法の下の平等(14条)をわかりやすく|平等原則と違憲判決
憲法14条の法の下の平等をわかりやすく解説。相対的平等と絶対的平等、形式的平等と実質的平等の違い、後段列挙事由は例示列挙か、尊属殺重罰規定・非嫡出子相続分・再婚禁止期間の違憲判決を整理します。
結論|14条の平等は「合理的な区別」を許す相対的平等
憲法14条1項が保障する「法の下の平等」とは、一切の別扱いを禁じる絶対的平等ではなく、等しいものは等しく・異なるものは異なって扱うことを求める相対的平等です。したがって、事柄の性質に即応した合理的な根拠に基づく区別は14条に違反しません。累進課税も、未成年者の行為能力の制限も、合理的な区別として許容されます。
逆にいえば、平等原則違反が争われる場面の核心は「区別があるか」ではなく、その区別に合理的な根拠があるかの一点にあります。最高裁が14条1項違反として法令を違憲とした尊属殺重罰規定違憲判決(最大判昭和48年4月4日)、非嫡出子相続分違憲決定(最大決平成25年9月4日)、再婚禁止期間違憲判決(最大判平成27年12月16日)は、いずれもこの「合理的な根拠」が失われている、あるいは手段が過剰であると判断されたものです。
行政書士試験では、この相対的平等という出発点と、各違憲判決が何を理由に違憲としたのかの2点が繰り返し問われます。以下、条文の確認から重要判例の判断構造まで順に整理します。
30秒で押さえる要点
はじめに|平等権は人権保障の基盤
憲法14条が定める「法の下の平等」は、基本的人権の保障を実効あらしめるための根本原則です。いかに崇高な人権規定があっても、それが特定の者にのみ保障され、他の者には保障されないのであれば、人権保障の意味は失われます。
歴史的にみても、近代立憲主義は、生まれや身分によって人を差別してきた封建的・身分制的秩序を打破するところから出発しました。日本国憲法も、前文・13条(個人の尊重)とあいまって、すべての個人を等しく尊重するという理念を14条で具体化しています。平等権は、自由権を支える土台であると同時に、それ自体が独立した人権としての性格をもちます。
行政書士試験では、14条に関する判例が毎年のように出題されています。特に、尊属殺重罰規定違憲判決、非嫡出子相続分違憲決定、再婚禁止期間違憲判決などの重要判例は繰り返し問われる最頻出テーマです。本記事では、14条の基本的な考え方から重要判例まで、体系的に整理します。判例については、単に「合憲・違憲」の結論を暗記するだけでなく、事案→判旨→意義の流れと「どの論理で結論に至ったか」を理解しておくことが、択一式の正誤判断で差がつくポイントです。
憲法14条の規定
条文の確認
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
― 日本国憲法 第14条第1項
14条は1項で平等原則の一般規定を定めたうえで、2項・3項で具体的な制度の否定を規定しています。
華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
― 日本国憲法 第14条第2項
栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
― 日本国憲法 第14条第3項
2項は、明治憲法下で存在した華族(公・侯・伯・子・男の爵位を有する者)その他の貴族の制度を廃止するものです。3項は、栄典(勲章など)の授与に特権を伴わせないこと、および栄典の効力が一代限り(世襲を認めない)であることを定めています。
3項の細かい出題ポイントとして、条文が禁じているのは「特権を伴わせること」であって、栄典の授与そのものではありません。また「一代限り」とされるのは栄典の効力であり、栄典授与の制度自体を否定するものでもありません。「憲法は栄典の授与を禁止している」といった選択肢は誤りです。
14条以外の平等規定
平等原則は14条1項だけでなく、憲法の各所に個別的な平等の保障として現れています。これらは14条の一般原則を特定の領域で具体化したものと理解されます。
とりわけ44条ただし書は、差別禁止事由として「人種、信条、性別、社会的身分、門地」に加えて「教育、財産又は収入」を挙げており、14条1項後段より項目が多い点が出題されます。
両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。
― 日本国憲法 第44条
たとえば再婚禁止期間や夫婦同氏制をめぐる訴訟では、14条1項だけでなく24条(婚姻・家族に関する平等)も併せて問題になります。「平等は14条だけ」と思い込まず、関連条文と結びつけて理解しておきましょう。
「法の下の」平等の意味
「法の下の平等」とは何を意味するのでしょうか。この点については、2つの立場があります。
通説・判例は法内容の平等説を採っています。これによれば、法律の内容自体が不合理な差別を含んでいる場合は、その法律自体が14条に違反し違憲となります。尊属殺重罰規定違憲判決は、まさに法律の内容の平等に反するとして違憲と判断した事例です。
法適用の平等説には、「悪法も平等に適用すれば合憲」という不合理な帰結を導く弱点があります。たとえば「特定の人種にのみ重い税を課す法律」も、その内容どおりに公平に適用すれば法適用の平等説では問題にならないことになってしまいます。これでは平等保障が空洞化するため、法の内容そのものの平等を要求する法内容の平等説が支持されているのです。
