとされます(最大判昭和40年4月28日)。これらの「利益が消えるか残るか」の結論は記述式で問われやすいポイントです。
義務付け訴訟・差止訴訟
2004年改正で法定された義務付け訴訟(行政事件訴訟法第3条第6項)と差止訴訟(同第7項)も、記述式の重要テーマです。義務付け訴訟には、申請を前提としない非申請型(直接型、第37条の2)と、申請に対する処分を前提とする申請型(第37条の3)の2類型があり、要件が異なります。
条文の作りに、記述式で差がつく違いがあります。非申請型義務付け訴訟(第37条の2第1項)は「重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り」と、補充性が本文の積極要件として書かれています。 これに対し差止訴訟(第37条の4第1項)は「重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り」提起できるとしたうえで、「ただし、その損害を避けるため他に適当な方法があるときは、この限りでない」というただし書の形を取っています。どちらも実質的には補充性の要件ですが、書きぶりが異なる点は択一式でも問われます。
さらに、両者とも「重大な損害を生ずるか否か」の判断について、損害の回復の困難の程度を考慮し、損害の性質・程度、処分の内容・性質をも勘案するという規定(第37条の2第2項、第37条の4第2項)が置かれています。執行停止(第25条第3項)にも同じ趣旨の規定があり、3か所でパラレルな構造になっていることを押さえておくと記憶が定着します。
また、原告適格の判断にあたっては第9条第2項が準用されます(第37条の2第4項、第37条の4第4項)。第三者が義務付け訴訟・差止訴訟を提起する事例では、この準用規定に触れられると加点が期待できます。
記述式では「非申請型か申請型か」の選択と、「重大な損害」「他に適当な方法がない(補充性)」というキーワードを正しく盛り込めるかが得点を分けます。
行政手続法からの出題
行政手続法に関するテーマも頻出です。
理由の提示
行政手続法第8条(申請に対する処分の理由の提示)および第14条(不利益処分の理由の提示)は、記述式の定番テーマです。理由の提示が不十分だった場合の法的効果や、いかなる程度の理由の提示が求められるかについて記述が求められます。
行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。…
― 行政手続法 第14条第1項
判例(最判昭和38年5月31日:個人タクシー事件、最判昭和49年4月25日等)では、理由の提示は処分の根拠法条のみならず、原因事実の記載が必要とされています。この判例の知識を40字で表現する力が問われます。
理由提示の程度について、より直接的な判断を示したのが一級建築士免許取消事件(最判平成23年6月7日)です。この判決は、理由提示制度の趣旨を踏まえ、いかなる事実関係に基づきいかなる法令・処分基準の適用によって当該処分が選択されたのかを名宛人が了知しうる程度の記載を要求し、処分基準の適用関係が示されていない理由提示を違法としました。
…当該処分の根拠法令の規定内容、当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無、当該処分の性質及び内容、当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきである。
― 最判平成23年6月7日(一級建築士免許取消事件)
ここから導かれる記述式の核心キーワードは「いかなる根拠に基づきいかなる理由で処分がされたかを名宛人が知りうる程度の理由提示が必要」「処分基準の適用関係の提示が必要」という点です。
聴聞と弁明の機会の付与
不利益処分をしようとする場合の手続として、聴聞(行政手続法第13条第1項第1号)と弁明の機会の付与(同条第1項第2号)の区別が問われることがあります。どのような場合に聴聞が必要か、弁明の機会の付与で足りるのはどのような場合かを記述する問題です。両者の振り分けは条文上明確に定められています。
条文の作り上、聴聞と弁明の機会の付与は「重大/軽微」という抽象的な基準で振り分けられているのではなく、13条1項1号イ〜ニに該当すれば聴聞、いずれにも該当しなければ弁明の機会の付与、という形式的な振り分けになっています。とくに1号ニ「イからハまでに掲げる場合以外の場合であって行政庁が相当と認めるとき」があるため、比較的軽い不利益処分でも行政庁の判断で聴聞を選択できます。
記述式では「許認可等を取り消す不利益処分には聴聞が必要」「1号イ〜ニに該当しないときは弁明の機会の付与」「聴聞は口頭、弁明は原則書面」というキーワードが軸になります。
審査基準・処分基準・標準処理期間
行政手続法は、申請に対する処分について審査基準の設定・公表(第5条)と標準処理期間の設定・公表の努力(第6条)を、不利益処分について処分基準の設定・公表(第12条)を定めています。ここで頻出かつ間違えやすいのが、設定と公表が義務か努力義務かの区別です。
審査基準は「設定も公表も義務」であるのに対し、処分基準は「設定も公表も努力義務」です。記述式で「義務」か「努力義務」かを問われたときに、この対比を正確に書けるかどうかが分かれ目になります。
標準処理期間(6条)だけは設定は努力義務・定めた場合の公表は義務というハイブリッドである点に注意してください。1つの条文の中で努力義務と法的義務が混在しているのは、行政手続法ではこの6条だけです。なお、審査基準・処分基準のいずれについても「許認可等の性質(不利益処分の性質)に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない」という具体化義務(5条2項、12条2項)が課されており、これは処分基準についても努力義務ではなく義務である点も、細かいながら差がつくところです。
行政不服審査法からの出題
行政不服審査法に関するテーマも出題されます。
審査請求の手続
審査請求の手続に関する問題として、審査請求期間(主観的期間:処分があったことを知った日の翌日から3ヶ月以内、客観的期間:処分があった日の翌日から1年以内)や、審理員制度、行政不服審査会への諮問手続について記述が求められることがあります。審査請求期間の根拠条文は次のとおりです。
審査請求は、処分があつたことを知つた日の翌日から起算して三月(当該処分について再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定があつたことを知つた日の翌日から起算して一月)を経過したときは、することができない。…
― 行政不服審査法 第18条第1項
2014年改正(2016年4月施行)により、不服申立て制度は大きく再編されました。改正前は異議申立てと審査請求の二本立てでしたが、改正後は審査請求に一元化され、公正性を高めるための審理員制度(第9条)と行政不服審査会等への諮問制度(第43条)が新設されました。審理員は処分に関与しなかった職員から指名され、審理手続を主宰します。記述式では「審理員」「行政不服審査会」「諮問」というキーワードが正答の核になることがあります。
教示制度
行政不服審査法第82条の教示義務に関する問題も出題されています。教示すべき内容(審査請求をすることができる旨、審査請求をすべき行政庁、審査請求をすることができる期間)を正確に記述する力が問われます。
行政庁は、審査請求若しくは再調査の請求又は他の法令に基づく不服申立て…をすることができる処分をする場合には、処分の相手方に対し、当該処分につき不服申立てをすることができる旨並びに不服申立てをすべき行政庁及び不服申立てをすることができる期間を書面で教示しなければならない。…
― 行政不服審査法 第82条第1項
教示を怠った場合や誤って教示した場合の救済規定(第83条の不作為についての救済、誤った教示をした場合の取扱い等)も、関連論点として出題されうるので、条文の流れを押さえておきましょう。
行政書士試験の行政法記述式では、行政事件訴訟法からの出題が最も頻度が高い。○か×か。
訴訟類型の判別フロー:どの事実があればどの訴訟か
記述式で最初に決めるべきは訴訟類型です。ここを外すと、被告も請求内容も連鎖的に崩れます。逆に言えば、訴訟類型さえ正しく選べれば、残りは条文どおりに埋めるだけです。
訴訟類型は、問題文の事例に含まれる「時間軸」と「申請の有無」の2つの事実でほぼ機械的に決まります。次のフローで判別してください。
【出発点】原告は何を実現したいのか?
