当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で、法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするものが提起されたときは、裁判所は、当該処分又は裁決をした行政庁にその旨を通知するものとする。
この条文の過去問 6肢
結論:この肢は「正しい」。条文どおりの内容であり、これが正解です。
根拠条文は行政事件訴訟法25条2項ただし書です。同項本文が、重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は申立てにより、決定をもって、処分の効力、処分の執行または手続の続行の全部または一部の停止をすることができると定めたうえで、ただし書が「処分の効力の停止は、処分の執行又は手続の続行の停止によって目的を達することができる場合には、することができない」と定めています。これを処分の効力の停止の補充性といいます。
理由づけ。執行停止には3つの態様があります。①処分の効力の停止は、処分がはじめからなかったのと同様の状態を暫定的に作り出すもので、最も強力です。②処分の執行の停止は、処分の内容を実現する行為(たとえば退去強制令書に基づく送還の実施)を止めるものです。③手続の続行の停止は、当該処分を前提として後続する手続(たとえば代執行手続における次の段階)を止めるものです。②や③で申立人の救済目的が達せられるのであれば、あえて処分そのものの効力を失わせる必要はありません。行政上の法律関係への影響を必要最小限にとどめるという比例原則の現れであり、必要以上に行政作用を止めない趣旨です。
ひっかけポイント・関連知識。補充性が及ぶのは「処分の効力の停止」だけであり、執行の停止や手続の続行の停止には補充性の制約はありません。具体例としては、営業停止処分のように処分の効力自体を止めなければ救済にならない場合には効力の停止が認められますが、退去強制令書の場合は送還部分の執行停止によって目的を達し得るため、効力の停止までは認められないのが通例です。また、執行停止の決定は第三者に対しても効力を有し(32条2項)、行政庁を拘束します(33条4項)。前提として、取消訴訟の提起自体は処分の効力・執行・手続の続行を妨げないという執行不停止原則(25条1項)が置かれている点も確認しておきましょう。
結論:この肢は「正しい」。
根拠は行政事件訴訟法11条2項です。同項は「処分又は裁決をした行政庁が国又は公共団体に所属しない場合には、取消訴訟は、当該行政庁を被告として提起しなければならない」と定めています。本肢はこの条文をそのままなぞった記述であり、正しい内容です。
理由づけとして、被告適格のルールの成り立ちを押さえておきましょう。平成16年改正前の行政事件訴訟法は、取消訴訟の被告を原則として処分をした行政庁とする「処分庁主義」を採っていました。しかし、原告の立場からすると、権限委任や専決の有無まで調べて処分庁を正確に特定するのは容易ではなく、被告を誤れば訴えが不適法却下されかねません。そこで平成16年改正は、被告を原則として「処分をした行政庁の所属する国又は公共団体」とする行政主体主義に転換しました(11条1項1号・2号)。行政主体を被告とすれば、原告は「国」「東京都」「○○市」と書けば足り、被告選択の失敗という入口の危険が大きく減るからです。
ところが、この原則が機能するのは、処分庁が国または公共団体に「所属する」場合に限られます。現代の行政では、建築基準法上の指定確認検査機関、各種の指定試験機関・指定登録機関、弁護士会の懲戒権限のように、国・地方公共団体に所属しない民間法人や特別の団体が法律によって処分権限を与えられている例が少なくありません。この場合には「所属する国又は公共団体」が観念できないため、被告を行政主体とすることができません。そこで11条2項は例外として、当該行政庁そのものを被告とすることにしたのです。
ひっかけポイントは、11条3項との書き分けです。3項は「前二項の規定により被告とすべき国若しくは公共団体又は行政庁がない場合」、つまり処分後にその行政庁が廃止されたようなケースを想定し、当該処分に係る事務の帰属する国または公共団体を被告とすると定めています。「所属しない場合=行政庁が被告(2項)」「被告とすべき者がない場合=事務帰属主体が被告(3項)」という対応を混同しないようにしてください。また、被告を誤って訴えを提起した場合には、原告に故意または重大な過失がないときに限り、裁判所の許可を得て被告を変更できる制度(15条)がある点も併せて確認しておきましょう。
