環境法の基礎|環境基本法とアセスメント制度
行政書士試験の一般知識で問われる環境法の基礎を解説。環境基本法の理念と環境権の議論、環境基本計画、環境アセスメント法の仕組み、公害対策の歴史、循環型社会形成推進基本法まで体系的に整理します。
はじめに|環境法が行政書士試験で出題される理由
行政書士試験の一般知識等科目では、環境問題に関する法制度が出題されることがあります。環境法は、私たちの日常生活に密接に関わるテーマであるだけでなく、行政書士の実務においても産業廃棄物処理業の許可申請や環境関連の届出など、環境法の知識が求められる場面があります。
環境法は出題範囲が広く、しかも条文知識・判例・時事(地球温暖化対策、循環経済、生物多様性など)が複合的に問われる分野です。受験生としては「すべてを深く覚える」のではなく、頻出の切り口を押さえることが効率的です。具体的には、(1)環境権が判例上認められているか、(2)環境基準の法的性格、(3)環境アセスメント手続の流れと対象事業、(4)四大公害訴訟の対応関係、(5)3Rの優先順位、(6)パリ協定と京都議定書の違い——この6点が繰り返し問われてきました。本記事ではこれらを軸に、土台となる正確な条文・判例知識へと深掘りしていきます。
本記事では、環境基本法を中心に、環境アセスメント法、公害対策関連法、循環型社会形成推進基本法など、行政書士試験で問われる可能性のある環境法の基礎知識を体系的に解説します。
環境法の全体構造をつかむ
環境法は単一の法律ではなく、基本法 → 個別法 → 計画・基準という三層構造で理解すると整理しやすくなります。最上位に理念を定める環境基本法があり、その下に大気・水・土壌・廃棄物などの分野別個別法が広がり、それらを束ねる形で環境基本計画や環境基準が機能します。
この構造を頭に入れておくと、「環境基準は理念寄りの目標であって規制基準そのものではない」「個別法こそが直接の罰則を伴う規制を担う」といった頻出論点の理解が一気に深まります。
環境権の議論
環境権とは
環境権とは、「良好な環境を享受する権利」をいいます。環境権は、高度経済成長期の深刻な公害問題を背景に、1970年代に主張されるようになった比較的新しい権利概念です。
環境権の憲法上の根拠としては、以下の条文が挙げられています。
- 憲法13条(幸福追求権): 良好な環境の中で生活することは、幸福追求権の一内容である
- 憲法25条(生存権): 「健康で文化的な最低限度の生活」には、良好な環境が含まれる
環境権の理論的背景には、公害が発生してから損害賠償で事後的に救済するという従来の枠組みでは被害の回復が困難である、という反省があります。そこで「良好な環境そのものを権利として保護し、開発行為を事前に差し止められるようにすべきだ」という主張が学説から提唱されました。1970年の日本弁護士連合会の人権擁護大会(大阪)で環境権が提唱されたことが、その嚆矢としてよく知られています。
環境権の法的性格
環境権が裁判上の具体的な権利として認められるかについては、学説・判例ともに消極的な立場が有力です。
判例は、環境権を裁判上の具体的な権利として正面から認めてはいません。公害訴訟においては、環境権ではなく、人格権(生命・身体・健康に対する権利)や物権(所有権に基づく妨害排除請求)を根拠として救済が図られてきました。
環境権が具体的な権利として認められにくい理由としては、以下の点が指摘されています。
- 権利の内容が不明確: 「良好な環境」の範囲や程度が明確でない
- 権利の主体が不明確: 環境権を行使できる者の範囲が確定しにくい
- 権利の内容が広すぎる: あらゆる開発行為の差止めを認めることにつながりかねない
人格権による救済——大阪空港訴訟
環境権が認められない代わりに、判例が救済の根拠として用いてきたのが人格権です。代表例が大阪国際空港(伊丹空港)の周辺住民が騒音・排気ガス被害を訴えた大阪空港公害訴訟です。
個人の生命、身体、精神および生活に関する利益は、各人の人格に本質的なものであって、その総体を人格権ということができ、このような人格権は何人もみだりにこれを侵害することは許されず、その侵害に対してはこれを排除する権能が認められなければならない
― 大阪高判昭和50年11月27日(大阪空港訴訟・控訴審)
