行政書士になるには|受験から登録までの全体ロードマップ
行政書士になるには、試験に合格し、行政書士名簿に登録し、事務所を構えて業務を始めるという3つの段階が必要です。受験資格の有無、試験の概要と合格率、学習期間の目安、登録という別段階の意味、費用が発生する場面までを、ゼロから目指す方向けの全体ロードマップとして整理しました。
行政書士になるには、大きく「試験に合格する」「行政書士名簿に登録する」「事務所を構えて業務を始める」という3つの段階を順に通ります。受験そのものに年齢・学歴・国籍などの制限はなく、誰でも挑戦できる試験です。一方で、合格しただけでは行政書士を名乗れません。この記事では、ゼロから目指す方に向けて、全体の順序と分岐を一本の道筋として整理します。
はじめにご確認ください
試験日程・受験料・登録に必要な費用は、年度や都道府県によって変わります。この記事の数値は目安として示すものです。実際に申し込む・登録する段階では、必ず行政書士試験研究センターの最新の受験案内と、所属予定の都道府県行政書士会の案内で確認してください。
行政書士になるには|答えは「3段階」です
最初に結論をまとめます。「行政書士になるには何をすればよいのか」という問いへの答えは、次の3段階です。この3つは目的も手続も別物であり、順番に通過する必要があります。
この3段階の区別は、単なる言葉づかいの問題ではありません。行政書士法は、第2条で「行政書士となる資格を有する者」を定め、第6条で「資格を有する者が行政書士となるには、行政書士名簿に登録を受けなければならない」と定めています。つまり法律そのものが、資格を得る段階と行政書士になる段階を分けて書いているのです。この構造は行政書士試験の業法分野でもそのまま出題される定番論点です。「試験に合格すれば行政書士として業務ができる」という記述は誤りである、という形で問われます。
「合格」「登録」「開業」の関係を図で整理する
言葉で読むと混同しやすいので、3つの状態の違いを図にまとめます。
【「合格」「登録」「開業」は別のもの】
①合格 : 試験に受かった状態
→ 法律上は「行政書士となる資格を有する者」
→ まだ行政書士ではない/名乗れない/業務もできない
②登録 : 行政書士名簿に登録された状態
→ ここで初めて「行政書士」になる
→ 登録と同時に都道府県行政書士会の会員になる(強制入会)
③開業 : 事務所を構えて実際に依頼を受ける状態
→ 事務所の確保、税務署への届出などが必要
→ 登録しても、すぐには開業しないという選択もありうる
この図の読み取りポイントは3つです。第一に、①と②の間には申請と審査という手続が挟まっており、合格した瞬間に自動で行政書士になるわけではありません。第二に、②の登録は行政書士会への入会と一体で、「登録はするが会には入らない」という選び方はできません。第三に、②と③も別で、登録を済ませたうえで開業時期を調整することは可能です。合格後の②③にあたる具体的な手続は、この記事の後半と、後述する登録ガイドで扱います。
この記事と「合格後の登録ガイド」の役割分担
行政書士ブートラボでは、「行政書士になる」というテーマを2本の記事で分担しています。読み分けの目安は次のとおりです。
この記事は「道のり全体の地図」、登録ガイドは「ゴール手前の詳細な手順書」だとお考えください。以下の解説でも、登録の細部に立ち入る場面では登録ガイドへ案内していきます。
受験資格はあるのか|行政書士試験に受験制限はありません
行政書士を目指す方が最初に気にされるのが「そもそも自分は受験できるのか」という点です。ここは明確です。
行政書士試験には受験資格の制限がありません。年齢・学歴・国籍等による制限はなく、誰でも受験できます。司法試験のように法科大学院の修了が必要だったり、他の資格のように実務経験が求められたりすることはありません。高校生でも、定年退職後の方でも申し込めます。
この「入口が広い」という性質は、行政書士試験の大きな特徴です。法律を学んだ経験がまったくない方が学習を始めて合格に至るケースは珍しくなく、社会人が働きながら目指す資格としてもよく挙げられます。働きながら、あるいは家事や育児と両立しながら学習を進める方も多く、生活のなかで学習時間をどう確保するかが実際の課題になります。
受験資格がないことと、行政書士になれることは別
ただし、注意していただきたい点があります。受験に制限がないことと、合格後に必ず行政書士として登録できることは、別の話です。
