行政行為とは|種類・効力・瑕疵を体系的に解説
行政行為の定義・種類・効力・瑕疵・附款を体系的に解説。法律行為的行政行為(命令的行為・形成的行為)と準法律行為的行政行為の分類、許可・認可・特許の違い、附款の種類を具体例と判例で整理します。
はじめに|行政行為は行政法の中核概念
行政行為は、行政法学における最も重要な概念の一つです。行政庁が法律に基づいて一方的に国民の権利義務を決定する行為であり、許認可、免許、命令、禁止など、私たちの生活に密接に関わる行為が含まれます。
行政書士試験では、行政行為の定義、分類(種類)、効力、瑕疵が幅広く出題されます。択一式はもちろん、記述式でも行政行為に関する知識が問われるため、正確かつ体系的な理解が不可欠です。行政法は配点が大きく(択一19問+多肢選択+記述)、その土台となるのがこの「行政行為論」です。ここを曖昧にしたまま行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法に進むと、各論の理解が浅くなりがちです。
本記事では、行政行為の定義から始めて、法律行為的行政行為と準法律行為的行政行為の分類、具体例、附款(ふかん)を解説したうえで、検索ニーズの高い「行政行為の効力(公定力・不可争力など)」と「瑕疵」についても全体像を押さえます。効力・瑕疵の各論をさらに深掘りしたい場合は、それぞれの専用記事へリンクを張っていますので、本記事を入口に体系全体をつかんでください。
行政行為の定義
学問上の行政行為の定義
行政行為とは、行政庁が法律の定めに基づき、公権力の行使として、国民に対して直接に具体的な法的効果を生じさせる行為をいいます。
この定義を分解すると、以下の要素が含まれます。
- 行政庁の行為: 行政庁が主体であること(補助機関や諮問機関の行為は含まない)
- 法律に基づく行為: 法律の根拠があること
- 公権力の行使: 私法上の行為(契約など)は含まない
- 一方的行為: 相手方の同意を要しない
- 直接に具体的な法的効果を生じさせる行為: 一般的・抽象的な法規範の定立(行政立法)は含まない
- 外部に向けられた行為: 行政組織内部の行為(上級庁の指揮監督など)は含まない
定義の各要素を反対概念とセットで覚える
定義は「何が行政行為に当たらないか」とセットで理解すると、試験での区別がつきやすくなります。
行政立法・行政契約・行政指導といった「行政行為以外の行政の行為形式」との対比は、行政法総論の頻出の切り口です。行政法全体の地図については行政法とは?行政書士試験での位置づけと全体像で確認しておくと、行政行為がどの位置にあるかが俯瞰できます。
処分との関係
行政手続法や行政事件訴訟法では「処分」という用語が使われます。学問上の「行政行為」と法律上の「処分」は、概ね同義ですが、完全に一致するわけではありません。
行政事件訴訟法第3条第2項は、処分の取消しの訴えの対象を「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」と定めています。判例は、行政指導や通知であっても一定の場合に「処分性」を認めることがあり、「処分」の概念は学問上の行政行為よりも広い場合があります。
この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為の取消しを求める訴訟をいう。
― 行政事件訴訟法 第3条第2項
判例上、処分性を肯定するための定式として広く引用されるのが、次の判示です。
行政庁の処分とは、…公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によつて、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。
― 最判昭和39年10月29日(大田区ごみ焼却場設置事件)
