(公開 2026/01/07) / 民法

連帯債務・保証・連帯保証の比較整理|改正民法対応

連帯債務と連帯保証の違い、保証と連帯保証の違いを条文ベースで比較。催告・検索の抗弁、分別の利益、書面要件、個人根保証の極度額、公正証書までを横断比較表で整理します。

結論|連帯債務・保証・連帯保証の違いを30秒で

3つを分ける決め手は、「主たる債務者がいるかどうか(付従性)」と「補充性があるかどうか(抗弁権の有無)」の2点だけです。まずこの表を頭に入れてください。

連帯債務(単純)保証連帯保証主たる債務者がいるかいない(全員が対等な本来の債務者)いる(保証人は他人の債務を担保)いる付従性なしありあり補充性なしありなし催告の抗弁(452条)なしありなし(454条)検索の抗弁(453条)なしありなし(454条)分別の利益(456条)―(負担部分で処理)あり(人数で頭割り)なし書面がなければ無効しないする(446条2項)する(446条2項)

読み方はこうです。連帯債務と連帯保証は「債権者からいきなり全額請求される」点では同じですが、連帯債務者は自分自身が本来の債務者なのに対し、連帯保証人はあくまで他人の債務を担保しているだけなので、主たる債務が無効・消滅すれば連帯保証人も責任を免れます(付従性)。そして保証と連帯保証を分けるのは補充性、すなわち「まず主債務者に言ってくれ」と突き返せる2つの抗弁権(催告・検索)を持つかどうかです。連帯保証人はこれを持ちません。

以下、この3点(付従性・補充性・書面性)を軸に、9項目の横断比較表と条文を1つずつ確認していきます。

はじめに|「違い」を問う出題が圧倒的に多い理由

連帯債務・保証債務・連帯保証は、行政書士試験の民法分野で最も出題頻度の高いテーマの一つです。しかも出題の形は決まっていて、単独の制度を聞くのではなく「AとBの違い」を聞く形が大半を占めます。連帯債務者には催告の抗弁があるか、連帯保証人には分別の利益があるか、といった具合です。

なぜかというと、この3制度は「債権者が全額を取り立てられる」という結論だけが似ていて、そこに至る理屈がまったく違うからです。結論だけを丸暗記した受験生は、理屈を1段掘り下げた選択肢で必ず崩れます。出題者にとっては、受験生の理解の深さを測るのにこれ以上ない素材なのです。

さらに、2020年4月施行の改正民法(債権法改正)が、この分野を大きく書き換えました。連帯債務における絶対効の範囲の縮小、連帯保証人への請求の相対効化、個人根保証契約の極度額の義務化、事業債務の保証における公正証書の要求——いずれも改正の目玉であり、改正から数年を経た現在も出題の中心であり続けています。

本記事は、3制度の横断比較に徹します。連帯債務そのものの絶対効・相対効・求償の詳細は 連帯債務の絶対効と相対効|改正で何が変わった? で扱っているので、そちらと往復しながら読んでください。また、分割債権・不可分債権・連帯債権まで含めた多数当事者の全体像は 多数当事者の債権関係|不可分と連帯債権を整理 にまとめてあります。

まず具体例で3制度を並べる

議論を具体的にするため、以下の設例を通して使います。

設例:債権者Xが、900万円の債権を持っている。
  • ケース1(連帯債務):A・B・Cの3人が、Xに対して900万円の連帯債務を負う。負担部分は各300万円ずつ。
  • ケース2(保証):主たる債務者Aが900万円を借り、B・Cが単純保証人になった。
  • ケース3(連帯保証):主たる債務者Aが900万円を借り、B・Cが連帯保証人になった。

この3つで、XがBに「900万円払え」と請求したときのBの反論がどう変わるか。ここに3制度の違いが凝縮されています。

ケースBが言えること結論ケース1(連帯債務)「300万円しか払わない」とは言えない。ただしAが弁済すれば債務は消える900万円全額を払う義務ありケース2(保証)「まずAに催告してくれ」(452条)「Aに資力があり執行も容易だ」(453条)言える。さらに「保証人は2人だから450万円だけだ」(456条=分別の利益)も言える抗弁が通れば450万円までケース3(連帯保証)上記のいずれも言えない(454条・分別の利益なし)900万円全額を払う義務あり