登録の段階では、行政書士法が定める欠格事由に該当しないことが求められます。既存の解説記事では、未成年者、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者、禁錮以上の刑に処せられて一定期間を経過しない者などが欠格事由として挙げられています。破産については「復権を得れば欠格事由から外れる」と整理されており、永久に行政書士になれなくなるわけではない点も押さえておきましょう。
この点は、受験の段階では問題にならなくても、登録の段階で確認されるという時間差があるところがポイントです。たとえば未成年のうちに合格すること自体は妨げられませんが、その時点では登録の要件を満たしません。合格に有効期限がないことと合わせて考えると、先に合格しておき、条件が整った時点で登録するという順序も成り立ちます。
ご自身が欠格事由に当たるかどうか判断に迷う場合は、自己判断で結論を出さず、所属予定の都道府県行政書士会に事前に相談することをおすすめします。欠格事由の詳細な整理は、後掲の登録ガイドにまとめています。
行政書士試験を受験するには、大学の法学部を卒業しているか、一定の実務経験があることが必要である。
行政書士になるまでの全体フローを一枚で見る
3段階を、実際にやることの順序に展開すると次のようになります。ここでは具体的な月や金額はあえて入れず、順序と分岐だけを示します。
【行政書士になるまでの全体フロー】
[1] 学習を始める(テキスト・過去問・講座の選択)
│
▼
[2] 受験申込みをする(受付期間内に手続)
│
▼
[3] 試験を受ける(年1回)
│
┌────┴────┐
不合格 合格
│ │
▼ ▼
[1]へ戻る [4] 「行政書士となる資格を有する者」になる
(再挑戦) │
├──→ すぐには登録しない(合格の効力は残る)
│
▼
[5] 登録申請(都道府県行政書士会を経由 → 日本行政書士会連合会)
│
▼
[6] 審査 → 行政書士名簿に登録完了(=行政書士になる)
│
▼
[7] 事務所の整備・開業の届出 → 業務開始
この図から読み取っていただきたいのは、まず[3]の試験が年1回である以上、不合格の場合は次のチャンスまで約1年空くという点です。したがって学習計画は「今年の試験日から逆算する」形で立てることになります。次に、[4]から[5]の間に点線的な分岐があることです。合格後すぐに登録する人もいれば、会社員を続けながら数年後に登録する人もいて、どちらも選べます。そして[6]で初めて「行政書士」になり、[7]で実際に仕事が始まるという順序です。
不合格だった場合はどうなるか
図の左側の分岐についても触れておきます。行政書士試験に受験回数の制限はなく、不合格でも翌年以降に再挑戦できます。前年の学習で身につけた知識はそのまま残るため、2年目以降は同じ範囲を最初から積み直すのではなく、失点した分野に重点を置いた計画に組み替えるのが一般的な進め方です。
なお、絶対評価の試験なので、「前年より順位を上げる」ことではなく「基準点に届く」ことが目標になります。前年の得点が基準にどれだけ足りなかったのかを科目別・形式別に分解しておくと、次の1年で何点分を取りに行くのかが具体的になります。
各ステップの主役は誰か
手続の相手方が段階ごとに変わる点も、混乱しやすいところです。整理しておきます。
「試験のことは試験研究センター、登録のことは行政書士会」と覚えておくと、調べたいときに迷いません。試験制度に関する質問を行政書士会に問い合わせても管轄が違いますし、その逆も同じです。
第1段階:行政書士試験に合格する
最初の関門が試験です。ここでは、これから目指す方が全体像をつかむために必要な範囲で、試験の骨格を確認します。
試験の基本情報
受験料や日程は年度によって改定・変更されることがあります。申し込む年の正式な情報は、例年7月頃に公示される試験公告と受験案内で必ず確認してください。申込み方法や当日の持ち物など、手続の詳細は行政書士試験の申込みから合格発表まで完全ガイドにまとめています。
出題形式と合格基準
行政書士試験は300点満点で、法令等科目244点と一般知識等科目56点に分かれます。
合格基準は、法令等科目122点以上、一般知識等科目24点以上、かつ合計180点以上の3条件をすべて満たすことです。ここで重要なのは、この試験が絶対評価だという点です。上位何%だけが合格する相対評価ではなく、基準点を超えれば合格できます。ライバルの出来を気にするより、自分が180点に届く状態をつくることに集中できる試験だといえます。配点構造の詳しい読み解き方は行政書士試験の配点と合格基準を完全整理で解説しています。
何を勉強することになるのか