なお、法内容の平等説を採ることは、14条違反を理由に法令そのものを違憲とする道を開くという意味を持ちます。実際、最高裁が14条1項違反で法令違憲とした判例が複数あるのは、法内容の平等説に立っているからにほかなりません。学説の対立が判例の結論に直結している好例として押さえておきましょう。
平等の4つの概念|相対的・絶対的/形式的・実質的の違い
平等をめぐる用語は「絶対的平等と相対的平等」「形式的平等と実質的平等」の2組が登場し、受験生が最も混同しやすい箇所です。この2組はまったく別の対立軸なので、まず切り分けて理解します。
「相対的平等」の対義語は「絶対的平等」であり、「実質的平等」ではありません。14条1項が保障するのは「相対的平等」であり、その中身は主として「形式的平等」、という2段構えで覚えると混乱しません。
絶対的平等と相対的平等
- 絶対的平等: 一切の区別を認めず、すべての人を完全に同じように扱うこと
- 相対的平等: 等しいものは等しく、異なるものは異なって扱うこと。合理的な理由に基づく区別(合理的区別)は許容される
通説・判例は、14条は相対的平等を保障するものであり、合理的な根拠に基づく区別は14条に違反しないと解しています。
憲法14条1項は、国民に対し法の下の平等を保障した規定であつて、…事柄の性質に即応した合理的な根拠に基づくものでない限り、差別的な取扱いをすることを禁止する趣旨と解すべきである。
― 最大判昭和39年5月27日(待命処分事件)
したがって、平等原則違反が争われる場合の核心は、当該区別に合理的な根拠があるかどうかという点にあります。「区別が一切許されない(絶対的平等)」という理解は誤りであり、累進課税のように所得の多寡に応じて税率を変える扱いも、合理的な区別として14条に反しません。
仮に絶対的平等を貫くと、次のような当然に許されるはずの制度がすべて違憲になってしまいます。ここが絶対的平等説の決定的な弱点です。
「区別」と「差別」の使い分け
平等論では、「区別」と「差別」を意識的に使い分けます。合理的な根拠のある別扱い=区別(許容される)、合理的な根拠のない別扱い=差別(禁止される)、というのが基本の整理です。試験では「およそ別異の取扱いはすべて14条違反となる」といった極端な選択肢が誤りとして頻出します。
条文の文言も、「区別されない」ではなく「差別されない」となっている点に注目してください。憲法自身が、禁じられるのは合理性のない別扱い=差別であることを言葉の上で示しているとも読めます。
形式的平等と実質的平等
こちらは「平等が何を目指すか」というゴールの対立です。
14条1項は主として形式的平等を保障するものですが、社会権の規定(25条以下)とあいまって、実質的平等の実現も憲法の要請するところです。
形式的平等を貫くと、出発点の違い(経済力・教育機会など)がそのまま結果の格差につながることがあります。そこで国家が積極的に介入して現実の格差を是正するのが実質的平等の発想であり、生存権(25条)や教育を受ける権利(26条)の保障、福祉政策などがこれにあたります。もっとも、実質的平等を過度に追求すると形式的平等(機会の平等)と緊張関係に立つこともあり、両者のバランスが問題となります。
たとえば、社会的に不利な立場に置かれてきた集団を優遇する措置(積極的差別是正措置)は、実質的平等の実現を目指すものですが、優遇されない側からみれば形式的平等に反する別扱いです。ここでも結局は「その区別に合理的な根拠があるか」という相対的平等の枠組みで判断されることになります。
試験対策ポイント: 「14条1項は実質的平等(結果の平等)まで保障している」という選択肢は誤りと扱われるのが通例です。14条1項が直接保障するのは形式的平等であり、実質的平等は社会権規定とあいまって実現される、という整理を押さえてください。
14条1項後段列挙事由の法的意味
例示列挙か限定列挙か
14条1項は「人種、信条、性別、社会的身分又は門地」の5つを列挙しています(後段列挙事由と呼びます)。この列挙の法的な意味については、2つの立場があります。
通説は例示列挙説を採っています。したがって、列挙事由以外の事由(たとえば年齢、職業、学歴、居住地等)による区別であっても、合理的な根拠がなければ14条に違反します。判例も、列挙事由に限定する立場はとっていません。実際、尊属殺重罰規定違憲判決が問題にした「尊属を殺したかどうか」も、投票価値の平等が問題となる議員定数不均衡訴訟における「居住する選挙区」も、いずれも5事由には含まれていませんが、14条1項の問題として審査されています。
試験対策ポイント: 「列挙事由による差別のみが禁止される」という選択肢は誤りです。通説は例示列挙説であり、列挙されていない事由による差別も14条違反となりえます。
列挙事由に当たると審査は厳しくなるのか
例示列挙説を前提としても、なお「わざわざ5つを書いた意味は何か」という問題が残ります。ここが学説と判例の距離が出るところです。
学説上は特別意味説が有力に主張されています。人種や門地のように自分では選択も修正もできない属性を理由とする別扱いは、それ自体が不合理である疑いが強いからです。
もっとも、最高裁は、列挙事由に当たるか否かで審査基準を機械的に切り替えるという枠組みを明示していません。判例は事案ごとに「事柄の性質に即応した合理的な根拠」があるかを総合的に判断する姿勢をとっています。ただし実質的にみると、非嫡出子相続分違憲決定が「子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄」を強調したように、本人の責めに帰することのできない属性による不利益には、判例も厳しい目を向けていると評価できます。
