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情報通信技術の基礎|ネットワークとセキュリティ

行政書士試験の一般知識で出題される情報通信技術の基礎を解説。TCP/IP・DNS・URLなどインターネットの仕組み、共通鍵・公開鍵・SSL/TLSの暗号化技術、サイバーセキュリティと不正アクセス禁止法を網羅します。

はじめに|行政書士試験と情報通信技術

行政書士試験の一般知識等科目では、情報通信技術(ICT)に関する問題が出題されます。出題範囲は幅広いですが、基本的な用語とその仕組みを理解していれば対応できる問題がほとんどです。

近年の行政書士業務においても、電子申請やオンライン手続が急速に普及しており、ICTの知識は実務面でも不可欠なものとなっています。本記事では、インターネットの仕組み、暗号化技術、サイバーセキュリティの基礎について、試験に必要な範囲で体系的に解説します。

情報通信分野の出題傾向と学習の優先順位

情報通信分野は、一般知識等科目(現在は「基礎知識」科目に再編されていますが、出題の中身は連続しています)のなかでも、対策の費用対効果が高い領域です。理由は次の3点です。

  • 問われる範囲が比較的安定している:暗号化方式、不正アクセス禁止法、情報セキュリティの基本概念、IT用語など、出題テーマが繰り返されています。
  • 法律科目ほど条文の細かい暗記を要しない:仕組みの理解と用語の正確な対応関係を押さえれば、初見の選択肢でも正誤判断ができます。
  • 政令・通達レベルの細部まで問われにくい:大枠の制度趣旨と定義を押さえることが優先されます。

学習の優先順位としては、(1)暗号化技術(共通鍵・公開鍵・電子署名)→(2)不正アクセス禁止法などの法令→(3)情報セキュリティの3要素・攻撃手法の用語→(4)ネットワークの基礎用語の順に固めると効率的です。とりわけ「公開鍵と秘密鍵をどちらの役割で使うか」は、暗号化と電子署名で逆になるため、毎年のように受験生が取りこぼす最頻出ポイントです。

以下のような切り口で問われやすい点を、本記事では各テーマごとに「出題ポイント」「よくある誤解」として整理していきます。

インターネットの仕組み

インターネットとは

インターネットとは、世界中のコンピュータネットワークを相互に接続した巨大なネットワークのことです。1960年代にアメリカ国防総省の研究機関ARPA(現DARPA)が開発したARPANETがその起源とされています。

インターネットは、特定の組織が一元的に管理しているのではなく、世界中のネットワークが自律的に相互接続された分散型のネットワークです。この分散型の構造は、一部のネットワークに障害が発生しても全体が停止しないという耐障害性の高さにつながっています。

ここで押さえておきたいのは、「インターネット全体を統括する単一の中央管理者は存在しない」という点です。ただし、ドメイン名やIPアドレスといった世界で重複してはならない資源(識別子)については、ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)などの国際的な非営利組織が割り当て・調整を行っています。日本国内のドメイン(.jp)やIPアドレスの管理は、JPNIC(日本ネットワークインフォメーションセンター)が担っています。「誰も管理していない=完全に無秩序」ではなく、「中央集権的な運用主体はないが、識別子の整合性は国際機関が調整している」と整理しておくと、選択肢の正誤を判断しやすくなります。

TCP/IPプロトコル

インターネット上でデータをやり取りするための基本的なルール(通信プロトコル)がTCP/IPです。TCP/IPは、以下の2つのプロトコルを中心とした一連の通信規約の総称です。

  • TCP(Transmission Control Protocol): データを確実に相手に届けるための仕組みを提供します。データを「パケット」と呼ばれる小さな単位に分割して送信し、受信側で元のデータに組み立て直します。データの欠落や順序の乱れがあった場合には、再送信を要求して正確な通信を保証します。
  • IP(Internet Protocol): データの送り先を指定し、パケットを適切な経路で目的地まで届ける仕組みを提供します。各コンピュータに割り当てられたIPアドレスによって通信相手を特定します。

パケット通信と回線交換方式の違い

インターネットの通信方式はパケット交換方式と呼ばれます。データを小さな単位(パケット)に分割し、それぞれに宛先情報を付けて送り出す方式です。各パケットは必ずしも同じ経路を通る必要がなく、空いている経路を柔軟に選んで届けられます。これに対し、従来の固定電話で使われてきた回線交換方式は、通信の間ずっと1本の回線を占有する方式です。