学習を始める前に、出題される科目も見ておきましょう。試験範囲は行政書士法施行規則第2条に基づいて定められており、法令等科目と一般知識等科目に分かれます。
配点の中心は行政法と民法です。学習を始める際は、配点の大きいこの2科目から取り組むのが効率的だと説明されています。「行政書士」という名称から行政法だけを学ぶ試験だと思われがちですが、実際には民法の比重も大きく、憲法・商法・基礎法学まで含めた幅広い範囲を扱います。法律の学習経験がない方にとっては、この範囲の広さが最初のハードルになります。
合格率はどのくらいか
合格率はおおむね10〜15%前後で推移していると整理されています。10人に1〜2人が合格する水準であり、対策なしで通る試験ではありません。
ただし、絶対評価である以上、合格率はその年の問題の難易度と受験生全体の準備状況を反映した結果の数字にすぎません。記念受験や準備不足のまま受験する層が一定数含まれることを踏まえると、最後まで計画的に学習を続けた受験生にとっての実質的な難易度は、単純な合格率の印象より穏やかだと考えられます。年度ごとの変動要因は行政書士試験の合格率推移と難易度分析で詳しく分析しています。
行政書士試験は、上位の一定割合の受験者だけが合格する相対評価の試験である。
どれくらい勉強すればよいか
学習時間の目安は、一般に600〜1,000時間とされています。出発点によって幅があります。
たとえば800時間を確保する場合、期間との関係は12ヶ月計画で1日あたり約2.2時間、10ヶ月計画で約2.7時間、6ヶ月計画で約4.4時間という配分になります。働きながらであれば、平日2時間・休日5〜6時間という組み方が現実的だと説明されています。
もっとも、総時間そのものより、過去問を解ける状態まで到達しているかが重要です。同じ800時間でも、テキストを読むだけの時間と、過去問演習と復習を軸にした時間とでは、得点への結びつき方が変わります。学習法の全体設計は行政書士試験の勉強法を徹底解説で月別に整理しています。なお、独学合格者の割合について公式データはありませんが、各種アンケートや合格体験記からはおよそ3〜4割と推定されており、独学と講座利用のどちらも選択肢になります。
第2段階:行政書士名簿に登録する
ここが、多くの方が見落としがちな段階です。試験に合格しても、それだけでは行政書士として活動できません。
登録とは何をすることか
行政書士法第6条第1項は、行政書士となる資格を有する者が行政書士となるには、行政書士名簿に所定の事項の登録を受けなければならないと定めています。行政書士名簿は日本行政書士会連合会に備えられ、登録事務も同連合会が行います。
申請の流れは「事務所を設ける予定地の都道府県行政書士会を経由して、日本行政書士会連合会に申請する」という経由方式です。いきなり連合会に直接申し込むのではなく、まず地元の単位会が窓口になる、と理解しておくとよいでしょう。
そして、登録を受けた者は当然に、事務所を設ける都道府県の行政書士会の会員になります。これは強制入会制と呼ばれ、「登録はするが行政書士会には入らない」という選択はできません。この点は、弁護士会や司法書士会と同じ構造です。
登録には3つの形態がある
「登録する」と一口に言っても、働き方に応じて次の3つの形態があります。
使用人行政書士として登録する場合は、雇用主である行政書士または行政書士法人の同意が必要とされています。いずれの形態でも、登録を受けた者は事務所を設ける都道府県の行政書士会の会員となる点は変わりません。
「独立して自分で事務所を構えるのはハードルが高い」と感じる方にとって、いきなり個人開業する以外の道もある、という点は知っておく価値があります。
登録には何が必要か(概要)
登録申請では、一般に次のようなものが求められると整理されています。
- 所定様式の登録申請書、履歴書、誓約書
- 行政書士試験合格証の写し(資格を証明する書類)
- 住民票の写し、戸籍抄本、本籍地の市区町村が発行する身分証明書
- 法務局が発行する「登記されていないことの証明書」
- 顔写真
- 事務所の使用権原を証する書面、事務所の平面図・写真、付近の地図
ここで押さえておきたいのは、登録には「事務所」が必要だという点です。行政書士は業務を行うための事務所を設けなければならず、事務所は原則1か所に限られます(行政書士法第8条)。自宅の一部を事務所とすることは可能ですが、生活空間と区分されていることなどの条件があり、住所だけを借りるバーチャルオフィスは原則として認められないと説明されています。
