最高裁の違憲判決一覧|行政書士試験に出る判例整理
最高裁が違憲と判断した主な判例を一覧表で整理します。尊属殺重罰規定・薬局距離制限・森林法共有林・国籍法・非嫡出子相続分など、行政書士試験で問われる事件名と判決年月日、違憲とされた規定、根拠となる憲法上の権利を対応させて確認できます。違憲判決の効力と違憲審査基準もあわせて解説します。
最高裁判所が法律の規定そのものを違憲とした例は、決して多くありません。数が限られているからこそ、行政書士試験では「事件名・判決年月日・違憲とされた規定・根拠となる憲法上の権利」の4点セットが繰り返し問われます。本記事では、この4点を一覧表で対応させたうえで、違憲判断の型、違憲判決の効力、判例の射程まで整理します。
違憲判決とは何か|違憲審査制の性格から押さえる
違憲判決の一覧を暗記する前に、そもそも裁判所がどのような場面で法令の合憲性を審査できるのかを押さえておく必要があります。ここを理解しておくと、個々の判決が「なぜその形で出されたのか」が見えてきます。
憲法81条と付随的違憲審査制
日本の違憲審査制は、具体的な事件の解決に必要な限りで法令の合憲性を審査する「付随的違憲審査制」であると解されています。裁判所は、法令の合憲性そのものを審査するために存在しているのではなく、目の前の紛争を解決する過程で、その前提として法令が憲法に適合するかを判断します。
この点を明確にしたのが、警察予備隊違憲訴訟(最大判昭和27年10月8日)です。最高裁は、具体的な事件を離れて抽象的に法律の合憲性を審査する権限を有しないと判断しました。この判決があるため、日本では「この法律は憲法違反だ」とだけ主張して裁判所に持ち込むことはできません。
【付随的違憲審査制のしくみ】
具体的な紛争が起きる
│
▼
訴訟が提起される(法律上の争訟)
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事件を解決するために法令の適用が必要になる
│
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その前提として、法令が憲法に適合するかを審査
│
▼
違憲と判断 → その事件では当該法令を適用しない
この図が示すのは、違憲審査が常に「具体的な事件」を出発点にしているという点です。裁判所は事件の解決に必要な限度で憲法判断に立ち入るため、違憲判決は事件と切り離された抽象的な宣言ではありません。だからこそ、後述する違憲判決の効力の問題(個別的効力説と一般的効力説)が生じます。
抽象的違憲審査制との違い
この対比は択一式で頻出です。違憲審査制そのものの論点は違憲審査制|付随的違憲審査制の意味と重要判例で詳しく整理していますので、本記事とあわせて確認すると理解が固まります。
最高裁判所は、具体的な事件を離れて、抽象的に法律が憲法に適合するかどうかを審査する権限を有する。
法令違憲・適用違憲|違憲判断の型を区別する
一口に「違憲判決」といっても、何が違憲とされたのかは事案によって異なります。ここを区別できないと、一覧表を覚えても得点に結びつきません。
法令違憲
法令(法律の規定)そのものが憲法に違反すると判断する方法です。規定の文言自体が不合理な差別を生むなど、法令そのものに違憲の瑕疵がある場合に用いられます。試験で「違憲判決」として問われるものの中心は、この法令違憲です。
適用違憲
法令自体は合憲であるが、当該事件への適用の仕方が違憲であると判断する方法です。法令の規定そのものを無効にするのではなく、特定の事件における法令の適用が憲法に違反するとするものです。適用違憲は、法令違憲よりも限定的な影響にとどまるため、裁判所が違憲判断を回避しつつ当事者の権利を救済する手法として用いられることがあります。
試験では「適用違憲は法令を無効にする」という誤りの肢が出されやすい点に注意してください。適用違憲は、あくまで当該適用の限度で違憲とするものです。
公金支出や便益提供が違憲とされる場合
政教分離をめぐる事件のように、法令ではなく国や地方公共団体の具体的な行為(公金の支出、市有地の無償提供、使用料の免除など)が憲法に違反すると判断されることもあります。この類型は、法令違憲の一覧とは分けて整理しておくと混乱しません。