パケット交換方式には、(1)回線を効率よく共有できる、(2)一部の経路が混雑・故障しても別経路で届けられる、という利点があります。この「経路の柔軟性」が、前述したインターネットの耐障害性を支える技術的な根拠になっています。

プロトコル階層という考え方

TCP/IPは、通信の役割を層(レイヤ)に分けて整理する階層モデルで理解されます。大まかには、アプリケーション層(HTTP・DNS・メールなど)、トランスポート層(TCP・UDP)、インターネット層(IP)、ネットワークインターフェース層に分かれます。試験で各層の細かい区分まで問われることは多くありませんが、「TCPやUDPはトランスポート層、IPはその下のインターネット層を担う」という上下関係のイメージを持っておくと、用語の混同を防げます。

なお、TCPと並ぶトランスポート層のプロトコルにUDP(User Datagram Protocol)があります。UDPは再送制御を行わず信頼性は劣るものの、その分高速で、動画・音声のストリーミングなどリアルタイム性が重視される通信で使われます。「TCP=確実性重視、UDP=速度重視」という対比で覚えておきましょう。

IPアドレス

IPアドレスは、インターネットに接続されたコンピュータ(機器)を識別するための番号です。現在、以下の2つの規格が使用されています。

  • IPv4: 32ビットのアドレス(例: 192.168.1.1)。約43億個のアドレスを割り当てることができますが、インターネットの普及により枯渇が問題となっています。
  • IPv6: 128ビットのアドレス(例: 2001:0db8:85a3:0000:0000:8a2e:0370:7334)。事実上無制限のアドレスを割り当てることができ、IPv4の枯渇問題を解決するために策定されました。

IPアドレスには、インターネット上で一意に使用されるグローバルIPアドレスと、企業や家庭内のネットワーク内部でのみ使用されるプライベートIPアドレスの2種類があります。

プライベートIPアドレスは組織内では自由に使える反面、そのままではインターネットに出られません。家庭や社内の機器がインターネットに接続できるのは、ルータがNAT(Network Address Translation)という仕組みで、プライベートIPアドレスをグローバルIPアドレスに変換しているためです。1つのグローバルIPアドレスを多数の機器で共有できるため、NATはIPv4枯渇の緩和にも役立っています。

出題ポイント:IPv4とIPv6の数値

IPv4が「32ビット・約43億個」、IPv6が「128ビット」という数値は、そのまま正誤判定の材料になります。「IPv6は64ビットである」「IPv4は約4億個」といった数値のすり替えに注意してください。また、IPv6が登場した主因はアドレス枯渇への対応であって、通信速度の向上が第一目的ではない点も押さえておきましょう。

DNS(Domain Name System)

人間がIPアドレスの数字を覚えて使うのは不便です。そこで、IPアドレスを人間が理解しやすい文字列(ドメイン名)に変換する仕組みがDNS(Domain Name System)です。

たとえば、「www.example.com」というドメイン名は、DNSによって「93.184.216.34」のようなIPアドレスに変換されます。この変換のことを名前解決といいます。

DNSは階層構造になっており、以下のような構成になっています。

  • ルートDNSサーバ: DNSの最上位に位置するサーバ
  • TLD(トップレベルドメイン)サーバ: 「.com」「.jp」などのトップレベルドメインを管理
  • 権威DNSサーバ: 特定のドメインの情報を管理

ドメイン名の階層構造

ドメイン名は、右側ほど上位の階層を表します。たとえば「www.example.co.jp」であれば、最も右の「jp」がトップレベルドメイン(国別の識別子)、「co」が第2レベル(組織種別)、「example」が組織名、「www」がホスト名にあたります。「jp」「com」「org」「net」のように分野・国を区分する最上位の部分がトップレベルドメインだと理解しておけば十分です。

DNSに関連する攻撃として、名前解決の応答を偽装し利用者を偽サイトへ誘導するDNSキャッシュポイズニング(DNSスプーフィング)があります。後述するフィッシングと組み合わされることもあり、用語として押さえておくとよいでしょう。

URL(Uniform Resource Locator)

URLは、インターネット上のリソース(Webページ、画像、ファイルなど)の場所を示す文字列です。URLは以下の要素で構成されています。

https://www.example.com:443/path/page.html?id=123#section1
要素例説明スキームhttps://通信プロトコルホスト名www.example.comサーバのドメイン名ポート番号:443通信に使用するポートパス/path/page.htmlサーバ内のリソースの場所クエリ文字列?id=123パラメータフラグメント#section1ページ内の位置