試験対策としては、①通説は例示列挙説、②列挙事由には厳格審査を求める有力説がある、③判例は基準を明示的に切り替えてはいない、という3点を押さえておけば十分です。
列挙事由の内容(用語の意味)
各列挙事由の意味も整理しておきましょう。択一式で語義を問われることがあります。
「社会的身分」の意味については、生まれによって決定される社会的地位に限定する説(狭義説)と、後天的なものも含めて広く解する説(広義説)などがあり、必ずしも一義的ではありません。狭義説を採ると「非嫡出子であること」は社会的身分に当たりますが、「尊属を殺した者であること」は当たらないことになります。もっとも、例示列挙説を前提とすれば、列挙事由に当たらなくても14条1項の審査は及ぶため、実務上この分類の当否が結論を左右する場面は多くありません。試験では深入りせず、列挙事由が「例示」である点を確実に押さえれば十分です。
憲法14条1項が「人種、信条、性別、社会的身分又は門地」を列挙しているのは限定列挙であり、これら以外の事由による差別は14条では問題にならない。
違憲審査の枠組み|目的と手段の2段階
平等違反の審査では、①区別の目的が正当か、②目的と区別(手段)との間に合理的な関連性があるかを検討するのが基本的な枠組みです。学説上は、問題となる区別の性質に応じて審査の厳格さを変える「二重の基準」的な発想(精神的自由や民主政の過程に関わる区別はより厳格に審査する)も主張されますが、最高裁は事案ごとに「合理的な根拠の有無」を総合的に判断する傾向にあります。
行政書士試験のレベルでは、各判例が「目的」と「手段」のどちらを問題にして結論を導いたかを押さえておけば足ります。実際、14条1項で違憲とされた判例の多くは、目的自体は正当と認めたうえで、手段が過剰・不合理であるとして違憲とする構造をとっています。
重要判例(1)|尊属殺重罰規定違憲判決
最大判昭和48年4月4日
事案: 実父から長年にわたり性的虐待を受けてきた女性が実父を殺害し、刑法200条(尊属殺人罪)で起訴された事件です。当時の刑法200条は、配偶者の直系尊属を含む尊属を殺した者の法定刑を死刑又は無期懲役のみとしていました。通常の殺人罪(刑法199条)であれば有期懲役も法定刑に含まれ、法律上の減軽を重ねれば執行猶予を付す余地がありましたが、刑法200条ではいかに酌量すべき事情があっても執行猶予は不可能でした。この量刑上の不均衡が、14条1項に反する差別的取扱いに当たるかが争われました。
判旨: 最高裁は、刑法200条を違憲と判断しました。
- 尊属に対する尊重報恩の道徳を法律で保護すること自体は、直ちに14条1項に反するものではない
- したがって、尊属殺の刑を加重すること自体は、合理的な根拠を欠くものとはいえない
- しかし、刑法200条は法定刑を死刑又は無期懲役のみとしており、刑の加重の程度が極端であって、立法目的達成のための手段として甚だしく均衡を失している
- よって、14条1項に違反し違憲である
刑法200条は、尊属殺の法定刑を死刑又は無期懲役刑のみに限つている点においてその立法目的達成のため必要な限度を遙かに超え、普通殺に関する刑法199条の法定刑に比し著しく不合理な差別的取扱いをするものと認められ、この点において、憲法14条1項に違反して無効である。
― 最大判昭和48年4月4日(尊属殺重罰規定違憲判決)
意義・ポイント:
- 目的は合憲だが手段が違憲という判断構造に注意(試験で最頻出の論点)
- 尊属を尊重するという立法目的自体は否定されていない
- 刑の加重の「程度」が過剰であるとして違憲とされた
- 日本国憲法下で初めて法律の規定を違憲とした最高裁判決として、違憲審査制の歴史上きわめて重要
意見が分かれた点
本判決は、結論として違憲という点では大多数の裁判官が一致しましたが、その理由づけは分かれています。大法廷を構成した15名の裁判官のうち、14名が刑法200条を違憲としましたが、そのうち法廷意見(多数意見)に立ったのは8名でした。残る6名は、そもそも尊属を特別に保護して刑を加重する規定自体が平等原則に反するという、より踏み込んだ理由で違憲としています。1名は合憲とする反対意見を述べました。
この対立は、平等審査における「目的審査」と「手段審査」の関係をよく示しています。法廷意見は目的の合理性を認めて手段だけを問題にしたのに対し、意見に立った裁判官は目的そのものを否定しました。法廷意見が採ったのは前者であるという点を、確実に区別しておいてください。
その後の経緯
この判決後、刑法200条はしばらく死文化したまま残されていましたが、平成7年(1995年)の刑法改正で正式に削除されました。あわせて尊属傷害致死罪(旧205条2項)などの尊属加重規定も削除され、現在は普通殺人罪・傷害致死罪等に一本化されています。
判決からおよそ22年間、違憲とされた条文が形式上は残り続けたという事実は、日本の違憲審査制が個別的効力説(違憲判決の効力はその事件限りで、条文が自動的に失効するわけではない)を前提としていることの現れとして理解できます。この点は違憲審査制の論点と直結します。
尊属殺重罰規定違憲判決(最大判昭和48年4月4日)において、最高裁は尊属に対する尊重報恩という立法目的自体が憲法14条1項に反すると判断した。
重要判例(2)|非嫡出子相続分違憲決定
最大決平成25年9月4日