この「直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定する」という基準は、学問上の行政行為の定義とほぼ重なります。一方で、近年の判例では、本来は行政行為とはいいにくい通知や条例の制定などにも例外的に処分性を認める例があり、ここに学問上の概念と裁判上の概念のずれが生じます。処分性の各論は行政事件訴訟法の基本|訴訟類型と取消訴訟の要件で詳しく扱います。
行政行為の分類|全体像
行政行為は、大きく「法律行為的行政行為」と「準法律行為的行政行為」に分類されます。
法律行為的行政行為とは、行政庁の意思表示を要素とし、行政庁が意欲した法律効果が発生する行為です。さらに「命令的行為」と「形成的行為」に分類されます。
準法律行為的行政行為とは、行政庁の判断や認識の表示を要素とし、法律の規定に基づいて一定の法律効果が発生する行為です。行政庁が意欲した効果ではなく、法律が定めた効果が自動的に発生する点で法律行為的行政行為と異なります。
両者を分ける実益は、主に附款を付すことができるかにあります。意思表示を要素とする法律行為的行政行為には(裁量の範囲内で)附款を付しうるのに対し、法律が効果を定める準法律行為的行政行為には原則として附款を付すことができない、と整理されます。分類自体を問う問題よりも、この「附款の可否」とからめて問われることが多い点を意識してください。
分類の全体像を一覧にすると次のとおりです。
法律行為的行政行為(1)命令的行為
命令的行為とは、国民が本来有する自由を制限し、又はその制限を解除する行為です。以下の四つに分類されます。
下命
下命とは、国民に対して一定の作為義務を課す行為です。
具体例:
- 違法建築物の除却命令(建築基準法第9条)
- 営業停止命令
- 租税の賦課処分
禁止
禁止とは、国民に対して一定の不作為義務を課す行為です。
具体例:
- 営業禁止処分
- 道路の通行禁止
- 集会の禁止
下命と禁止は、いずれも国民に義務を課す「侵害的行政行為」です。法律の留保の原則により、法律の根拠が必要です。法律の留保の考え方そのものは法律による行政の原理|法律の留保を図解で解説で整理しています。
許可
許可とは、法令によって一般的に禁止されている行為について、特定の場合にその禁止を解除し、適法にその行為を行うことができるようにする行為です。
許可とは、一般的禁止を特定の場合に解除する行為である。
許可のポイントは、国民が本来有する自由(自然の自由)を一般的に禁止しておき、一定の要件を満たした場合にその禁止を解除するという構造にあります。したがって、許可を受けずに行った行為は違法ですが、許可を受けて行った行為は本来の自由の回復にすぎません。
具体例:
- 自動車運転免許(道路交通法第84条)
- 飲食店の営業許可(食品衛生法第55条)
- 建築確認(建築基準法第6条)※性質は確認に近いが許可的要素も含む
- 医師免許(医師法第2条)
重要な性質:
- 許可の要件を満たしている場合、行政庁は許可を与える義務がある(羈束行為)
- 許可を受けずに行った行為の私法上の効力は、原則として有効である(最判昭和35年3月18日・無免許医師の診療報酬請求事件など、判例では事案による)
免除
免除とは、特定の場合に法令上の義務を解除する行為です。
具体例:
- 租税の免除
- 就学義務の免除
下命・禁止が「義務を課す」のに対し、許可・免除は「義務(禁止)を解除する」行為であり、四つは二組の対概念として整理できます。
法律行為的行政行為(2)形成的行為
形成的行為とは、国民が本来有していない権利・能力・包括的な法律関係を設定・変動させる行為です。以下の三つに分類されます。
特許
特許とは、国民が本来有していない特別の権利・能力・包括的な法律関係を新たに設定する行為です。
許可が「本来の自由の回復」であるのに対し、特許は「新たな権利の創設」である点が決定的に異なります。
具体例:
- 公有水面の埋立免許(公有水面埋立法)
- 鉱業権の設定(鉱業法)
- 河川の占用許可(河川法第23条)※名称は「許可」だが性質は特許
- 外国人の帰化許可(国籍法第4条)※名称は「許可」だが性質は特許