│
├─ (A) すでにされた処分を消したい(処分は存在する)
│ │
│ ├─ 処分を知った日から6か月以内・処分の日から1年以内か?(行訴法14条1項・2項)
│ │ └─ YES → ★取消訴訟(処分の取消しの訴え/3条2項)
│ │
│ └─ NO(出訴期間経過)または処分に重大かつ明白な瑕疵がある
│ └─ ★無効等確認の訴え(3条4項・36条)
│ ※36条の「現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することが
│ できないもの」(補充性)に注意
│
├─ (B) 処分をしてほしい(まだ処分がない/拒否された)
│ │
│ ├─ 法令に基づく申請をしたか?
│ │ │
│ │ ├─ YES ─┬─ 応答が全くない
│ │ │ │ → ★申請型義務付け訴訟(37条の3第1項1号)
│ │ │ │ +不作為の違法確認の訴え(3条5項・37条)を併合
│ │ │ │
│ │ │ └─ 拒否処分がされた
│ │ │ → ★申請型義務付け訴訟(37条の3第1項2号)
│ │ │ +拒否処分の取消訴訟(または無効等確認の訴え)を併合
│ │ │
│ │ └─ NO(申請の仕組みがない第三者の立場。
│ │ 例:近隣住民が事業者への規制権限発動を求める)
│ │ → ★非申請型義務付け訴訟(37条の2)
│ │ 要件=重大な損害+他に適当な方法がない
│ │
│ └─ 判決を待てないほど切迫している
│ → 仮の義務付け(37条の5第1項)
│ 要件=償うことのできない損害+緊急の必要+本案に理由があるとみえる
│
├─ (C) これからされそうな処分を止めたい(処分は未了)
│ └─ ★差止訴訟(3条7項・37条の4)
│ 要件=重大な損害/ただし他に適当な方法があるときは不可
│ 切迫していれば → 仮の差止め(37条の5第2項)
│
├─ (D) そもそも「処分」にあたる行為がない
│ (行政指導・通達・内部基準・公法上の金銭債権など)
│ └─ ★当事者訴訟(4条)/実質的当事者訴訟=公法上の法律関係に関する確認の訴え等
│
└─ (E) すでに生じた損害をお金で回復したい
├─ 公務員の職務行為に故意・過失+違法 → ★国家賠償請求(国賠法1条1項)
└─ 公の営造物の設置・管理に瑕疵 → ★国家賠償請求(国賠法2条1項)
※国家賠償請求には、処分の取消判決を先に得ておく必要はない
(取消訴訟の排他的管轄は及ばない)
フローを分ける「決め手の事実」
問題文のどの記述がフローの分岐を決めるのかを、対応表にしておきます。本番では問題文の該当箇所に線を引きながら読むと、訴訟類型の選択が機械的に行えます。
訴訟類型を選んだ後に必ず埋める3要素
訴訟類型が決まったら、次の3要素をセットで書きます。この3点が記述式の配点の骨格です。
- 誰が(原告) — 問題文の当事者名をそのまま使う
- 誰を被告として — 原則は処分をした行政庁が所属する国または公共団体(行訴法11条1項)
- 何を求めるか(請求の趣旨) — 「本件〇〇処分の取消し」「〇〇処分の義務付け」「〇〇処分の差止め」
出題パターン別・解答テンプレート集
ここからは、冒頭で示した5つの型それぞれについて、「設問例 → 使う条文 → 40字の解答例 → 加点キーワード」の順で解答テンプレートを示します。事例は架空のものですが、本試験で問われる構造をそのまま反映しています。
型1:訴訟類型を答えさせる型
最頻出の型です。「どのような訴訟を提起すべきか」という問いに、訴訟類型・被告・請求内容の3点で答えます。
型1-A:取消訴訟
設問例:「A県知事は、Xに対して営業許可の取消処分をした。Xはこの処分に納得できない。Xは、誰を被告として、どのような訴訟を提起すべきか。40字程度で記述しなさい。」
使う条文:行訴法3条2項(処分の取消しの訴え)、9条1項(原告適格・取消訴訟の定義)、11条1項1号(被告適格)、14条1項(出訴期間)
40字の解答例:
「XはA県を被告として、本件営業許可取消処分の取消しを求める取消訴訟を提起すべきである。」(42字)
加点キーワード:取消訴訟/A県を被告(「A県知事」ではない)/本件処分の取消しを求める
注意点:被告を「A県知事」と書くのは誤りです。処分をしたのは知事ですが、被告は知事が所属する「A県」です(行訴法11条1項1号)。ただし、問題文が「どの行政庁を相手に」ではなく「どの行政庁が処分をしたか」を聞いている場合は「A県知事」と答えるので、設問の問いの角度を必ず確認してください。
型1-B:無効等確認の訴え
設問例:「Xが受けた課税処分には重大かつ明白な瑕疵があるが、処分から3年が経過している。Xはどのような訴訟を提起すべきか。」
使う条文:行訴法3条4項(無効等確認の訴え)、36条(無効等確認の訴えの原告適格)、14条(出訴期間)
40字の解答例:
「出訴期間が経過しているため、Xは本件課税処分の無効確認を求める無効等確認の訴えを提起すべきである。」(48字→圧縮版:「Xは出訴期間の制限を受けない本件課税処分の無効等確認の訴えを提起すべきである。」39字)
加点キーワード:無効等確認の訴え/重大かつ明白な瑕疵/出訴期間の制限を受けない
注意点:無効等確認の訴えには出訴期間の制限がありません。「なぜ取消訴訟ではないのか」の理由(出訴期間の経過/瑕疵が重大かつ明白)を書けると得点が伸びます。
型1-C:不作為の違法確認の訴え
設問例:「Xは法令に基づく許可申請をしたが、B市長は1年間何の応答もしない。Xはどのような訴訟を提起できるか。」
使う条文:行訴法3条5項(不作為の違法確認の訴え)、37条(原告適格=処分についての申請をした者に限る)
40字の解答例:
「Xは、B市を被告として、B市長が相当の期間内に処分をしないことの違法確認を求める訴えを提起できる。」(48字→圧縮版:「XはB市を被告とし、相当の期間内に処分をしない不作為の違法確認の訴えを提起できる。」40字)
加点キーワード:不作為の違法確認の訴え/相当の期間/法令に基づく申請をした者
注意点:不作為の違法確認の訴えは「違法であることを確認する」だけで、処分を命じてはくれません。許可そのものを得たいなら、申請型義務付け訴訟を併合提起する必要があります(行訴法37条の3第3項1号)。この「確認だけでは足りない」という点が記述式でよく問われます。
型1-D:申請型義務付け訴訟
設問例:「XはB市長に対し生活保護の開始申請をしたが却下された。Xは保護の開始決定を得たい。どのような訴訟を提起すべきか。」
使う条文:行訴法3条6項2号、37条の3第1項2号・第2項・第3項2号
40字の解答例:
「Xは却下処分の取消訴訟を併合提起した上で、保護開始決定の義務付けを求める義務付け訴訟を提起すべきである。」(51字→圧縮版:「Xは却下処分の取消訴訟を併合して、保護開始決定の義務付け訴訟を提起すべきである。」39字)
加点キーワード:申請型義務付け訴訟/取消訴訟(または無効等確認の訴え)の併合提起/法令に基づく申請をした者
注意点:申請型義務付け訴訟の最大の加点ポイントは併合提起の要求です。単に「義務付け訴訟を提起すべき」とだけ書くと、条文が要求する併合提起の要素を落とすことになります。無応答型(37条の3第1項1号)なら不作為の違法確認の訴えを、拒否処分型(同項2号)なら取消訴訟または無効等確認の訴えを併合する、という対応関係を暗記してください。
型1-E:非申請型義務付け訴訟
設問例:「Xの住居の隣に、C社が違法な廃棄物処理施設を操業している。Xは、D県知事がC社に対し改善命令を出すことを求めたい。Xはどのような訴訟を提起すべきか。」
使う条文:行訴法3条6項1号、37条の2第1項(重大な損害+補充性)・第3項(法律上の利益)・第4項(9条2項の準用)
40字の解答例:
「Xは重大な損害を避けるため他に適当な方法がないとして、改善命令の義務付け訴訟を提起すべきである。」(47字→圧縮版:「Xは重大な損害を避けるため他に方法がないとして改善命令の義務付け訴訟を提起すべきである。」43字)
加点キーワード:非申請型(直接型)義務付け訴訟/重大な損害を生ずるおそれ/他に適当な方法がない(補充性)/法律上の利益
注意点:Xは申請をしていないので、申請型ではありません。ここで併合提起を書いてしまうと誤りです。非申請型は単独で提起でき、代わりに「重大な損害」と「補充性」という実体要件が課されます。
型1-F:差止訴訟
設問例:「E市長は、Xに対し営業停止処分をしようとしている。処分がされれば、Xは取引先を失い事業の継続が困難になる。Xはどのような訴訟を提起すべきか。」
使う条文:行訴法3条7項、37条の4第1項(重大な損害/ただし書の補充性)・第3項
40字の解答例:
「Xは重大な損害を生ずるおそれがあるとして、E市を被告に本件営業停止処分の差止訴訟を提起すべきである。」(49字→圧縮版:「XはE市を被告として重大な損害を理由に本件営業停止処分の差止訴訟を提起すべきである。」42字)
加点キーワード:差止訴訟/重大な損害を生ずるおそれ/処分がされる前に
注意点:差止訴訟は「まだ処分がされていない」ことが大前提です。すでに処分がされていれば取消訴訟であり、差止訴訟を書くと訴訟類型の選択自体が誤りになります。問題文の時制(「しようとしている」「されようとしている」)が決め手です。
型2:被告適格を答えさせる型
「誰を被告として」だけを単独で問う型、あるいは訴訟類型とセットで問う型です。行訴法11条の理解がそのまま点数になります。
設問例:「F市の設置する保育所への入所を拒否されたXが、この拒否処分の取消訴訟を提起する場合、誰を被告とすべきか。また、その根拠を述べなさい。」
使う条文:行訴法11条1項1号
条文は次のとおりです。
処分又は裁決をした行政庁(処分又は裁決があつた後に当該行政庁の権限が他の行政庁に承継されたときは、当該他の行政庁。以下同じ。)が国又は公共団体に所属する場合には、取消訴訟は、次の各号に掲げる訴えの区分に応じてそれぞれ当該各号に定める者を被告として提起しなければならない。
一 処分の取消しの訴え 当該処分をした行政庁の所属する国又は公共団体
二 裁決の取消しの訴え 当該裁決をした行政庁の所属する国又は公共団体
― 行政事件訴訟法 第11条第1項
40字の解答例:
「処分をした行政庁が所属する公共団体であるF市を被告として、取消訴訟を提起しなければならない。」(45字)
加点キーワード:処分をした行政庁の所属する国または公共団体/F市(行政庁名ではない)/行訴法11条1項
押さえるべき例外:
注意点:2004年(平成16年)改正前は処分庁そのものが被告でしたが、現行法では原則として行政主体(国・公共団体)が被告です。ただし第11条第2項の例外(国または公共団体に所属しない行政庁の場合は当該行政庁が被告)まで書ければ、上位の解答になります。また、国または公共団体を被告とする場合、訴状には処分をした行政庁を記載します(同条4項)。この点も知識として持っておくと安心です。
なお、被告適格に関する第11条は、第38条第1項により取消訴訟以外の抗告訴訟(無効等確認の訴え、不作為の違法確認の訴え、義務付け訴訟、差止訴訟)にも準用されます。つまり、どの抗告訴訟であっても被告は「行政庁が所属する国または公共団体」です。「義務付け訴訟の被告は誰か」と問われても答えは同じ構造になります。
型3:行政手続法の手続名と要件を答えさせる型
行政手続法からの出題は、「どのような手続を執らなければならないか」「その処分は手続的にどこが違法か」という角度が中心です。
型3-A:聴聞か弁明の機会の付与か
設問例:「G県知事は、Xの有する旅館業の許可を取り消そうとしている。行政手続法上、G県知事はXに対しどのような手続を執らなければならないか。」
使う条文:行手法13条1項1号イ
行手法13条1項は、不利益処分の内容に応じて意見陳述手続を振り分けています。
行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、次の各号の区分に従い、この章の定めるところにより、当該不利益処分の名あて人となるべき者について、当該各号に定める意見陳述のための手続を執らなければならない。
一 次のいずれかに該当するとき 聴聞
イ 許認可等を取り消す不利益処分をしようとするとき。
ロ イに規定するもののほか、名あて人の資格又は地位を直接にはく奪する不利益処分をしようとするとき。
ハ 名あて人が法人である場合におけるその役員の解任を命ずる不利益処分、名あて人の業務に従事する者の解任を命ずる不利益処分又は名あて人の会員である者の除名を命ずる不利益処分をしようとするとき。
ニ イからハまでに掲げる場合以外の場合であって行政庁が相当と認めるとき。
二 前号イからニまでのいずれにも該当しないとき 弁明の機会の付与
― 行政手続法 第13条第1項
40字の解答例:
「許認可等を取り消す不利益処分に当たるため、G県知事はXについて聴聞の手続を執らなければならない。」(47字→圧縮版:「許認可等を取り消す不利益処分であるため、聴聞の手続を執らなければならない。」36字)
加点キーワード:聴聞/許認可等を取り消す不利益処分/意見陳述のための手続/名あて人となるべき者
注意点:13条1項1号にはニ「イからハまでに掲げる場合以外の場合であって行政庁が相当と認めるとき」があり、行政庁の判断で軽い不利益処分にも聴聞を選択できます。したがって「イ〜ハ以外は必ず弁明の機会の付与」ではなく、正確には「1号イ〜ニのいずれにも該当しないときに弁明の機会の付与」です。また、13条2項には手続を執ることを要しない除外事由(公益上緊急に不利益処分をする必要がある場合など)が定められています。
型3-B:理由の提示
設問例:「H市長は、Xに対する建築確認申請を拒否したが、通知書には『関係法令に適合しないため』としか記載されていなかった。Xはどのような違法を主張すべきか。」
使う条文:行手法8条1項(申請に対する拒否処分の理由の提示)、14条1項(不利益処分の理由の提示)
行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。
― 行政手続法 第8条第1項(本文)
40字の解答例:
「いかなる根拠でいかなる理由により拒否されたかを知り得ず、行手法8条1項の理由提示を欠き違法と主張する。」(50字→圧縮版:「処分の根拠と理由を知り得ない記載であり、行手法8条1項の理由提示を欠き違法である。」40字)
加点キーワード:理由の提示/根拠法条と原因事実/名あて人が了知しうる程度/行手法8条1項(不利益処分なら14条1項)/手続的違法/取消事由
注意点:申請拒否処分は8条、不利益処分は14条です。条文を取り違えると加点キーワードを1つ落とします。 行手法2条4号ロにより、申請拒否処分は「不利益処分」から除外されているため、14条ではなく8条が適用されるという理屈まで理解しておくと混同しません。
型3-C:審査基準・処分基準・標準処理期間
設問例:「行政手続法上、行政庁は審査基準および処分基準について、それぞれどのような義務を負うか。」
使う条文:行手法5条(審査基準)、6条(標準処理期間)、12条(処分基準)
40字の解答例:
「審査基準は設定・公表とも義務であるが、処分基準は設定・公表ともに努力義務にとどまる。」(41字)
加点キーワード:審査基準/処分基準/義務/努力義務/公にしておく
注意点:条文の文言に忠実に言うと、審査基準は5条1項「定めるものとする」+5条3項「公にしておかなければならない」で設定・公表とも義務、処分基準は12条1項「定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない」で設定・公表とも努力義務です。標準処理期間(6条)は「定めるよう努める」=設定は努力義務、「定めたときは……公にしておかなければならない」=定めた場合の公表は義務、というハイブリッドである点が引っかけになります。