なお、必要書類の様式・部数・添付書類の細目は都道府県行政書士会によって異なります。この記事では概要にとどめますので、実際に申請する際は所属予定の行政書士会が配布する最新の手引きと様式で確認してください。書類ごとの取得先や準備の注意点は、前掲の登録ガイドにまとめています。
登録にかかる期間
登録は、書類を出せばすぐ完了するものではありません。単位会での受付・確認と、日本行政書士会連合会での審査という手順を踏みます。
既存の解説では、申請から登録完了までがおおむね1〜2か月程度、書類の収集期間も含めた通算では余裕を見て2〜3か月程度という目安が示されています。特に本籍地が遠方で戸籍や身分証明書の取得に時間がかかる場合は、さらに日数を見込む必要があります。
登録月をまとめて処理する単位会もあるため、「いつから開業したい」という希望がある場合は、その時期から逆算し、あらかじめ単位会に確認しておくと安心です。
行政書士試験に合格すれば、その時点で行政書士を名乗って業務を行うことができる。
第3段階:事務所を整えて業務を始める
登録が完了すると、いよいよ行政書士として業務を始められます。ただし、登録完了イコール仕事が入る状態ではありません。開業のための準備がもう一段あります。
開業までにやること
登録後から業務開始までの主な流れは次のとおりです。
行政書士は、官公署に提出する書類や、権利義務・事実証明に関する書類の作成を業務とします。一方で、登記の申請は司法書士、税務書類の作成は税理士の業務であり、行政書士は行えません。この業際の線引きは、開業前に必ず押さえておくべき前提です。開業の手順を通しで確認したい方は行政書士の開業手順と費用が参考になります。
「開業しない」という選択もある
登録した行政書士が全員すぐに独立開業するわけではありません。行政書士事務所や行政書士法人に雇用されて働く使用人行政書士という形態もありますし、合格の知識を活かして企業の法務・総務部門で働く方もいます。行政書士の平均年収はおおむね400万〜600万円の範囲とされる一方、働き方や専門分野によって幅が非常に大きいと整理されています。「資格を取れば必ずこれだけ稼げる」という性質のものではなく、開業後の営業や専門分野の選択によって結果が変わる、と理解しておくのが実態に近い見方です。
登録してから業務が軌道に乗るまで
登録が完了した時点では、まだ依頼者がいない状態から始まります。行政書士の業務は、建設業許可や飲食店営業許可といった許認可申請、契約書などの権利義務に関する書類の作成、相続関係の書類作成など幅広く、どの分野を主に扱うかによって必要な知識も営業のしかたも変わります。
そのため、登録後は取扱分野を絞り込み、その分野の実務知識を補いながら案件を獲得していくことになります。試験の学習内容と実務は直結する部分もありますが、同じではありません。実務研修の受講や、同業・他士業とのつながりづくりが、開業後の立ち上がりを左右する要素として挙げられています。
試験を受けずに行政書士になる経路はあるのか
「試験以外のルートはないのか」という関心もよく聞かれます。行政書士法第2条は、行政書士となる資格を有する者を複数列挙しています。
②に含まれるのは弁護士・弁理士・公認会計士・税理士の4資格であり、司法書士や社会保険労務士は含まれない点が、試験でもよく問われる引っかけどころです。
ただし、これから行政書士を目指す一般の方にとって、②③は現実的な出発点にはなりにくいのが実情です。②は先に難関資格を取ることになりますし、③は長期の公務員経験が前提になります。したがって、多くの方にとっての道筋は①の試験合格ルートです。
なお、②③に自分が該当するかどうか、また該当する場合にどのような書類で証明するのかといった実際の取扱いは、個別の判断を伴います。年数の算定方法や対象となる職務の範囲などは自己判断で結論を出さず、所属予定の都道府県行政書士会の案内で確認するか、直接お問い合わせください。
弁護士・弁理士・公認会計士・税理士となる資格を有する者は、行政書士試験に合格しなくても行政書士となる資格を有する。
合格に有効期限はあるのか
「合格したけれど、すぐには開業できない。合格が無効になってしまわないか」という不安をお持ちの方もいます。
行政書士試験の合格には有効期限がありません。合格後すぐに登録しなくても、合格資格そのものが失効することはなく、数年後に登録することも可能だと整理されています。したがって、「合格はしたが当面は会社員を続ける」「子育てが落ち着いてから開業する」といったキャリアプランも成り立ちます。
ただし、実務的な観点からは、期間が空くほど受験で身につけた知識は薄れていきます。開業を先送りする場合でも、法改正の情報を追ったり、実務研修に参加したりして、知識のアップデートを続けておくのが望ましいでしょう。