事案: 民法900条4号ただし書前段は、非嫡出子(法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子)の法定相続分を嫡出子の2分の1と定めていました。遺産分割審判において、この規定が14条1項に違反するかが争われました。遺産分割は家事審判の手続によるため、最高裁の判断は判決ではなく「決定」の形式で示されています。
判旨: 最高裁は、本規定を違憲と判断しました。
父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきているものということができる。
― 最大決平成25年9月4日(非嫡出子相続分違憲決定)
判断のポイント:
- 本規定が設けられた当時は合理性があったが、婚姻や家族形態の多様化、国民の意識の変化、諸外国の立法の動向等を総合的に考慮すると、遅くとも平成13年7月当時において、合理的な根拠を失っていた
- 法律婚の尊重という立法目的自体は否定していない。否定されたのは、その目的のために子に不利益を及ぼすという手段の合理性である
- 立法府の裁量の範囲を超えたものと判断した
- 本件は「決定」であり判決ではない点も注意が必要
違憲判断の時期と効力の限定
最高裁は「遅くとも平成13年7月当時において」違憲状態にあったとしました。これは、本件の相続開始時(被相続人の死亡時)が平成13年7月であったことを踏まえたものです。「平成25年9月4日から違憲になった」のではない点に注意してください。
注意すべきは、最高裁が、本決定の違憲判断がすでに確定的なものとなった他の相続の法律関係に影響を及ぼすものではないとしている点です。つまり、本決定の効力を無制限に遡及させて過去のすべての遺産分割をやり直させるわけではなく、法的安定性に配慮した限定を付しています。この「効力の限定」も判例の特徴として押さえておくとよいでしょう。
試験対策ポイント: この違憲決定を受けて、民法900条4号ただし書の当該部分は平成25年12月に削除されました。これにより、現在は嫡出子と非嫡出子の法定相続分は同等です。相続分の計算問題では、非嫡出子も嫡出子と同じ相続分で計算します(法定相続分の計算)。
かつての合憲判例との比較
実は、同じ規定について最高裁はかつて合憲と判断していました(最大決平成7年7月5日)。平成7年決定では、法律婚主義を採用する以上、法定相続分は婚姻関係にある配偶者とその子を優遇して定めつつ、非嫡出子にも一定の相続分を認めて保護を図ったものであり、立法理由に合理的根拠があるとして合憲とされていたのです。ただし平成7年決定でも、複数の裁判官が違憲とする反対意見を述べており、当時から評価は割れていました。
それが平成25年決定で違憲へと結論が変わった背景には、約18年間の家族観・社会状況の変化があります。「同じ規定でも、社会の変化により合理性が失われ、合憲から違憲へと評価が変わりうる」という点は、平等審査における時代の変化の重要性を示すものとして頻出します。
重要判例(3)|再婚禁止期間違憲判決
最大判平成27年12月16日
事案: 民法733条1項は、女性にのみ6か月(180日)の再婚禁止期間を定めていました。この規定により再婚が遅れて精神的損害を被ったとして、国に対する損害賠償が請求され、規定が14条1項及び24条2項に違反するかが争われました。
判旨: 最高裁は以下のとおり判断しました。
- 再婚禁止期間の立法目的は、父性の推定の重複を回避し、父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにある
- この目的自体は正当であり、100日の再婚禁止期間を設けることは、父性推定の重複を回避するために合理的な根拠がある
- しかし、100日を超える部分については、目的との合理的関連性を欠き、14条1項及び24条2項に違反し違憲である
なぜ100日なのか: 民法772条2項は、婚姻成立の日から200日経過後、または婚姻の解消等の日から300日以内に生まれた子を、その婚姻中に懐胎したものと推定していました。したがって、前婚解消から100日を経過して再婚すれば、前婚の300日以内という期間と後婚の200日経過後という期間が重なりません。300日-200日=100日という計算が、100日という数字の根拠です。この計算過程まで説明できると、記述式にも対応できます。
ポイント:
- 規定「全体」を違憲としたのではなく、「100日を超える部分」のみを違憲とした点が頻出の注意点
- 立法目的(父性推定の重複回避)自体は正当とされており、ここでも「目的は正当・手段が過剰」という構造になっている
- もっとも、国家賠償請求自体は認められませんでした。国会議員の立法行為が国賠法1条1項の適用上違法となるのは例外的な場合に限られるところ、本件はこれに当たらないとされたためです。「違憲判断が出た=国家賠償が認められる」わけではない点は、ひっかけとして狙われます
その後の法改正
- この判決を受けて、民法733条は平成28年(2016年)に改正され、再婚禁止期間は100日に短縮されました。あわせて、女性が前婚の解消・取消し時に懐胎していなかった場合や、前婚の解消・取消し後に出産した場合などには再婚禁止期間の適用を除外する規定も設けられました。
- その後、令和4年(2022年)の民法改正で嫡出推定制度が見直され、再婚後に生まれた子は再婚後の夫の子と推定する仕組みが整えられたことに伴い、再婚禁止期間の規定(733条)自体が廃止されました(この改正は令和6年4月施行)。
現在、民法上に再婚禁止期間の定めは存在しません。判例の理解と現行法の内容を混同しないよう注意してください。