ケース1とケース3は、Bが900万円全額を払わされる点で結論が同じです。だからこそ両者は混同されやすく、だからこそ試験に出ます。しかし後述するとおり、Aの債務が取り消されたときAの債務が時効で消えたときに、ケース1とケース3では正反対の結論になります。

民法上の位置づけ(分割債務が原則)

3制度に入る前に、大前提を1つだけ確認します。債務者が複数いる場合、民法の原則は「分割債務」です。

数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。
― 民法 第427条

つまり、A・B・Cの3人が900万円の債務を負っても、特別の合意や法令の規定がなければ、各自300万円ずつの別個の債務になります。連帯債務が成立するのは「法令の規定又は当事者の意思表示によって」連帯とされた場合だけです(436条)。この原則を押さえておくと、後で出てくる分別の利益(456条)が「427条の準用」である理由——共同保証も原則に戻って頭割りになる——がすっきり理解できます。

類型条文特徴分割債権・分割債務427条原則形態。各債権者・債務者が均等に分割された権利・義務を有する不可分債権・不可分債務428条〜431条給付が性質上不可分の場合連帯債権432条〜435条の2改正民法で新設連帯債務436条〜445条各債務者が全額について履行義務を負う保証債務446条〜465条の10主たる債務者が履行しない場合に責任を負う

横断比較表|9項目で3制度を並べる

ここが本記事の核心です。9つの比較項目で3制度を一覧にします。この表を再現できるようになれば、この分野の択一はほぼ落としません。

完全比較表

比較項目連帯債務(単純)保証連帯保証法的性質各自が独立した本来の債務者。主従なし主たる債務を担保する従たる債務主たる債務を担保する従たる債務成立原因法令の規定又は当事者の意思表示(436条)債権者と保証人の保証契約債権者と保証人の保証契約+連帯の特約付従性なし(他人の債務が消えても自分は残る)あり(447条・448条・457条2項3項)あり随伴性なし(債権譲渡でも各債務は各自のもの)あり(主債権が移れば保証債務も移る)あり補充性なしありなし催告の抗弁(452条)なしありなし(454条)検索の抗弁(453条)なしありなし(454条)分別の利益(456条)―(対内的には負担部分で処理)あり(保証人の頭数で分割)なし絶対効の範囲更改(438条)・相殺(439条1項)・混同(440条)のみ。他は相対効(441条)主債務者に生じた事由は保証人に及ぶ(457条)。逆向きは原則及ばない438条・439条1項・440条・441条を準用(458条)求償の仕組み各自の負担部分に応じて求償(442条)主債務者に全額求償(459条・462条)。委託の有無で範囲が変わる同左(連帯保証でも求償の構造は保証と同じ)書面要件なし(口頭でも成立)書面(電磁的記録)でなければ無効(446条2項3項)書面(電磁的記録)でなければ無効個人根保証の極度額必要(465条の2第2項)必要(465条の2第2項)

表の読み方——分岐点は3つしかない

12行もある表ですが、覚えるべき分岐点は3つです。

分岐点①:主たる債務があるか(=付従性・随伴性の有無)
連帯債務者は「自分の債務」を負っています。だから他の連帯債務者の債務が取り消されても、自分の債務はびくともしません(437条)。これに対し、保証人・連帯保証人は「他人の債務」を担保しているだけなので、主たる債務が無効・取消し・弁済で消えれば、保証債務も当然に消えます。付従性は保証(連帯保証を含む)にあり、連帯債務にない——ここが第1の分岐点です。

分岐点②:補充性があるか(=催告・検索の抗弁の有無)
単純保証人だけが「まず主債務者に言ってくれ」と突き返せます。連帯債務者は自分が本来の債務者なので突き返す相手がいませんし、連帯保証人は454条で明文的に奪われています。補充性は単純保証にだけある——これが第2の分岐点です。

分岐点③:頭数で割れるか(=分別の利益の有無)
保証人が複数いる場合、単純保証なら456条により427条が準用され、頭数で分割されます。連帯保証人にはこれがありません。分別の利益は単純保証(共同保証)にだけある——これが第3の分岐点です。