また、合格の効力そのものについて不安がある場合や、手元の合格証を紛失したといった個別の事情がある場合は、自己判断せず、行政書士会または試験の実施機関に確認してください。手続の窓口が段階によって異なることは、前掲の表のとおりです。
どのくらいの期間で行政書士になれるのか
「思い立ってから行政書士になるまで、どれくらいかかるのか」を、学習期間と手続期間に分けて見積もってみます。
学習期間+手続期間で考える
これを単純に足すと、学習開始から登録完了まで、最短でも1年前後、余裕を見れば1年半から2年程度という見通しになります。ここで効いてくるのが、試験が年1回しかないという制約です。学習開始が遅れて申込みに間に合わなければ、次の受験は約1年後になります。逆に言えば、まず「どの年の11月を狙うのか」を決めることが、行政書士になるための最初の意思決定だといえます。
この見通しを立てるときに気をつけたいのが、「登録まで」と「業務が始まるまで」をさらに分けて考えることです。登録が完了すれば法律上は行政書士ですが、そこから事務所を整え、届出を済ませ、最初の依頼を受けるまでには追加の時間がかかります。転職や独立のタイミングを合わせたい方は、登録完了日ではなく業務開始日を基準に逆算しておくと、想定とのずれが小さくなります。
学習開始の時期をどう決めるか
11月の試験から逆算する考え方が基本です。12ヶ月計画なら前年の12月〜1月に学習を始めるのが理想的だと説明されています。もし今が年の後半で、次の11月まで半年を切っているなら、無理に今年に間に合わせるより、翌年の試験を本命に据えて余裕のある計画を組む方が結果的に近道になることもあります。
いずれにしても、期間の見積もりは「自分が確保できる1日の学習時間」から逆算するのが確実です。確保できる時間が読めない段階では、まず1週間だけ実際に学習してみて、平日と休日それぞれの実績時間を測ってみるのが確実です。
費用はどこで発生するのか
行政書士になるまでには、複数の場面で費用が発生します。まず「どこでお金がかかるのか」という発生ポイントを把握しておくと、資金計画が立てやすくなります。
【費用が発生する場面】
[学習フェーズ]
├ テキスト・問題集の購入
├ 予備校・通信講座の受講料(利用する場合)
└ 模擬試験の受験料
↓
[受験フェーズ]
├ 受験料
└ 試験会場までの交通費・宿泊費(遠方の場合)
↓
[登録フェーズ]
├ 登録手数料(日本行政書士会連合会)
├ 入会金(都道府県行政書士会)
├ 登録免許税(国)
├ 証票発行手数料・バッジ代
└ 添付書類の取得実費(住民票・戸籍・証明書など)
↓
[開業フェーズ]
├ 事務所の整備費(机・書棚・表札・通信環境など)
├ 職印・名刺・Webサイトの制作費
└ 会費(毎月または毎年、継続的に発生)
この図から読み取れるのは、費用が一度きりではなく段階ごとに繰り返し発生するという点です。特に注意したいのが、いちばん下の会費です。学習費用や登録費用は一時的な支出ですが、会費は登録を続ける限り毎年かかり続けます。案件がない月でも発生する固定費だという点を、開業時期の判断材料に入れておいてください。
この構造を踏まえると、資金計画は「合格までにいくら使うか」と「合格してから業務を始めるまでにいくら必要か」を分けて立てるのが現実的です。前者は学習方法の選択でコントロールできる部分が大きく、後者は登録先の会や事務所の形態に左右されます。合格前の段階では、まず学習フェーズの費用だけを固めておき、登録フェーズの費用は合格の見通しが立った時点で詳細を確認する、という進め方でも遅くありません。
金額の目安
既存の解説記事では、登録時の初期費用について次のような目安が示されています。
会費に政治連盟会費や支部会費などが加わると、年間で10万円前後になることがあると整理されています。また、事務所の整備まで含めた開業資金全体の目安としては、約100万〜250万円という数字が示されています。
これらはあくまで目安です。入会金や会費の額、徴収方法は都道府県行政書士会によって異なりますし、改定されることもあります。学習フェーズの費用も、独学か講座利用かで大きく変わります。実際の金額は、所属予定の単位会の会則・案内で必ず確認してください。費目ごとの内訳と納付先の違いは、前掲の登録ガイドで詳しく扱っています。
まとめ
行政書士になるには、「試験に合格する」「行政書士名簿に登録する」「事務所を整えて業務を始める」という3つの段階を順に通ります。この記事の要点を整理します。