控訴審は人格権に基づく夜間飛行差止めを認めました。もっとも、最高裁(最大判昭和56年12月16日)は、空港の供用は運輸大臣(当時)の航空行政権の行使にあたるとして、民事上の差止請求としては不適法であると判断し、過去の損害賠償と将来分の一部について争われる結果となりました。試験対策上は、「環境権」ではなく「人格権」が救済の足場になったという整理が重要です。
試験対策のポイント
行政書士試験では、「環境権が判例上認められているか」が問われることがあります。判例は環境権を具体的な権利として正面から認めていないという点を押さえておきましょう。
頻出の角度を整理すると次のとおりです。
「環境権が判例で確立した権利として認められている」という選択肢は誤りになる、という結論を確実に押さえておけば失点を防げます。
環境基本法の概要
環境基本法の制定経緯
環境基本法は、1993年(平成5年)に制定された日本の環境政策の基本となる法律です。それまでの環境行政は、1967年に制定された公害対策基本法と1972年に制定された自然環境保全法を中心に行われていましたが、地球温暖化やオゾン層破壊といった地球環境問題への対応が求められるようになり、より包括的な法律として環境基本法が制定されました。
環境基本法の制定に伴い、公害対策基本法は廃止されました。一方、自然環境保全法は廃止されず、現在も自然環境の保全を担う個別法として存続しています。「公害対策基本法は廃止、自然環境保全法は存続」という対比は出題されやすいので注意しましょう。
なお、環境行政を一元的に担う組織として、2001年(平成13年)の中央省庁再編により環境庁が環境省に格上げされました。制定の流れ(1967年公害対策基本法 → 1993年環境基本法 → 2001年環境省発足)を年代順に押さえておくと、時系列を問う問題に対応できます。
環境基本法の基本理念
環境基本法は、以下の3つの基本理念を掲げています。
- 環境の恵沢の享受と継承(3条): 現在及び将来の世代の人間が健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受するとともに、環境が将来にわたって維持されるようにすること
- 環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築(4条): 環境の保全は、社会経済活動その他の活動による環境への負荷をできる限り低減することその他の環境の保全に関する行動がすべての者の公平な役割分担の下に自主的かつ積極的に行われるようになることによって、健全で恵み豊かな環境を維持しつつ、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会が構築されることを旨として行われなければならない
- 国際的協調による地球環境保全の積極的推進(5条): 地球環境保全は、日本の能力を活かして国際的協調の下に積極的に推進されなければならない
3条の条文は、将来世代への配慮(世代間衡平)を明文で打ち出している点が特徴です。
環境の保全は、環境を健全で恵み豊かなものとして維持することが人間の健康で文化的な生活に欠くことのできないものであること及び生態系が微妙な均衡を保つことによって成り立っており人類の存続の基盤である限りある環境が、人間の活動による環境への負荷によって損なわれるおそれが生じてきていることにかんがみ、現在及び将来の世代の人間が健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受するとともに人類の存続の基盤である環境が将来にわたって維持されるように適切に行われなければならない
― 環境基本法 第3条
環境基本法における主体の責務
環境基本法は理念だけでなく、各主体の責務を分けて定めている点も出題ポイントです。
事業者・国民にも責務を課している点(国・地方公共団体だけではない)は、「公平な役割分担」という4条の理念を具体化したものと理解すると記憶に残ります。
環境基本法の主な施策
環境基本法は、環境保全のための施策として、以下のものを定めています。
- 環境基本計画の策定(15条)
- 環境基準の設定(16条)
- 公害防止計画の策定(17条)
- 環境影響評価(アセスメント)の推進(20条)
- 経済的措置(22条)
- 環境教育・環境学習の振興(25条)
環境基準
環境基本法16条に基づき、政府は「環境基準」を定めることとされています。環境基準とは、人の健康を保護し、生活環境を保全するうえで維持されることが望ましい基準です。