再婚禁止期間違憲判決(最大判平成27年12月16日)において、最高裁は女性に対する再婚禁止期間の規定全体を違憲と判断した。
3つの違憲判決は「なぜ違憲か」が違う
尊属殺・非嫡出子相続分・再婚禁止期間は、いずれも14条1項違反で違憲とされた判例ですが、違憲に至った理由の構造はそれぞれ異なります。ここを区別できるかどうかが、判例の理由づけを入れ替えた選択肢を見抜けるかの分かれ目です。
3つに共通するのは、いずれも立法目的そのものは否定していないという点です。試験で「立法目的が不当であるとして違憲とされた」という選択肢が出たら、3件すべてについて誤りです。
一方、決定的に違うのは次の点です。
- 尊属殺は、手段(刑の重さ)が制定時から一貫して過剰だったという評価です。時代の変化は理由の中心ではありません。
- 非嫡出子相続分は、制定当時は合理性があったが時の経過とともに合理性を失ったという時際的な評価です。だからこそ「遅くとも平成13年7月当時において」という時点の特定が必要になりました。
- 再婚禁止期間は、目的達成に必要な限度が100日という具体的な数字で特定できたため、規定を可分と捉えて一部だけを違憲としました。
この「①手段過剰型」「②合理性喪失型」「③一部違憲型」という3分類で覚えておくと、判旨の入れ替え問題に強くなります。なお、②の合理性喪失型には次に見る国籍法違憲判決も含まれます。
重要判例(4)|国籍法違憲判決
最大判平成20年6月4日
事案: 日本人の父とフィリピン人の母の間に生まれた非嫡出子が、父から出生後に認知を受けたものの、父母が婚姻していなかったため日本国籍を取得できないとされた事件です。旧国籍法3条1項は、非嫡出子の国籍取得について、父母の婚姻による準正(嫡出子としての身分取得)を要件としていました。
判旨: 最高裁は以下のとおり判断しました。
- 日本国民である父から出生後に認知された子につき、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した(準正があった)子にのみ国籍取得を認め、認知されたにとどまる子に認めないという区別は、遅くとも本件の国籍取得届を提出した当時には合理的な理由のない差別となっていた
- 旧国籍法3条1項の準正要件は、14条1項に違反し違憲である
- 違憲とされる部分(準正要件)を除いて読めば、認知された子は届出により日本国籍を取得できると解し、原告の国籍取得を認めた
ポイント:
- 違憲の結論を導いたうえで、国籍取得を認めない「合理性のない区別部分」を除去する形で、裁判所が直接救済を行った点が注目された(過剰な要件部分の除去)
- 国籍は重要な法的地位であり、子にとって自ら選択・修正できない父母の婚姻の有無を理由に区別することの合理性が、時代の変化のなかで失われたと判断された
- 「自ら選択ないし修正する余地のない事柄」を理由とする不利益を問題視する発想は、5年後の非嫡出子相続分違憲決定にも受け継がれている
- この判決を受けて国籍法3条1項が改正され、準正要件が削除された
救済方法という論点: 通常、法令を違憲とすれば「その規定は使えない」という帰結になりますが、それだけでは原告は国籍を取得できません。最高裁は、規定のうち違憲な要件部分だけを取り除いて残りを適用するという手法で原告を救済しました。違憲判断が直ちに原告の救済につながらない場合があることと、その克服の工夫として押さえておきましょう。
重要判例(5)|旧優生保護法違憲判決
最大判令和6年7月3日
事案: 旧優生保護法(昭和23年制定、平成8年に母体保護法へ改正)は、優生学的な見地から「不良な子孫の出生を防止する」という目的で、遺伝性疾患や障害を理由として、本人の同意がなくても不妊手術を行うことを認めていました。手術を受けた被害者らが、国に対して損害賠償を求めた事件です。
判旨: 最高裁は、旧優生保護法の不妊手術に関する規定を憲法13条及び14条1項に違反し違憲と判断しました。
- 特定の疾病や障害を有することを理由に不妊手術を強制することは、子を持つかどうかを自ら決定する自由(13条)を侵害する
- 特定の障害等を有する者を差別的に取り扱うものであり、14条1項にも違反する
- 当該規定に係る国会議員の立法行為は、国家賠償法1条1項の適用上違法である
ポイント:
- 14条1項が関わる法令違憲判断としては最も新しいものであり、「障害の有無」という後段列挙事由に明示されていない属性による差別を正面から違憲とした点に意義がある
- 前掲の再婚禁止期間判決とは異なり、立法行為の国家賠償法上の違法性まで認めた点が対照的
- 除斥期間(改正前民法724条後段)の適用を制限し、長期間経過後の請求を認めた点も画期的とされる
日本国憲法下の法令違憲判断としては13件目に当たるとされ、報道でも大きく取り上げられました。最新判例として出題可能性があるため、13条と14条1項の両方が根拠とされている点を押さえておきましょう。
合憲とされた事例|違憲・合憲を分けたもの
14条は「違憲判決の宝庫」と言われますが、平等が争われた事案の大半は合憲とされています。違憲判決だけを覚えていると、合憲判例を問う選択肢で失点します。
夫婦同氏制合憲判決(最大判平成27年12月16日)
民法750条が夫婦の氏について定める規定(夫婦同氏制)は、14条1項・24条に違反しないとされました。規定は形式的には夫婦のいずれの氏を称するかを夫婦の協議にゆだねており、文言上は性別に基づく法的な差別的取扱いを定めたものではないと判断されました。事実上、妻が夫の氏に改める例が圧倒的に多いという現実があっても、それは規定自体が生じさせる法的な差別とはいえない、という整理です。