結論:この肢は「正しい」。
根拠は地方自治法244条の2第6項です。同項は「普通地方公共団体は、指定管理者の指定をしようとするときは、あらかじめ、当該普通地方公共団体の議会の議決を経なければならない」と定めています。本肢はこれと同旨であり、正しい記述です。
理由づけとして、指定管理者制度は、本来は地方公共団体自身が担うべき公の施設の管理権限を、外部の法人その他の団体に委ねる仕組みです。誰に管理を任せるかによって、住民が受けるサービスの質や利用条件が大きく左右されます。そこで法は、条例による制度の枠組みづくり(244条の2第3項)に加えて、個々の指定という具体的な決定についても議会の議決を要求し、二重の民主的統制をかけているのです。
指定管理者制度をめぐる議会・長の関与を条文の順に整理すると、次のようになります。①制度の導入と管理の基準・業務の範囲その他必要な事項は条例で定める(244条の2第3項・4項)。②指定は期間を定めて行う(同条5項)。③指定に当たっては、あらかじめ議会の議決を経る(同条6項)。④指定管理者は毎年度終了後に事業報告書を提出する(同条7項)。⑤利用料金制を採用できる(同条8項・9項)。⑥地方公共団体は、指定管理者に対して業務・経理の状況に関する報告を求め、実地について調査し、または必要な指示をすることができる(同条10項)。⑦指示に従わないときなど管理を継続することが適当でないと認めるときは、指定を取り消し、または期間を定めて業務の停止を命ずることができる(同条11項)。
ひっかけポイントは、議決のタイミングです。条文は「あらかじめ」としており、指定した後に議会の承認を得るという事後承認方式ではありません。また、指定は期間を定めて行う必要があるため(5項)、指定管理者が半永久的に管理を続けるということもありません。期間の長さ自体は法定されておらず、条例や指定の際に定められます。
結論:この肢は「正しい」。
根拠は地方自治法244条の2第8項です。同項は「普通地方公共団体は、適当と認めるときは、指定管理者にその管理する公の施設の利用に係る料金(次項において「利用料金」という。)を当該指定管理者の収入として収受させることができる」と定めています。いわゆる利用料金制です。本肢はこの規定と同旨であり、正しい記述です。
理由づけとして、通常、公の施設の使用料は地方公共団体の収入となり(225条、231条)、指定管理者は管理の対価として委託料を受け取る仕組みになります。しかしこれでは、指定管理者が利用者を増やしたりサービスを向上させたりしても自らの収入は増えず、経営努力のインセンティブが働きにくいという難点があります。そこで利用料金制を採用すると、利用料金がそのまま指定管理者の収入となるため、集客やサービス改善が直接的に報われる構造になります。民間の経営ノウハウを公の施設の運営に生かすという指定管理者制度の趣旨に沿った仕組みです。
利用料金の額の決め方も条文で手当てされています。244条の2第9項は、利用料金は公益上必要があると認める場合を除くほか、条例の定めるところにより、指定管理者が定めるものとし、この場合において指定管理者はあらかじめ当該利用料金について地方公共団体の承認を受けなければならないと定めています。つまり、指定管理者に価格決定を委ねつつ、条例による枠づけと事前承認という二重の歯止めをかけているわけです。
ひっかけポイントは、利用料金制が「必ず採用しなければならない」ものではないという点です。条文は「適当と認めるときは」「できる」という任意的な書き方をしています。したがって、利用料金制を採らず、使用料は地方公共団体の収入とし、指定管理者には委託料を支払うという運用も適法です。「指定管理者を指定した場合は当然に利用料金は指定管理者の収入となる」といった断定的な表現は誤りになります。また、利用料金制を採る場合であっても、料金の額を指定管理者が完全に自由に決められるわけではない点に注意してください。
結論:この肢は「誤り」。
判例は、一定の要件を満たす場合には黙示の公用廃止があったものと認め、明示の公用廃止がなくても公共用財産について取得時効が成立しうるとしています。明示の公用廃止を絶対的な要件とする本肢は誤りです。