型4:行政不服審査法の手続を答えさせる型
行政不服審査法からの出題は、①不服申立ての種類の選択、②審理手続の流れ、③教示、の3方向です。
型4-A:不服申立ての種類の選択
設問例:「Xは、I県知事の処分に不服がある。Xが行政不服審査法上とりうる不服申立ての手段と、その申立先を述べなさい。」
使う条文:行審法2条(処分についての審査請求)、3条(不作為についての審査請求)、5条(再調査の請求)、6条(再審査請求)
3種類の関係は次のとおりです。
40字の解答例:
「Xは、原則として処分庁の最上級行政庁に対し、当該処分の取消しを求める審査請求をすることができる。」(48字→圧縮版:「Xは処分庁の最上級行政庁に対し、本件処分について審査請求をすることができる。」37字)
加点キーワード:審査請求/最上級行政庁/再調査の請求は法律に定めがあるときのみ/処分があったことを知った日の翌日から起算して3月
注意点:再調査の請求と再審査請求は、いずれも「法律に定めがある場合」に限られる例外的な手段です。問題文に「〇〇法は再調査の請求をすることができる旨を定めている」といった記述がなければ、答えは審査請求です。また、2014年改正(2016年4月施行)で異議申立ては廃止されているので、「異議申立て」と書いた時点で減点は避けられません。
型4-B:審査請求期間
使う条文:行審法18条1項・2項
処分についての審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して三月(当該処分について再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定があったことを知った日の翌日から起算して一月)を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
― 行政不服審査法 第18条第1項
40字の解答例:
「審査請求は処分があったことを知った日の翌日から起算して三月以内にしなければならない。」(41字)
加点キーワード:知った日の翌日から起算して3月(主観的期間)/処分があった日の翌日から起算して1年(客観的期間、18条2項)/正当な理由があるときは例外
注意点:行政不服審査法(18条)は「翌日から起算して」ですが、行政事件訴訟法の出訴期間(14条)は「処分又は裁決があつたことを知つた日から六箇月」と、翌日起算の文言がありません。この起算点の書きぶりの差と、「3月/6か月」「1年/1年」という期間の差は、記述式・択一式ともに頻出の対比です。
型4-C:審理手続の流れ(審理員・行政不服審査会)
設問例:「審査庁は、審査請求を受けてから裁決をするまでに、行政不服審査法上どのような手続を経なければならないか。」
使う条文:行審法9条1項(審理員の指名)、42条(審理員意見書)、43条1項(行政不服審査会等への諮問)
手続の流れは次のとおりです。
審査請求 → 審査庁が審理員を指名(9条1項)
→ 審理員が審理手続を主宰・審理員意見書を作成(42条)
→ 審査庁が行政不服審査会等に諮問(43条1項。除外事由あり)
→ 答申を踏まえて審査庁が裁決(44条)
40字の解答例:
「審査庁は審理員を指名して審理させ、審理員意見書を受けて行政不服審査会等に諮問した上で裁決する。」(46字→圧縮版:「審査庁は審理員に審理させ、行政不服審査会等に諮問した上で裁決をしなければならない。」40字)
加点キーワード:審理員/審理員意見書/行政不服審査会等/諮問/裁決
注意点:審理員は「審査庁に所属する職員」から指名されますが、審査請求に係る処分に関与した者は指名できません(行審法9条2項1号)。この「処分に関与していない職員」という点が審理員制度の公正性の核であり、記述式で問われうるポイントです。
型4-D:教示
使う条文:行審法82条1項(処分時の書面教示)、82条2項(利害関係人からの求めに応じた教示)、83条(教示をしなかった場合)
40字の解答例:
「不服申立てができる旨・すべき行政庁・できる期間を、処分の相手方に書面で教示しなければならない。」(46字→圧縮版:「不服申立てができる旨、すべき行政庁及び期間を書面で教示しなければならない。」36字)
加点キーワード:不服申立てをすることができる旨/不服申立てをすべき行政庁/不服申立てをすることができる期間/書面で教示/処分を口頭でする場合は不要(82条1項ただし書)
注意点:教示は処分を書面でする場合の義務であり、口頭でする処分については教示義務がありません(82条1項ただし書)。また、教示をしなかった場合には、処分庁に不服申立書を提出することができ(83条1項)、一定の場合には初めから審査請求がされたものとみなされます(83条4項・5項)。
型5:国家賠償を答えさせる型
処分の取消しでは救済されない(すでに損害が生じている、処分が終了している)場合に問われる型です。
使う条文:国家賠償法1条1項、2条1項
国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
― 国家賠償法 第1条第1項
道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。
― 国家賠償法 第2条第1項
設問例(1条型):「J市の職員が違法な行政指導によりXに損害を与えた。Xは誰に対しどのような請求をすべきか。」
40字の解答例:
「Xは、J市に対し、国家賠償法1条1項に基づき損害の賠償を請求すべきである。」(36字)
加点キーワード:国または公共団体の公権力の行使/公務員/職務を行うについて/故意または過失/違法/国家賠償法1条1項
設問例(2条型):「K県が管理する県道の防護柵が損傷したまま放置され、Xが転落して負傷した。Xはどのような請求をすべきか。」
40字の解答例:
「Xは、公の営造物の設置管理の瑕疵を理由に、K県に対し国家賠償法2条1項に基づき賠償を請求する。」(47字→圧縮版:「Xは公の営造物の設置管理の瑕疵を理由にK県に国家賠償を請求すべきである。」36字)
加点キーワード:公の営造物/設置または管理の瑕疵/通常有すべき安全性を欠く/無過失責任/国家賠償法2条1項
1条と2条の振り分け:
注意点:2条は無過失責任であり、「過失」を要件として書くと誤りです。判例は営造物の瑕疵を「営造物が通常有すべき安全性を欠いていること」と定義しています(最判昭和45年8月20日・高知落石事件)。また、費用負担者も賠償責任を負う点(国賠法3条1項)は、「誰に対して請求できるか」を問う設問で加点になります。詳しくは国家賠償法1条を徹底解説|公務員の不法行為と国の責任と国家賠償法2条と損失補償|営造物の設置管理の瑕疵で解説しています。
非申請型義務付け訴訟を提起するには、取消訴訟または不作為の違法確認の訴えを併合して提起しなければならない。○か×か。
頻出パターンの整理:設問の「問い方」から分類する
前章では答えるべき法分野(訴訟類型・被告・行手法・行審法・国賠)を軸に型を整理しました。ここでは視点を変え、設問がどのような問い方をしてくるかという切り口で、もう一度パターンを整理します。同じ論点でも問い方が変われば書くべきことが変わるため、両方の軸を持っておくと初見の問題に強くなります。
とくにこの章のパターン2(違法性の主張)は、前章の5類型のいずれにも収まらない独立した出題角度なので、必ず押さえてください。
パターン1:「〇〇訴訟を提起すべき」型
最も頻出の出題パターンは、事例に対して「どのような訴訟を提起すべきか」を問う形式です。このパターンでは、以下の要素を40字に盛り込む必要があります。
必要な要素
- 訴訟類型(取消訴訟、義務付け訴訟、差止訴訟、無効等確認訴訟等)