この3つの分岐点で、表の大半は導けます。逆にいえば、分岐点だけ覚えて表は導出するのが効率的です。

「連帯債務 vs 連帯保証」の違いだけを取り出す

受験生が最も混同するのがこの2つです。両者は「債権者から全額を請求される」点で同じなので、違いが出るのは主たる債務者側で何かが起きたときに限られます。

場面連帯債務(Bは連帯債務者)連帯保証(Bは連帯保証人、Aが主債務者)Xが最初からBに全額請求できるかできる(436条)できる(454条により抗弁なし)Aの債務が制限行為能力を理由に取り消されたBの債務は残る(437条)Bの債務も消える(付従性)※449条の例外ありAの債務が時効で消滅したBの債務は残る(441条・相対効)Bは時効を援用でき、責任を免れる(付従性・145条)Xが主債務Aを免除したBの債務は残る(441条・相対効)Bの債務も消える(付従性)XがBに請求した(時効の完成猶予)Aには及ばない(441条・相対効)Aには及ばない(458条→441条準用)XがAに請求した―(対等なので「Aに」という概念がない)Bにも及ぶ(457条1項)Bが全額弁済した後の求償Aらに負担部分に応じて求償(442条)Aに全額求償(459条等)Bの負担部分ある(内部的に300万円など)原則ゼロ(最終的な負担は主債務者Aが負う)

この表の3行目と4行目、そして5行目と6行目の非対称が最頻出です。

連帯保証では、主債務者→連帯保証人の方向には事由が及ぶ(457条1項)が、連帯保証人→主債務者の方向には及ばない(458条→441条)という一方通行になっています。改正前は連帯保証人への請求が主債務者にも及んだので、この非対称は改正で生まれたものです。

そして、求償の場面で最も差が出ます。連帯債務者Bが900万円を弁済すれば、Bは自分の負担部分300万円を引いた600万円をA・Cに求償します。これに対し連帯保証人Bが900万円を弁済すれば、Bは主債務者Aに900万円全額を求償できます。連帯保証人の負担部分はゼロだからです。

「保証 vs 連帯保証」の違いだけを取り出す

こちらは454条の一条だけが違いを生みます。

比較項目(単純)保証連帯保証根拠となる差異―454条(連帯の特約)催告の抗弁(452条)ありなし検索の抗弁(453条)ありなし分別の利益(456条)ありなし付従性・随伴性ありあり(同じ)書面要件(446条2項)ありあり(同じ)主債務者に生じた事由の効力(457条)及ぶ及ぶ(同じ)保証人に生じた事由の効力原則及ばない438条・439条1項・440条は主債務者にも及ぶ(458条)求償権あり(459条以下)あり(同じ)

「連帯保証は付従性がない」と書いてあったら誤りです。連帯保証も保証の一種なので、付従性も随伴性も書面要件も、単純保証とまったく同じです。連帯保証で失われるのは補充性まわりの3点(催告の抗弁・検索の抗弁・分別の利益)だけ、と覚えてください。

確認問題

連帯保証は、通常の保証と異なり主たる債務に対する付従性を有しないため、主たる債務が弁済により消滅しても連帯保証債務は存続する。○か×か。

○ 正しい × 誤り
解説
連帯保証も保証の一種であり、付従性を有します。したがって主たる債務が弁済等により消滅すれば、連帯保証債務も消滅します。連帯保証において失われるのは補充性に関する3点(催告の抗弁452条・検索の抗弁453条・分別の利益456条)であって、付従性・随伴性は通常の保証と同じです。「連帯保証は付従性がない」という記述は典型的な誤りの選択肢です。

連帯債務の要点整理(436条〜445条)

3制度を比較するうえで最低限必要な範囲に絞って、連帯債務を確認します。絶対効・相対効の理屈、覚え方、求償の詳細は 連帯債務の絶対効と相対効|改正で何が変わった? で徹底的に扱っているので、そちらを参照してください。

連帯債務の意義(436条)

債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。
― 民法 第436条

連帯債務とは、数人の債務者が、同一の給付について、各自が独立して全部の履行をする義務を負う債務関係です。ポイントは3つあります。

  1. 成立には「法令の規定又は当事者の意思表示」が必要。原則は分割債務(427条)なので、連帯は例外です。
  2. 債権者は誰に対しても、いつでも、全部でも一部でも請求できる。順序の制約は一切ありません。
  3. 各債務は独立している。連帯債務者の一人について法律行為の無効・取消しの原因があっても、他の連帯債務者の債務は効力を妨げられません(437条)。

3番目の437条が、保証との決定的な違いです。保証には付従性があるので、主たる債務が取り消されれば保証債務も消えます(ただし449条の特則あり)。

絶対効は3事由のみ、原則は相対効(438条〜441条)