なお、再婚禁止期間違憲判決と夫婦同氏制合憲判決はいずれも同じ平成27年12月16日に言い渡されており、セットで問われやすいので注意しましょう(再婚禁止期間=一部違憲、夫婦同氏制=合憲)。その後の令和3年6月23日の最高裁大法廷決定でも、平成27年判決以降の事情を踏まえても判断を変更すべきものとは認められないとして、夫婦同氏制は引き続き合憲と判断されています。
サラリーマン税金訴訟(大嶋訴訟・最大判昭和60年3月27日)
事案: 給与所得者は、事業所得者と異なり必要経費の実額控除が認められず、概算的な給与所得控除しか受けられないことが、事業所得者との関係で14条1項に違反する不合理な差別であると争われた事件です。
判旨: 最高裁は合憲と判断しました。
- 租税は国家の財政・経済・社会政策など総合的な政策判断を必要とし、その性質上、立法府の政策的・技術的な裁量にゆだねられる
- 租税法分野における取扱いの区別は、その立法目的が正当であり、区別の態様が目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り、14条1項に違反しない
- 給与所得と事業所得の所得計算方法の違いには合理性があり、違憲とはいえない
意義: 租税立法については立法裁量を広く認め、「著しく不合理であることが明らか」な場合に限って違憲とするという、緩やかな審査基準(合理性の基準)を示した重要判例です。経済政策・財政の領域では立法府の裁量が広く尊重される、という点が出題ポイントです。
東京都管理職選考受験拒否事件(最大判平成17年1月26日)
在日韓国人である東京都の保健師が管理職選考の受験を拒否されたことが14条1項等に反すると争われた事件で、最高裁は合憲(違法でない)としました。公権力の行使や重要な施策の決定に関わる地方公務員には日本国籍を有する者が就任することが想定されており、管理職選考の受験資格を日本国籍を有する職員に限る措置は合理的な理由に基づく区別であって、14条1項に違反しないと判断されています。外国人の人権享有主体性(マクリーン事件)と併せて問われやすい判例です。
堀木訴訟(最大判昭和57年7月7日)
障害福祉年金と児童扶養手当の併給を禁止する規定について、25条とともに14条違反も主張されましたが、最高裁は合憲としました。社会保障立法においてどのような給付制度を設けるかは立法府の広い裁量にゆだねられ、制度間の調整のために一定の区別を設けることも裁量の範囲内であるとされています(堀木訴訟の詳細)。
違憲・合憲を分けた考慮要素
以上を並べると、最高裁が何を重視して結論を分けているかが見えてきます。
とりわけ「法文上の別扱いか、事実上の偏りにすぎないか」という軸は、夫婦同氏制が合憲とされた理由の中核なので、必ず押さえてください。
議員定数不均衡
投票価値の平等
14条の平等原則は、選挙における投票価値の平等も要請します。各選挙区の議員定数配分に著しい不均衡がある場合、投票価値の平等に反するとして違憲問題が生じます。一人の投票が当選結果に及ぼす影響力(一票の重み)が選挙区によって大きく異なることは、平等選挙の要請に反するというのが基本的な考え方です。
なお、投票価値の平等の根拠条文は14条1項に加えて、44条ただし書(議員・選挙人の資格における差別禁止)も挙げられます。
衆議院と参議院の判断の傾向
- 衆議院については、平成23年3月23日大法廷判決が、格差拡大の主因である「1人別枠方式」に係る部分は投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたと判示しました。ただし、合理的期間内の是正がなされなかったとまではいえないとして、違憲・無効の主張は退けられています
- 参議院についても近年は格差の是正がより強く求められる傾向にあり、最高裁は従来より厳しい姿勢を示すようになっています
数値の暗記は不要です。「衆議院の方が許容される格差は小さい」「違憲状態とされた例が両院にある」という関係性を押さえれば足ります。
違憲状態と違憲の区別
議員定数不均衡をめぐる判例では、以下の二段階の判断枠組みが用いられます。
- 投票価値の不均衡が違憲状態に至っているか: 最大格差が合理的な範囲を超えているかどうか
- 合理的期間内に是正がなされなかったか: 違憲状態にあっても、国会が合理的期間内に是正措置をとれば違憲とはされない(合理的期間論)
注意: 「違憲状態」と「違憲」は異なります。議員定数配分が投票価値の平等に反する状態(違憲状態)にあっても、国会に合理的な是正期間が残されている場合は「違憲」とまでは判断されません。
事情判決の法理
仮に選挙が「違憲」と判断された場合でも、最高裁は選挙そのものを直ちに無効とはしない傾向にあります。選挙を無効とすると、その選挙で選ばれた議員が関与した立法等が後から覆るなど、かえって公の利益に著しい混乱が生じるためです。
この場合、最高裁は行政事件訴訟法31条1項(事情判決)の趣旨を借りて、「違憲ではあるが選挙は無効としない(違法を宣言するにとどめる)」という処理を行ってきました。これを「事情判決の法理」といいます。衆議院議員定数配分規定を違憲とした最大判昭和51年4月14日および最大判昭和60年7月17日は、いずれもこの法理により選挙自体は無効としませんでした。
議員定数不均衡の判例では、「①違憲状態か→②合理的期間を徒過したか→③無効とするか(事情判決の法理)」という三段の流れを押さえておくとよいでしょう(選挙制度)。
憲法14条をめぐる違憲判断の整理