- 公共企業の特許(電気事業法に基づく事業許可など)
重要な性質:
- 特許は行政庁の裁量が広い(裁量行為)
- 名称が「許可」であっても性質が「特許」であるものが多いので注意が必要
特許が裁量行為であることは、後述する裁量統制とも結びつく重要論点です。裁量の逸脱・濫用については行政裁量とは|裁量権の逸脱・濫用の判断基準を参照してください。
認可
認可とは、第三者の法律行為を補充してその法律上の効力を完成させる行為です。
認可は、当事者間の法律行為(契約など)そのものに対する行政庁の同意であり、認可がなければ当該法律行為の法律上の効力が生じません。
具体例:
- 農地の権利移転の許可(農地法第3条)※名称は「許可」だが性質は認可
- 公共料金の認可(電気料金、ガス料金など)
- 土地区画整理組合の設立認可
重要な性質:
- 認可を受けていない法律行為は無効(許可と異なる重要なポイント)
- 認可は基本行為(当事者間の法律行為)の存在を前提とする
認可は「基本行為」を前提とする補充的な行為であるため、基本行為に瑕疵があれば認可があっても効力は生じず、逆に認可だけを取り消しても基本行為は当然には無効になりません。この「基本行為と認可(補充行為)の関係」は記述・多肢で問われやすい応用論点です。
代理
代理とは、第三者が行うべき行為を行政庁が代わって行い、その行為が第三者の行為と同一の法律効果を生じる行為です。
具体例:
- 土地収用裁決(土地収用法)
- 公共組合の役員の任命(本来は組合が行うべき選任を行政庁が代わって行う場合)
許可・特許・認可の比較
この三者の区別は、行政書士試験で極めて頻繁に出題されるテーマです。法律上の名称(「許可」「免許」など)に惑わされず、行為の法的性質(本質)に着目して判断することが重要です。
名称と性質がずれる代表例(暗記の急所)
試験では「名称」と「法的性質」がずれるものが集中的に狙われます。次の対応関係は丸暗記しておきましょう。
「名称に引きずられないこと」が出題者の意図です。問題文で名称が示されたら、いったん立ち止まり「これは本来の自由の回復か、新たな権利の創設か、第三者の法律行為の補充か」を自問する習慣をつけてください。
準法律行為的行政行為
準法律行為的行政行為は、行政庁の意思表示ではなく、判断・認識・通知の表示を要素とする行為です。法律の規定に基づいて法律効果が発生します。
確認
確認とは、特定の事実又は法律関係の存否を公的に確定する行為です。
具体例:
- 当選人の決定(公職選挙法)
- 発明の特許(特許法)※名称は「特許」だが性質は確認
- 建築確認(建築基準法第6条)※確認的性質が強い
公証
公証とは、特定の事実又は法律関係の存在を公的に証明する行為です。
具体例:
- 選挙人名簿への登録
- 不動産登記
- 戸籍への記載
- 運転免許証の交付(免許という処分そのものではなく、証明行為としての交付の側面)
確認と公証の違いは、確認が法律関係を「確定」するのに対し、公証は事実を「証明」するにとどまる点にあります。確認には争いのある事実・法律関係を確定する効果(争いを終わらせる効果)があるのに対し、公証は既に存在する事実を公に証明する点が異なります。
通知
通知とは、特定の事実を相手方に知らせる行為です。
具体例:
- 代執行の戒告(行政代執行法第3条第1項)
- 納税の督促
戒告や督促のように、通知それ自体が法律効果(後続手続に進む前提・時効の更新事由など)を生じさせる場合に、準法律行為的行政行為としての通知に位置づけられます。単なる事実の連絡(事実行為としての通知)とは区別してください。
受理
受理とは、他人の行為(届出・申請など)を有効な行為として受け付ける行為です。
具体例:
- 届出の受理
- 婚姻届の受理
なお、行政手続法は「届出」について、形式上の要件に適合していれば提出先に到達したときに手続上の義務が履行されたものとする到達主義を採っており(行政手続法第37条)、行政庁の「受理」という観念的な行為を要しない建付けになっています。学問上の分類としての「受理」と、行政手続法上の届出の扱いはずれがある点に注意が必要です。