この3つの型を区別したうえで、次の一覧表を見ていきましょう。
最高裁が法令違憲とした判例一覧
ここからが本記事の中心です。法律の規定そのものが違憲とされた主な判例を、事件名・判決年月日・違憲とされた規定・根拠となる憲法上の権利の順に並べました。個別の解説記事があるものはリンクを付けていますので、気になった判例からそのまま深掘りできます。
法令違憲とされた主な判例
この表は、上から下へ年代順に並んでいます。昭和期は3件、平成期は6件、令和期は1件という分布で、平成期に集中していることが読み取れます。試験対策としては、まず年代の前後関係と事件名の対応を押さえ、そのうえで「違憲とされた規定」と「根拠条文」を紐づけていくのが効率的です。
一覧表の使い方|3つの覚え方
一覧表をただ眺めても記憶に残りません。次の3つの角度から繰り返し確認してください。
第一に、事件名から結論を引き出せるかどうかです。「森林法共有林事件は?」と問われて「29条2項違反で違憲」と即答できる状態を目指します。多肢選択式では事件名が伏せられ、判旨の一部だけが提示されることもあるため、逆方向(判旨から事件名を当てる)の練習も有効です。
第二に、根拠条文から事件を引き出せるかどうかです。14条1項違反で違憲とされたのは、尊属殺重罰規定・国籍法・非嫡出子相続分・再婚禁止期間の4件です。この「14条グループ」をひとかたまりで覚えておくと、条文からの逆引きが速くなります。
第三に、違憲とされた規定の条文番号です。刑法200条、薬事法6条2項・4項、森林法186条、郵便法68条・73条、国籍法3条1項、民法900条4号ただし書、民法733条1項という具体的な条文番号は、択一式の肢で入れ替えられる定番の箇所です。
最初の法令違憲判決は尊属殺重罰規定事件
一覧表の中で特に位置づけが重要なのが、尊属殺重罰規定事件(最大判昭和48年4月4日)です。この判決は、日本国憲法下で初めて法律の規定を違憲とした最高裁判決として、違憲審査制の歴史上きわめて重要な意味を持ちます。
刑法200条は、尊属殺の法定刑を死刑又は無期懲役刑のみに限つている点においてその立法目的達成のため必要な限度を遙かに超え、普通殺に関する刑法199条の法定刑に比し著しく不合理な差別的取扱いをするものと認められ、この点において、憲法14条1項に違反して無効である。
― 最大判昭和48年4月4日(尊属殺重罰規定違憲判決)
注意したいのは、最高裁が尊属に対する尊重報恩の道徳を法律で保護すること自体は直ちに14条1項に反しないとした点です。立法目的そのものは否定されておらず、法定刑を死刑又は無期懲役のみとした「刑の加重の程度」が、立法目的達成の手段として甚だしく均衡を失しているとして違憲とされました。「目的は合憲だが手段が違憲」という判断構造は、試験で最も問われる論点です。
尊属殺重罰規定事件(最大判昭和48年4月4日)で違憲とされたのは刑法200条であり、根拠とされたのは憲法14条1項である。
法令以外が違憲とされた判例|政教分離と適正手続
法令違憲の一覧とは別に、国や地方公共団体の具体的な行為が違憲とされた判例群があります。これらは「法律の規定が違憲」ではないため、法令違憲の一覧と混ぜて覚えると誤りの肢に引っかかります。
主な判例
この表が示すのは、政教分離の分野に違憲判断が集中しているという事実です。政教分離は制度的保障と解されており、国や地方公共団体の行為が「宗教的活動」にあたるかが具体的に審査されるため、法令ではなく行為レベルで違憲とされやすい構造になっています。
愛媛玉串料訴訟|目的効果基準を適用して違憲とした例
政教分離をめぐる違憲判断の代表例が、愛媛玉串料訴訟(最大判平成9年4月2日)です。最高裁大法廷は、愛媛県の公金支出を違憲と判断しました。
玉串料及び供物料を靖国神社又は護国神社に前記のとおり奉納したことは、その目的が宗教的意義を持つことを免れず、その効果が特定の宗教に対する援助、助長、促進になると認めるべきであり、これによってもたらされる県と靖国神社等とのかかわり合いが我が国の社会的・文化的諸条件に照らし相当とされる限度を超えるものであって、憲法20条3項の禁止する宗教的活動に当たると解するのが相当である。
― 最大判平成9年4月2日(愛媛玉串料訴訟)