- 被告(処分をした行政庁の属する国または公共団体)
- 請求内容(何の取消し・義務付け・差止めを求めるか)
解答の構成例
「Aは、B市を被告として、本件許可処分の取消しを求める取消訴訟を提起すべきである。」(40字)
このパターンでは、訴訟類型の正確な選択が最も重要なキーワードです。取消訴訟と無効等確認訴訟の区別、申請型義務付け訴訟と非申請型義務付け訴訟の区別など、訴訟類型の正確な知識が求められます。
訴訟類型を選ぶときの思考の順序を、フローとして整理しておくと本番で迷いません。
- すでにされた処分を消したい → 取消訴訟(出訴期間内)。出訴期間を過ぎ、かつ重大かつ明白な瑕疵がある → 無効等確認の訴え
- 処分をしてほしい → 義務付け訴訟。申請をしているのに応答がない/拒否された → 申請型義務付け訴訟(不作為の違法確認の訴えまたは取消訴訟・無効等確認の訴えと併合)。申請の仕組みがない第三者の立場 → 非申請型義務付け訴訟
- これからされそうな処分を止めたい → 差止訴訟
- 行政との間の法律関係そのものを争いたい(処分性がない) → 当事者訴訟(実質的当事者訴訟)
- すでに生じた損害を金銭で回復したい → 国家賠償請求(国賠法1条または2条)
より細かい分岐条件と、問題文のどの記述が分岐の決め手になるかについては、本記事前半の「訴訟類型の判別フロー:どの事実があればどの訴訟か」の章で図とともに整理しています。
また、被告の特定も重要です。行政事件訴訟法第11条第1項は、処分をした行政庁が国または公共団体に所属する場合について、処分の取消しの訴えは「当該処分をした行政庁の所属する国又は公共団体」を、裁決の取消しの訴えは「当該裁決をした行政庁の所属する国又は公共団体」を被告として提起しなければならないと定めています(同項1号・2号)。国の機関の処分であれば「国」、市の機関の処分であれば「〇〇市」が被告となります。被告は「行政庁」そのものではなく、行政庁が所属する「国または公共団体」である点に注意しましょう(被告適格の改正論点。2004年改正前は処分庁が被告でしたが、現在は所属する行政主体が被告です)。なお、処分庁が国または公共団体に所属しない場合には、例外的に当該行政庁自身が被告となります(同条2項)。
パターン2:「〇〇の違法性を主張すべき」型
2番目に多い出題パターンは、処分の違法性をどのように主張すべきかを問う形式です。
必要な要素
- 違法事由の特定(手続的違法か実体的違法か)
- 根拠となる条文や法理
- 具体的な主張内容
解答の構成例
「理由の提示が不十分であり行政手続法第14条第1項に違反するとの手続的違法を主張すべきである。」(46字)
このパターンでは、違法事由を正確に特定し、根拠条文を明示することがポイントです。手続的違法であれば行政手続法の条文を、実体的違法であれば裁量権の逸脱・濫用(行政事件訴訟法第30条)を根拠として挙げることになります。第30条は裁量処分の司法審査の範囲を定めた重要条文です。
行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。
― 行政事件訴訟法 第30条
実体的違法を主張する場面では、裁量統制の具体的な法理を盛り込めると得点が安定します。比例原則(目的に照らして過大な処分は違法)、平等原則(合理的理由のない差別的取扱いは違法)、信義則違反、考慮すべき事項を考慮しない・考慮すべきでない事項を考慮した「考慮不尽・他事考慮」などです。裁量権の逸脱・濫用を肯定した代表判例として、個人タクシー事件(最判昭和38年5月31日、手続の公正の観点)、神戸税関事件(最判昭和52年12月20日、社会観念審査)などがあります。
パターン3:手続の流れを問う型
3番目のパターンは、「〇〇の場合、どのような手続を経るべきか」を問う形式です。行政手続法や行政不服審査法の手続規定に関する知識が問われます。
必要な要素
- 手続の名称(聴聞、弁明の機会の付与、審理員による審理等)
- 手続の主体(行政庁、審理員、審査庁等)
- 手続の内容(何をすべきか)
解答の構成例
「行政庁は、聴聞を行い、聴聞調書及び報告書を十分に参酌して不利益処分の決定をしなければならない。」(47字→圧縮版:「行政庁は聴聞を行い、調書及び報告書を十分に参酌して処分を決定しなければならない。」40字)
このパターンでは、手続の流れを正確に把握していることが前提です。たとえば不利益処分の手続であれば、聴聞と弁明の機会の付与のどちらが必要かを正しく判断し、その手続の内容を簡潔に記述する必要があります。
パターン4:「誰に対し・何を請求できるか」型(処分性・救済の特定)
近年の傾向として、処分性の有無や、行政事件訴訟と国家賠償・当事者訴訟との振り分けを問う型も見られます。たとえば「Aは誰に対してどのような請求をすべきか」という問いに対し、処分性が認められない行政の行為については当事者訴訟(実質的当事者訴訟、行政事件訴訟法第4条後段)や国家賠償請求を選ぶ、といった判断が求められます。
処分性については、「公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定することが法律上認められているもの」という定義(最判昭和39年10月29日:大田区ゴミ焼却場事件)が出発点です。記述式では、通達・行政指導・計画などについて「処分性が認められるか」を結論づける角度で問われることがあります。
過去問で問われた角度の整理
行政法記述式は出題テーマが3法に集中するため、「角度」のバリエーションを押さえておくと初見の問題にも対応できます。代表的な問われ方を整理します。
- 訴訟選択型:事例に最も適した訴訟類型・被告・対象を答えさせる(パターン1)。取消訴訟と無効等確認訴訟、申請型と非申請型義務付け訴訟の振り分けが頻出。
- 要件あてはめ型:執行停止・仮の義務付け・仮の差止めの要件を問う。執行停止(行訴法25条2項)は「重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき」、仮の義務付け・仮の差止め(同法37条の5第1項・第2項)は「償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるとき」がキーワード。両者は要件が異なるので混同しないこと(後述の比較表を参照)。
- 手続選択型:聴聞か弁明の機会の付与か、審査基準か処分基準か、義務か努力義務かを区別させる(パターン3)。
- 違法事由特定型:手続的違法(理由提示の不備、聴聞手続の欠落)か実体的違法(裁量権の逸脱・濫用)かを特定させる(パターン2)。
- 判例知識型:個人タクシー事件、一級建築士免許取消事件、小田急高架訴訟など、判例の規範を40字で要約させる。
- 救済方法の振り分け型:処分性の有無を踏まえ、抗告訴訟か当事者訴訟か国家賠償かを選ばせる(パターン4)。
仮の救済(執行停止・仮の義務付け・仮の差止め)の書き分け
「判決を待っていられない」という事情が問題文にある場合、仮の救済が問われます。ここは条文の文言が細かく異なり、受験生が最も取り違えやすい場所です。条文どおりに整理します。
ここで確実に押さえてほしいのは次の2点です。
第一に、損害要件のレベルが違います。 執行停止は「重大な損害」ですが、仮の義務付け・仮の差止めは「償うことのできない損害」で、より厳格です。仮の救済のうち、既存の処分の効力を止めるだけの執行停止に比べ、行政庁に積極的な行為を命じる(あるいは行為を禁じる)仮の義務付け・仮の差止めのほうが行政への介入度が高いため、要件が加重されています。
第二に、「本案について理由がある/ない」の向きが逆です。 執行停止では「本案について理由がないとみえるときは、することができない」という消極要件(行訴法25条4項)として規定されているのに対し、仮の義務付け・仮の差止めでは「本案について理由があるとみえるとき」という積極要件(同法37条の5第1項・2項)として規定されています。「執行停止の要件は本案について理由があるとみえるとき」と書くのは条文の読み違いで、記述式なら減点対象です。