政府は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるものとする
― 環境基本法 第16条第1項
重要な点として、環境基準は行政上の目標であり、規制基準(直接的な法的拘束力を持つ基準)ではないことを理解しておきましょう。環境基準は、各種の公害規制法令における規制基準を設定する際の参考となるものですが、環境基準自体が直接に事業者を規制するものではありません。
ここで混同しやすいのが、環境基準と排出基準(規制基準)の違いです。両者を表で対比しておきます。
「環境基準を超える排出をした事業者に罰則が科される」という記述は誤りです。罰則は個別法の排出基準違反に対して科されるという点を押さえましょう。
環境基本計画
環境基本計画の位置づけ
環境基本計画は、環境基本法15条に基づいて政府が策定する、環境の保全に関する基本的な計画です。環境大臣が中央環境審議会の意見を聴いて案を作成し、閣議決定により策定されます。
環境基本計画には、以下の事項が定められます。
- 環境の保全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱
- 環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
策定主体に関する手続を整理すると、環境大臣が案を作成 → 中央環境審議会の意見を聴く → 閣議決定という流れです。「環境大臣が単独で決定する」のではなく、最終的には政府全体の意思である閣議決定によって定まる点が問われることがあります。
環境基本計画の変遷
環境基本計画はこれまで複数回策定されており、時代の変化に応じて内容が改定されてきました。近年の計画では、脱炭素社会の実現、循環経済(サーキュラーエコノミー)の推進、自然共生社会の構築などが重点分野として位置づけられています。
2024年(令和6年)に閣議決定された第六次環境基本計画では、「環境・経済・社会の統合的向上」をさらに進め、地域の自然資本を活かした「地域循環共生圏」の創造などが掲げられているとされます。時事的な問題では、こうした最新の重点テーマと、脱炭素・循環経済・生物多様性といったキーワードを結びつけて押さえておくとよいでしょう。
環境影響評価法(環境アセスメント法)
環境影響評価とは
環境影響評価(環境アセスメント)とは、大規模な開発事業を実施する前に、その事業が環境に与える影響を調査・予測・評価し、その結果を公表して住民や関係機関の意見を聴きながら、環境への配慮を行う手続をいいます。
環境影響評価法は、1997年(平成9年)に制定され、1999年(平成11年)に施行されました。なお、法制定以前にも閣議決定に基づく行政指導としてのアセスメント(いわゆる閣議アセス)が運用されていましたが、法律として制度化されたのが環境影響評価法です。
環境アセスメント制度の本質は、事業の実施前に環境配慮を組み込み、意思決定に反映させる「予防」の仕組みである点にあります。公害が起きてから争う事後救済型の発想ではなく、計画段階で被害を未然に防ぐという思想です。この「事前・予防」という性格は、環境権論や公害訴訟との対比でも理解しておきたいポイントです。
環境影響評価の対象事業
環境影響評価の対象となる事業は、以下の2種類に分けられます。
- 第一種事業: 必ず環境影響評価を実施しなければならない大規模事業
- 高速道路、ダム、鉄道、飛行場、発電所など
- 事業の規模要件が法律で定められている
- 第二種事業: 第一種事業に準ずる規模の事業で、環境影響評価を実施するかどうかを個別に判断する事業(スクリーニング手続)
第二種事業について「アセスを実施するかどうか」を判定する手続をスクリーニングといいます。第一種事業は無条件に対象となるのに対し、第二種事業は規模が一回り小さいため、許認可権者が都道府県知事等の意見を踏まえて要否を判断します。「第一種=必須」「第二種=要否を個別判断(スクリーニング)」という対応を確実に押さえましょう。
環境影響評価の手続の流れ
環境影響評価の手続は、おおまかに以下の流れで進みます。
- 配慮書: 事業の位置・規模等の検討段階で、環境保全について配慮すべき事項を検討
- 方法書(スコーピング): 環境影響評価の項目と方法を決定。住民や知事等の意見を聴取
- 準備書: 調査・予測・評価の結果をまとめた書類を作成。住民への縦覧・説明会を実施