附款(ふかん)
附款とは
附款とは、行政行為の効果を制限し、又は特別の義務を課すために、行政庁が主たる意思表示に付加する従たる意思表示です。
附款は行政行為の柔軟な運用を可能にしますが、法律の根拠なく自由に付すことはできません。羈束行為には原則として附款を付すことはできず、裁量行為についても比例原則の範囲内で認められます。意思表示を要素としない準法律行為的行政行為には、原則として附款を付すことができません。
附款の種類
条件
条件とは、行政行為の効力の発生又は消滅を、将来発生するかどうか不確実な事実にかからせる附款です。
- 停止条件: 条件成就により効力が発生する
- 解除条件: 条件成就により効力が消滅する
期限
期限とは、行政行為の効力の発生又は消滅を、将来確実に到来する事実にかからせる附款です。
- 始期: 期限到来により効力が発生する
- 終期: 期限到来により効力が消滅する
条件と期限の決め手は「将来の事実が到来するかどうか不確実か(条件)」「到来することが確実か(期限)」です。日付の指定は期限、不確実な出来事の発生にかからせるものは条件、と機械的に判別できるようにしておきましょう。
負担
負担とは、行政行為の相手方に特別の義務を課す附款です。
具体例: 補助金の交付に際して、使途を限定する条件を付す
負担の重要な特徴は、本体の行政行為の効力に影響を与えないことです。負担に違反しても、本体の行政行為の効力は当然には消滅しません(ただし、行政庁が撤回する場合がある)。この点で条件と区別されます。
撤回権の留保
撤回権の留保とは、将来、行政行為を撤回する権利を行政庁に留保する附款です。撤回権が留保されていても、撤回が無制限に許されるわけではなく、信頼保護や比例原則による制約を受けると解されています。
法律効果の一部除外
法律効果の一部除外とは、行政行為の法律効果の一部を排除する附款です。法律が本来生じさせる効果の一部を排除するものであるため、法律の根拠が必要とされる点に注意が必要です。
違法な附款の救済
附款(特に負担)に違法がある場合、その附款だけを切り離して取消しを求められるか(附款のみの取消訴訟が可能か)という論点があります。本体から分離して観念できる附款(負担など)については、附款のみを対象に取消訴訟を提起できると解されています。一方、本体と不可分一体の附款の場合は、行政行為全体を争うことになります。応用論点ですが、附款の種類ごとの性質を押さえる延長として理解しておくとよいでしょう。
行政行為の効力|公定力・不可争力など
行政行為には、私人間の法律行為にはない特別の効力(拘束力)が認められます。検索ニーズの高い「公定力」「不可争力」を含め、ここで全体像を押さえます。各効力の詳細・判例は行政行為の効力|公定力・不可争力を完全解説で深掘りしています。
行政行為の効力は、一般に次の四つ(または公定力に含まれる構成力を加えて整理)に分類されます。
公定力
公定力とは、行政行為に違法があっても、それが重大かつ明白で当然に無効と評価される場合を除き、権限ある機関(処分庁・上級庁・裁判所)によって取り消されるまでは、一応有効なものとして相手方や他の国家機関を拘束する効力をいいます。
公定力の根拠は、現在では取消訴訟という特別の争訟手続が法定されていること(取消訴訟の排他的管轄)に求めるのが通説です。違法な行政行為の効力を否定するには、原則として取消訴訟(または不服申立て)によらなければならない、という建付けが公定力を支えています。
公定力の限界として重要なのが、国家賠償請求との関係です。判例は、違法な課税処分について、当該処分の取消しを経ていなくても、国家賠償請求は妨げられないとしています。
行政処分が違法であることを理由として国家賠償の請求をするについては、あらかじめ右行政処分につき取消又は無効確認の判決を得なければならないものではない。
― 最判昭和36年4月21日