同じ目的効果基準を用いた津地鎮祭事件(最大判昭和52年7月13日)では合憲とされたのに対し、本件では違憲と判断されました。この結論の違いは毎年のように狙われる定番論点ですので、津地鎮祭事件の記事とセットで確認しておくと安全です。
第三者所有物没収事件|31条と29条の両方に違反
適正手続の分野で違憲とされたのが、第三者所有物没収事件(最大判昭和37年11月28日)です。関税法違反事件で、被告人以外の第三者が所有する貨物まで、何の告知も弁解の機会もないまま没収された事案です。
第三者の所有物を没収する場合において、その没収に関して当該所有者に対し、何ら告知、弁解、防禦の機会を与えることなく、その所有権を奪うことは、適正な法律手続によらないで、財産権を侵害する制裁を科するに外ならない。
― 最大判昭和37年11月28日(第三者所有物没収事件)
試験では「31条と29条の両方に違反する」という形で出題されます。31条だけ、あるいは29条だけを挙げる肢は誤りですので、条文の組み合わせまで正確に記憶しておいてください。
違憲判決を憲法上の権利で分類する
事件名を年代順に並べただけでは、記憶が定着しにくいものです。どの人権・どの条文が問題になったかで分類し直すと、他の人権分野の学習ともつながり、記憶が結びつきます。
権利ごとの分類表
この分類で最も件数が多いのが平等原則の系統です。平等原則の違憲判決は法の下の平等(14条)の記事で、尊属殺重罰規定・非嫡出子相続分・再婚禁止期間・国籍法をまとめて確認できます。
経済的自由の二本柱
経済的自由の系統では、職業の自由が問題となった薬局距離制限事件と、財産権が問題となった森林法共有林事件が二本柱です。両者は「経済的自由の規制が違憲とされた数少ない例」としてセットで問われます。
森林法共有林事件では、共有している森林を分けてほしいという分割請求を封じていた旧森林法186条が問題となりました。
森林の共有者は、民法(明治二十九年法律第八十九号)第二百五十六条第一項の規定にかかわらず、その共有に係る森林の分割を請求することができない。ただし、各共有者の持分の価額に従いその過半数をもつて分割を請求することを妨げない。
― 旧森林法 第186条
最高裁は、この共有林分割制限を定めた旧森林法186条を憲法29条2項に違反し無効と判断しました。試験で最も落としやすいのが「違反したのは29条の何項か」という点です。1項でも3項でもなく29条2項である、と正確に覚えておいてください。判決後、森林法186条は削除され、共有林も民法256条1項により分割請求できるようになっています。
参政権の系統|選挙権と国民審査権
参政権の系統では、在外邦人選挙権事件(最大判平成17年9月14日)と在外邦人国民審査権事件(最大判令和4年5月25日)が対になります。前者は選挙権、後者は最高裁判所裁判官の国民審査に投票できる地位が問題となりました。いずれも、海外に居住する日本国民が投票の機会を奪われていた点で共通しています。
在外邦人選挙権事件では、1998年の公職選挙法改正で在外選挙制度が創設されたものの、在外邦人が投票できるのは比例代表選挙に限られていました。最高裁は、選挙区選挙での投票を認めない公選法の規定を違憲と判断し、2006年の公選法改正により選挙区選挙でも在外投票が可能になりました。この「制度はあるが不十分だった」という構図は、立法不作為の論点とも結びつくため、在外日本人選挙権訴訟の記事で判旨の詳細を確認しておくと得点源になります。
違憲審査基準の一覧|どの基準でどう判断されたか
違憲判決を理解するうえで欠かせないのが、裁判所がどの審査基準を用いたのかという視点です。同じ「経済的自由の規制」でも、規制の目的によって審査の密度が変わります。
主な違憲審査基準
この表で押さえるべきは、審査基準と結論の対応です。厳格な合理性の基準が適用された薬局距離制限事件は違憲、明白性の原則が適用された小売市場距離制限事件は合憲という対応関係は、多肢選択式で繰り返し問われます。
規制目的二分論と違憲判断
薬局距離制限事件では、薬局の配置規制が国民の生命・健康に対する危険の防止を目的とする消極目的規制(警察規制)と位置づけられ、厳格な合理性の基準が適用されました。この基準のもとでは、同じ目的を達成するためのより緩やかな手段が存在する場合、より制限的な手段は必要性を欠き違憲となり得ます。