- 評価書: 住民や知事等の意見を踏まえて最終的な評価書を作成。環境大臣の意見も聴取
- 報告書: 事業実施後に、環境への影響の調査結果を報告
各書類の役割を一覧で整理すると次のとおりです。
頻出の用語整理として、方法書段階=スコーピング(評価項目の絞り込み)、第二種事業の要否判定=スクリーニングの2つを取り違えないようにしましょう。手続の流れは「配慮書 → 方法書 → 準備書 → 評価書 → 報告書」の順で、準備書と評価書の段階で住民・知事・環境大臣の意見が反映される構造になっています。
よくある誤解
- 「アセスは事業終了後に行う事後評価である」→ 誤り。原則として事業実施前に行う事前手続です(報告書による事後調査は別途行われます)。
- 「環境大臣が事業の許認可を行う」→ 誤り。アセスはあくまで環境配慮の手続であり、事業の許認可権者は別に存在します。環境大臣は評価書段階で意見を述べる立場です。
- 「すべての開発事業がアセスの対象になる」→ 誤り。一定規模以上の第一種事業・第二種事業に限られます。
戦略的環境アセスメント(SEA)
戦略的環境アセスメント(SEA: Strategic Environmental Assessment)は、個別の事業の計画段階よりもさらに上位の段階(政策・計画・プログラムの段階)で環境影響を評価する仕組みです。
2011年の環境影響評価法改正により、「配慮書」の手続が導入されたことで、日本でもSEAの考え方が取り入れられました。従来のアセスメントが「事業の場所・規模が固まった後」の評価だったのに対し、SEAは「より早い計画段階」で複数案を比較検討できる点に意義があります。早期段階で環境配慮を行うほど、選択肢が広く、被害の回避・低減が容易になるという発想です。
公害対策の歴史と法制度
四大公害訴訟
日本の環境法制度は、高度経済成長期に発生した深刻な公害問題を契機として発展しました。特に有名なのが、以下の四大公害訴訟です。
これらの訴訟では、いずれも原告(被害者)側が勝訴し、企業の損害賠償責任が認められました。
四大公害訴訟の意義と暗記のコツ
四大公害訴訟は、行政書士試験の一般知識で最も頻繁に問われる環境法テーマの一つです。出題されるのは主に「公害名 ─ 原因物質 ─ 発生地」の対応関係で、誤った組み合わせを選ばせる形式が典型です。
暗記のコツは次のとおりです。
- 水俣病(熊本)・新潟水俣病:いずれも有機水銀(メチル水銀)。新潟水俣病は「第二水俣病」とも呼ばれ、阿賀野川流域で発生
- イタイイタイ病:カドミウム。富山県神通川流域で発生。「カドミウム=骨がもろくなる=イタイイタイ」と結びつける
- 四日市ぜんそく:大気汚染(亜硫酸ガス等)。三重県四日市のコンビナートが原因で、唯一の大気汚染型(他の3つは水質汚濁型)
「四日市だけが大気汚染、ほかは水質汚濁(有機水銀2つ+カドミウム1つ)」という整理が、誤答選択肢を見抜く決め手になります。
これらの訴訟を通じて、加害企業の過失や因果関係の立証を被害者に過度に課さない判断枠組み(疫学的因果関係の活用など)が形成され、後の公害立法・無過失責任の導入につながりました。
公害対策関連法
四大公害訴訟を契機に、以下のような公害対策関連法が整備されました。
- 大気汚染防止法: 工場や事業場からのばい煙、揮発性有機化合物等の排出を規制
- 水質汚濁防止法: 工場や事業場からの排水に含まれる有害物質等の排出を規制
- 土壌汚染対策法: 特定有害物質による土壌汚染の状況の把握と健康被害の防止
- 騒音規制法: 工場・事業場や建設工事からの騒音を規制
- 振動規制法: 工場・事業場や建設工事からの振動を規制
- 悪臭防止法: 事業活動に伴って発生する悪臭を規制
典型七公害
環境基本法は、「公害」を典型的な7つの類型(典型七公害)として整理しています。
この法律において「公害」とは、環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁……、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下……及び悪臭によって、人の健康又は生活環境……に係る被害が生ずることをいう
― 環境基本法 第2条第3項
典型七公害は、(1)大気の汚染、(2)水質の汚濁、(3)土壌の汚染、(4)騒音、(5)振動、(6)地盤の沈下、(7)悪臭の7つです。「日照阻害」や「電波障害」は典型七公害に含まれない点が引っかけとして問われることがあります。語呂で「大水土・騒振沈・悪臭」とまとめておくと想起しやすくなります。