つまり、国家賠償請求の場面では公定力は及ばず、処分の取消しを経ずに違法性を主張して損害賠償を求めることができます。これは公定力の論点の中でも最頻出の一つです。
また、刑事事件において処分の違法を前提に無罪を主張する場合にも、公定力は及ばないと解されています。
不可争力(形式的確定力)
不可争力とは、行政行為について、出訴期間や不服申立期間が経過すると、私人の側からはもはやその効力を争うことができなくなる効力をいいます。取消訴訟の出訴期間は、原則として処分があったことを知った日から6か月(行政事件訴訟法第14条第1項)とされています。
取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
― 行政事件訴訟法 第14条第1項
ここで押さえるべきポイントは二つです。第一に、不可争力は私人の側からの争訟を封じるものであり、行政庁の側から職権で取り消すことまでは妨げません。第二に、不可争力が生じても、当然無効の行政行為には及びません。無効な行政行為は出訴期間の制約を受けず、いつでも無効確認訴訟や争点訴訟でその無効を主張できます(後述の瑕疵論と直結します)。
不可変更力(実質的確定力)
不可変更力とは、審査請求に対する裁決のように、紛争を裁断する性質をもつ行政行為について、それを行った行政庁自身も後から自由に取消し・変更をすることができなくなる効力をいいます。すべての行政行為に生じる効力ではなく、争訟裁断的行為に限って認められる点が出題のポイントです。
自力執行力(執行力)
自力執行力とは、行政行為によって課された義務を相手方が履行しない場合に、行政庁が裁判所の判決を経ることなく、自ら強制執行をしてその内容を実現できる効力をいいます。私人間では自力救済が禁止され、強制執行には債務名義(判決等)が必要であるのと対照的です。
ただし、自力執行力は行政行為そのものから当然に生じるものではなく、別途、強制執行を認める法律の根拠(行政代執行法など)が必要である点に注意してください。義務を課す行政行為の根拠法があるだけでは、強制執行まではできません。
行政行為の瑕疵|無効と取消し
行政行為に法律違反などの瑕疵(かし)がある場合、その効力はどうなるのでしょうか。瑕疵の程度に応じて「取り消しうべき行政行為」と「無効の行政行為」に分かれます。詳細は行政行為の瑕疵|無効と取消しの区別を解説で扱いますが、ここでは公定力・不可争力との関係で要点を押さえます。
行政行為が「無効」とされるのは、その瑕疵が重大かつ明白である場合に限られるとするのが判例・通説(重大明白説)です。
課税処分が当然無効であるというためには、処分に内在する瑕疵が重大かつ明白であることを必要とする。
― 最判昭和36年3月7日 などの趣旨
無効と取消しの区別が重要なのは、まさに公定力・不可争力が及ぶかどうかという効果に直結するからです。取り消しうべき瑕疵にとどまれば公定力が働き、取消訴訟の出訴期間(不可争力)に服します。これに対し無効であれば、公定力も不可争力も及ばず、出訴期間を経過しても無効確認訴訟等で争えます。「種類→効力→瑕疵」が一本の線でつながっていることを意識すると、知識が定着します。
なお、行政行為がいったん有効に成立した後にその効力を失わせる行為として「取消し」と「撤回」があります。取消しは成立時の瑕疵を理由に遡及的に効力を失わせる(原則として遡及効あり)のに対し、撤回は適法に成立した行政行為を後発的な事情を理由に将来に向かって効力を失わせる(将来効)行為です。両者の用語上の区別も頻出です。
試験での出題ポイント
行政行為に関する行政書士試験の出題ポイントを整理します。
- 許可・特許・認可の区別: 法律上の名称ではなく法的性質で判断する。農地の権利移転の「許可」は性質上は認可であることなど、名称と性質がずれるものは頻出
- 命令的行為と形成的行為の区別: 命令的行為は国民の本来の自由を制限・解除するもの、形成的行為は本来有していない権利等を設定するもの