HTTPとHTTPS

Webページの閲覧に使用される通信プロトコルがHTTP(HyperText Transfer Protocol)です。HTTPは、WebブラウザとWebサーバ間でデータをやり取りするための規約です。

HTTPS(HTTP Secure)は、HTTPにSSL/TLSによる暗号化を加えたものです。HTTPSでは通信内容が暗号化されるため、第三者による盗聴や改ざんを防止できます。現在のWebサイトの多くがHTTPSを採用しています。

知っておきたい周辺用語

ネットワークの基礎用語は、選択肢の語句として単独で問われることがあります。混同しやすいものを整理しておきます。

用語意味LAN建物内・敷地内など限られた範囲のネットワークWANLAN同士を地理的に離れた範囲で接続する広域ネットワークWi-Fi無線でLANに接続する技術(無線LAN)ルータ異なるネットワーク間でパケットの経路を中継する機器プロバイダ(ISP)利用者をインターネットに接続するサービス事業者クラウドサーバやソフトをインターネット越しに利用する形態IoT家電・センサ等の「モノ」をネットに接続する技術

これらは細部より「LANは狭域・WANは広域」「ルータは経路の中継役」といった大枠の対応で十分対応できます。

暗号化技術の基礎

暗号化とは

暗号化とは、データを第三者が読み取れない形式に変換することをいいます。元のデータを平文(ひらぶん)、暗号化されたデータを暗号文といいます。暗号化に使用するデータを暗号鍵、暗号文を元の平文に戻すことを復号といいます。

暗号化技術は、情報通信分野で最も出題頻度が高いテーマです。とくに「共通鍵暗号方式と公開鍵暗号方式の違い」「どの鍵で暗号化し、どの鍵で復号するか」は、ほぼ毎年いずれかの形で問われると考えて差し支えありません。仕組みを言葉で説明できるレベルまで理解しておきましょう。

共通鍵暗号方式(秘密鍵暗号方式)

共通鍵暗号方式は、暗号化と復号に同じ鍵(共通鍵)を使用する方式です。

  • 利点: 処理速度が速い
  • 欠点: 通信相手に安全に鍵を渡す方法が必要(鍵配送問題)。通信相手ごとに異なる鍵が必要なため、通信相手が増えると管理する鍵の数が膨大になる

代表的なアルゴリズムには、AES(Advanced Encryption Standard)があります。AESは現在最も広く使用されている共通鍵暗号方式です。

鍵の数が爆発する問題

共通鍵暗号方式では、通信する2者ごとに別々の鍵が必要です。利用者がn人いて全員が互いに秘密通信をしようとすると、必要な鍵の数は理論上 n×(n-1)÷2 個に膨れ上がります。たとえば10人なら45個、100人なら4,950個です。この「人数が増えるほど鍵管理が困難になる」という性質が、後述する公開鍵暗号方式が必要とされる背景になっています。

公開鍵暗号方式

公開鍵暗号方式は、暗号化と復号に異なる鍵のペア(公開鍵と秘密鍵)を使用する方式です。

  • 公開鍵: 誰に知られてもよい鍵。暗号化に使用
  • 秘密鍵: 所有者だけが保持する鍵。復号に使用

通信の流れは以下のとおりです。

  1. 受信者が公開鍵と秘密鍵のペアを生成する
  2. 受信者が公開鍵を送信者に渡す
  3. 送信者が受信者の公開鍵でデータを暗号化して送信する
  4. 受信者が自分の秘密鍵で暗号文を復号する
  • 利点: 鍵配送問題が解決される。公開鍵は自由に配布できる
  • 欠点: 共通鍵暗号方式に比べて処理速度が遅い

代表的なアルゴリズムには、RSAがあります。

出題ポイント:鍵の対応関係を表で固める

公開鍵暗号方式の核心は、「ペアになっている2つの鍵のうち、一方で暗号化したものは、もう一方でしか復号できない」という性質です。秘匿(データを隠す)目的の暗号化と、本人証明(電子署名)では、使う鍵がちょうど入れ替わります。次の表で対応関係を固めておきましょう。