改正民法の最重要ポイントの一つが、連帯債務における絶対効の範囲の縮小です。

事由改正前改正後条文弁済絶対効絶対効(債権消滅の当然の効果)更改絶対効絶対効438条相殺絶対効絶対効439条1項混同絶対効絶対効440条請求絶対効相対効441条免除絶対効相対効441条時効完成絶対効相対効441条
第四百三十八条、第四百三十九条第一項及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。ただし、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。
― 民法 第441条

条文が「第438条、第439条第1項及び前条(=440条)」と3つを名指しで除外し、それ以外はすべて相対効だと宣言している構造を、条文の並びごと覚えてしまうのが確実です。弁済が表に入っているのに条文がないのは、弁済は債権そのものを消すので「効力の及び方」を論じるまでもないからです。

なお、439条2項は要注意です。反対債権を持つ連帯債務者が相殺を援用しない間、他の連帯債務者は相殺を援用できるのではなく、その負担部分の限度で履行を拒めるだけです。改正前は援用できるとされていた部分が、履行拒絶権に置き換わりました。

求償は負担部分に応じて(442条)

連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する。
― 民法 第442条1項

改正前は自己の負担部分を超えて弁済した場合にのみ求償権が発生すると解されていましたが、改正民法は「自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず」求償権を認めることを明文化しました。設例でいえば、負担部分300万円のBが90万円だけ弁済しても、A・Cに各30万円を求償できます。

この「負担部分に応じた按分求償」が、保証人の「全額求償」と対照的であることを必ず意識してください。両者の求償構造の違いは、後の「保証人の求償権」の章で表にまとめます。

保証債務の3つの性質|付従性・随伴性・補充性

保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
― 民法 第446条1項

保証債務は、主たる債務者が債務を履行しない場合に、保証人が代わって履行する責任を負う制度です。446条1項の「しないときに」という文言に、保証債務の性格がすべて表れています。保証人の債務は、主たる債務があって初めて意味を持つ従たる債務であり、主たる債務者が払わないときにはじめて登場する補充的な債務なのです。

ここから、保証債務の3性質——付従性・随伴性・補充性——が導かれます。このうち連帯保証で失われるのは補充性だけである、というのが前章までの結論でした。以下、1つずつ条文で確認します。

付従性|主たる債務の運命に従う

付従性は、成立・内容・消滅の3段階に分けて理解します。

① 成立における付従性
主たる債務が成立しなければ、保証債務も成立しません。主たる債務の契約が公序良俗違反で無効なら、保証債務も無効です。

ただし例外があります。行為能力の制限を理由に取り消しうる債務を、その取消原因を知りながら保証した場合、保証人は独立の債務を負担したものと推定されます。

行為能力の制限によって取り消すことができる債務を保証した者は、保証契約の時においてその取消しの原因を知っていたときは、主たる債務の不履行の場合又はその債務の取消しの場合においてこれと同一の目的を有する独立の債務を負担したものと推定する。
― 民法 第449条

出題ポイント:449条は「取消原因を知っていたとき」に限られること、効果は「みなす」ではなく「推定する」ことの2点が狙われます。未成年者の借入れを、それと知りつつ親が保証した場合が典型例です。

② 内容における付従性
保証債務は主たる債務より重くなりません。

保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する。
― 民法 第448条1項

主たる債務の目的又は態様が保証契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は加重されない。
― 民法 第448条2項

448条2項は改正で新設された規定です。保証契約を結んだ後に債権者と主債務者が勝手に利率を上げたり期限を短くしたりしても、保証人の負担は増えません。逆に、主たる債務が軽くなった場合には保証債務も軽くなる(減縮する)というのが付従性の帰結です。

一方、保証債務についてだけ違約金や損害賠償の額を約定することは可能です(447条2項)。これは「主たる債務より重い」ことにはならない、と条文が明示しています。

保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する。
― 民法 第447条1項

③ 消滅における付従性
主たる債務が弁済・免除・時効・相殺などで消滅すれば、保証債務も当然に消滅します。連帯保証でも同じであることを繰り返し確認してください。連帯債務では免除も時効完成も相対効ですが(441条)、保証・連帯保証では主たる債務が消えれば保証人も助かります。ここが連帯債務と連帯保証を分ける最大の実益です。