- 受験資格の制限はありません。 年齢・学歴・国籍等による制限はなく、法学部出身である必要も実務経験も不要です。
- 合格しただけでは行政書士ではありません。 行政書士法第2条の「資格を有する者」になった段階であり、第6条の登録を受けて初めて行政書士になります。
- 登録は都道府県行政書士会を経由して日本行政書士会連合会に申請します。 登録と行政書士会への入会は一体です。
- 合格に有効期限はありません。 すぐに登録しなくても資格が失効することはなく、キャリアの都合に合わせて登録時期を選べます。
- 試験以外の資格取得ルートもあります。 弁護士・弁理士・公認会計士・税理士の資格者と、一定年数の行政事務を担当した公務員です。ただし多くの方にとっては試験合格ルートが出発点になります。
- 期間は学習6〜12ヶ月+登録手続2〜3か月程度が一つの見通しです。 試験が年1回である以上、「どの年の11月を狙うか」を先に決めることが重要です。
- 費用は学習・受験・登録・開業の各段階で発生します。 特に会費は登録を続ける限り毎年かかる固定費です。
最後に、この記事はゼロから行政書士を目指す方に向けた全体の地図です。すでに合格されていて、登録の具体的な手続を知りたい方は、下記の関連記事にある登録ガイドへお進みください。必要書類、事務所の要件、費用の内訳、開業届までを手順として解説しています。
なお、繰り返しになりますが、試験日程・受験料・登録費用は年度や都道府県によって変わります。行動に移す段階では、必ず最新の公式情報でご確認ください。
よくある質問
Q. 行政書士になるには、まず何から始めればよいですか?
まずは「どの年の11月の試験を受けるか」を決めることをおすすめします。行政書士試験は年1回なので、目標年を決めると、そこから逆算して学習開始時期と1日の学習時間が自動的に決まります。学習時間の目安は法律初学者で800〜1,000時間とされており、1日2〜3時間なら10〜12ヶ月程度の計画になります。目標年が決まったら、独学で進めるか講座を利用するかを選び、テキストと過去問をそろえて基礎から始めましょう。
Q. 高卒でも、法律を勉強したことがなくても行政書士になれますか?
受験そのものに学歴の制限はありません。年齢・学歴・国籍等による受験資格の制限はなく、法学部出身である必要もありません。法律を学んだ経験がない状態から学習を始める方も多く、その場合の学習時間の目安が800〜1,000時間とされています。ただし、合格後の登録段階では行政書士法の欠格事由に該当しないことが求められます。判断に迷う事情がある場合は、所属予定の都道府県行政書士会にご確認ください。
Q. 行政書士試験の合格に有効期限はありますか?
有効期限はありません。合格後すぐに登録しなくても合格資格が失効することはなく、数年後に登録することも可能だと整理されています。そのため、合格後しばらく会社員を続けてから独立する、といった進め方もできます。ただし、時間が空くほど知識は薄れるため、法改正の情報収集などは続けておくとよいでしょう。合格証の紛失など個別の事情がある場合は、行政書士会や試験の実施機関にご確認ください。
Q. 試験に合格したら、すぐに行政書士として働けますか?
すぐには働けません。行政書士として業務を行うには、行政書士名簿への登録が必要です。登録には書類の収集と審査の期間がかかり、申請から登録完了までおおむね1〜2か月程度、書類集めを含めた通算では2〜3か月程度を見込むのが目安とされています。開業したい時期がある場合は、そこから逆算して合格発表後すぐに準備に着手するのが確実です。
Q. 行政書士になるまでに、全部でいくらかかりますか?
段階ごとに分けて考えるのが実際的です。学習費用は独学か講座利用かで大きく変わります。受験には受験料10,400円がかかります。登録時の初期費用はおおむね25万〜35万円程度、事務所の整備まで含めた開業資金全体では約100万〜250万円が目安として示されています。加えて、登録を続ける限り会費が毎年かかります。ただし入会金や会費の額は都道府県行政書士会によって異なるため、正確な金額は所属予定の単位会でご確認ください。
Q. 独学でも合格できますか?
独学での合格は可能です。独学合格者の割合について公式なデータはありませんが、各種アンケートや合格体験記からはおよそ3〜4割と推定されています。残りの方は予備校や通信講座を利用しています。独学を選ぶ場合は、過去問を繰り返し回すことを前提に、逆算した計画を自分で管理できるかが分かれ目になります。具体的な進め方は独学で行政書士に合格する勉強法を参考にしてください。