目的暗号化に使う鍵復号・検証に使う鍵秘匿(公開鍵暗号方式)受信者の公開鍵受信者の秘密鍵本人証明(電子署名)送信者の秘密鍵送信者の公開鍵

秘匿の場合は「公開鍵で暗号化→秘密鍵で復号」、署名の場合は「秘密鍵で署名→公開鍵で検証」です。誰の鍵か(受信者か送信者か)も入れ替わる点に注意してください。

共通鍵方式と公開鍵方式の比較

両方式の違いは、対比表で押さえると記憶に残りやすくなります。

項目共通鍵暗号方式公開鍵暗号方式使う鍵暗号化・復号で同じ鍵公開鍵と秘密鍵のペア処理速度速い遅い鍵配送問題あり(事前に安全に共有が必要)解決される鍵の管理数相手ごとに必要で増えやすい自分のペアのみで済む代表例AESRSA

ハイブリッド暗号方式

実際のインターネット通信では、共通鍵暗号方式と公開鍵暗号方式を組み合わせたハイブリッド暗号方式が使用されています。

  1. 公開鍵暗号方式で共通鍵を安全に交換する
  2. 交換した共通鍵で実際のデータを暗号化する

これにより、公開鍵暗号方式の「鍵配送問題の解決」と共通鍵暗号方式の「高速な処理」という両方の利点を活かすことができます。

ポイントは、「処理の重い公開鍵暗号方式は鍵の受け渡しだけに使い、大量のデータ本体は高速な共通鍵暗号方式で暗号化する」という役割分担です。後述するSSL/TLSは、このハイブリッド方式の代表的な応用例です。

ハッシュ関数

電子署名を理解する前提として、ハッシュ関数を押さえておきましょう。ハッシュ関数とは、任意の長さのデータから、一定の長さの値(ハッシュ値)を生成する関数です。次の性質があります。

  • 同じ入力からは必ず同じハッシュ値が得られる
  • 入力がわずかでも変わると、ハッシュ値は大きく変化する
  • ハッシュ値から元のデータを復元することは事実上できない(一方向性)

この性質により、ハッシュ値はデータの「指紋」のように使え、改ざんの検知に役立ちます。代表的なものにSHA-256などがあります。暗号化(復号して元に戻せる)とハッシュ化(元に戻せない)は別物である点に注意してください。

電子署名

電子署名は、公開鍵暗号方式を応用した技術で、データの作成者の本人確認データの改ざん検知を行うための仕組みです。

電子署名の仕組みは以下のとおりです。

  1. 送信者がデータのハッシュ値を計算する
  2. 送信者が自分の秘密鍵でハッシュ値を暗号化する(これが電子署名)
  3. 送信者がデータと電子署名を送信する
  4. 受信者が送信者の公開鍵で電子署名を復号し、ハッシュ値を取得する
  5. 受信者がデータからハッシュ値を計算し、復号したハッシュ値と一致するか確認する

電子署名では、暗号化に秘密鍵、復号に公開鍵を使用する点に注意してください。通常の公開鍵暗号方式とは鍵の使い方が逆になります。

電子署名が保証するもの・しないもの

電子署名が確認できるのは、(1)本人性(その人の秘密鍵で署名されたこと)(2)完全性(データが改ざんされていないこと)です。秘密鍵は本人しか持たないため、署名できたこと自体が本人であることの証明になり、後から「自分は送っていない」と否認することを防ぐ否認防止の効果もあります。

一方で、電子署名は通信内容そのものを秘密にする(盗聴を防ぐ)ものではありません。秘匿が必要な場合は、別途データ本体の暗号化が必要です。「電子署名=内容の暗号化」と早合点しないようにしましょう。

電子署名法

電子署名の法的効力については、電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)が定めています。一定の要件を満たす電子署名が付された電子文書は、手書き署名や押印と同様に、真正に成立したものと推定される旨が規定されています。

電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
― 電子署名及び認証業務に関する法律 第3条

この「真正な成立の推定」は、民事訴訟における文書の成立の真正(民事訴訟法上、私文書は本人の署名・押印があれば真正に成立したと推定される)を、電子の世界に置き換えたものと理解できます。電子署名が押印に相当する役割を果たす点を押さえておきましょう。

電子証明書と認証局

公開鍵が本当にその人のものであることを証明するのが電子証明書です。電子証明書は、認証局(CA: Certificate Authority)という信頼できる第三者機関が発行します。

電子証明書には、公開鍵の所有者の情報、公開鍵そのもの、認証局の電子署名などが含まれています。

なぜ電子証明書が必要か(中間者攻撃への対応)