14条1項が根拠条文となった主な違憲判断を、確認できるものに絞って時系列で整理します。
表を見ると、14条1項は法令違憲の根拠条文として最も多く用いられていることがわかります。憲法全体の違憲判決を横断的に確認したい場合は、最高裁の違憲判決一覧にまとめてあります。本記事では14条に絞って深掘りしていますので、他の条文の違憲判決と併せて整理するときは一覧記事を参照してください。
平等原則と私人間効力
14条は本来、国家と国民の関係を規律する規定であり、私人間(会社と従業員など)には直接適用されません。もっとも、私人による差別が民法の一般条項を通じて規制される場面があります。
代表例が日産自動車事件(最判昭和56年3月24日)です。就業規則で定年年齢を男性55歳・女性50歳と定めていた男女別定年制について、最高裁は、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法90条(公序良俗)により無効としました。14条を直接適用したのではなく、民法90条の解釈のなかに憲法の平等の趣旨を読み込んだ間接適用説の典型例として位置づけられます。
試験対策ポイント: 「最高裁は憲法14条を私人間に直接適用して男女別定年制を無効とした」という選択肢は誤りです。無効の根拠は民法90条であり、14条の直接適用ではありません。
頻出論点・出題ポイントの整理
行政書士試験で14条が問われる際の典型的な角度を整理します。
- 法内容の平等説 vs 法適用の平等説: 通説・判例は法内容の平等説(法律の内容自体も平等でなければならない)
- 相対的平等: 合理的区別は許される。「一切の区別が禁止される」とする選択肢は誤り
- 例示列挙説: 列挙事由以外の差別も14条違反となりうる。「限定列挙」とする選択肢は誤り
- 形式的平等と実質的平等: 14条1項が直接保障するのは形式的平等。実質的平等は社会権とあいまって実現
- 尊属殺重罰規定: 目的(合憲)と手段(違憲)の二分構造。日本国憲法下で初の法令違憲判決
- 非嫡出子相続分: 平成7年は合憲→平成25年は違憲。社会の変化による評価の変動。「決定」である点も注意
- 再婚禁止期間: 規定全体ではなく「100日超の部分」のみ違憲。立法目的は正当。国賠請求は棄却
- 国籍法: 準正要件が違憲。区別部分を除去して救済
- 旧優生保護法: 13条・14条1項違反。立法行為の国賠法上の違法性も肯定
- 議員定数不均衡: 違憲状態と違憲の区別、合理的期間論、事情判決の法理
- 同日判決: 再婚禁止期間(一部違憲)と夫婦同氏制(合憲)は平成27年12月16日
- 私人間効力: 日産自動車事件は民法90条による無効(間接適用)
よくある誤解・ひっかけの型
「日付のひっかけ」も定番です。再婚禁止期間と夫婦同氏制はいずれも平成27年12月16日、非嫡出子相続分の合憲決定は平成7年・違憲決定は平成25年、というように、対になる判例の年月日をセットで記憶しておくと安全です。
関連論点
平等権は、自由権(精神的自由・経済的自由)や社会権と密接に関連します。たとえば生存権と社会権(25条)は実質的平等の実現に関わり、選挙権(15条)は投票価値の平等を通じて14条と結びつきます。また、家族・婚姻に関する平等は24条と一体で問われるため、24条の理解も欠かせません。違憲審査の枠組みや違憲判決の効力(個別的効力説など)については、統治機構の違憲審査制の論点と合わせて学習すると理解が深まります。
なお、14条違反として法令違憲とされた判例は、日本の違憲判決全体のなかでも大きな比重を占めます。同じ法令違憲でも、財産権(29条2項)の枠組みで違憲とされた森林法共有林事件や、職業の自由(22条1項)で違憲とされた薬局距離制限事件と並べて整理すると、「どの権利について、どういう審査枠組みで、目的と手段のどちらが否定されたのか」という比較の軸が見えてきます。選挙権に関する立法不作為が問題となった在外日本人選挙権訴訟も、国家賠償責任を認めた点で再婚禁止期間判決と対比できます。本試験では複数の違憲判決を横断的に問う出題も多いため、判決年・対象法令・違憲とされた条項をセットで押さえておきましょう。
非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする民法の規定について、最高裁は一度合憲と判断したことがあるが、その後の社会状況の変化等を踏まえ、遅くとも平成13年7月当時には合理性を失っていたとして違憲と判断した。
男女別定年制について、最高裁は憲法14条1項を私人間に直接適用し、当該就業規則の定めを無効とした。
まとめ|試験対策の整理
14条の基本的理解
- 法の下の平等: 法適用の平等だけでなく法内容の平等も含む(法内容の平等説)
- 相対的平等: 合理的な根拠に基づく区別は許容される。絶対的平等ではない
- 形式的平等: 14条1項が直接保障するのは機会の平等。実質的平等は社会権とあいまって実現
- 列挙事由: 例示列挙であり、列挙事由以外の差別も14条違反となりうる
- 平等審査の核心: 目的の正当性と、目的・手段の合理的関連性
判例の整理
14条の平等原則は、個別の判例において「合理的な根拠があるかどうか」という観点から判断されます。各判例がどのような論理で合憲・違憲の結論に至ったのかを丁寧に理解し、択一式での正誤判断に備えましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 憲法14条の「法の下の平等」は、絶対的平等と相対的平等のどちらですか?