40字の解答例(執行停止):
「重大な損害を避けるため緊急の必要があるとして、裁判所に本件処分の執行停止を申し立てるべきである。」(47字→圧縮版:「重大な損害を避けるため緊急の必要があるとして執行停止を申し立てるべきである。」37字)
40字の解答例(仮の義務付け):
「償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があるとして、仮の義務付けを申し立てるべきである。」(46字)
加点キーワード:執行不停止の原則(25条1項)/重大な損害/緊急の必要/償うことのできない損害/本案について理由があるとみえる/申立てにより決定で
なお、取消訴訟を提起しても処分の効力は当然には止まりません。これが執行不停止の原則です。
処分の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。
― 行政事件訴訟法 第25条第1項
したがって「Xは処分の効力を直ちに止めたい」という問題文があれば、取消訴訟の提起だけでは答えとして不十分で、執行停止の申立てまで書く必要があります。設問が「どのような手段をとるべきか」と広く聞いている場合は、本案(取消訴訟)+仮の救済(執行停止)のセットで答えるのが安全です。
加点キーワード集:論点別の必須用語一覧
記述式の採点はキーワードの拾い方で決まります。ここでは、論点別に「これを書けば拾われる可能性が高い」用語を一覧化します。丸暗記ではなく、論点名を見たときにキーワードが3つ以上口をついて出る状態を目標にしてください。
行政事件訴訟法・訴訟類型
行政事件訴訟法・訴訟要件
行政裁量・違法事由
行政手続法
行政不服審査法
国家賠償法
このキーワード集は、書いた答案を自己採点するチェックリストとしても使えます。答案を書いたあと、該当する論点の行を見て「拾えたキーワードはいくつか」を数えれば、自分が落としやすい要素が見えてきます。部分点の考え方については行政書士試験の記述式採点基準を分析|部分点戦略も参考にしてください。
40字の構成法
主語と述語を明確にする
40字の記述式で最も重要なのは、「誰が(主語)」「何をすべきか/どうなるか(述語)」を明確にすることです。主語と述語があいまいな解答は、採点者に意図が伝わらず、得点につながりません。
悪い例:「取消訴訟で処分性が問題になると思われる。」(20字)
この例は、主語が不明確で、結論も「問題になる」という曖昧な表現にとどまっています。
良い例:「Aは、B市を被告として、本件処分の取消訴訟を提起すべきである。」(30字)
この例は、主語(A)と述語(提起すべきである)が明確で、被告と訴訟類型も特定されています。
法的な結論を先に書く
記述式の解答は、法的な結論を先に書き、その後に補足情報を加える構成にしましょう。結論が後ろにある文章は、採点者が読みづらく、字数制限の中で結論が書ききれないリスクもあります。
結論先行型の構成
「Aは取消訴訟を提起すべきであり、被告はB県、対象は本件不許可処分である。」(36字)
この構成では、最初に「取消訴訟を提起すべき」という結論を示し、その後に被告と対象を補足しています。仮に40字の途中で字数が尽きても、結論は伝わります。
根拠(条文・要件)を盛り込む
40字の中に条文番号や法的要件を盛り込むことで、解答の正確性と得点力が向上します。ただし、条文番号を入れる余裕がない場合は、法律用語(「処分性」「原告適格」「訴えの利益」等)を使うことで、条文の知識があることを示しましょう。
条文番号を入れた例
「行政手続法第14条第1項に基づく理由の提示を欠く本件処分は違法である。」(34字)
法律用語で代替する例
「理由の提示を欠く不利益処分は手続的に違法であり、取消事由に該当する。」(34字)
余計な修飾語を省く
40字という制限の中では、余計な修飾語を徹底的に省く必要があります。「〜と考えられる」「〜という可能性がある」「〜と思われる」などの曖昧な表現は避け、断定的な表現を使いましょう。
修飾語が多い例
「この場合においてはAとしてはおそらく取消訴訟を提起することが考えられる。」(36字)
簡潔な例
「Aは本件処分の取消訴訟を提起すべきである。」(21字)
後者のほうが字数に余裕が生まれ、被告や根拠を追加する余地があります。
「型」をあてはめる発想で書く
40字を毎回ゼロから組み立てるのは非効率です。出題パターンごとに解答の鋳型(テンプレート)を用意し、空欄に事例の固有名詞や要件を流し込む発想に切り替えると、本番で速く正確に書けます。
テンプレートを暗記しておけば、本番では「論点の特定」と「空欄埋め」に集中でき、文章構成に時間を奪われません。
行政法の記述式で40字の解答を書く際、条文番号を入れる余裕がなければ、法律用語を使って条文の知識を示すとよい。○か×か。
部分点を取るテクニック
キーワードを確実に入れる
記述式の採点はキーワード方式で行われていると推測されるため、採点のポイントとなるキーワードを確実に解答に含めることが部分点獲得の鍵です。
行政法の記述式で頻出するキーワードには以下のようなものがあります。
訴訟類型関連:取消訴訟、無効等確認訴訟、義務付け訴訟(申請型・非申請型)、差止訴訟、当事者訴訟(実質的当事者訴訟・形式的当事者訴訟)、仮の義務付け、仮の差止め、執行停止
訴訟要件関連:処分性、原告適格、訴えの利益、出訴期間、被告適格、裁判管轄
手続関連:聴聞、弁明の機会の付与、理由の提示、審査基準、処分基準、標準処理期間、教示、審理員、行政不服審査会
違法性関連:裁量権の逸脱・濫用、手続的違法、比例原則、平等原則、信義則
これらのキーワードの中から、問題に関連するものを優先的に解答に盛り込みましょう。
法律用語は正確に使う
法律用語を不正確に使うと減点されるリスクがあります。以下に、間違えやすい法律用語の例を挙げます。
特に「裁決」と「決定」、「審査請求」と「異議申立て」の区別は重要です。行政不服審査法の改正(2016年施行)により、異議申立ては原則として廃止され、審査請求に一本化されています。古い用語を使わないよう注意しましょう。
白紙で出さない
記述式で最も避けるべきは、白紙で提出することです。白紙は確実に0点ですが、何か書けば部分点の可能性が生まれます。
たとえば、行政事件訴訟法に関する問題で詳しい解答が書けなくても、「Aは取消訴訟を提起すべきである」(16字)と書くだけで、訴訟類型の選択が正しければ数点の部分点が得られる可能性があります。
また、問題文をよく読むことで、求められている解答の方向性がヒントとして示されている場合もあります。問題文に「どのような訴訟を」と書かれていれば訴訟類型を答えればよく、「どのような違法事由を」と書かれていれば違法事由を特定すればよいのです。問題文の指示に沿って、分かる範囲で解答を書きましょう。
設問の要素をすべて拾う
部分点を最大化する最大のコツは、設問が要求する要素を取りこぼさないことです。前述のとおり、設問は「①どのような訴訟を、②誰を被告として、③何の取消しを求めて」のように複数の要素を含むことが多く、各要素に配点が振られていると考えられます。
たとえば訴訟類型を正しく書けても被告を書き忘れれば、被告分の点を失います。逆に、訴訟類型が思い出せなくても、被告と対象だけでも正確に書けば、その分の部分点は確保できます。「全部正しく書けないと0点」ではないので、答えられる要素から確実に埋めていきましょう。解答を書く前に、設問の要求要素を頭の中で「①②③」と数えてから書き始めるのが安全です。
よくある誤解と注意点
記述式で受験生がつまずきやすい誤解を、あらかじめ整理しておきます。