公開鍵暗号方式には、「受け取った公開鍵が、本当に通信したい相手のものか」を確かめられないという弱点があります。悪意ある第三者が偽の公開鍵をすり替えれば、通信を盗み見る中間者攻撃(マンインザミドル攻撃)が成立してしまいます。そこで、信頼できる認証局が「この公開鍵は確かにこの人のものだ」と認証局自身の電子署名付きで保証するのが電子証明書です。利用者は認証局を信頼することで、間接的に相手の公開鍵を信頼できる、という信頼の連鎖(信頼チェーン)が成り立ちます。

公的個人認証サービスとマイナンバーカード

日本では、公的個人認証サービス(JPKI)により、マイナンバーカードのICチップに署名用電子証明書と利用者証明用電子証明書が格納されています。これにより、e-Tax(国税電子申告)やマイナポータルなどのオンライン行政手続で、本人確認と電子署名を行うことができます。行政書士が代理して電子申請を行う実務とも関わる重要な仕組みです。

SSL/TLSの仕組み

SSL/TLSとは

SSL(Secure Sockets Layer)およびTLS(Transport Layer Security)は、インターネット上の通信を暗号化するためのプロトコルです。TLSはSSLの後継規格であり、現在使用されているのはTLSですが、慣例的に「SSL」や「SSL/TLS」と呼ばれることがあります。

HTTPSは、HTTPにSSL/TLSを組み合わせたプロトコルであり、Webサイトの安全な通信を実現しています。

SSL/TLSの通信の流れ

SSL/TLSによる暗号化通信は、おおまかに以下の手順で行われます。

  1. クライアント(ブラウザ)がサーバに接続を要求する
  2. サーバが電子証明書(サーバ証明書)をクライアントに送信する
  3. クライアントが認証局の公開鍵でサーバ証明書を検証する
  4. クライアントが共通鍵の素となるデータをサーバの公開鍵で暗号化して送信する
  5. サーバが秘密鍵で復号し、共通鍵を生成する
  6. 以降、共通鍵を使って暗号化通信を行う

この仕組みは、前述のハイブリッド暗号方式を利用したものです。

SSL/TLSが守る3つのこと

SSL/TLSは、単に通信を暗号化するだけではなく、次の3つを同時に実現しています。これらはそのまま情報セキュリティの考え方と結びつきます。

  • 暗号化(盗聴の防止):共通鍵で通信内容を暗号化し、第三者に読み取られないようにする
  • 改ざん検知(完全性の確保):通信途中でデータが書き換えられていないことを検証する
  • サーバの認証(なりすまし防止):サーバ証明書により、接続先が本物のサーバであることを確認する

ブラウザのアドレスバーに表示される鍵マークと「https://」は、このSSL/TLSによる保護が有効であることを示しています。ただし、HTTPS化されたサイトでも、運営者自体が悪意あるフィッシングサイトである可能性は排除できません。「鍵マークがある=完全に安全」とは限らない点に注意が必要です。

サイバーセキュリティの基礎

主なサイバー攻撃の手法

行政書士試験では、代表的なサイバー攻撃の手法について出題されることがあります。

攻撃手法内容フィッシング金融機関等を装った偽のWebサイトやメールで個人情報を詐取マルウェア悪意のあるソフトウェアの総称(ウイルス・ワーム・トロイの木馬等)ランサムウェアデータを暗号化して身代金を要求するマルウェアDoS/DDoS攻撃サーバに大量のアクセスを送信してサービスを停止させるSQLインジェクションWebアプリケーションの脆弱性を利用してデータベースを不正操作クロスサイトスクリプティング(XSS)Webサイトに悪意のあるスクリプトを埋め込み、閲覧者の情報を詐取ブルートフォース攻撃パスワードを総当たりで試して不正ログインを試みる

用語の細かい区別

選択肢では、似た用語の入れ替えで誤りを作る出題が見られます。区別のポイントを補足します。

  • ウイルス・ワーム・トロイの木馬の違い:ウイルスは他のプログラムに寄生して感染を広げ、ワームは単体で自己増殖し、トロイの木馬は有用なソフトを装って侵入します。いずれも「マルウェア(悪意あるソフトウェアの総称)」に含まれます。
  • DoSとDDoSの違い:DoSは1か所からの攻撃、DDoS(分散型)は多数の機器を踏み台にした分散攻撃です。いずれもサービスを停止・妨害する点では同じです。
  • 標的型攻撃:不特定多数ではなく、特定の組織・個人を狙い、業務メールを装うなどして侵入する攻撃です。
  • スパイウェア:利用者に気づかれず情報を収集・送信するソフトです。
  • ソーシャルエンジニアリング:技術ではなく、人をだまして情報を聞き出す手口(電話でのなりすまし、肩越しの覗き見など)を指します。