公害における無過失責任
公害規制法の特徴として、大気汚染防止法・水質汚濁防止法には無過失損害賠償責任の規定が置かれています。事業活動に伴う有害物質の排出により他人の生命・身体を害したときは、故意・過失がなくても賠償責任を負うという考え方で、被害者の立証負担を軽減する趣旨です。一般の不法行為(民法709条)が過失責任を原則とするのと対比して理解しておくとよいでしょう。
公害健康被害補償法
公害により健康被害を受けた者に対する補償制度を定めた法律が、公害健康被害の補償等に関する法律(公害健康被害補償法)です。汚染原因者から徴収した負担金を財源として、被害者に対する補償給付(療養の給付、障害補償費、遺族補償費等)が行われます。
この制度は、汚染原因者が費用を負担するという汚染者負担原則(PPP: Polluter-Pays Principle)を具体化したものと位置づけられます。汚染者負担原則は環境法の基本原則の一つであり、環境保全のコストを汚染を生じさせた者が負担すべきという考え方です。OECDが提唱した原則として時事的にも問われることがあります。
循環型社会形成推進基本法
循環型社会とは
循環型社会形成推進基本法は、2000年(平成12年)に制定された法律で、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会から、資源を効率的に利用する循環型社会への転換を目指すものです。
同法は、廃棄物・リサイクル対策の基本的な枠組みとして、以下の優先順位を定めています。
- 発生抑制(リデュース): そもそも廃棄物を出さない
- 再使用(リユース): 使えるものはそのまま使う
- 再生利用(リサイクル): 使えないものは資源として再生利用
- 熱回収: 再生利用できないものは焼却して熱エネルギーを回収
- 適正処分: 上記のいずれにも該当しないものを適正に処分
この「3R(リデュース・リユース・リサイクル)」の優先順位は、試験で問われることがあります。リデュース(発生抑制)が最も優先されるという点を覚えておきましょう。
優先順位の整理表
5段階全体の順序(発生抑制 → 再使用 → 再生利用 → 熱回収 → 適正処分)を問う出題もあります。3Rに「熱回収」と「適正処分」を加えた5段階で覚えておくと万全です。順序を入れ替えた誤答(例:リサイクルを最優先とする記述)に注意してください。
個別リサイクル法
循環型社会形成推進基本法のもとで、個別の分野ごとにリサイクル法が制定されています。
家電リサイクル法の対象4品目(エアコン・テレビ・冷蔵庫/冷凍庫・洗濯機/衣類乾燥機)は、「パソコンは家電リサイクル法ではなく小型家電リサイクル法の対象」という引っかけとともに問われることがあります。対象品目の対応関係を押さえておきましょう。
廃棄物処理法
廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)は、廃棄物の排出抑制と適正な処理を定めた法律です。行政書士業務では、産業廃棄物収集運搬業や処分業の許可申請を扱うことがあり、実務的にも重要な法律です。
廃棄物は、一般廃棄物と産業廃棄物に分類されます。
- 一般廃棄物: 産業廃棄物以外の廃棄物。処理責任は市区町村
- 産業廃棄物: 事業活動に伴って生じた廃棄物のうち法令で定めるもの。処理責任は排出事業者
産業廃棄物は「事業活動に伴って生じた廃棄物のうち法令で定める20種類」と整理され、排出事業者責任の原則のもと、排出した事業者自身が適正処理の責任を負います。実務では、産業廃棄物の運搬・処分を他者に委託する際のマニフェスト(産業廃棄物管理票)制度が重要で、不適正処理を防ぐために廃棄物の流れを書面で追跡します。一般廃棄物の処理責任が市区町村にあるのに対し、産業廃棄物は排出事業者責任であるという対比が出題されやすい点です。
地球温暖化対策
地球温暖化対策推進法
地球温暖化対策の推進に関する法律(地球温暖化対策推進法)は、温室効果ガスの排出削減を推進するための法律です。
2020年10月に日本政府は「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする目標を掲げました。この目標は、2021年の法改正により地球温暖化対策推進法にも明記されています。