- 許可を受けていない行為の効力: 許可を受けていない行為は行政法上は違法だが、私法上は有効でありうる。一方、認可を受けていない法律行為は無効
- 準法律行為的行政行為の具体例: 確認・公証・通知・受理の具体例を正確に覚える。特に「発明の特許」は確認であることに注意
- 附款の種類と区別: 条件と負担の違い(負担に違反しても本体の効力に影響しない)、条件と期限の違い(事実の到来が不確実か確実か)が問われる
- 公定力と国家賠償: 違法な処分でも、取消しを経ずに国家賠償請求ができる(最判昭和36年4月21日)という点は超頻出
- 不可争力と無効: 出訴期間が経過しても、無効の行政行為は争える(不可争力は及ばない)
- 自力執行力の根拠: 自力執行には別途、強制執行を認める法律の根拠が必要
- 記述式対策: 行政行為の定義を40字程度で正確に書けるように練習する。公定力・無効の重大明白説なども記述で問われうる
よくある誤解(ひっかけ対策)
- 「公定力があるから違法な処分でも損害賠償は請求できない」は誤り。国家賠償請求には公定力は及ばず、取消しを経ずに請求できます。
- 「出訴期間が過ぎたら一切争えない」は誤り。無効の行政行為であれば、不可争力は及ばず争えます。
- 「行政行為の根拠法があれば自力で強制執行できる」は誤り。強制執行には別の法律の根拠(行政代執行法など)が必要です。
- 「負担に違反したら本体の効力が消える」は誤り。負担違反は本体の効力に当然には影響しません(撤回事由になりうるにとどまる)。
- 「すべての行政行為に不可変更力がある」は誤り。不可変更力は審査請求の裁決などの争訟裁断的行為に限られます。
許可とは、国民が本来有していない特別の権利を新たに設定する行為である。
認可を受けていない法律行為は無効であるが、許可を受けずに行った行為は私法上有効でありうる。
附款としての負担に違反した場合、本体の行政行為の効力は当然に消滅する。
違法な行政処分により損害を受けたとして国家賠償を請求するには、あらかじめ当該処分の取消判決を得ておかなければならない。
取消訴訟の出訴期間が経過した後は、当該行政行為が重大かつ明白な瑕疵により無効である場合であっても、その効力を争うことはできない。
まとめ
行政行為は、行政庁が法律に基づき公権力の行使として一方的に国民の権利義務を決定する行為であり、行政法の中核概念です。行政立法・行政契約・行政指導といった他の行為形式との違い(公権力性・具体性・直接の法的効果)を押さえることが理解の出発点です。
行政行為は法律行為的行政行為と準法律行為的行政行為に大別されます。法律行為的行政行為はさらに命令的行為(下命・禁止・許可・免除)と形成的行為(特許・認可・代理)に分類され、準法律行為的行政行為には確認・公証・通知・受理があります。特に重要なのは許可・特許・認可の三者の区別で、法律上の名称に惑わされず、本来の自由の回復か・新たな権利の設定か・第三者の法律行為の補充かという法的性質を見抜くことが求められます。
附款(条件・期限・負担・撤回権の留保・法律効果の一部除外)とその区別、とりわけ条件と負担の違い(本体への影響の有無)と条件と期限の違い(事実の到来が不確実か確実か)も頻出です。
そして「種類」と並んで検索ニーズの高い「効力」と「瑕疵」も、本記事で全体像を確認しました。公定力(取消されるまで有効・ただし国家賠償には及ばない)、不可争力(出訴期間経過で私人側から争えない・ただし無効には及ばない)、不可変更力(争訟裁断的行為に限る)、自力執行力(別途法律の根拠が必要)という四つの効力は、瑕疵論(無効と取消しの区別=重大明白説)と一本の線でつながっています。
さらに学習を進める方は、効力の各論は行政行為の効力|公定力・不可争力を完全解説、瑕疵の各論は行政行為の瑕疵|無効と取消しの区別を解説、裁量の統制は行政裁量とは|裁量権の逸脱・濫用の判断基準、訴訟による救済は行政事件訴訟法の基本|訴訟類型と取消訴訟の要件へ進むと、行政行為論から救済法までを一貫して整理できます。