情報セキュリティの3要素

情報セキュリティの基本概念として、CIAと呼ばれる3つの要素があります。

  1. 機密性(Confidentiality): 許可された者だけが情報にアクセスできること
  2. 完全性(Integrity): 情報が改ざんされていないこと
  3. 可用性(Availability): 必要なときに情報にアクセスできること

これらの3要素をバランスよく確保することが、情報セキュリティ対策の基本です。

出題ポイント:3要素の英語と、追加される要素

CIAは頭文字(Confidentiality・Integrity・Availability)と日本語訳の対応がそのまま問われます。とくに「可用性(Availability)」を「正確性(Accuracy)」などにすり替える誤りが定番です。

なお、近年は上記3要素に加えて、真正性(Authenticity)・責任追跡性(Accountability)・否認防止(Non-repudiation)・信頼性(Reliability)を加えた7要素で語られることもあります。試験対策としては、まずCIAの3要素を確実に押さえ、余力があれば「真正性・否認防止」といった追加要素の語句にも目を通しておくとよいでしょう。

ファイアウォール

ファイアウォールは、ネットワーク間の通信を監視し、設定されたルールに基づいて通信を許可または遮断するセキュリティシステムです。外部ネットワーク(インターネット)と内部ネットワーク(社内LAN等)の境界に設置され、不正なアクセスを防止します。

ファイアウォールはあくまで「境界での通信の出入りを制御する」仕組みであり、すでに侵入したマルウェアの活動や、許可された通信に紛れ込んだ攻撃を完全に防げるわけではありません。そのため、実務では、不正な侵入を検知・防御するIDS/IPS、ウイルス対策ソフト、通信の暗号化、利用者教育などを組み合わせる多層防御の考え方が重要とされます。

認証を強化する仕組み

不正アクセス対策として、近年は本人確認(認証)を強める仕組みが普及しています。用語として押さえておきましょう。

  • 二要素認証・多要素認証:「知識(パスワード)」「所持(スマホ・ICカード)」「生体(指紋・顔)」のうち、種類の異なる2つ以上を組み合わせて認証する方式。パスワード単独より安全性が高まります。
  • ワンタイムパスワード:一定時間ごとに変わる使い捨てのパスワード。盗まれても再利用されにくくなります。
  • 生体認証:指紋・顔・虹彩などの身体的特徴で本人確認する方式。

不正アクセス禁止法

法律の概要

不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)は、コンピュータネットワークへの不正アクセスを禁止する法律です。

この法律の目的は、不正アクセス行為とこれを助長する行為を禁止することで、電気通信回線を通じて行われる電子計算機に係る犯罪の防止と、アクセス制御機能によって実現される電気通信の秩序の維持を図ることにあります。条文上、保護の対象は「アクセス制御機能(ID・パスワード等で利用を制限する仕組み)が付されたコンピュータ」であることが前提になっています。

不正アクセス行為の定義

不正アクセス禁止法が禁止する「不正アクセス行為」には、以下の類型があります。

  1. なりすまし行為: 他人の識別符号(ID・パスワード等)を入力して、アクセス制御機能を突破する行為
  2. セキュリティホール攻撃: アクセス制御機能の脆弱性を利用して、認証なしにアクセスする行為

「アクセス制御機能があること」が前提

不正アクセス禁止法が問題とするのは、あくまでアクセス制御機能(認証の仕組み)を不正に突破する行為です。そのため、もともと誰でも自由に閲覧できる(認証のかかっていない)公開Webサイトを単に見る行為は、この法律の不正アクセス行為には当たりません。「鍵のかかっていないドアを通り抜けても住居侵入にならない場合がある」のと似たイメージで、「突破すべき認証が存在するか」が成否の分かれ目になる点を押さえておきましょう。

また、他人のID・パスワードを正規の利用者の承諾なく入力する行為は、たとえ実害が生じなくても、その行為自体が不正アクセス行為として禁止・処罰の対象になります。

罰則

不正アクセス行為を行った者は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。

また、不正アクセス行為を助長する行為(他人のID・パスワードを正当な理由なく第三者に提供する行為)も処罰の対象とされ、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されます。