相対的平等です。等しいものは等しく、異なるものは異なって扱うことを求めるもので、事柄の性質に即応した合理的な根拠に基づく区別は14条に違反しません(最大判昭和39年5月27日・待命処分事件)。累進課税や未成年者の行為能力の制限は、合理的な区別として許容される典型例です。「一切の別異取扱いが禁止される」という選択肢は誤りとして頻出します。
Q2. 「相対的平等」と「実質的平等」は同じ意味ですか?
違います。相対的平等の対義語は「絶対的平等」で、14条が禁止する範囲の問題です。一方、実質的平等の対義語は「形式的平等」で、平等が目指すゴールの問題です。整理すると、14条1項が保障するのは「相対的平等」であり、その内容は主として「形式的平等(機会の平等)」、実質的平等は25条以下の社会権とあいまって実現される、となります。この2組の対立軸を混同すると失点しやすいので注意してください。
Q3. 14条1項後段の「人種、信条、性別、社会的身分又は門地」は限定列挙ですか?
例示列挙と解するのが通説です。したがって年齢・職業・学歴・居住地など列挙されていない事由による区別も、合理的な根拠がなければ14条1項に違反します。実際、尊属殺重罰規定違憲判決も議員定数不均衡訴訟も、5事由に該当しない区別について14条1項の問題として審査しています。なお学説には、列挙事由による区別は「疑わしい区別」としてより厳格に審査すべきだとする有力説(特別意味説)がありますが、判例は列挙の内外で審査基準を機械的に切り替える立場を明示していません。
Q4. 尊属殺重罰規定違憲判決は、尊属を重く保護すること自体を違憲としたのですか?
していません。法廷意見は、尊属に対する尊重報恩の道徳を法律で保護すること自体は直ちに14条1項に反しないとして、立法目的の合理性を認めました。違憲としたのは、法定刑を死刑又は無期懲役のみに限り、刑の加重の程度が立法目的達成の手段として甚だしく均衡を失している点です。もっとも、大法廷では6名の裁判官が「尊属加重規定自体が平等原則に反する」というより踏み込んだ理由で違憲としており、これは法廷意見ではありません。この区別が問われます。
Q5. 再婚禁止期間はなぜ「100日」なのですか。今も制度は残っていますか?
100日という数字は、旧民法772条2項の嫡出推定の仕組みから導かれます。婚姻解消の日から300日以内に生まれた子は前婚の子と推定され、婚姻成立から200日経過後に生まれた子は後婚の子と推定されるため、300日-200日=100日の期間を空ければ推定の重複が生じません。最高裁はこの計算を前提に、100日以内は合憲、100日を超える部分のみ違憲としました(最大判平成27年12月16日)。制度については、判決後の平成28年改正で100日に短縮され、さらに令和4年の民法改正により再婚禁止期間の規定(733条)自体が廃止されました(令和6年4月施行)。現行民法に再婚禁止期間の定めはありません。
Q6. 非嫡出子相続分の判例は「判決」ですか「決定」ですか?
決定です。最大決平成25年9月4日で、遺産分割審判に対する特別抗告事件として判断されたため「決定」の形式をとります。同じ規定を合憲とした最大決平成7年7月5日も決定です。一方、尊属殺重罰規定(最大判昭和48年4月4日)や再婚禁止期間(最大判平成27年12月16日)は判決です。判決と決定の取り違えは選択肢のひっかけとして狙われるので、「非嫡出子相続分=決定」とセットで覚えてください。
Q7. 民間企業による男女差別にも憲法14条は直接適用されますか?
直接には適用されません。憲法は本来、国家と国民の関係を規律する法だからです。もっとも、私人による差別が社会的に許容される限度を超える場合には、民法90条(公序良俗)などの一般条項の解釈を通じて憲法の趣旨が及ぼされます(間接適用説)。日産自動車事件(最判昭和56年3月24日)は、男女別定年制を性別のみによる不合理な差別として民法90条により無効としました。「14条を直接適用した」という記述は誤りです。
Q8. 一票の格差の判例で「違憲状態」と「違憲」は何が違うのですか?
二段階の判断です。第1段階として、投票価値の不均衡が合理的な範囲を超えていれば「違憲状態」となります。しかし違憲状態であっても、国会が是正のための合理的期間を徒過していなければ「違憲」とまでは判断されません(合理的期間論)。第2段階の合理的期間も徒過していると判断されて初めて「違憲」となります。さらに、違憲と判断された場合でも、行政事件訴訟法31条1項の事情判決の法理により、選挙自体は無効とされない扱いが定着しています(最大判昭和51年4月14日、最大判昭和60年7月17日)。
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演習で定着させる
憲法の判例問題では、相対的平等の意味と、違憲判決に至った判例の判断枠組みが問われます。判旨を要約で覚えていると、結論は合っていても理由づけを入れ替えた肢に引っかかります。とくに14条は、「目的が違憲」と「手段が違憲」の入れ替え、「規定全体が違憲」と「一部が違憲」の入れ替え、判決と決定の取り違えという3つの型で狙われます。行政書士ブートラボの肢別演習では、判例の理由づけ部分を狙った肢を一問一答形式で確認できるので、関連判例をまとめて解くと判断の軸が安定します。