個人の経済活動に対する法的規制措置については、(中略)立法府がその裁量権を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることの明白である場合に限つて、これを違憲として、その効力を否定することができるものと解するのが相当である。
― 最大判昭和47年11月22日(小売市場距離制限事件)
同じ経済的自由の規制でも、目的が異なれば審査の密度が変わり、結論も分かれます。この構造は職業選択の自由と規制の記事でも扱っていますので、規制目的二分論を体系的に確認したい場合は参照してください。
政教分離の審査枠組みの変化
政教分離の分野では、審査枠組み自体が変化している点に注意が必要です。目的効果基準は津地鎮祭事件で定立され、愛媛玉串料訴訟でも適用されました。しかし、空知太神社事件(最大判平成22年1月20日)や孔子廟事件(最大判令和3年2月24日)では、目的効果基準を明示的に適用するのではなく、より総合的な判断枠組みが用いられました。
空知太神社事件では、市有地を神社敷地として無償で使用させている状態が、一般人の目から見て市が特定の宗教に対して特別の便益を提供し援助していると評価されてもやむを得ないとして、違憲と判断されました。孔子廟事件でも、施設の性格・無償提供に至った経緯・態様・一般人の評価等を総合考慮する枠組みが用いられ、使用料の全額免除が20条3項に違反すると判断されています。
違憲判決の効力|個別的効力説と一般的効力説
違憲判決が出た後、その法令はどうなるのでしょうか。この論点は、一覧表の暗記とは別に、理論問題として単独で問われます。
二つの学説
通説は個別的効力説です。付随的違憲審査制のもとでは、違憲審査は具体的事件の解決のためになされるものであるから、その判決の効力も当該事件に限られるというのがその根拠です。
法的効力と事実上の効力
個別的効力説に立つと、最高裁が法令違憲の判決を下しても、その法律は形式的にはなお存在し続けます。しかし実際には、次のような形で違憲判決は強い影響力を持ちます。
【違憲判決が出た後の流れ】
最高裁が法令違憲の判決を出す
│
├─ 法的効力 …… 当該事件限り(個別的効力説)
│ → 法律の条文は形式的には残る
│
├─ 国会の対応 …… 判決の趣旨を尊重して改正・廃止
│
├─ 行政の対応 …… 違憲とされた規定を適用しなくなる
│
└─ 下級審の対応 …… 最高裁の判断を尊重する
→ 事実上、一般的効力に近い状態になる
この図が示すのは、法的な効力と実際の運用が食い違うという日本の違憲審査制の特徴です。法的には個別的効力にとどまりつつ、運用上は一般的効力に近い実効性を持ちます。試験では「違憲判決により法律は当然に廃止される」という肢が誤りとして出されますので、この区別を意識してください。
違憲判決後に法令がどうなったか
一覧表に挙げた判例のうち、判決後の法令の扱いが記事で確認できるものを整理します。
尊属殺重罰規定の刑法200条が削除されたのは違憲判決から約20年後の平成7年でしたが、実務上は違憲判決後ただちに適用されなくなりました。この「判決から改正までのタイムラグ」は、個別的効力説の帰結を実感的に理解する好例です。
通説(個別的効力説)によれば、最高裁判所が法律を違憲と判断すると、その法律は判決によって当然に廃止される。
判例の射程と「違憲状態」との違い
一覧表を丸暗記すると、かえって誤答を招く場面があります。それは「どこまでが違憲とされたのか」という判例の射程を取り違えたときです。
射程を誤りやすい判例
再婚禁止期間事件(最大判平成27年12月16日)が典型です。最高裁は、規定「全体」を違憲としたのではなく、「100日を超える部分」のみを違憲としました。100日以内の再婚禁止期間については、父性の推定の重複を回避するという立法目的との合理的関連性があるとして合憲としています。
なお、再婚禁止期間違憲判決と夫婦同氏制合憲判決は、いずれも同じ平成27年12月16日に言い渡されています。再婚禁止期間は一部違憲、夫婦同氏制は合憲という結論の違いを、日付とセットで押さえておいてください。