罰則の整理

不正アクセス禁止法では、行為の類型ごとに罰則が分かれています。混同しやすいので整理しておきましょう。

行為類型罰則の目安不正アクセス行為3年以下の懲役又は100万円以下の罰金不正アクセス行為を助長する行為(ID等の提供)1年以下の懲役又は50万円以下の罰金他人の識別符号の不正取得・不正保管1年以下の懲役又は50万円以下の罰金フィッシング行為(識別符号の入力を不正に求める)1年以下の懲役又は50万円以下の罰金

数字そのものを細かく問う出題は多くありませんが、「不正アクセス行為本体が最も重く、助長・取得・フィッシングはそれより軽い」という重さの序列のイメージを持っておくと、極端な選択肢を排除できます。

フィッシング行為の禁止

不正アクセス禁止法は、フィッシング行為(不正に利用する目的で、ID・パスワードの入力を求める偽のWebサイトを公開したり、偽のメールを送信する行為)も禁止しています。

なお、不正アクセスやフィッシングをめぐっては、刑法の電子計算機使用詐欺罪・電磁的記録不正作出罪、私電磁的記録不正作出罪なども関わり得ます。試験対策としては、まず不正アクセス禁止法の枠組み(2類型+助長行為+フィッシング)を中心に押さえ、これらの刑法上の犯罪類型が別に存在することも頭の片隅に置いておきましょう。

よくある誤解

  • 「ウイルスを作っただけでは不正アクセス禁止法違反になる」は誤り:コンピュータウイルスの作成・提供は、不正アクセス禁止法ではなく刑法の不正指令電磁的記録に関する罪(いわゆるウイルス作成罪)の問題です。
  • 「公開サイトを閲覧する行為も処罰される」は誤り:認証を突破していなければ不正アクセス行為に当たりません。
  • 「実害がなければ処罰されない」は誤り:他人のID等で認証を突破した時点で、結果の有無にかかわらず成立し得ます。

個人情報保護との関連

個人情報保護法の基本

情報通信技術の発展に伴い、個人情報の保護がますます重要になっています。個人情報保護法は、個人情報の適正な取扱いに関するルールを定めた法律です。

個人情報保護法上の重要な用語を整理しておきましょう。

  • 個人情報: 生存する個人に関する情報であって、特定の個人を識別できるもの(氏名、生年月日等)
  • 要配慮個人情報: 本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴等、不当な差別や偏見が生じないよう取扱いに配慮を要する個人情報
  • 個人データ: 個人情報データベース等を構成する個人情報
  • 個人情報取扱事業者: 個人情報データベース等を事業の用に供している者

個人情報保護法は行政書士試験の頻出テーマであり、情報通信分野と密接に関連します。とくに「生存する個人」に関する情報であること(死者の情報は原則として対象外)、個人識別符号(マイナンバーや指紋データなど、それ単体で個人を識別できる符号)も個人情報に含まれること、要配慮個人情報の取得には原則として本人の同意が必要であることなどは、出題ポイントとして押さえておきましょう。詳細は個人情報保護法の解説記事も併せて確認してください。

マイナンバー制度

マイナンバー(個人番号)は、日本国内に住民票を有する全ての者に付与される12桁の番号です。行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(マイナンバー法)に基づいて運用されています。

マイナンバーは、社会保障・税・災害対策の3分野に利用が限定されており、これ以外の目的で利用することは原則として禁止されています。

マイナンバーは個人情報保護法上の個人識別符号に該当し、その取扱いには通常の個人情報より厳格な制限がかけられています。利用範囲が法律で限定されていること、本人の同意があっても3分野以外への利用拡大は原則認められないことが特徴です。

確認問題

公開鍵暗号方式において、送信者がデータを暗号化する際に使用するのは受信者の秘密鍵であり、受信者が暗号文を復号する際に使用するのは受信者の公開鍵である。○か×か。

○ 正しい × 誤り
解説
公開鍵暗号方式では、送信者が暗号化に使用するのは受信者の「公開鍵」であり、受信者が復号に使用するのは受信者の「秘密鍵」です。記述は公開鍵と秘密鍵の役割が逆になっています。公開鍵は誰に知られてもよい鍵で暗号化に使い、秘密鍵は所有者だけが保持する鍵で復号に使います。なお、電子署名の場合は逆に、秘密鍵で署名(暗号化)し、公開鍵で検証(復号)します。
確認問題