随伴性|主債権が移れば保証債務も移る

主たる債務が移転すれば、保証債務もこれに随伴して移転します。主たる債権が第三者に譲渡された場合、保証人は新たな債権者に対しても保証債務を負います。保証人の承諾は不要で、債権譲渡の対抗要件(467条)を主債務者に対して具備すれば、保証人にも効力が及ぶと解されています。

債権譲渡そのものの対抗要件は 債権譲渡の対抗要件と改正ポイント で詳しく扱っています。

補充性|「まず主債務者に言ってくれ」と言える

保証人は、主たる債務者が履行しない場合にはじめて履行義務を負います。この補充性を具体化したのが、催告の抗弁権(452条)と検索の抗弁権(453条)という2つの抗弁権です。そして連帯保証人はこの2つを持ちません(454条)。

この2つの抗弁権は本記事の主要論点なので、それぞれ独立の章で条文から詳しく見ていきます。

主たる債務者について生じた事由の効力(457条)

付従性の帰結として、主債務者側で起きたことは保証人に有利にも不利にも及びます。457条は3つの項に分かれており、いずれも頻出です。

主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は、保証人に対しても、その効力を生ずる。
― 民法 第457条1項

保証人は、主たる債務者が主張することができる抗弁をもって債権者に対抗することができる。
― 民法 第457条2項

主たる債務者が債権者に対して相殺権、取消権又は解除権を有するときは、これらの権利の行使によって主たる債務者がその債務を免れるべき限度において、保証人は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
― 民法 第457条3項

457条1項は保証人に不利に働く規定です。債権者が主債務者に請求して時効の完成猶予・更新が生じれば、保証人に対する関係でも同じ効果が生じます。これは単純保証でも連帯保証でも同じです。

457条2項は保証人に有利に働きます。主債務者が持っている抗弁(弁済・同時履行の抗弁・消滅時効など)を、保証人が自分の立場で主張できます。

457条3項が改正の要注意ポイントです。主債務者が相殺権・取消権・解除権を持っている場合、保証人はそれを「行使できる」のではなく、「履行を拒める」だけです。改正前は保証人が主債務者の相殺権を援用できるとする解釈もありましたが、改正民法は履行拒絶権に整理しました。「保証人は主たる債務者の取消権を行使できる」と書いてあれば誤りです。

連帯保証人について生じた事由の効力(458条)

457条とちょうど逆向き、連帯保証人の側で起きたことが主債務者に及ぶかを定めるのが458条です。

第四百三十八条、第四百三十九条第一項、第四百四十条及び第四百四十一条の規定は、主たる債務者と連帯して債務を負担する保証人について生じた事由について準用する。
― 民法 第458条

この条文は改正で準用先が入れ替わりました。

改正前改正後準用される条文旧434条〜旧440条(請求・更改・相殺・免除・混同・時効の完成)438条・439条1項・440条・441条連帯保証人への請求主債務者に及ぶ(絶対効)主債務者に及ばない(441条準用=相対効)連帯保証人への免除主債務者に及ぶ主債務者に及ばない(相対効)連帯保証人の時効完成主債務者に及ぶ主債務者に及ばない(相対効)連帯保証人との更改・相殺・混同及ぶ及ぶ(438条・439条1項・440条準用)

改正の実務的インパクトは大きく、債権者は主債務者と連帯保証人の双方に別々に時効管理をしなければならなくなりました。改正前は連帯保証人に催告しておけば主債務の時効も止められたのです。

そして、457条1項と458条の非対称に注意してください。

  • 主債務者への請求 → 連帯保証人に及ぶ(457条1項)
  • 連帯保証人への請求 → 主債務者に及ばない(458条→441条)

方向によって結論が逆になります。ここは「上(主債務者)から下(保証人)へは流れるが、下から上へは流れない」と、水の流れでイメージすると定着します。

確認問題

債権者が連帯保証人に対して裁判外の請求をした場合、主たる債務者に対しても時効の完成猶予の効力が生じる。○か×か。

○ 正しい × 誤り
解説
改正民法458条は438条・439条1項・440条・441条を準用しており、請求は441条の相対的効力の原則に服します。したがって連帯保証人への請求は主たる債務者に効力を生じません。改正前は旧458条が旧434条(請求の絶対効)を準用していたため主たる債務者にも及びましたが、改正で結論が逆転しました。なお逆方向、すなわち主たる債務者への請求は457条1項により連帯保証人にも及びます。