- 「被告は行政庁」という誤解:2004年改正後、抗告訴訟の被告は処分庁そのものではなく、その所属する国または公共団体です(行訴法第11条)。「B市長を被告として」ではなく「B市を被告として」と書くのが正しいケースが多いので、問題文が「行政庁」を聞いているのか「被告」を聞いているのかを区別しましょう。
- 「審査基準も処分基準も公表義務」という誤解:審査基準は設定・公表とも義務ですが、処分基準は設定・公表とも努力義務です。混同しやすい頻出ポイントです。
- 「異議申立て」を書いてしまう:2016年施行の改正で審査請求に一元化されました。原則として「審査請求」と書きます(再調査の請求・再審査請求は個別法に定めがある場合のみ)。
- 取消訴訟と無効等確認訴訟の混同:出訴期間を経過している、または処分に重大かつ明白な瑕疵がある場合は無効等確認訴訟を検討します。出訴期間内なら原則として取消訴訟です。
- 「重大な損害」と「回復の困難な損害」の混同:執行停止の要件は2004年改正で「回復の困難な損害」から「重大な損害」に緩和されました。古い文言を書かないよう注意しましょう。
- 判例の規範を自己流の言葉で薄めてしまう:理由提示なら「いかなる根拠でいかなる理由により処分されたかを名宛人が知りうる程度」、処分性なら「直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定する」といった判例の核となる文言は、できるだけ判例に近い表現で書くと採点で評価されやすくなります。
行政事件訴訟法上、取消訴訟の被告は処分をした行政庁そのものである。○か×か。
行政手続法上、不利益処分のうち許認可を取り消すなど重大なものについては、聴聞を行わなければならない。○か×か。
実践的な練習方法
過去問を使った練習の進め方
行政法の記述式対策で最も効果的な練習方法は、過去問の模範解答を分析し、自分で書く練習を繰り返すことです。
ステップ1:過去問の模範解答を分析する
まず、過去10年分程度の行政法記述式の問題と模範解答を入手し、以下の点を分析します。
- どの法律(行政事件訴訟法、行政手続法、行政不服審査法等)から出題されているか
- どのような論点が問われているか
- 模範解答にはどのようなキーワードが含まれているか
- 40字の中でどのように情報を圧縮しているか
この分析を通じて、出題傾向とあるべき解答のパターンが見えてきます。
ステップ2:自力で解答を書く
次に、模範解答を見ずに自力で解答を書きます。最初は40字に収まらなくても構いません。まず60〜80字で書いてから、不要な部分を削って40字に圧縮する練習をしましょう。
ステップ3:模範解答と比較する
自分の解答と模範解答を比較し、以下の点をチェックします。
- キーワードが含まれているか
- 法律用語は正確か
- 結論は正しいか
- 字数は適切か(35〜45字)
この3ステップを繰り返すことで、記述式の解答力は確実に向上します。
40字で書く訓練のコツ
40字で法的に正確な文章を書く力は、一朝一夕では身につきません。以下のコツを意識して日常的に練習しましょう。
択一式の復習を記述式に活用する:択一式の過去問を解いた後、各選択肢の正解・不正解の根拠を40字で書く練習をします。たとえば「この選択肢が誤りである理由は何か」を40字で記述するのです。
条文の要約練習:行政事件訴訟法の条文を40字で要約する練習も効果的です。たとえば、行政事件訴訟法第25条第2項(執行停止の要件)を40字で要約すると「重大な損害を避けるため緊急の必要がある場合に裁判所は処分の執行停止を決定できる。」(40字)のようになります。
時間を計って書く:本番と同じ条件で練習するため、1問あたり10〜13分の制限時間を設けて解答を書く練習をしましょう。時間内に書き終える感覚を身につけることが重要です。
自己採点の精度を上げる:書いた解答を、模範解答のキーワードと照らして「キーワードがいくつ拾えたか」で採点する習慣をつけます。配点を3〜4要素に分解し、要素ごとに○△×をつけると、自分が落としやすいポイント(被告を忘れる、要件を1つ落とす等)が可視化されます。
頻出テーマの重点学習
記述式対策として優先的に学習すべきテーマは以下の通りです。
- 取消訴訟の訴訟要件(処分性、原告適格、訴えの利益、出訴期間)
- 義務付け訴訟・差止訴訟の要件(申請型と非申請型の区別、重大な損害、補充性)
- 執行停止と仮の救済の要件(執行停止=重大な損害+緊急の必要/仮の義務付け・仮の差止め=償うことのできない損害+緊急の必要+本案について理由があるとみえるとき)
- 理由の提示(申請拒否処分・不利益処分の理由の提示の程度)
- 聴聞と弁明の機会の付与の区別
- 審査請求の手続(審理員、行政不服審査会、裁決)
これらのテーマについて、条文の要件を正確に暗記し、40字で表現する練習を重点的に行いましょう。
関連論点を束ねて覚える
記述式は論点が単独で問われるとは限りません。関連論点を「セット」で押さえると、応用問題に強くなります。たとえば次のような束ね方が有効です。
- 取消訴訟+執行停止:取消訴訟は処分の効力を当然には止めないため(執行不停止の原則、行訴法第25条第1項)、効力を止めたければ執行停止を申し立てる、という流れをセットで覚える。
- 理由の提示+聴聞:いずれも不利益処分の適正手続を担保する制度。手続的違法を主張する場面で同時に検討する。
- 原告適格+訴えの利益+処分性:取消訴訟の入口を画する3要素として一括で整理し、事例ごとに「どこが争点か」を切り分ける。
- 審査請求+教示+審理員:行政不服審査法の手続フローとして、申立て→教示の要否→審理員による審理→行政不服審査会への諮問→裁決、という時系列で覚える。
まとめ
本記事では、行政法の記述式出題パターンと書き方のコツについて解説しました。要点を3つにまとめます。
- 問われる型は5つしかない:訴訟類型/被告適格/行政手続法の手続と要件/行政不服審査法の手続/国家賠償。この5つに型を絞り、それぞれの解答テンプレートを暗記すれば、初見の事例にも対応できる
- 訴訟類型は「時間軸」と「申請の有無」で機械的に決まる:処分が既にある→取消訴訟(出訴期間経過なら無効等確認の訴え)、処分がほしい→義務付け訴訟(申請していれば申請型+併合提起、していなければ非申請型+重大な損害・補充性)、処分を止めたい→差止訴訟、処分性がない→当事者訴訟、損害の回復→国家賠償
- 40字は「誰が・誰を被告として・何を求めるか」の3要素で骨格をつくる:主語と述語を明確にし、結論を先に書き、加点キーワードを優先的に埋める。設問の要求要素を数えてから書き始め、白紙だけは絶対に避ける
そして、条文の細部を正確に押さえることが最後の差になります。執行停止は「重大な損害+緊急の必要」で本案について理由がないとみえるときは不可、仮の義務付け・仮の差止めは「償うことのできない損害+緊急の必要+本案について理由があるとみえる」。審査請求期間は「知った日の翌日から起算して3月」、取消訴訟の出訴期間は「知った日から6か月」。こうした一語の違いが、記述式では加点と減点を分けます。
記述式は練習量に比例して得点力が向上する分野です。本記事の解答テンプレートと加点キーワード集を手元に置きながら、過去問の分析と40字で書く訓練を繰り返し、本番で確実に得点できる力を身につけましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 行政法の記述式はいつから対策を始めるべきですか?
行政法の択一式の学習が一通り終わった段階(学習開始から3〜4ヶ月後が目安)で記述式対策を始めることをおすすめします。記述式は択一式の知識が土台になるため、択一式で基礎知識がない状態で記述式に取り組んでも効果は限定的です。本格的な記述式対策は試験の3〜4ヶ月前から始め、直前期に集中的に練習しましょう。
Q2. 記述式で条文番号を間違えた場合、0点になりますか?