根拠判例は最判昭和51年12月24日です。同判決は、公共用財産が、長年の間事実上公の目的に供用されることなく放置され、公共用財産としての形態・機能を全く喪失し、その物のうえに他人の平穏かつ公然の占有が継続したが、そのため実際上公の目的が害されるようなこともなく、もはやその物を公共用財産として維持すべき理由がなくなった場合には、その公共用財産については黙示的に公用が廃止されたものとして、取得時効の成立を妨げないと判示しました。したがって、公図上は水路とされていても、実態として水路の形態も機能も失われ、長期間他人の占有が続いているような土地は、民法162条による時効取得の対象となりうるのです。
理由づけとしては、公物の不融通性の根拠を考えると理解しやすくなります。公物が私権の対象になじまないとされるのは、公の用に供されている以上、私人の権利取得を認めると公の目的が害されるからです。ところが、すでに公の目的への供用実態が失われ、私人の占有によって何ら公の目的が害されない状態に至っているのであれば、その不融通性を維持する実質的な理由は消滅しています。それにもかかわらず行政庁が公用廃止の意思表示という形式を踏んでいないという一事をもって、長年の占有事実を保護しないのは、時効制度が永続した事実状態を保護しようとする趣旨にも反します。そこで判例は、行政実務上の形式主義を貫かず、黙示の公用廃止という構成で妥当な結論を導いたのです。
ひっかけポイントは、要件の厳格さです。判例が黙示の公用廃止を認めるのは、(1)長年事実上公の目的に供用されず放置され、(2)公共用財産としての形態・機能を全く喪失し、(3)他人の平穏かつ公然の占有が継続し、(4)そのため実際上公の目的が害されることもなく、(5)もはや公共用財産として維持すべき理由がなくなった場合です。単に一時的に利用されていないというだけでは足りません。また、行政財産である以上、その用途または目的を妨げない限度での使用許可(地方自治法238条の4第7項)や、用途廃止後の普通財産への転換といった仕組みとの区別も意識しておきましょう。
結論:この肢は「正しい」。
いわゆる2項道路の一括指定について、判例は処分性を肯定しています。本肢は判例の判断枠組みと結論を正確に述べたものです。
根拠判例は最判平成14年1月17日です。建築基準法42条2項は、同法の適用の際すでに建築物が立ち並んでいる幅員4メートル未満の道で、特定行政庁が指定したものを道路とみなす旨を定めており、この指定は、個別の道ごとに行うほか、一定の条件に合致する道を一括して指定する方法(一括指定)によって告示の形で行われることが実務上多くみられます。最高裁は、こうした一括指定の方法でされた2項道路の指定であっても、指定の効果が及ぶ個別の道は特定されうるのであり、指定がされると当該道の敷地所有者は、その本来的な効果として、道路内の建築制限(44条1項)を受け、また当該道の中心線から水平距離2メートルの線が敷地の境界線とみなされること(42条2項)により建築基準法上の建築制限を受けることになるとして、一括指定も個別の土地について具体的な私権制限を発生させるものであり、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると判断しました。
理由づけの核心は、処分性の判断において「一般的・抽象的な規範定立か、それとも個別・具体的な法効果の発生か」を、形式ではなく実質でみるという点にあります。一括指定は、外形上は多数の道を一挙に対象とする一般的な告示に見えます。しかし、その指定によってどの土地が制限を受けるかは客観的に確定でき、しかも制限は指定の反射的効果ではなく本来的効果として直接発生します。だからこそ、行政立法のような一般的規律ではなく、多数の名宛人に対する処分の集合と評価できるわけです。
ひっかけポイントは、処分性に関する判例群の中での位置づけです。同じ都市計画・建築行政の分野でも、旧都市計画法上の用途地域指定については、その段階では建築制限は不特定多数者に対する一般的抽象的なものにとどまるとして処分性が否定されました(最判昭和57年4月22日・盛岡用途地域指定事件)。他方、土地区画整理事業の事業計画決定については、判例変更により処分性が肯定されています(最大判平成20年9月10日・浜松市土地区画整理事業事件)。「一般的・抽象的な制限にすぎないか」「特定の土地に具体的な制限が直接生じるか」「実効的な権利救済の必要性はあるか」という三つの視点で、各判例を整理しておくと得点源になります。