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量から、森林などによる吸収量・除去量を差し引いて「実質ゼロ」にすることをいいます。「排出量を完全にゼロにする」という意味ではなく、吸収量との差し引きで均衡させる点が定義のポイントです。時事問題では、2030年度の中期目標(2013年度比の削減目標)などの数値とあわせて問われることがあるため、最新の政府目標を確認しておきましょう。
パリ協定
パリ協定は、2015年にフランスのパリで開催されたCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)で採択された国際的な枠組みです。
パリ協定の主な内容は以下のとおりです。
- 世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて2℃より十分低く抑え、1.5℃に抑える努力を追求する
- 各国が自主的に温室効果ガスの削減目標(NDC)を設定し、5年ごとに見直す
- 先進国だけでなくすべての国が参加する(京都議定書との違い)
パリ協定と京都議定書の比較
最大の違いは、京都議定書が先進国のみに義務を課したのに対し、パリ協定はすべての国が参加する点です。「パリ協定も先進国のみが対象」という記述は誤りです。COP3=京都、COP21=パリという対応もあわせて押さえておきましょう。
生物多様性に関する枠組み
地球環境問題は温暖化だけではありません。生物多様性の保全も重要テーマで、関連する国内法として生物多様性基本法(2008年制定)があります。国際的には、生物多様性条約や、その関連で採択された名古屋議定書(遺伝資源へのアクセスと利益配分に関する取り決め。2010年のCOP10で採択)などが知られています。時事問題で問われる可能性があるため、地球温暖化(気候変動)と並ぶもう一つの柱として認識しておくとよいでしょう。
頻出論点・出題ポイントの総整理
最後に、本記事で扱った頻出論点を一覧で確認しておきましょう。誤答選択肢として狙われやすいポイントを「○正しい/×誤り」の形で整理します。
これらは過去に一般知識で問われた、あるいは問われやすい角度です。条文番号(環境基本法3〜5条の理念、16条の環境基準など)とセットで覚えると、判別問題に強くなります。
環境基本法16条に基づく「環境基準」は、事業者に対する直接的な規制基準であり、環境基準を超える排出を行った事業者には罰則が科される。○か×か。
循環型社会形成推進基本法が定める廃棄物処理の優先順位は、再生利用(リサイクル)、再使用(リユース)、発生抑制(リデュース)の順である。○か×か。
2015年に採択されたパリ協定は、京都議定書と同様に先進国のみに温室効果ガスの排出削減義務を課すものである。○か×か。
環境影響評価法における第一種事業は、環境影響評価を実施するかどうかを個別に判断するスクリーニング手続の対象となる。○か×か。
四大公害訴訟のうち、四日市ぜんそくはカドミウムによる水質汚濁を原因とするものである。○か×か。
まとめ|環境法の基礎を効率的に学ぶ
環境法は、行政書士試験の一般知識分野で出題される可能性のある重要テーマです。
本記事のポイントを整理すると、以下のとおりです。
- 環境権: 判例は具体的な権利として正面から認めていない。救済は人格権・物権が中心
- 環境基本法: 1993年制定。3つの基本理念(恵沢の享受と継承・持続的発展・国際的協調)。公害対策基本法は廃止、自然環境保全法は存続
- 環境基準: 行政上の目標であり、直接的な規制基準ではない(罰則は個別法の排出基準違反に対して)
- 環境アセスメント法: 大規模事業の実施前に環境への影響を評価する事前手続。第一種=必須、第二種=スクリーニング。配慮書→方法書→準備書→評価書→報告書
- 四大公害訴訟: 水俣病(熊本)・新潟水俣病(有機水銀)、イタイイタイ病(カドミウム)、四日市ぜんそく(大気汚染)
- 循環型社会の3R: リデュース(最優先)、リユース、リサイクルの順。全体は熱回収・適正処分を含む5段階
- パリ協定: すべての国が参加(京都議定書との違い)
これらの基礎知識を押さえておけば、試験で出題された場合にも対応できるでしょう。本記事の内容を繰り返し確認して、確実な得点力を身につけましょう。
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