政教分離の分野でも射程の理解が問われます。空知太神社事件と同日に判断された富平神社事件(最大判平成22年1月20日)では、市有地となっていた神社敷地を氏子集団に無償譲渡したことが争われ、最高裁は合憲と判断しています。同じ「市有地と神社」の問題でも、無償提供を継続する空知太と、所有関係を解消する富平とで結論が分かれた点が重要です。
違憲と違憲状態は別物
議員定数不均衡の分野では、「違憲状態」と「違憲」の区別が必須です。投票価値の不均衡が合理的な範囲を超えていても(違憲状態)、国会が合理的期間内に是正措置をとれば「違憲」とまでは判断されません。
この表から読み取れるのは、「格差が大きい=違憲」と単純に対応しているわけではないという点です。判断は、①投票価値の不均衡が違憲状態に至っているか、②合理的期間内に是正がなされなかったか、という二段階で行われます。
事情判決の法理
仮に選挙が「違憲」と判断された場合でも、最高裁は選挙そのものを直ちに無効とはしない傾向にあります。選挙を無効とすると、その選挙で選ばれた議員が関与した立法等が後から覆るなど、かえって公の利益に著しい混乱が生じるためです。
各選挙人の投票の価値、すなわち各投票が選挙の結果に及ぼす影響力においても平等であることを要求せざるをえないものというべきである。
― 最大判昭和51年4月14日(議員定数不均衡訴訟)
昭和51年判決は、約4.99倍の格差を違憲としつつ、選挙自体は無効とせず有効としました。行政事件訴訟法31条の事情判決の法理を援用したもので、「違憲だが選挙は無効としない」という処理の枠組みは、その後の一票の格差訴訟の基本形になっています。
再婚禁止期間事件(最大判平成27年12月16日)において、最高裁は民法733条1項の再婚禁止期間の規定全体を違憲と判断した。
試験でどう問われるか|出題パターンと対策
違憲判決は数が限られるため、出題のパターンもある程度決まっています。どの角度から問われるのかを知っておくと、覚えるべき情報の優先順位が決まります。
択一式での問われ方
択一式では、次の3つの入れ替えが定番です。第一に、事件名と結論の入れ替えです。合憲とされた判例を違憲と言い換える、あるいはその逆のパターンで、津地鎮祭事件(合憲)と愛媛玉串料訴訟(違憲)、小売市場距離制限事件(合憲)と薬局距離制限事件(違憲)が代表的な組み合わせです。
第二に、根拠条文の入れ替えです。森林法共有林事件を「29条1項違反」とする、第三者所有物没収事件を「31条のみ違反」とするといった形で、条文の項や組み合わせがずらされます。
第三に、判断構造の入れ替えです。尊属殺重罰規定事件について「立法目的自体が違憲とされた」とする肢は、目的は合憲・手段が違憲という判断構造を取り違えたもので、誤りです。
多肢選択式での問われ方
多肢選択式では、判旨の一節が空欄にされ、そこに入る語句を選ばせる形式が中心です。違憲判決は判旨に特徴的なキーフレーズが多いため、狙われやすい素材です。
たとえば、尊属殺重罰規定事件の「立法目的達成のため必要な限度を遙かに超え」、愛媛玉串料訴訟の「特定の宗教に対する援助、助長、促進」、第三者所有物没収事件の「告知、弁解、防禦の機会」といった表現は、そのまま空欄になり得ます。判旨は要約で理解しつつ、キーフレーズは原文の言い回しで記憶しておくのが有効です。多肢選択式の解き方そのものは多肢選択式の攻略法で詳しく整理しています。
学習の優先順位
違憲判決は数が限られるため、まずは法令違憲の一覧を優先的に押さえるのが効率的です。そのうえで、政教分離の系統と適正手続の系統を追加していくと、無理なく範囲を広げられます。
判例の学習方法に迷ったときは、事案・争点・判旨・意義の4段階で整理する方法が有効です。事案を具体的な場面としてイメージできると、判旨の論理が頭に入りやすくなります。憲法全体の学習の進め方は憲法の全体像と学習戦略を、判例の整理方法は判例学習の進め方の記事を参考にしてください。
財産権と国家賠償請求権の横断
違憲判決は、憲法の科目内で完結しない論点も含みます。森林法共有林事件は財産権(29条)の論点として財産権の保障の記事と、郵便法免責規定事件は国家賠償の論点として国家賠償法1条の記事とつながります。憲法と行政法・民法を横断して整理しておくと、記述式や多肢選択式でも対応しやすくなります。