連帯保証(454条)|条文はたった一行

保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前二条の権利を有しない。
― 民法 第454条

連帯保証とは、保証人が主たる債務者と連帯して債務を負担する保証です。条文はこの一行しかありません。「前二条」とは452条(催告の抗弁)と453条(検索の抗弁)を指します。

連帯保証の成立原因

連帯保証が成立するのは、次のいずれかの場合です。

  1. 当事者の特約(実務上はほぼすべてこれ。契約書に「連帯して保証する」と書かれている)
  2. 商行為による債務の保証(商法511条2項。主たる債務が商行為によって生じたとき、又は保証が商行為であるときは、保証は当然に連帯保証になる)

2番目の商法511条2項は見落とされがちですが、保証が「当然に」連帯保証になる法定連帯であり、択一で問われることがあります。

連帯保証で失われるもの・失われないもの

連帯保証で失われるか催告の抗弁(452条)失われる(454条)検索の抗弁(453条)失われる(454条)分別の利益(456条)失われる(解釈上。連帯保証人は全額責任を負う)付従性失われない随伴性失われない書面要件(446条2項)失われない457条2項の抗弁対抗失われない求償権(459条以下)失われない

条文上明記されているのは催告の抗弁・検索の抗弁だけですが、分別の利益も連帯保証人には認められないというのが確立した理解です。連帯保証人は「主たる債務者と連帯して」全額の債務を負担する以上、他の保証人がいることを理由に責任を縮減する余地がないからです。

連帯保証は、通常の保証よりも債権者にとってはるかに有利な担保手段であり、実務上は連帯保証が圧倒的に多く利用されています。「保証人になってくれ」と言われて署名する書面は、ほぼ例外なく連帯保証です。

保証人保護の新規定(改正民法の重要ポイント)

個人根保証の極度額(465条の2)

改正前は、貸金等根保証契約についてのみ極度額の定めが必要とされていましたが、改正民法は、すべての個人根保証契約について極度額の定めを義務づけました。

一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものの全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。
― 民法 第465条の2第1項

個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。
― 民法 第465条の2第2項

極度額の定めのない個人根保証契約は無効です。この規定は、例えば賃貸借契約における個人の連帯保証人にも適用されるため、実務上の影響が極めて大きいものです。

個人根保証契約の元本確定事由(465条の4)

以下の事由が生じた場合、個人根保証契約の主たる債務の元本が確定します。

  1. 債権者が保証人の財産について強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき
  2. 保証人が破産手続開始の決定を受けたとき
  3. 主たる債務者又は保証人が死亡したとき

事業に係る債務の保証(465条の6〜465条の10)

改正民法は、事業に係る債務の保証について、特に個人の保証人を保護するための規定を新設しました。

公正証書による保証意思の確認(465条の6)

事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。
― 民法 第465条の6第1項

事業のために負担する貸金等債務の保証をする場合、保証契約締結の日前1か月以内に公正証書で保証意思を表示しなければなりません。この規定に違反した保証契約は無効です。

ただし、以下の者は公正証書作成の適用除外とされています(465条の9)。

  • 主たる債務者が法人である場合の理事・取締役・執行役等
  • 主たる債務者が法人である場合の総株主の議決権の過半数を有する者等
  • 主たる債務者が個人である場合の共同して事業を行う者又は配偶者で事業に現に従事している者

情報提供義務(465条の10)

主たる債務者は、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証又は主たる債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保証の委託をするときは、委託を受ける者に対し、次に掲げる事項に関する情報を提供しなければならない。
― 民法 第465条の10第1項

主たる債務者が保証の委託をする場合、保証人になろうとする者に対して、以下の情報を提供しなければなりません。

  1. 財産及び収支の状況
  2. 主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況
  3. 主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容

主たる債務者がこの情報提供義務に違反し、保証人が誤認して保証契約を締結した場合、債権者がその事実を知り又は知ることができたときは、保証人は保証契約を取り消すことができます(465条の10第2項)。

3制度の比較表

項目連帯債務保証債務連帯保証主従の関係なし(対等)あり(主たる債務に従属)あり(主たる債務に従属)付従性なしありあり補充性なしありなし催告の抗弁権なしあり(452条)なし(454条)検索の抗弁権なしあり(453条)なし(454条)請求の効力(改正後)相対効(441条)相対効相対効(458条→441条)時効の効力(改正後)相対効(441条)主たる債務の時効は保証債務にも影響(付従性)主たる債務の時効は連帯保証にも影響(付従性)書面要件なしあり(446条2項)あり(446条2項)個人根保証の極度額―必要(465条の2)必要(465条の2)
確認問題