条文番号を間違えただけで0点になる可能性は低いと考えられます。ただし、条文番号の誤りは減点要因にはなりえます。条文番号を正確に覚えていない場合は、無理に番号を書くよりも「行政手続法に基づき」「行政事件訴訟法の規定により」といった法律名を示すにとどめるほうが安全です。
Q3. 40字をちょうど40字で書く必要がありますか?
ちょうど40字である必要はありません。解答欄は45字分のマス目がありますので、35〜45字程度であれば問題ありません。ただし、30字以下では必要な情報が不足している可能性が高く、45字を超えるとマス目に収まりません。40字前後を目安に、必要な情報を過不足なく盛り込むことを意識しましょう。
Q4. 記述式の練習問題は市販の問題集だけで足りますか?
市販の記述式問題集に加えて、過去問の分析と模試の記述式も活用しましょう。市販問題集だけでは出題パターンの偏りが生じる可能性があります。過去問10年分と市販問題集1〜2冊を併用し、さまざまなパターンの問題に慣れることが理想的です。
Q5. 行政法の記述式と民法の記述式では、どちらを先に対策すべきですか?
行政法の記述式を先に対策することをおすすめします。行政法の記述式は出題パターンが比較的明確で、訴訟類型の選択+被告+要件というフレームワークで解答を組み立てやすいためです。行政法の記述式でパターンを掴んでから民法の記述式に進むと、効率的に学習できます。
Q6. 判例の規範はどこまで正確に覚える必要がありますか?
判例の結論(原告適格を認めた/訴えの利益が消滅した等)と、規範の核となるキーワードを押さえれば十分です。たとえば理由提示なら「いかなる根拠でいかなる理由により処分されたかを名宛人が知りうる程度の記載が必要」、処分性なら「直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定する」といった中心部分です。判旨を一字一句暗記する必要はありませんが、自己流に言い換えて意味がずれると減点されかねないので、核となる言い回しは判例に近い形で書けるようにしておきましょう。
Q7. 「重大な損害」と「回復の困難な損害」はどう使い分けますか?
現在の行政事件訴訟法では、執行停止(第25条第2項)も非申請型義務付け訴訟・差止訴訟(第37条の2第1項、第37条の4第1項)も、要件は「重大な損害」で統一されています。「回復の困難な損害」は2004年改正前の執行停止の要件であり、現行法では要件そのものとしては用いません。ただし、「重大な損害を生ずるか否か」を判断する際の考慮要素として「損害の回復の困難の程度を考慮する」という規定が置かれている点(第25条第3項、第37条の2第2項、第37条の4第2項)には注意してください。つまり「回復の困難さ」は要件から考慮要素へと位置づけが変わったのであって、意味を失ったわけではありません。
なお、仮の義務付け・仮の差止め(第37条の5第1項・第2項)だけは「償うことのできない損害」という、より重い損害要件になっています。記述式では「重大な損害」と「償うことのできない損害」を取り違えないようにしましょう。
Q8. 「誰を被告として」と問われたら、どう書けばよいですか?
原則は「処分をした行政庁が所属する国または公共団体」です(行政事件訴訟法第11条第1項)。具体的には、県知事の処分なら「〇〇県」、市長の処分なら「〇〇市」、国の大臣の処分なら「国」と書きます。「〇〇県知事を被告として」と書くと誤りになるので注意してください。ただし、処分をした行政庁が国または公共団体に所属しない場合(法律により処分権限を与えられた指定法人など)は、例外的に当該行政庁そのものが被告となります(同条第2項)。設問が「誰を被告として」ではなく「どの行政庁が」を聞いている場合には行政庁名で答えるので、問いの角度を読み違えないことが最も大切です。
Q9. 「どのような訴訟を」と問われたとき、訴訟の名称はどう表記すればよいですか?
条文上の名称で書くのが最も安全です。行政事件訴訟法の条文では、「処分の取消しの訴え」(3条2項)、「裁決の取消しの訴え」(3条3項)、「無効等確認の訴え」(3条4項)、「不作為の違法確認の訴え」(3条5項)、「義務付けの訴え」(3条6項)、「差止めの訴え」(3条7項)と表記されています。実務・受験界では「取消訴訟」「無効等確認訴訟」「不作為の違法確認訴訟」「義務付け訴訟」「差止訴訟」という呼称も一般的で、これらを使って減点されることは考えにくいですが、「取消し請求」「差止め請求」のような、訴訟類型として存在しない表現は避けてください。また、義務付け訴訟については「申請型」「非申請型(直接型)」の別を明示すると、区別を理解していることが伝わります。
Q10. 申請型義務付け訴訟で、併合提起する訴えを書き忘れたら何点引かれますか?
配点は公表されていないため正確な点数はわかりませんが、併合提起は行政事件訴訟法第37条の3第3項が明文で要求する要件であり、この型の設問における中心的な論点です。設問が「どのような訴訟をどのように提起すべきか」と聞いている場合、併合提起は明らかに答えるべき要素の1つと考えられます。逆に言えば、訴訟類型名が思い出せなくても「拒否処分の取消訴訟を併合して提起する必要がある」と書ければ、その要素分の部分点は狙えます。無応答型なら不作為の違法確認の訴え、拒否処分型なら取消訴訟または無効等確認の訴えを併合する、という対応関係をセットで覚えてください。
Q11. 記述式で行政手続法の条文番号を書くとき、8条と14条を混同しがちです。区別のコツはありますか?
「申請したのに断られた=8条、何もしていないのに不利益を受けた=14条」と覚えてください。行政手続法8条は「申請により求められた許認可等を拒否する処分」の理由提示、14条は「不利益処分」の理由提示です。両者が分かれている理由は、行政手続法2条4号ロが、申請拒否処分を「不利益処分」の定義から明文で除外しているためです。申請拒否処分は不利益処分ではないので14条は適用されず、代わりに8条が適用される、という構造になっています。この理屈まで理解しておくと、本番で迷いません。
Q12. 行政不服審査法の記述式では、審査請求と再調査の請求のどちらを書くべきですか?
問題文に「〇〇法は再調査の請求をすることができる旨を定めている」といった記述がなければ、答えは審査請求です。再調査の請求(行政不服審査法5条1項)も再審査請求(同法6条1項)も、「法律に定めがあるとき」に限って認められる例外的な手段だからです。逆に、問題文にわざわざ「法律に再調査の請求をすることができる旨の定めがある」と書かれていれば、それは出題者が再調査の請求を答えさせたがっているサインです。問題文に置かれた条件文は、ほぼ必ず解答に反映させるべきヒントだと考えてください。
Q13. 取消訴訟と国家賠償請求は、どちらか一方しか選べないのですか?
いいえ、両方を選ぶことができます。判例上、違法な処分について国家賠償を請求するにあたり、あらかじめ処分の取消判決や無効確認判決を得ておく必要はないとされています(最判昭和36年4月21日など)。取消訴訟の排他的管轄は、処分の効力を否定する場面に及ぶものであって、金銭賠償を求める国家賠償請求には及ばないからです。したがって、出訴期間を経過して取消訴訟が提起できない場合でも、国家賠償請求は別途可能です。記述式で「Xはいかなる救済を求めうるか」と広く問われた場合、処分の効力を争う抗告訴訟と、損害の回復を求める国家賠償請求の両方に触れられると解答の厚みが出ます。
Q14. 記述式の問題を解く時間はどれくらい確保すべきですか?
記述式3問(行政法1問・民法2問)で30〜40分程度を確保するのが一般的な目安ですが、時間配分は択一式の進め方と一体で設計すべきものです。本記事は行政法の記述式の「書き方」に特化しているため、当日の時間配分と解答順序については行政書士試験の時間配分|180分の解く順番と当日の進め方で詳しく解説しています。あわせて記述式の時間配分と解答テクニックも参考にしてください。
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