政教分離をめぐり、津地鎮祭事件(最大判昭和52年7月13日)では公金支出が合憲とされたのに対し、愛媛玉串料訴訟(最大判平成9年4月2日)では違憲と判断された。
まとめ
最高裁が法令違憲とした判例は限られています。だからこそ、一覧として押さえておけば確実な得点源になります。本記事の要点を整理します。
- 日本の違憲審査制は付随的違憲審査制であり、具体的な事件の解決に必要な限りで法令の合憲性が審査されます。抽象的な審査は認められていません(警察予備隊違憲訴訟)。
- 違憲判断には、法令そのものを違憲とする法令違憲と、当該事件への適用を違憲とする適用違憲があります。政教分離の分野では、公金支出や便益提供といった行為が違憲とされる例が目立ちます。
- 法令違憲の主な判例は、尊属殺重罰規定事件、薬局距離制限事件、衆議院議員定数不均衡事件、森林法共有林事件、郵便法免責規定事件、在外邦人選挙権事件、国籍法婚外子差別事件、非嫡出子相続分差別事件、再婚禁止期間事件、在外邦人国民審査権事件です。
- 根拠条文で分類すると、14条1項の平等原則が最も多く、次いで経済的自由(22条1項・29条2項)、参政権(15条等)と続きます。
- 違憲判決の効力は、通説である個別的効力説によれば当該事件限りです。ただし、国会が改正し、行政も適用を控えるため、事実上は一般的効力に近い状態になります。
- 判例の射程を正確に切り取ることが重要です。再婚禁止期間事件では100日を超える部分のみが違憲とされました。
- 議員定数不均衡では「違憲状態」と「違憲」が区別され、違憲とされた場合も事情判決の法理により選挙は無効とされない扱いが定着しています。
一覧表は一度で覚えきれるものではありません。事件名から結論へ、条文から事件へ、と方向を変えながら繰り返し確認することで、試験本番でも引き出せる記憶になります。
よくある質問
違憲判決の一覧を学習する際に、受験生からよく寄せられる疑問をまとめました。
最高裁が法令違憲とした判決はどれくらいの数がありますか
法令の規定そのものを違憲とした最高裁判決は、それほど多くありません。本記事では、当サイトの判例解説記事で判決年月日を確認できたものを一覧にしています。数え方は、対象を法令違憲に限るか、公金支出などの行為が違憲とされた例も含めるかによって変わります。試験対策としては、正確な総数を覚えるよりも、代表的な判例の事件名・年月日・違憲とされた規定・根拠条文を対応させて覚えるほうが実用的です。
日本国憲法下で最初に法律の規定を違憲とした判決はどれですか
尊属殺重罰規定事件(最大判昭和48年4月4日)です。刑法200条の尊属殺の法定刑が死刑又は無期懲役刑のみに限られている点が、普通殺に関する刑法199条の法定刑に比べて著しく不合理な差別的取扱いにあたるとして、憲法14条1項に違反し無効とされました。違憲審査制の歴史上きわめて重要な判決として位置づけられています。
違憲判決が出ると、その法律はすぐに廃止されるのですか
通説である個別的効力説によれば、違憲判決には法律を廃止する効力はありません。法律の改廃は国会の立法作用によります。もっとも、実際には国会が判決の趣旨を尊重して改正・廃止するのが通例で、行政機関も違憲とされた規定を適用しなくなるため、事実上は一般的効力に近い効果を生じます。刑法200条のように、違憲判決から正式な削除まで年月を要した例もあります。
「違憲」と「違憲状態」はどう違うのですか
議員定数不均衡の判例で用いられる区別です。投票価値の不均衡が合理的な範囲を超えている状態を「違憲状態」といい、その状態にあっても国会が合理的期間内に是正措置をとれば「違憲」とまでは判断されません。違憲状態にあり、かつ合理的期間内に是正がなされなかった場合に「違憲」と判断される、という二段階の枠組みで理解してください。
一覧表はどの順番で覚えるとよいですか
まずは年代順に事件名を並べて全体像をつかみ、次に根拠条文ごとに分類し直すのがおすすめです。14条1項の平等原則の系統をひとかたまりで覚え、次に経済的自由の二本柱(薬局距離制限事件と森林法共有林事件)、参政権の系統、と順に広げていくと定着しやすくなります。ある程度覚えたら、条文番号から事件名を引き出す逆引きの練習を加えてください。