改正民法において、連帯債務者の一人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても効力を生じる(絶対効である)。○か×か。

○ 正しい × 誤り
解説
改正民法441条により、連帯債務者の一人について生じた事由は、原則として他の連帯債務者に対して効力を生じません(相対効の原則)。絶対効が認められるのは、更改(438条)、相殺(439条1項)、混同(440条)の3事由のみです。請求は改正により相対効に変更されました。
確認問題

個人根保証契約において極度額の定めがない場合、その保証契約は無効である。○か×か。

○ 正しい × 誤り
解説
民法465条の2第2項により、個人根保証契約は極度額を定めなければ効力を生じません。改正前は貸金等根保証契約についてのみ極度額の定めが必要でしたが、改正民法はすべての個人根保証契約に極度額の定めを義務づけました。
確認問題

事業のために負担した貸金等債務の保証をする場合、保証契約の締結に先立ち、公正証書で保証意思を表示しなければならないが、主たる債務者が法人であるときのその法人の取締役にはこの要件は適用されない。○か×か。

○ 正しい × 誤り
解説
民法465条の9により、主たる債務者が法人である場合のその法人の理事、取締役、執行役等は、公正証書による保証意思の確認が不要とされています(適用除外)。これは、これらの者は事業内容を熟知しており、保証のリスクを十分に理解できるため、公正証書による保護の必要性が低いと考えられるためです。

まとめ

本記事では、連帯債務・保証債務・連帯保証の3制度を比較整理し、改正民法の重要ポイントを解説しました。

要点を3つに整理します。

  1. 連帯債務の絶対効の縮小: 改正民法により、絶対効は更改・相殺・混同の3事由のみに縮小され、請求・免除・時効完成は相対効になった。この変更は試験の頻出ポイント。
  2. 連帯保証への請求も相対効に変更: 改正民法により、連帯保証人に対する請求も主たる債務者に対して相対効となった。債権者は時効管理に注意が必要。
  3. 保証人保護の新規定: 個人根保証の極度額の義務化(465条の2)、公正証書による保証意思の確認(465条の6)、情報提供義務(465条の10)は、改正民法の中でも最も出題可能性が高いテーマ。

改正民法の多数当事者の債権関係は、出題者にとって非常に問いやすいテーマです。改正前との比較を意識しつつ、正確な知識を身につけましょう。

FAQ(よくある質問)

Q1. 連帯債務と不真正連帯債務の違いは何ですか?

連帯債務は、法令又は当事者の意思表示によって成立し、民法の連帯債務の規定(436条以下)が適用されます。不真正連帯債務は、共同不法行為(719条)のように、法律の規定や事実上の関係から複数の債務者が全額について責任を負う場合で、連帯債務の規定が当然には適用されないとされてきました。ただし、改正民法で絶対効の範囲が縮小されたことにより、両者の実質的な違いは小さくなっています。

Q2. 保証契約を口頭で締結した場合、どうなりますか?

無効です。民法446条2項は「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない」と規定しています。電磁的記録でも有効です(446条3項)。口頭での保証の約束には法的拘束力がありません。

Q3. 改正民法で、連帯保証人に対する請求が相対効になったことの実務的影響は?

改正前は、連帯保証人に対する請求は主たる債務者に対しても効力を生じた(時効の完成猶予・更新の効力が及んだ)ため、債権者は連帯保証人に請求するだけで主たる債務の時効管理ができました。改正後は相対効になったため、債権者は主たる債務者と連帯保証人の両方に対して別々に時効管理をする必要があります。

Q4. 個人根保証の極度額はいくらに設定すべきですか?

民法には極度額の上限規定はありません。ただし、極度額が著しく高額な場合には、公序良俗違反(90条)として無効となる可能性があります。実務上は、賃貸借契約の保証では賃料の1〜2年分程度が目安とされることが多いです。

Q5. 連帯債務者の一人が相殺を援用しない場合、他の連帯債務者はどうできますか?

改正民法439条2項により、連帯債務者の一人が債権者に対して反対債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用しないときは、他の連帯債務者は、その連帯債務者の負担部分の限度で、債権者に対して債務の履行を拒むことができます(履行拒絶の抗弁)。改正前は他の連帯債務者が相殺を援用できるとされていましたが、改正により履行拒絶にとどまることになりました。

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