不正アクセス禁止法が禁止する「不正アクセス行為」には、他人のID・パスワードを使用してアクセス制御機能を突破するなりすまし行為と、アクセス制御機能の脆弱性を利用するセキュリティホール攻撃の2つの類型がある。○か×か。

○ 正しい × 誤り
解説
正しい記述です。不正アクセス禁止法は、(1)他人の識別符号(ID・パスワード等)を入力してアクセス制御機能を突破する「なりすまし行為」と、(2)アクセス制御機能の脆弱性(セキュリティホール)を利用して認証なしにアクセスする「セキュリティホール攻撃」の2つの類型を不正アクセス行為として禁止しています。
確認問題

情報セキュリティの3要素(CIA)とは、機密性(Confidentiality)、完全性(Integrity)、正確性(Accuracy)のことである。○か×か。

○ 正しい × 誤り
解説
情報セキュリティの3要素(CIA)は、機密性(Confidentiality)、完全性(Integrity)、可用性(Availability)です。「正確性(Accuracy)」ではなく「可用性(Availability)」が正しい3つ目の要素です。可用性とは、許可された者が必要なときに情報にアクセスできる状態を確保することを意味します。
確認問題

ハイブリッド暗号方式では、処理速度の速い共通鍵暗号方式で共通鍵そのものを安全に交換し、そのうえで処理速度の遅い公開鍵暗号方式を用いてデータ本体を暗号化する。○か×か。

○ 正しい × 誤り
解説
役割が逆です。ハイブリッド暗号方式では、鍵配送問題を解決できる「公開鍵暗号方式」で共通鍵を安全に交換し、処理速度の速い「共通鍵暗号方式」でデータ本体を暗号化します。公開鍵暗号方式は処理が重いため鍵の受け渡しだけに使い、大量のデータは高速な共通鍵暗号方式で扱う、という役割分担が要点です。SSL/TLSもこの仕組みを応用しています。
確認問題

電子署名は、データの作成者の本人性と改ざんされていないこと(完全性)を確認できるが、通信内容そのものを第三者から秘匿(盗聴防止)する機能まで当然に備えているわけではない。○か×か。

○ 正しい × 誤り
解説
正しい記述です。電子署名は、送信者の秘密鍵による署名を公開鍵で検証することで、本人性・完全性・否認防止を確保する技術です。一方、データ本体を読めなくする(盗聴を防ぐ)暗号化機能は電子署名そのものには含まれません。内容を秘匿したい場合は、別途データの暗号化が必要になります。

まとめ|情報通信技術の基礎を固めよう

行政書士試験の一般知識分野における情報通信技術は、基本的な用語と仕組みの理解が問われます。

本記事のポイントを整理すると、以下のとおりです。

  • TCP/IP: インターネット通信の基本プロトコル。TCPが信頼性を、IPが経路制御を担当(UDPは速度重視で信頼性は劣る)
  • DNS: ドメイン名とIPアドレスを変換する仕組み(名前解決)
  • IPv4/IPv6: IPv4は32ビット・約43億個、IPv6は128ビットで枯渇問題に対応
  • 共通鍵暗号方式: 暗号化と復号に同じ鍵を使用。高速だが鍵配送問題がある(AES)
  • 公開鍵暗号方式: 暗号化と復号に異なる鍵を使用。鍵配送問題を解決(RSA)
  • ハイブリッド暗号方式: 公開鍵で共通鍵を交換し、共通鍵でデータ本体を暗号化
  • SSL/TLS: ハイブリッド暗号方式を使った通信の暗号化・改ざん検知・サーバ認証
  • 電子署名: 秘密鍵で署名し公開鍵で検証する(通常の暗号化とは逆)。本人性・完全性を保証
  • 情報セキュリティの3要素: 機密性・完全性・可用性(CIA)
  • 不正アクセス禁止法: なりすまし行為とセキュリティホール攻撃を禁止。本体は3年以下の懲役等

情報通信技術の分野は、専門的な知識がなくても、基本的な概念を正しく理解していれば得点できる分野です。とくに「どの鍵で暗号化し、どの鍵で復号・検証するか」を秘匿と電子署名の両方で言えるようにしておけば、最頻出ポイントを確実に取り切れます。本記事の内容をしっかりと復習し、確実に得点につなげましょう。

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